新潮社が幸福の科学学園に完全勝訴＝学園が控訴し高裁へ

被告のフリーライター

学校法人幸福の科学学園が『週刊新潮』の記事によって名誉を傷つけられたなどとして、発行元の新潮社と記事執筆者のフリーライターに対して1億円の損害賠償などを請求していた裁判で、昨年12月、新潮社側が完全勝訴。〈デタラメ授業〉〈オカルト授業〉〈独房懲罰〉等の表現も含めて、違法性なしとされました。学園側はこれを不服として控訴し、控訴審は2月24日から東京高裁で始まります。

『週刊新潮』は2012年11月22日号で、フリーライターの藤倉善郎氏が執筆した〈特別読物　文科省も県もお手上げ！　子供に嘘を刷り込むデタラメ授業！　「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉と題する記事を掲載。おおまかに3つの問題点を指摘していました。ひとつは、宗教の授業以外の社会科など通常の科目の授業ですら、「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳」などと、教祖・大川隆法総裁による「霊言」にもとづく内容を教師が生徒に教えているという、学習指導要領からの逸脱。もうひとつは、授業や寮生活その他の学校生活の中で学園側が生徒に幸福実現党を支持する政治教育を行っているという、教育基本法違反。3つめは、寮生活などのルールに違反した生徒を他の生徒から隔離し携帯電話も取り上げ、寮の部屋で一人で生活させながら教祖の説法DVDなどを見せ続けるという懲罰が行われているという、生徒の人権上の問題です。

学園祭でもオカルト研究発表（教団ビデオより）

これに対して幸福の科学学園は、1億円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴。ところが学園側は、記事の内容を虚偽だと主張する反面、記事に書かれた大筋の事実を認めており、授業中に教師が「霊言」を紹介している事実についても、否定するのではなく「それは授業の目的ではない」と主張するなど、何を虚偽だと主張しているのかよくわからない状態に。証人として出廷した同学園那須校の教頭に至っては、社会科の授業中だけでも週に最低1回のペースで「霊言」に言及している事実を証言。記事に書かれた主要な事実が正しいどころか、同学園の内情が記事で書かれていた以上にひどいことが判明してしまいました。

結局、昨年12月に東京地裁が言い渡した判決は、名誉毀損による違法行為は認められないとして、学園側が求めていた損害賠償と謝罪広告掲載の請求を全て棄却。事実認定の部分においても、記事の内容は真実もしくは（新潮社側が）真実と信じるに足る十分な理由があったとしました。

デタラメ授業！

記事では、生徒への懲罰について、部屋に鍵はかからないことなども明記した上で〈まるで刑務所の“独房懲罰”〉〈独房送り〉と表記し、霊言に言及する授業について〈デタラメ授業〉〈オカルト授業〉とする表現もありました。これらについても判決は、評論としての域を逸脱するものとまでは認められないとしています。

被告の藤倉善郎氏は、こう語ります。

「記事で指摘した問題点のうち、教育基本法違反である政治教育の問題については、学園側は裁判の中でほとんど主張を行いませんでした。同学園が違法な学園であることは、判決を待つまでもなく確定したようなものでした。その上で、裁判では、ほかの2点にかんする事実関係や表現方法、取材手法も全て問題なしと認定されました。こんな異常な学校を放置している栃木県も、この記事が出た後でありながら関西校を認可した滋賀県も、どうかしていると思います」

学校法人幸福の科学学園は、千葉県長生村に幸福の科学大学を開設する計画で、文部科学省に設置認可を申請していました。しかし昨年10月、「（カリキュラムに含まれている）霊言は科学的合理性が立証できていない」との理由で、下村博文・文部科学相が不認可を決定。さらに、同学校法人関係者が認可申請の手続きの過程で文科省職員を脅したり諮問委員会関係者に大量の霊言本などを送りつけるなどしたことから、最長5年間は認可しないとのペナルティまで課されています。

同学園と新潮社の裁判では、同学園の職員らが取材中の藤倉氏に対して、取材目的であることを知った上で警察に「痴漢かもしれない」などと通報したことや、わざわざその旨を藤倉氏に電話で伝え「これ以上取材しないように」と脅迫した事実も被告側が明かしています。大学認可をめぐる同学校法人の行為もあわせると、幸福の科学学園の授業内容や寮生活だけに問題があるのではなく、学校法人それ自体が反社会的な団体であると言わざるを得ません。

学園側は、東京地裁の判決を不服として控訴。2月24日午前10時から東京高裁424号法廷で、第1回の口頭弁論が開かれます。

控訴理由書の中で学園側は、新たに、記事の表現を「ヘイトスピーチ的要素を持っている」とする主張を追加しました。「宗教法人を母体として設立された幸福の科学学園に対して差別的意図を持って貶める記事」であるというのが、その理由です。これに対して、被告の藤倉氏は、こう語ります。

「私が書いた記事に差別的表現はありません。具体的な違法行為や人権侵害を指摘して宗教団体を批判することをヘイトスピーチと言ってしまったら、宗教がどんなに悪いことをしても批判してはならないということになってしまいます。在特会等によるヘイトスピーチが社会問題化して以降、法律による規制を求める人々もいます。しかし安易な表現規制で済ませようとすれば、幸福の科学のような訴訟カルトが批判的表現を萎縮させるためにそれを利用することは目に見えています」

特定の宗教へのヘイトスピーチを云々するのであれば、幸福の科学の“霊言”こそ、相当なヘイトスピーチです。何せ、イエス・キリストやムハンマドといった特定の宗教の開祖の名誉を傷つけるような内容の霊言を発表している上、幸福の科学大学の認可が危うくなると下村文科相や崇教真光教祖の霊を呼び出して「邪教の霊が幸福の科学大学の未来を潰しにかかっている！」（教団幹部）と語って信者の憎悪をかきたてたりしているわけですから。

自らへの批判をヘイトスピーチ呼ばわりする幸福の科学は、自分たちが何を言っているのかわかっているのでしょうか。

東京地裁の判決文

◇控訴審第1回期日
2月24日午前10時から
東京高裁424号法廷

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