【長生村・百条委】幸福の科学職員、一転して証人喚問に応じ議員らを挑発

千葉県長生村の百条委員会による証人喚問を拒否していた幸福の科学の職員が5月21日、一転して百条委員会に出席しました。しかし訊問を終えた後になって、職員は「これだけのために呼ばれたのですか？」などと不規則発言を行って議員たちを挑発。一部の議員からのひんしゅくを買いました。

■「7月15日まで出席不能」から一転

長生村では、石井俊雄村長が栃木県那須町にある幸福の科学学園を視察した際に教団側から自動車と昼食の提供を受けたことが公職選挙法違反（寄附行為）にあたるのではないかとして、地方自治法百条に基づく特別調査委員会（通称・百条委員会）が開かれていました。百条委では、視察に同行した村長の支援者の男性と当時の幸福の科学「千葉正心館」館長だった教団職員の2人に対して証人喚問を行なうことを決めましたが、予定されていた5月11日の委員会には2人とも欠席。支援者男性の欠席理由は体調不良。教団職員の欠席理由は、その日に教団の「ヘルメス大祭」が開催される予定だったからです。さらに教団職員は、「7月15日に落慶予定の仙台正心館について、霊的地場の構築の準備指導にも忙殺されている」などとして、7月15日までは出席できないと百条委に回答していました。

百条委において正当な理由なく証言を拒否した場合は刑事罰の対象となり、宗教行事を理由とした証言拒否は認められていません。百条委は、幸福の科学の私設の定休日にあたる5月21日月曜日に証人喚問を要請することを決め、再度、職員に出席を要求しました。

その結果、7月15日までは出席できなかったはずの教団職員は、あっさりと5月21日に出頭。この日は、前回欠席した村長支援者も出席しました。百条委の席で、約40分以上にわたって、村議員で構成される委員からの質問に答えました。

議員「前回の5月12日にお呼びしたときには、立場上、7月15日までは出席できないとの文書での回答がありましたが、どういういきさつがあって今回出席できたのか」

職員「今回も非常に出るのが難しかった。秋田県の拠点で読経をあげる行事が入っておりました。それを無理を言って延期をしてもらって出てきました。7月15日と言ったのは、東日本震災でお亡くなりになった方々の鎮魂のために救済するために仙台正心館を建てることになりました。その宗教的な指導を私は任務として行なっていましたので、仙台正心館が建つまでは、動くこと自体、信者の方から見ればどういうことだという声があり、外部からもいろいろありました。しかし、幸福の科学大学が発展することは大事なことなので、きちっとお話をしようと、学園担当者からの依頼もありました。正直言いまして、今日来たことは異例中の異例だと思っていただければと思います」

百条委の証人喚問を「宗教的に多忙」という理由で拒否することの方が異例どころか違法なのですが、職員の方は「異例中の異例として来てやった」的なスタンスです。

■視察は公務と認識

この日の証人喚問の結果、村長による幸福の科学学園視察は、幸福の科学側から村長に働きかけた結果であることが確認されました。

村長はこの視察を公務だったと主張していますが、にもかかわらず報告書の提出はなく、視察には議員や村職員ではない村長の支援者まで同行しており、通常の公務とは形態が異なることが指摘されています。この視察を村長の公務だと認識していたかどうかについて尋ねられた教団職員は、こう答えました。

「当然、村長の立場で行政のトップとしてきていただくので、公務と捉えています。2015年に幸福の科学大学を（長生村に）開校予定であるので、そこに入る子供がどんな子供であるのか、宗教団体がやっている学校でありますので、ご関心もおありかと思いまして。書籍や雑誌等では伝わらない生徒たちの熱い思い活き活きと勉強している様子、スポーツで頑張っている様子を直に肌で感じていただいて、そういった子たちが幸福の科学大学に入って、長生村のみなさんとやっていくのだと。村全体でともに幸福の科学学園、幸福の科学が発展していけるような思いで、理解を深めていただくという思いでご視察のお話をさせて頂きました」

