幸福の科学学園、二審も週刊新潮に完全敗訴

勝訴を喜ぶフリーライター

学校法人幸福の科学学園が『週刊新潮』の記事によって名誉を傷つけられたとして新潮社やフリーライターらを訴えていた裁判の判決が3月26日、東京高等裁判所で言い渡されました。判決は、同学園が請求していた1億円の損害賠償と謝罪広告の掲載についていずれも棄却しました。この裁判では昨年12月、東京地裁が同様の判決を言い渡し、学園側が控訴していました。同件での学園の敗訴は、3カ月ぶり2度目。

問題とされた記事は、フリーライターの藤倉善郎氏が『週刊新潮』2012年11月22日号で執筆したもので、タイトルは〈特別読物　文科省も県もお手上げ！　子供に嘘を刷り込むデタラメ授業！　「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉。記事は、幸福の科学学園那須校が、(1)宗教の授業以外の社会科など通常の科目の授業ですら「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳」などと、教祖・大川隆法総裁による「霊言」にもとづく内容を教師が生徒に教えるなど教育指導要領から逸脱していること、(2)授業や寮生活その他の学校生活の中で学園側が生徒に幸福実現党を支持する政治教育を行っているという教育基本法違反、(3)寮生活などのルールに違反した生徒を他の生徒から隔離し携帯電話も取り上げ、寮の部屋で一人で生活させて教祖の説法DVDなどを見せ続ける“独房懲罰”（部屋に鍵はかからない）の横行という、おおまかに3つの問題を指摘していました。

これに対して学園側は、1億円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めて提訴しましたが、昨年12月、東京地裁は学園側の請求をすべて棄却。判決は、記事に書かれた事実関係について全て「少なくとも主要部分について、真実であり、少なくとも真実であると信じるについての相当な理由が認められる」と認定しました。また記事の目的について「原告学園の教育が精神的・知的に未熟で多感な時期にある生徒の健全な発達に悪影響を与えるとの強い懸念及び是正の必要性への認識に由良する事実の伝達や是非についての問題提起にあった」と認定した上で、記事や見出し内の〈デタラメ授業〉〈オカルト授業〉〈独房懲罰〉〈恐怖の学園〉などの表現についても、「評論の域を逸脱するものとまでは認められない」としました。

学園側はこれを不服として控訴しましたが、東京高裁は一審判決を支持。東京地裁の判決文に4カ所の補正を加えたのみで、学園側の請求を全て棄却しました。

評論の域を逸脱しない「恐怖の学園」

4カ所の補正はいずれも一審での事実認定や判断の内容を補足するもの。地裁判決の事実認定や評論の妥当性に関する判断を覆す部分は一切なく、学園側の完全敗訴となりました。

高裁判決が地裁判決を補正した部分では、幸福の科学学園側が藤倉氏の取材活動を妨害した事実を認定する文言が加えられました。また、記事が“独房懲罰”と表現した同学園内での生徒への隔離措置について、「期間中、食事および入浴時間も他の生徒と接触や連絡ができず、部屋で、勉強をしたり、幸福の科学に関するDVDを見たり著書を読んだりしなければならないのであって、全くの自由時間が予定されていないものでかなり厳しいもの」とする文言も加えられました。

評論の域を逸脱しない「独房懲罰」

判決後、記事の執筆者である被告の藤倉氏は、こう語りました。

「今回の高裁判決では、記事の正しさを地裁判決以上に具体的に認める文言まで加わりました。地裁判決を超えるぶっちぎりの完全勝訴です。一審についづいて二審でも、同学園が教育指導要領から逸脱し教育基本法に違反し生徒たちの人権をないがしろにしていることを指摘した記事の正しさが裁判で証明されたことで、同学園が違法な人権侵害組織であることが、よりいっそうはっきりしました。学園側が上告するかどうかは現時点では不明ですが、仮にそうなった場合、学園の反社会性が最高裁でも認められるように頑張りたい」

この記事が週刊新潮に掲載された後、滋賀県は幸福の科学学園関西校の開設を認可しました。記事は同学園那須校について書かれたものですが、藤倉氏は、関西校についても警鐘を鳴らします。

幸福の科学学園関西校（写真提供：滋賀県）

「関西校も那須校と同じ学校法人が運営しており、同学校法人は今回の裁判でも信者向けの教団映像や書籍の中でも、記事で指摘された問題について一切反省していません。関西校も那須校と同様に反社会的な実態にある可能性が高いという前提で、警戒すべきです。このような学校に私学助成を行う栃木県も滋賀県も、血税を投じて子供への人権侵害を支援していると言わざるを得ません。栃木県と滋賀県は、早急に同学園の実態を調査し、是正措置を講じるべきです。特に、このような学校の実態が報じられた後であるにもかかわらず関西校を認可した滋賀県の責任は重い」

同学校法人は、「幸福の科学大学」の設置を計画し、その過程で文部科学省職員を脅すなどしていたことを昨年、文部科学大臣が記者会見で明らかにしています。幸福の科学大学は文科大臣から不認可とされ、無認可の私塾「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ（HSU）」として来月、開校します。修了しても学歴にならないHSUに、同学園那須校の卒業生の8割が入塾予定であることを、学校法人の理事長自身が教団内で発表しており、この点にも、生徒たちの人権状況を危惧する声が挙がっています。

2015年3月26日・東京高裁判決文
2014年12月12日・東京地裁判決文

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