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2018年6月8日金曜日

デマに“偽装” 「オウム事件真相究明の会」の真相を究明する

左から想田和弘氏(映画監督)、宮台真司氏(社会学者、首都大学東京教授)、森達也氏(作家・映画監督・明治大学特任教授)、雨宮処凛氏(作家)
6月4日、参議院議員会館内で「オウム事件真相究明の会」が設立記者会見を行い、メディア関係者や一般参加者など約100人が詰めかけた。その内容がTwitter上で、滝本太郎弁護士やジャーナリスト・江川紹子氏といったオウム問題専門家から痛烈な批判を浴びている。また、井上嘉浩死刑囚の証言をもとに「オウム事件の真相はわかっていない」とする同会の主張がデマであることや、同会に松本死刑囚の三女・麗華氏(アーチャリー)が深く関わっている可能性が高いことが、本紙の調査によってわかった。


■前代未聞レベルの会見

「オウム事件真相究明の会」は、オウム真理教事件の真相が不明であるとして教祖・麻原彰晃こと松本智津夫・死刑囚の治療と裁判再開を求めることを実質的な目的とした会。6月4日時点では呼びかけ人・賛同人として計35名(8日現在38名)の著名人等が名を連ね、設立会見には実質的な代表者とみられる森達也氏(映画監督)のほか、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、香山リカ氏(精神科医、評論家)、宮台真司氏(社会学者、首都大学東京教授)など9人の著名人が出席し、報道陣や一般参加者約100人が集まった。

しかし各著名人は最初の挨拶として数分間発言しただけ。約1時間半にわたる会見の残り部分は、森氏や宮台氏が中心となって喋り続けた。登壇者の複数が居眠りをしており、中には腰を浮かせて見事な屁をぶっ放す登壇者も。加えて会の具体的な活動について「決まっていない」「考えてなかった」と言い放つ森氏が、報道陣の笑いものになる一幕もあった(会見の様子=YouTube)。

会見を取材した、カルト問題専門ニュースサイトの記者は、こう語る。

「カルト問題と無関係のものも含めて、これまで様々な会見を取材してきたが、こんなに中身がない無礼な会見は初めて。著名な登壇者を9人も並べておいて壇上で1時間半もほったらかしでは、居眠りしてしまうのも無理はない。高齢の登壇者もおり、老人虐待ではないか。またすでにウェブサイトに掲載されている内容以上のものはなく、今後の具体的な活動はおろかビジョンすらも語られない。著名人の名前を並べときゃ人は集まるだろくらいにしか考えていない、取材者たちに対しても無礼な会見だ。テレビクルーや新聞社の記者からも“ひでえ会見”“何も決まってないんじゃ記事にしようがない”といった声が聞かれた。無礼でも何でも中身があれば記事にもできるが、これではお手上げ。カルト集団の記者会見よりはるかに中身がない、歴史的会見だった」

会見の様子はごく少数のメディアが簡単に報じただけで、ネット上でもほとんど話題にならなかった。

■専門家から批判噴出

前出のカルト問題専門のネットメディアも記事化を見送った。しかし会見を取材した同紙の記者たちが概要をTwitterで報告したところ、批判的な反応がじわじわ増えていった。

特に、ジャーナリストの江川紹子氏や滝本太郎弁護士といった、初期からオウム問題に関わってきた専門家が早い段階から批判や懸念を表明している。















以上はtogetter〈「オウム事件真相究明の会」立ち上げ記者会見まとめ〉でまとめられている。

■会見でデマを流す森達也氏

同会が麻原裁判の再開を求める理由として挙げている主要なポイントは以下の通り。

(1) 「麻原を吊せ」という世論に押された裁判所が1審のみで裁判を終結させたために死刑判決が確定したのは不当である
(2) 一審判決では麻原がなぜサリン事件を指示したのかについての動機が解明されていない。判決の根拠とされた、「リムジン謀議」についての井上嘉浩死刑囚の証言は、後に井上死刑囚自身がNHKに当てた手紙で否定しており、判決の根拠は消えている
(3) 自分が処刑されるということすら理解していないかもしれない松本死刑囚を治療せず処刑するのは問題である