■食費は布施として受け取った

その後、同行者について誰がどのように紹介したのかといった質問が出たほか、問題となっている自動車、運転手、昼食の費用についても質問が出ました。

視察の際の昼食は、幸福の科学学園の食堂で提供されました。

「生徒がどのようなものを食べているのかということに関心があるかと思いまして、生徒が食べているものをご試食いただいて、そこで生徒との語らいの場を設けました。学校給食でございますので、私どもは決して金銭をいただくということは通常はございません。しかし村長さんが非常に律儀で、そうは言っても申し訳ないから通常はどのくらいかとおっしゃるので、500円くらいと。我々は宗教団体なので、お布施の習慣がございます。ですから、ではお布施として、500円くらいでしょうかと申し上げて、村長さんが支払った」

幸福の科学では通常、お布施に領収書を発行することはないが、領収書を発行して欲しいという要望があれば発行することもあるとのことです。

村長は食事代は支払ったと主張して領収書も証拠として提出していました。教団職員の証言もこれを裏付けるものとなりました。ただし、視察にあたって自動車や運転手の提供を受けたことは村長自身も認めています。

■村長が幸福の科学を“公式参拝”？

村長の主張と教団職員の証言を総合すると、食事代にかんする事実関係は、こういうことになります。

・村長は公務で幸福の科学学園を視察した
・昼食として給食を食べたが代金を授受する仕組みがなかった
・だから宗教団体へのお布施として村長は500円支払った
・領収書が発行された

であれば、少なくとも食事代についてだけは公職選挙法違反の疑いは晴れたことになります。

ところが、村長が公務で宗教施設を訪問してお布施をしたとなると、それはそれで政治的には「政教分離原則」にからむ別の問題が。

■教団職員が不規則発言で挑発

百条委を挑発し終えて、颯爽と引き上げる教団職員

この証人喚問は、学園視察にかんする村長の主張の整合性を確認するための事実関係についての質問で、全体的に粛々と進み、約40分で終了しました。ところが質問が出尽くし、委員長が「以上で終了いたします。ありがとうございました」と締めくくった後になって、教団職員が立ち上がり喋り始めました。

職員「私、これだけで呼ばれたんですか？」

委員長「そうです」

職員「本当ですか？　これだけですか？」

委員長「はい、そうです」

職員「これで、なんかわたくし、交通費で3万いくらいただいたんですが、よろしいんですか」

委員長「決まりですから」

職員「村の税金じゃないんですかね？」

村議会議長「委員長。質問と異なる発言ですので、発言は制限してください」

委員長「私の方で質問をさせて頂きましたので、それで終了させて頂きます」

職員「もう一点だけですね、聞くところによると、“幸福の科学が村長さんに利益供与して、取り行って境内地の非課税をお願いしている”みたいなことを言っているわけですけども……」

議員「それについて質問していいなら質問させてくださいよ！」

そもそもこの百条委は、村長の学園視察をめぐる費用負担の問題を調査する趣旨で設置されたものです。政治的には、その背景には課税問題がありますが、委員会の趣旨ではないため、委員会では学園視察問題について調べが行われてきました。当然、委員たちも委員会の趣旨ではない質問を自重してきたはずですが、なぜか証人喚問された教団職員自らが課税問題に言及しながら議員たちを挑発し始めた、というわけです。

委員長「ここで発言を止めさせていただきます」

終了後、委員の一人は本紙藤倉に、こうこぼしました。

「まあ、教団側に質問して引き出せるのは、あのくらいだろうね。それにしても、（教団職員の）最後のあの態度はひどかった」

いちどは正当な理由なく証人喚問を拒否し、一転して出席したかと思えば「異例中の異例として来てやった」的な態度で登場し、最後には委員長の制止を無視した不規則発言で委員を挑発。聞かれたことに応えるだけであれば、ちょっと上から目線の公務員みたいな人、といった印象で終わっていたところではないかと思うのですが、最後の不規則発言によって、完全に「部外者を見下しながら挑発する宗教団体の職員」になってしまいました。

百条委は6月6日、議会に報告書を提出しました。内容の詳細がわかりしだいリポートします。