統一協会信者ストーカー事件・第1回公判－被告側は無罪主張

統一協会（世界基督教統一神霊協会、統一協会）を脱会した元信者の女性に対してストーカー行為を行ったとして、現役の統一協会信者が逮捕された事件について、5月11日、宇佐美隆被告（42歳）の初公判が東京地裁で開かれました。被告人と弁護人は、「恋愛感情を充足させる目的ではなく、婚約破棄の意思を確認するためにＡ子さんの居場所を探すのが目的だった」として、容疑を否認。無罪を主張しました。


■合同結婚式の相手が脱会、婚約破棄、そしてGPSで追跡

　この事件は、宇佐美被告がＡ子さん（当時36歳）の父親の自動車にGPS機能付き携帯電話を貼りつけ、2010年6月から11月にかけてＡ子さんを待ち伏せしたとして、ストーカー規制法の罪に問われているものです。

検察の冒頭陳述によると、宇佐見容疑者は2007年に統一協会の合同結婚式でＡ子さんと婚約。しかしＡ子さんの両親がこれに反対し、Ａ子さんは宇佐美被告との連絡を絶ち、統一協会からの脱会と婚約破棄を伝える文書を統一協会宛に送付しましたが、宇佐美被告はＡ子さんの居場所を探し、支援者との間で揉み合いになって110番通報されたこともありました。その後、Ａ子さんは改めて宇佐美被告の実家に、脱会と婚約破棄を伝える手紙と婚約指輪を送りました。

　しかしその後、宇佐美被告とは別の統一協会信者が興信所に依頼してＡ子さん周辺の関係者の行動確認調査を行い、宇佐美被告はこれを受け取ります。そして2010年4月頃に、Ａ子さんの父親の自動車の底部にGPS機能付き携帯電話を貼りつけて、父親の立ち回り先からＡ子さんの居場所を推測。同年6月から11月にかけて、5回、待ち伏せを行ったとされています。

■傍聴の列に統一協会幹部の姿も

　開廷の約2時間前の午前9時過ぎ、法廷前に統一協会青年信者が2名現れました。一人は数年前まで街頭において、西東京教区杉並教会所轄ビデオセンター「WEST GARDEN／ウエストガーデン（現ＡＢＦ／阿佐ヶ谷文化フォーラム）」への偽装勧誘をしていた青年でした。次に現れたのは小柄な50～60代とおぼしき男性。彼は『世界日報』社会部長兼編集委員の堀本和博氏です。その後も、足立教会所属の青年信者が連れ立って現れたほか、婦人部の壮婦信者も数グループが列に並びました。

　こうして開廷1時間前には、すでに行列。日頃、裁判傍聴のために裁判所に通っているあるジャーナリストが、異様さにびっくりして列に加わったと話していたほどの光景でした。

　この行列のうち、本紙記者陣が把握している統一協会関係者は、松濤本部から日本統一教会12代会長・梶栗玄太郎の息子で世界平和青年連合（YFWP）会長と拉致監禁対策日本委員会実行委員長を務める梶栗正義氏と広報職員。また、西東京教区幹部で昨年12月に吉祥寺で行われた『純潔ラリー』において本紙記者の取材を執拗に妨害した鈴木幸雄氏（12月19日本紙＜統一協会（統一教会） Ｐｕｒｅ Ｌｏｖｅ デモ行進 ｉｎ 秋葉原 ＆ 吉祥寺 レポート＞）。これ以外に幹部信者とおぼしき男性が10人ほどいたほか、統一協会幹部と距離を置いて並ぶ信者も若干名いたように見えました。

　法廷の傍聴席は先着順で47席でしたが、行列を作った傍聴希望者は約60人。その3分の2近くが統一協会関係者のようでした。

■宇佐美被告は容疑を否認、無罪を主張

宇佐美被告は、縄付きの手錠姿で法廷に登場。裁判長の正面に立たされ、経歴などを確認されている最中、勝手に着席しようとして刑務官に注意されていました。審議が始まり、検察による起訴状読み上げの後、裁判長から「何か言い分があれば述べてください」と言われた宇佐美被告は、こう述べました。

「目的については、恋愛感情を充足するのが目的ではなく、（公訴事実の）１～４については、突然行方不明になったＡ子さんの婚約破棄の意思を確認するために、まずは居場所を探すのが目的でした。（同）５については、（待ち伏せ現場とされるサウナセンターの）出入口付近で、たまたまＡ子さんを見かけたので、受付付近で意思を確認しようと思いました。行為については、１～４については待ち伏せはしておりません。５についても、入口付近で待ち伏せはしておらず、受付付近でＡ子さんを待っていた事実はありますが、待ち伏せはしていません。なお５については、たまたま偶然そこでＡ子さんを見つけただけで、GPSは一切使用しておりません。２については、（待ち伏せ現場とされる）付近を通過した記憶はありますけども、そこで私が何か見たとかいうことはありませんでした。公訴事実に関して疑問を感じています。以上です」