問題は(1)と(2)だ。(1)については、Twitter上での論争で批判されている通り。一審で裁判が終結したのは、松本死刑囚の弁護人が期限内に控訴趣意書を提出しなかったためだ。しかも裁判所が提出期限を延長しでもなお、弁護人は趣意書を提出しなかった。控訴審が行われなかった原因は弁護人にある。世論のせいでも裁判所のせいでもない。

(2)については、もっとひどい。森氏は会見でこう語っている。

「麻原は、なぜあのときに、オウム絶頂期です、ある意味。(略)その絶頂期になぜ彼はサリンを撒けという指示をしたのか、あるいはどのような指示をしたのか。したかどうかもはっきりわかっていません。裁判では、リムジン謀議、井上死刑囚が証言したこれを唯一の証拠だとする。これを証拠だとした。ところが井上自身が、そのリムジン謀議を自ら否定しています。後に。NHKが3年前かな、Nスペでオウム真理教特集やりましたけど、そこにディレクター宛に井上死刑囚が寄せたその手紙の中でも井上死刑囚は、実はリムジンの中では何も喋ってませんと何度も否定してるんです。ということは、麻原を地下鉄サリン事件について共同正犯にする根拠が崩れてるんです。動機がわかんないんです。動機を語れるのは麻原だけです」

森氏は2013年に『ダイヤモンド・オンライン』で同じことを書いている。

【ダイヤモンド・オンライン 2013年01月09日】地下鉄サリン事件、一通の手紙が裁判を覆すかもしれない
今年5月、オウムをテーマにしたNHKスペシャル『未解決事件 File.02』が放送された。(略)
その文中で井上は、自身が法廷で証言したリムジン謀議を、自身で完全に否定しているのだ。紹介された手書きの文章を、以下にそのまま引用する。
「実はリムジンでは、たとえサリンで攻めても強制捜査は避けられないという点で終わったのです」
(略)
短いセンテンスだが、麻原法廷だけではなく一連のオウム裁判を、根本からひっくり返すほどに重要な事実が明らかにされている。

NHKスペシャル『未解決事件 file.02』より
しかし、当時放送されたNHKスペシャル「未解決事件 file.02」を確認してみると、森氏の主張が完全なデマであることがわかる。番組内で読み上げられた井上死刑囚の手紙の文面は、森氏が引用している部分の後につづきがあった。

〈実はリムジンでは、たとえサリンで攻めても強制捜査は避けられないという点で終わったのです。しかし、何もしなければただ終わってしまうだけだ。ハルマゲドンを自ら起こし、麻原は予言を成就させようとしたのです〉

確かに「リムジン謀議でサリンを撒くよう指示した」のではないかのように読める。しかし、どう読んでも、リムジン謀議後の別の機会に「予言を成就させようとした」という動機によってサリン散布を指示したという内容だ。仮に、法廷証言ではなくこの手紙の方を信用するのだとしても、サリン散布が麻原の指示であることもその動機も、その手紙に書かれている。

会見で平然とデマを語る森氏
森氏は、番組で紹介された文面の前半部分だけを抜き出して、麻原が指示したかどうかわからない、動機もわからないと主張している。「オウム事件真相究明の会」として「真相が不明」と主張する最も重要な根拠でもあるが、これが明らかなデマ。

森氏の言葉を借りるなら、井上死刑囚の手紙は「麻原法廷ではなくオウム事件真相究明の会の主張を根本からひっくり返す」内容だった。

もっとも、井上死刑囚の手紙も、文言どおり真に受けるほど信用していいものか疑問だ。その点も含め、NHKスペシャル『未解決事件 file.02』について、『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)などの著書があるジャーナリストの青沼陽一郎氏が自身のブログで問題を指摘している。また青沼氏は同ブログで「麻原彰晃の思う壺にはまる人々」と題して「オウム事件真相究明の会」を批判する記事も掲載している。

