幸福の科学“エル・カンターレ祭”で恒例の取材拒否

12月14日、幸福の科学による年末恒例の「エル・カンターレ祭」が幕張メッセで開催され、教祖・大川隆法総裁が「智慧の挑戦」として講演を行いました。昨年から完全予約制イベントとなり、本紙記者陣は教団から“出入禁止”を通告されました。そして今年、懲りずに入場を試みた本紙・藤倉善郎主筆は、予想を裏切らず入場拒否に。取材拒否をめぐる本紙と教団のやりとりも、もはや恒例行事となった感がありますが、本紙主筆に対して「入会すれば中に入れる」と勧誘してくれる一般信者もいるなど、心温まる交流も見られました。やや日刊カルト新聞社では年明けに「取材拒否」をテーマにしたトークイベントを開催する予定で、今回の入場拒否もネタにされる見通しです。

■本紙主筆、今年は正攻法で玉砕

「エル・カンターレ祭」は、幸福の科学が毎年12月に開催するイベントで、例年、外部会場を借りて全国の信者を集め1～2万人規模で開催されます。今年は幕張メッセで開催され、主催者発表によると「約18,000人」を動員したとのこと。この会場で大川総裁は「智慧の挑戦」と題して講演しました。

本紙・藤倉善郎主筆も例年、このありがたい講演会の拝聴を楽しみにしています。2011年には妻を引き連れて教団に無断で会場に潜入成功。2012年には、事前に教団から「やや日刊カルト新聞の方は全員、出入り禁止」と通告されたため、藤倉主筆は記者を全員クビにするという暴挙に出ました。その上で、「本紙記者ではない誰か」が中継会場である教団施設への潜入に成功し、お祭りをリポートしました。リポート掲載後、クビになった記者陣は全員、復帰しました。

しかし、「ぶっちゃけ、中継会場で映像を見るだけとか、せっかくのお祭りなのに盛り上がらない。たとえ入場できなくても、自分はやっぱり本会場を攻めたい」と語る本紙主筆。今年は、小細工なしで堂々と本会場の正面玄関に突入し、ソッコーで教団広報の職員に見つかって追い返されました。

「早稲田祭のときと違って、変装しなかったのが敗因だ。今後の課題としたい」（藤倉主筆）

■批判的記事を書いた宗教研究者は本会場に来ず

本紙主筆の入場を阻んだ教団職員に、話を聞いてみました。

主筆「メディア席はないんですか？」

職員「こちらが招待する方は入れます」

主筆「やっぱ、都合の悪い記事を書くメディアは入れてもらえないんですね～」

職員「その辺はこちらの判断です」

主筆「たとえば、こないだの中央公論で（教団に批判的な）記事を書いた塚田さんとかは、どうなんですか？」

職員「塚田さんは今回、衛星中継会場です。本会場には入っていません」

主筆「やっぱり、ああいう記事を書くと入れてあげないってことになると」

職員「それはご想像にお任せします」

國學院大學の宗教研究者・塚田穂高氏は、エル・カンターレ祭直前の12月10日に発売された『中央公論』（1月号）で、〈偽装・虚勢・無反省～『新新宗教』に蔓延する諸問題〉という記事を執筆。オウム真理教や統一教会などの宗教団体の問題に加えて、幸福の科学についても問題を指摘していました。

塚田氏は昨年のエル・カンターレ祭の際には本会場に入場していました。その塚田氏が今年は本会場にいない理由が、『中央公論』での記事のせいなのかどうかはわかりません。広報局職員は「ご想像にお任せします」とのことなので、本紙も読者の皆さんのご想像にお任せしようと思います。

■広報職員と慣れ合い

入場口で追い返された本紙主筆ですが、「はいそうですか」と引き上げるほど素直ではありません。せめて会場外で可能な取材をしていこうとウロウロしていると、先ほどとは別の教団職員がずっと後をつけてきます。

入場手続きを済ませた信者向けの再入場口に回ってみました。金属探知機を用いて入場者をチェックし、子供や女性のバッグまで開けさせています。

本紙執筆担当の教団職員に尋ねてみました。

主筆「ずいぶん厳しいチェックですね。以前はこんなじゃなかった」

職員「前回の東京フォーラムからこんな感じですよ」

信者たちは、全員とはいかないまでも、ことごとく金属探知機は反応して音が鳴っています。

主筆「信者の人たちが首から下げてるORペンダントが（探知機に）反応してるように見えるんですが」

職員「そうですか？ 反応するものとそうでないのがあるみたいですね。いまの人は（ペンダントをしているのに検知機の音が）鳴ってませんでしたから」

「正心宝」は安いものでも3万円とかします

主筆「ぼく、なんとなくあれをORペンダントって呼んでるんですが、ORなんですか？それともROなんですか？」

職員「正心宝といいます」

主筆「正式名称はそうですよね。そうじゃなくて、あのORのアルファベット、ORと読むのかROと読むのか」

職員「ROですね」

勉強になりました。

■「UFOは講演会後に来る」

職員「今日は、（やや日刊カルト新聞からは）ほかに誰が来てるんですか？」

主筆「それは言えないです。でもエイトさんももう顔が割れてるし、こっそり入るのは厳しいですよねえ」

職員「まあ、そうですね」

主筆「いったい、どうしたら中に入れてもらえるんでしょうか。やや日刊カルト新聞で幸福の科学を褒めちぎればいいんですか？　っていうか、以前は別に褒めちぎってもいないのに入れてくれましたよね」

