2019年11月5日火曜日

〈社説〉NHKは薬害オンブズパースン会議からの“圧力”に屈するべきではない

意見書提出を伝える薬害オンブズパースン会議のウェブサイト
「薬害防止を目的に1997年6月に発足した民間の医薬品監視団体」を名乗る薬害オンブズパースン会議が「NHKに対して“不当な圧力”をかけているのではないか」と話題になっている。

”不当な圧力”と指摘されているのは、NHKが今年5月27日「おはよう日本」の「けさのクローズアップ」で放送した『はしか ワクチン拒否の実態』の内容が「誤解を視聴者に与えている」「放送倫理(放送法4条1項)に反する」として、NHKウェブサイトに掲載されているダイジェスト版の削除を求め11月1日に同会議がNHKに提出した意見書だ。



◆公衆衛生及び子どもの健康に有益な放送内容
 当該番組の放送内容は、麻疹(はしか・麻しん)の流行が拡がっている現状について、その原因のひとつが「ワクチン接種を拒否する人たちの運動」だと指摘するもので、ワクチンに対する誤った情報がSNSで拡散していった実態を米ニューヨーク州とワシントン州でリポート、日本でも同様の事態が起こっている事例が示された。
5月27日放送、NHKおはよう日本「けさのクローズアップ」
はしか ワクチン拒否の実態』ダイジェスト版


 番組では、医師の峰宗太郎氏(アメリカ国立衛生研究所)が発信している正しい医療情報に触れ、ワクチンに対する誤った情報がリセットされた日本の夫婦の例などが紹介され、ワクチン拒否に関する誤情報に如何にして向き合って対処していくべきであるかというトークが司会者と取材記者の間で展開された。
 正しい医療情報に触れることで、医療機会の損失も防ぐことができるという公衆衛生上も有益な番組内容である。

◆薬害オンブズパースン会議がデマ?
 この番組の内容に噛みついた薬害オンブズパースン会議の主張内容は以下のもの。
「日本のはしかの流行はワクチンを拒否する運動とは関係がありません」
「ワクチンの中には、悲惨な副反応被害により国やメーカーの賠償責任が認められた例、安全性への懸念から接種見合わせ等が行われた例、HPVワクチンのように多くの科学論文で危険性が指摘されている例などがあり、個々に有効性と安全性を慎重に検討する必要があります」「現在も、HPVワクチンのように、多くの科学論文において危険性が指摘され、損害賠償請求訴訟が提起されているものがあります」

 しかし、今年初頭に発生した麻疹の集団感染は本紙でスクープしたように、医療忌避宗教団体の研修会から拡がったものだ。この点において薬害オンブズパースン会議の主張内容は失当である。

◆不利な情勢となったHPVワクチン薬害訴訟へのテコ入れか
 また、意見書には「HPVワクチンのように多くの科学論文で危険性が指摘されている例」とあるが、HPVワクチン薬害訴訟の原告側代理人が書証として提出している海外の“論文”はいわゆる反ワクチン論者による信用のおけないトンデモ論文である旨が繰り返し同訴訟の弁論で製薬会社代理人から指摘されている。
 そして、HPVワクチンの被害を主張する全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の要望によって行われた名古屋市での大規模な疫学調査においてもHPVワクチン接種者と被接種者に発症した各症状には有意な差が認められなかった。さらに諸外国でHPVワクチンの効果が実証され、同薬害訴訟では原告代理人による原告の医療記録送付嘱託妨害が発覚するなど、同ワクチン薬害訴訟の原告側に劣勢な状況となっている。
 薬害オンブズパースン会議が当該意見書を提出し、敢えてHPVワクチンやその訴訟について触れた意図は何か。薬害オンブズパースン会議の事務局局長・水口真寿美弁護士HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団の共同代表を務めており、挽回を狙ったのではないかとも推測できる。

◆番組VTR出演の医師が指摘、医療ジャーナリストも薬害オンブズパースン会議を批判
 峰氏は自身のツイッターでこの薬害オンブズパースン会議の意見書提出について意思表明し、見解を述べている。
 
峰医師の一連のツイート

 また、BuzzFeed Japan Medical岩永直子氏は峰氏のツイートを引用し、こう発信している。
「薬害オンブズパースン会議、ワクチンの重要性を啓発する番組放送にまで反対意見を出す団体になってしまった。NHKにはこんな圧力に屈しないでいただきたい」
岩永直子氏の引用ツイート