　「Ａ子さんを待っていた事実はあるが待ち伏せではない」との主張は一見、奇妙に思えるかもしれません。おそらくこれは、Ａさんを待ってはいたが、それはストーカー規制法が定める「待ち伏せ」に該当するものではなかった、という意味でしょう。

　弁護人も同様で、被告人は恋愛感情を充足させる目的ではなく、Ａ子さんの婚約破棄の意思を確認するためにＡ子さんの居場所を探していただけだと述べました。そして公訴事実のうち「かつての婚約者」との部分を否認。「当時、被告人とＡ子の婚約関係は破棄または解消されていなかった。少なくとも被告人は当時、Ａ子の婚約関係は破棄または解消されたとは認識していなかった」と主張しました。

「被告人の各行為はいずれも（ストーカー規制法が定める）待ち伏せには該当しません。よって、被告人はＡ子に対して何らストーカー行為を行っておらず、無罪であります」（弁護人）

■「あなたの姿を一目見たかった」「Ａ子さんのことが好きだ」

宇佐美被告が使用した携帯電話とバッテリー

冒頭陳述の後、検察官が証拠について簡単な説明を行いました。これによると、被告人の自宅から押収されたノートやメモ類に、こんな文章が綴られているとのことです。

「（Ａ子さんは）眩しくて、まるで神様みたいな存在でした」

「あなたのことが、ただ恋しかった。あなたの姿を一目見たかった」

「Ａ子さんを救出したい。Ａ子さんのことが好きだ」

「Ａ子さんのことを愛するあまり、また耐え難い時間の狭間で見苦しい行動となってしまいました」

「Ａ子さんどこにいるの、神様教えてください」

　「恋愛感情を充足させるためではなかった」と主張する被告人は終始無表情でした。しかし赤裸々な恋愛感情が綴られた証拠の文章が読み上げられると、無表情のまま顔を紅潮させていたように見えました。

■なげやり？

　次回5月26日13時30分からの第2回公判では、被害者であるＡ子さんの証人尋問が行われます。主尋問と反対尋問それぞれ90分の予定です。

　今後の立証方針と日程を確認し、裁判長が

「それでは被告人、またそのときにこの法廷にきてください。わかりましたか？」

　と尋ねましたが、宇佐美被告は無言、無表情で空中を見つめています。裁判長が改めて、

「被告人、わかりましたか？」

　と続けると、ようやく宇佐美被告は、裁判長の方を見もせずに、

「はい」

　とだけ答えました。裁判長の言葉が自分に向けられていることに気づかなかった、というような反応を見せるでもなく、無表情のままでした。なんだか投げやりのような態度にも見えました。

■“妄想ブロガー”が有田芳生氏に宣戦布告

米本和広氏

開廷前、傍聴希望者の列で、統一協会問題を追求しているジャーナリストであり参議院議員の有田芳生氏と、今回のストカー事件について「拉致監禁問題」であり「不当逮捕」だと主張している自称ルポライターの米本和広氏が、隣合わせで並んでいました。米本氏は自身のブログにおいて、本紙主筆・藤倉についてろくな取材も調査もせずにデマを書き連ねていることから、藤倉に「情弱」「妄想ブロガー」呼ばわりされている人物です。

　米本氏は自身のブログで、今回の傍聴について＜退屈しなかったのは直・後ろに有田さんが並んだからだった。けっこう談笑できた。＞と、一時は友好的な態度を醸していました。しかし一方の有田氏は、twitterでこうつぶやいていました。

＜１１時から統一教会信者によるストーカー事件初公判。この信者は合同結婚式に６回参加いずれも破談。７回目の参加で出会った女性が脱会。恋々とストーカー。関係者の車にケータイGPSを設置してつきまとう。本来なら罰金刑で終わるのに、（統一）教会御用ジャーナリストや信者たちの激励で裁判を闘うことに。＞

　この「教会御用ジャーナリスト」が自分のことであると思い当たるフシでもあったのか、米本氏は有田氏のつぶやきを知るや、態度が一変。

【火の粉を払え 2011年05月12日】カルト新聞と主筆を評す（８）－幼児性と謀略性（続）コメント欄
（略）
　どちらにせよ、私の態度ははっきりしました。
　有田が私のことを誹謗すればするほど、アドレナリンは高まり、徹底的にやることに。

　ネタは有田先生の下半身問題を含め、もう山ほど・・・。

（もっとも立て込んでいて、先になるけど・・・）

　変なスイッチ入っちゃったみたいです。「有田先生の下半身」などと書いている辺り、本題のストーカー事件と関係ない“場外乱闘”宣言でしょうか。

【統一協会ストーカー事件取材班】