職員「お立場がハッキリしたということで、お断りすることになったんでしょう。しばらくは無理じゃないですか」

主筆「残念です。ぜひ拝聴したかったのですが」

入場は拒否！ 缶コーヒーも拒否！

テキトーに缶コーヒーを飲んだりたばこを吸いながらだらだら取材する本紙主筆は、教団職員にも缶コーヒーを振る舞おうとしましたが断られました。そのとき、幕張メッセ内にアナウンスが。

「先ほど発生した地震ですが、ここ千葉市美浜区の震度は2。震源は千葉県東方沖。最大震度は4です。なお、この地震による津波の心配はありません」

主筆「地震があったのわかりました？」

職員「いやあ、気づきませんでした」

主筆「大丈夫ですか？ （エル・カンターレ祭に対する）悪魔の妨害とかじゃないですか？」

職員「さあ……（笑）」

主筆「そう言えば、大川総裁の講演会のときってUFOが出るっていいますけど、今日は出てないんですか」

職員「終了後に現れることが多いみたいですよ」

主筆「そうですあ。じゃあぼく、最後までいた方がいいですかね」

職員「いなくていいです」

■信者に励まされる

エル・カンターレ祭が開演すると、幕張メッセ内で大行列になっていたトイレからも人がいなくなりました。本紙主筆は満を持して用足しに。かなりの長便でしたが、その間も教団職員は、トイレの外でずっと本紙主筆のことを待っていてくれました。

コーヒーとマフィンと教団職員

本紙主筆がいる限り、教団職員はついて回らなければならないようです。それでは気の毒なので、本紙主筆はカフェコーナーでマフィンとコーヒーを購入し、席につきました。これで、教団職員もゆっくり座りながら本紙主筆を監視できます。

そうこうしているうちにエル・カンターレ祭終了。開演から1時間も経っていません。出口から、ROペンダントをした人々がぞろぞろ出てきました。

遠方からグループで来ている信者たちは、はぐれないように先頭が支部名などを書いたプラカードを掲げ、帰りのバスに向かいます。北海道、栃木、群馬、静岡など、遠方の地名が目につきます。東京、池袋、千葉など、近県のプラカードもありました。「幸福の科学学園」も生徒たちが教員らしき人に引率されながら団体で来ていました。

中には、支部名のプラカードではなく「主エル・カンターレ」とか「貧乏神追い出し祈願」といったのぼり、「大好きエル・カンターレ」といったうちわを掲げている信者もいます。

声をかけて写真を撮らせてもらいました。

信者「どちらから来たんですか？」

主筆「取材なんです」

信者「週刊誌か何か？」

主筆「やや日刊カルト新聞です」

信者「ああ！　聞いたことありますねえ」

主筆「講演はいかがでしたか？」

信者「もう感動ですよ。涙が出てきました。あなたもぜひ聞いたらよかったのに」

主筆「ぼくは入場させてもらえなかったんです」

信者「それは、いままでの記事があるからねえ」

別の信者「入会すれば入れますよ」

主筆「やっぱ入会しないと（エル・カンターレ祭会場に）入れてもらえないんですかねえ」

信者「なんちゃって入会じゃダメよ。本気で入会しないと」

信者「入会申込書持ってますよ、ほら……」

別の信者「いいわよ、ダメって言われてるんだから」

主筆「あ、いいです。いろいろ問題になるかもしれないので。入場させてもらえるように頑張ります」

信者「頑張って、いい記事書いてね！」

主筆「はい！　ありがとうございました！」

幸福の科学の信者さんは、ほんとうに優しいです。

■マンデラ氏の名前でカネ集め

終了後、エル・カンターレ祭の会場で入場者に配布されたチラシ類一式を入手しました。まとめて袋に入っていた書類は、プログラム（裏面がアンケート用紙）、「2013年エル・カンターレ祭」というタイトルの書籍案内のチラシ、〈三帰請願＆入会＆入党申込書〉〈植福の会申込書〉〈ご案内「HS・ネルソン・マンデラ基金」の設立〉〈エル・カンターレ祭　特別感謝奉納（お布施用の封筒）〉です。

書籍案内のチラシには、一般の書店で流通している霊言や法話の書籍のほか、教団施設やイベントで信者にのみ販売され一般の書店には流通しない「会内経典」も掲載されています。その中で、〈来るべき「宇宙時代」に向けて──「宇宙人リーディング」シリーズ〉の欄に並んでいる宇宙人ネタの信者向け書籍のラインナップが、なんだかエライことになっていました。タイトルを並べると、