■同会と麻原三女(アーチャリー)との関わり

松本死刑囚の刑を執行する前に治療と裁判を。「オウム事件真相究明の会」の主張は、三女アーチャリーの主張と酷似している。同会のウェブサイトに掲載されている文章のうち、オウム問題の当事者による文章は唯一、アーチャリーの文章だ(三女松本麗華氏から見た、父松本智津夫の現状)。

オウム事件をめぐる死刑の執行については、今年3月に様々な立場の当事者がそれぞれの主張を表明している。「地下鉄サリン事件被害者の会」が上川陽子法務大臣宛に、死刑囚との面会や執行への立ち会いを求める要望書を提出。子供が入信してしまった「オウム真理教家族の会」は、松本死刑囚を除く12人の死刑囚について執行回避を求める署名活動をかねてより行っており、上川法務大臣に3127筆(過去の提出分との累計は(1万8126筆)を提出した。日本脱カルト協会も家族の会と同趣旨の申し入れを行い、記者会見を開いている(参考記事)。そして松本麗華氏(アーチャリー)もまた、松本死刑囚の無罪の可能性にまで言及しながら、治療と裁判の再開を求めてメディアやSNSで積極的に発言を繰り返している。

「オウム事件真相究明の会」は、これらのうち麗華氏の主張のみを踏襲している。記者会見で麗華氏と会との関係を尋ねられ、森氏はこう答えた。

「もちろんね、三女(アーチャリー)は本も出されているし、何とか死刑を回避してほしいと。彼女のそのロジックとしては、まあほぼ同じですよね、ぼくたちと。でも同時に彼女は肉親ですから。当然、肉親としての情もあるでしょうから、そこは分けなきゃいけないということで、今回彼女は切り離しています」

同じ主張であることは認めつつ、自称「今回は切り離している」という関係だ。

会見前に登壇者(右)と話し込む松本麗華氏(左)
ところが会見場の最前列には当の麗華氏が座っており、会見が始まる前には呼びかけ人たちと話し込んでいた。会見終了後、同会は会の打ち合わせを行ったが、かなり時間が経ってから、呼びかけ人やスタッフらと「お疲れ様でした」と挨拶を交わしながら議員会館を後にする麗華氏の姿を本紙記者が目撃している。

「切り離している」というのは飽くまでも表向きで、実際には深く関わっているようだ。さらに5月31日に麗華氏を招いて講演会を開催した宇佐美典也氏は自身のブログに、こう書いている。

【アゴラ 2018年06月04日】松本麗華氏とやや日刊カルト新聞などについて
率直にいって私は松本麗華氏の人生を応援したいと思っている。ただ無制限に応援するというつもりはなく、これは本人にも伝えていることだが、「私が妥当だと思う範囲で」応援するつもりではある。実際6/4に立ち上げ予定の「オウム事件真相究明の会」への賛同人署名に関しては依頼があったがお断りしている。

麗華氏から「オウム事件真相究明の会」への協力を依頼されたかのようにも取れる説明だ。何より、宇佐美氏は「オウム事件真相究明の会」の賛同人になることを麗華氏の応援に当たる行為と認識している。

しかし「オウム事件真相究明の会」はウェブサイト等で麗華氏との関係を明示していない。会見場では登壇者以外を撮影することを禁止し、会と麗華氏の関係を示す写真や映像を撮影させないようにした(賛同人である堀潤氏だけは、会見中も麗華氏の隣にベッタリ張り付き麗華氏を撮影していた)。

本紙容疑者兼総裁・藤倉善郎氏のコメント。

「死刑執行が近いのではと言われオウム問題が注目を浴びる中、お調子者の著名人が雁首揃えてその話題に便乗してくるだけなら、まだ笑って済むかもしれない。しかしデマを流し、実際には深い関わりがあると思われる重要人物との関係を明確にしないのは、よく言えば不誠実、悪く言えば偽装。アレフの勧誘等に利用されかねないという問題点と合わせれば、社会的に有害な会とさえ言えるのではないか。呼びかけ人・賛同人になっている著名人たちは、この会に名前を連ねるリスクをもう少し考えたほうがいい」