 岩永氏自身が読売新聞のヨミドクター編集長時代、HPVワクチンに関する記事をめぐりHPVワクチンに反対する勢力から不当な圧力をかけられた経験を持つ。


◆NHK内部にHPVワクチンへの認識の相違
 この不当とも云える薬害オンブズパースンの意見書に対してNHKはどう対処するのか。
 現在、NHKの報道局内取材センターにおいてはHPVワクチンに関し、これまでの取材・報道の経緯から同ワクチンの薬害を主張する全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会に近いのが社会部であり、科学的・医学的に裏付けられた情報に接しているのが科学・文化部だと言われている。
「“被害者感情”に依拠し事象を捉える社会部」と「科学・医学の視点で捉える科学・文化部」この両部署の同ワクチンに対する現状認識には相当な差異が見られる。ただし、局内の同ワクチンに対する認識の齟齬によって、有益な医療情報の発信を妨げることがあってはならない。

◆10月30日にも『SNSで拡散 危険あおる“不確かな医療情報”』が放送
 同番組では10月30日にも、『SNSで拡散 危険あおる“不確かな医療情報”』と題してSNS上やインターネットでわかりやすく正しい医療情報を発信する小児科専門医の森戸やすみ氏、ネットでの医療情報に関する市民講座『SNS医療のカタチ』を全国各地で開催している消化器外科医の山本健人氏皮膚科医の大塚篤司氏小児アレルギー科専門医の堀向健太氏のVTRコメントを放送した。
10月30日放送、NHKおはよう日本「けさのクローズアップ」


 この回の放送内容にも、薬害オンブズパースン会議が圧力をかける可能性もある。

◆NHK出身の薬害オンブズパースン会議中心メンバーが主導か
 薬害オンブズパースン会議の中心メンバーである隈本邦彦・江戸川大学教授はNHK出身だ。メディアへの圧力は隈本氏が主導していると見られている。

◆公共放送は圧力に屈するべきではない
 公共放送を担うNHKは国民への責任を果たす義務がある。NHKには「国民が適切な医療を受ける機会を逸することに繋がりかねない内容の意見書」を提出する団体からの不当な圧力に屈することなく、正しい医療情報を伝える放送の継続を期待したい。

~お知らせ~

※11月24日午後、SNSで活躍する小児科専門医の共著『やさしい予防接種BOOK』刊行記念トークイベント開催!

 今月11月24日午後、東京新宿のトークライブハウス・NAKED LOFT(ネイキッドロフト)で本稿にも登場した森戸やすみ医師、そして反ワクチンクラスタからの口撃を受けながらもSNS等で医療情報の発信を続ける宮原篤医師の共著となる新刊本『疑問や不安がすっきり!小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』の発刊記念トークイベントが開催される。

疑問や不安がさらにすっきり!『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』刊行記念トークイベント!

 ゲストに感染症対策コンサルタントの堀成美氏を迎え、筆者が司会進行を務める。
 当日は、この薬害オンブズパースン会議などの圧力団体や反ワクチンを吹聴する政治家の問題などについても議論したい。また、どうすれば正しい医療情報を必要とする人々に伝えることができるのかを、医療・メディア・行政に関わる方、ワクチン・予防接種をめぐる事象に関心をお持ちの方、そして子どもへのワクチン接種をためらう方など様々な立場の方に参集いただき、考えていきたいと思う。
子ども連れ歓迎、小学生以下の子どもの入場は無料。
 
 
11/24、疑問や不安がさらにすっきり!『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』刊行記念トークイベント!



~本紙参考記事~

三重の麻疹集団感染、発生場所はMC救世神教の中高生2世信者研修会と判明



1 コメント:

匿名 さんのコメント...

エイトてNHKの受信料払っているの?

記事を書くから
当然番組は視聴したんだろ。

公共放送を担うNHKは国民への責任を果たす義務がある。NHKには「国民が適切な医療を受ける機会を逸することに繋がりかねない内容の意見書」を提出する団体からの不当な圧力に屈することなく、正しい医療情報を伝える放送の継続を期待したい

とかっこいい事言っときながら
受信料は払ってませんでは

NHKに対して何も説得力がないよ。