韓国人夫殺害の統一教会日本人妻が控訴取下げ、懲役9年の実刑が確定

2010年の“祝福結婚”のチラシ

本紙既報記事『韓国人夫殺害の統一教会日本人妻に求刑を超える懲役9年の判決下る』の続報。

統一教会（世界基督教統一神霊協会／統一協会）の合同結婚式で渡韓し、韓国人夫を殺害した日本人妻が懲役9年の判決を不服とし、控訴したものの翌日に取り下げていたことが判った。

また、判決公判に於ける裁判長の発言の要旨も判明した。

また、日本統一教会がこの事件とその背景を報じた週刊文春の記事に対して抗議し謝罪を要求していたことも判った。
◆控訴申し立ての翌日に取り下げ

1月29日、求刑を2年上回る9年の実刑判決を受けた朴美雪（52）は、判決を不服とし翌々日31日に控訴の申し立てをした。

しかしながら、控訴の翌日2月1日には前日の控訴申し立てを取り下げている。申し立てと取り下げについて朴美雪本人か弁護人どちらがおこなったものであるかは判然としない。

どちらにせよ、一旦申し立てたものを翌日に取り下げるということは尋常ではない。

◆「懲役9年」の理由

1月29日の春川地裁での判決公判に於ける裁判長の発言について、傍聴した朴スンミン氏による翻訳を以下に引用する。

【統一教会日本人妻による韓国人夫殺害事件　判決　裁判長発言の翻訳 2013年1月29日】 （朴スンミン氏提供）

２０１３年１月２９日

２０１２高合２３８号、朴ミユキ被告人！
（裁判長）朴ミユキ被告人！私のいうことを聞き取れるでしょう？これまでの裁判では、通訳がいましたが、今日の宣告は、通訳が法廷にまだ（位置して）いなくて、私がゆっくりお話をいたします。
被告人は日本国籍だが、韓国語を比較的、ある程度わかるので（通訳なしに）このまま宣告をするようにします。被告に対する殺人の公訴事実についてみると、この裁判所が適法に採択して調査した証拠によると、被告に対する公訴事実を有罪と認めるに足りるでしょう。

「被告人！朴ミユキ被告人！証拠によれば、被告人の殺人罪を有罪と認めることができます。わかりますか？そのような有罪と認めた殺人罪について、被告の量刑理由を見てみます（説明します）。

この事件の犯行は慢性腎不全と脳出血の後遺症などで健康が良くなくて、抵抗できない状態にあった被害者（被告人の夫）が睡眠中に犯した点だけでなく、配偶者として保護し、扶養しなければならない義務のある夫を被告が殺害した点で、その内容に照らして罪質と犯情が非常に重いこと、

被告人朴ミユキは被害者を殺害した後、50分も経って、１１２（警察、犯罪申告など）ではなく１１９（救急車）に申告をし、病院に到着したあとにも、医師に被害者が数日間透析を受けられず、病状が悪化して死亡したと説明するなど、犯行後の態度も悪い点、普段被害者が被告に暴言や悪口をしたことを除けば、他に暴力行為や過酷行為など、家庭内暴力を行したと見るのは難しいこと、被告人としては、被告が置かれた状況を抜け出すために殺人という極端な選択の以外にも（他にも）、他の方法があったと思われる点、そして被害者の父親が被告人に厳しい処罰を望んでいることなどを考慮すると、被告人に対する重刑の宣告が避けられないと言えます。

ただし、被告人は、外国人であるにも統一教会を通じて出会った被害者と結婚して生活しながら、慢性腎不全を患っている被害者を扶養してきたこと、そして、被告人が適応障害と長期持続性のうつ反応に起因する心身微弱状態で、この事件の犯行を犯したと思われる点、そして、被告が刑事処罰を受けた前歴がない初犯である点などの有利な情状酌量をし、最高裁判所の量刑基準を適用して次のように型を決めて判決を宣告します。

被告人を懲役９年に処する。押収されたタオル１つを没収する。朴ミユキ被告人に懲役９年の実刑と没収の刑を宣告しています。「朴ミユキ被告人！宣告された刑についてお解かりですか？」懲役９年を宣告しました。この判決に不服があれば今日から７日以内一週間以内に、ソウル高等裁判所春川裁判所に控訴を提起することができ、控訴状（不服申し立て）はこの春川地方裁判所に教導所長（刑務所長）を介して提出すればいいです。

「朴ミユキ被告人！もし宣告結果について誤ってお聞きになったり、または、、理解できなかったり、聞き取れなかった控訴部分があったり、もっと説明が必要な部分がありますか？」
（朴ミユキが裁判長に質問をしたが、声が小さくてよく聞こえなかった。近くにいる検事が朴ミユキ氏のいうことを聞いて、裁判長に伝えた。朴ミユキが判決文の内容を書面で見てみたいと要求したようだった）
「（裁判長）この判決文は私達がお送りします。拘束（逮捕）被告であるので私達が今日宣告した内容を含めて、被告に対する判断部分をすべて詳細に記載して判決文をお送りいたしますので受けることができます。「その他にもっとお話したいことはありませんか？」　宣告を終わります。

◆被告は判決に不服も、韓国統一教は控訴しない方針

傍聴には、年配の女性信者が6名来ていただけで弁護士も来ていなかったそうだ。弁護人については韓国統一教が任命した私選弁護士ということが判っている。

判決を聞いた朴美雪被告は不服そうな様子を見せていたそうだが、韓国統一教は控訴させない方針であるとも伝えられていた。


◆日本統一教会は週刊文春に「事実無根、完全に間違い」と抗議

インターネット中継される“合同結婚式”

週刊文春は2012年11月29日に発売された12月6日号で、この事件とその背景を報じる記事『統一教会「合同結婚式」の悲劇　日本人妻はなぜ韓国人夫を殺したのか？』を3ページに渡り掲載した。

日本統一教会は発売翌日の30日、週刊文春編集部と記事を書いた石井謙一郎氏に対し『抗議及び謝罪・訂正要求』と題する抗議文を出していた。

抗議文の中で日本統一教会は、文春の記事で『韓国統一教会関係者によると「Ｍ子さんは何度も教会に相談し、窮状を訴えたが、聞き入れられなかった」』と書かれた箇所に噛み付き、朴美雪に対し現地関係者らが互助会や所属教会に働きかけ訪問介護・食事援助・生活費支援をおこなってきたと主張している。

事件を報じた媒体に謝罪を要求する統一教会だが、真に謝罪すべきなのは、日本人を韓国へ送り込み殺人者にしてしまった統一教会の側であろう。

◆何故か公式ＨＰに掲載されない抗議文

通常、日本統一教会ではメディアに対する抗議文を出した時は即時公式ＨＰに内容を掲載している。
しかしながら、この時の週刊文春に対する抗議文は、未だに公式ＨＰに掲載されていない。

そこからは、信者にこの「“春川事件”自体を知られたくない」との保身姿勢が見え隠れする。

日本人妻が起こした殺人事件について、日本統一教会が公式に“触れる”ことは、組織の根幹を成す“理念”自体の矛盾や問題を浮き彫りにしてしまう。

韓国に“送り込んだ”信者による事件を“隠蔽”する日本統一教会、朴美雪が「何度も相談し窮状を訴えたが聞き入れなかった」春川教会と同じ体質のようである。