6月8日現在、同会の呼びかけ人・賛同人は以下の通り(同会ウェブサイトより)。

■呼びかけ人
青木理(ジャーナリスト)
雨宮処凛(作家)
大谷昭宏(ジャーナリスト)
香山リカ(精神科医、評論家)
佐高信(評論家)
鈴木邦男(「一水会」元顧問)
想田和弘(映画監督)
田原総一朗(ジャーナリスト)
原田正治(犯罪被害者ご遺族)
藤井誠二(ノンフィクションライター)
二木啓孝(ジャーナリスト)
宮台真司(社会学者、首都大学東京教授)
森達也(作家・映画監督・明治大学特任教授)
山中幸男(救援連絡センター事務局長)

■賛同人
岩井俊二(映画監督)
大島新(映画監督)
緒方貴臣(映画監督)
海渡雄一(弁護士)
川口有美子(社会実業家)
小林節(憲法学者、弁護士)
小室等(ミュージシャン)
今野敏(作家)
坂上香(映画監督)
佐藤優(作家)
篠田博之(ジャーナリスト、月刊『創』編集長)
ジョー横溝(ライター、ラジオDJ)
高橋裕樹(弁護士)
ダースレイダー(ラッパー)
津田大介(ジャーナリスト)
田口真義(LJCC事務局、元裁判員)
中川亮(弁護士)
中村文則(作家)
平岡秀夫(弁護士・元法務大臣)
堀潤(ジャーナリスト、キャスター)
山口二郎(政治学者、法政大学法学部教授、北海道大学名誉教授)
吉岡忍(ノンフィクション作家)
綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)

取材:本紙オウム問題特別取材班
協力:インコの会

6 件のコメント:

  1. あれれ? アタシ、登壇者以外をバシバシ撮っちゃってた。しかも公開もしてる。(笑)  まあ、今更だからいいよね。(笑)

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  2. 三女さんは麻原の口から直接、ほんとうにこんなこと(犯罪)をやったのか真実を聴きたいと言っているけど。。やめたほうがいい 彼の口からは、自己保身のためには人をすぐ裏切ったりする。。聴いても悪い答えであることはかなりの高い確率です。幼いころ可愛がってもらって情があるんだろうけど。。聴くとかなりのショックを受けるのでは?

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  3. こりゃ、ゴミ記事やな笑

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  4. 賛同人に岩井俊二がいて、彼の映画のファンである私はショックを受けました…。
    賛同人のほとんどは裁判記録などは読まず、アーチャリーの本しか読んでないんじゃないの?って疑ってしまいます。

    しかしこの会、岩井俊二みたいな大物がいてもその説得力の無さから世論にはあまり影響力がなさそうですが、一部のオウム残党や短絡思考の馬鹿、あるいは死刑廃止論者にだけ支持されそうで、本当に一つも良い方向に進まなそうですね。

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  5. なんか色々話がごちゃごちゃしてますけど、
    裁判記録とか傍聴記で麻原の証言や言動をみれば、すっ呆けて公判をかき回しているだけなのは明白なのですが…(多分センター国語53%くらいの簡単な読解力で対応可能と思います)
    なので、江川さんや滝本先生は、そもそも裁判記録をみろと言っているのかと。

    自分の狭い見識や実体験を疑うことなく独善的に突き進む
    オウムになぜ高学歴エリートが?の一つの答えだと思います。
    (裁判記録すら見ないノンフィクション映画作家・ジャーナリストの東大文学部宗教学科卒の想田和弘監督が、法治国家の大きな問題とかドヤる。この人裁判記録を読めと指摘されても読むことすらしないってことは、裁判に関心すら持ったことないんだろうなと思ったら、案の定、ウィキの経歴を見る限りではそういう感じでした。)

    まず、最低限、オウム法廷 降幡 賢一(全15巻)、オウム裁判傍笑記、それから他の傍聴記や当事者の手記等を読んでみたらいいかと思います。
    自分の目でどのような裁判が行われ、麻原がどんな態度でそれに臨んでいたのか確かめるべき。
    ほんとバカらしい(端本悟調)

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  6. >2018年6月8日 23:45
    これのどこがゴミなんだ?
    ネットの真偽不明な情報の方よりは遥かに信用できるはずですが

    そんなことより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えましょう

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