『蟹座のドラゴン星人とベガを警備していたミスター・グリーン』
『オリオン座のウルフマンとベガ星の紙がつくったスーパービーイング』
『ぎょしゃ座のエイヴ星人とケンタウルス座α星のバナナコング』
『宇宙の中の地球人』
『宇宙人リーディング　新種を求めて』
『宇宙のグラディエーターと琴座のエガシー星人』

書籍の表紙を見ると、「バナナコング」は全身にバナナをまとった猿。「新種」とされる「象型宇宙人」と「オロチ型宇宙人」は、要はゾウとヘビ。もはや宇宙「人」ではありません。

〈ご案内「HS・ネルソン・マンデラ基金」の設立〉というチラシは、12月5日に死去した南アフリカのマンデラ元大統領の名前を使ったカネ集めの案内でした。幸福の科学では、マンデラ氏の死去から6時間後にマンデラ氏の霊を降臨させて収録したという「霊言」の緊急発刊を告知。その上で、「HS・ネルソン・マンデラ基金」なるものを設立し、差別、貧困、政治弾圧などに苦しむ人々への支援活動のためのお布施を集め始めたのです。

このチラシでは、「HS・ネルソン・マンデラ基金」への寄付を「植福奉納」と呼んでいます。これは幸福の科学における献金の意味です。差別や貧困に関する活動を行う第三者機関等への寄付ではなく、幸福の科学への布施です。

またチラシでは、同基金の活動について「世界の差別や貧困に対し、教育と知識の力そして信仰の力によって、ネルソン・マンデラ霊が目指した理想、そして主の理想を実現してまいりたいと思います」としています。マンデラ氏（実物）の理想ではなく、飽くまでも大川総裁が降臨させて喋らせたマンデラ氏（霊）の理想を実現するための基金です。要するに実物のマンデラ氏とは全く関係ないわけです。ならば、基金名には「HS・ネルソン・マンデラ“霊”基金」と明示すべきでしょう。

■神が弱気発言？

さて、こんな香ばしいチラシを配布して開催されたエル・カンターレ祭。大川総裁の講演の内容は、どんなものだったのでしょうか。本会場で入場を拒否された本紙主筆は後日、講演を録画映像で拝聴しました。今年も例年通り30分程度だった大川総裁の講演は、例年通り全体的に抽象的な内容でした。ときには堂々と語り、ときにはキレたように声を荒げる大川総裁は、部分的に聞くと弱気ともとれる発言もありました。

「現実の世界においては、我々の歩みはカタツムリのようで遅々として進みません。なかなかなかなか進みません。この幕張メッセの会場でも、私は1990年にも講演会をしております。もちろんそのときには衛星放送はありませんでした。この会場にいっぱいのお客さんがたが、春にも夏にも秋にも聞かれたはずであります。いまは3500カ所、日本国内と海外に衛星でつながっております。その頃に比べればはるかに教えは広がっていると言えましょう。しかし、まだまだ力が及んでいないのです。どうかそれをわかっていただきたいと思います」（大川総裁）

衛星中継という物質文明の技術を用いてもなお、地球至高神にして宇宙の根本仏にして再誕の仏陀であらせられるエル・カンターレ様の力は世界に届いていないのだそうです。

講演中の大川総裁の手の形、これは仏像の印相みたいなものか、それとも……

「この世においてハンディがあって人よりも厳しい立場に置かれ、苦しい戦いの中で自己を発揮し、他の人々に対して救いの手を差し伸べようとしている人こそ、この世の光であります。この世の愛であります。この世の許しであります。この難しい難しい地上世界において、そうした天使の片鱗を見せる事こそ、みなさんがこの世において一分たりとも智慧を手にし得たということだと思います」（大川総裁）

この話の時、大川総裁は人差指と親指で輪を作るゼスチャーをしていました。

「これ、お金をくださいってこと？」（ある信者）

教団がネルソン・マンデラ氏の名前を使って「反貧困・反差別」名目のカネ集めを始めた矢先ですから、教祖が「他の人々に対して救いの手を差し伸べよう」と言ってこんなゼスチャーをすれば、誤解する人がいても仕方ないかもしれません。

しかし大川総裁は、自称「再誕の仏陀」です。この手の形は、仏像などに見られる印相（宗教的な意味を込めた手の形）の可能性もあります。まさか、「再誕の仏陀」を名乗る人が「金よこせ」的な下品なゼスチャーをするはずがないと思いたいところです。

そんな大川総裁ですが、別の場面では、実に頼もしく素晴らしいお話もされていました。その辺りについては、幸福の科学機関紙『ザ・リバティweb』または、広告代をもらえば幸福の科学の偽装広告すらも掲載する産経新聞社の『ZAKZAK』をどうぞ。

なお、幸福の科学の公式サイトによると、講演の様子は12月22日以降、「岐阜放送」「テレビ和歌山」「びわこ放送」「奈良テレビ」「群馬テレビ」「三重テレビ放送」の各テレビ局、「和歌山放送」「ラジオ福島」「山梨放送」「西日本放送」「FM三角山(札幌)」「FMおたる(小樽)」「ラジオ日本」「高知放送」「FMJAGA(帯広)」の各ラジオ局で順次、放送される予定とのことです。

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