幸福の科学学園が2校とも定員割れ 信者の“学園離れ”か

定員割れの幸福の科学学園那須校

幸福の科学学園那須校（栃木県）と同関西校（滋賀県）が、2018年度入学者から本格的な定員割れに陥っていることが本紙の調査でわかった。2019年度入学の1学年は2つの高校ともに定員の8割を割り込んでいる。これまで学園の受験情報を元にして定員割れを指摘する声はあったが、実際の在籍数から定員割れを確認したのは世界初。

同学園を運営する学校法人幸福の科学学園は現在、大学の設置認可を文科省に申請中だ。データを分析した専門家は「信者の学園離れが加速しており、大学が認可されても学生を確保できない可能性が高い」と見る。

また今回の調査では、学園2校の中学・高校ともに次の学年に進まず脱落する生徒が多いこともわかった。関西校では1学年から3学年の間に1割以上が脱落した世代もあった。


■2012年の悪魔攻撃とは別要因

今回の調査は、県が取りまとめている学校基本調査から幸福の科学学園の数値を抽出するとともに県などへの取材から数値を確認、補完した。

これによると、2019年度入学の1学年の定員充足率は、那須校中学が約92%、同高校が74%、関西校中学が80%、同高校が79%。関西校は、滋賀県発表の入試出願状況から、2020年度の出願倍率は中学83%、高校79%で、全員が合格しても入学者は前年並みの定員割れとなる見込みだ。

同学園那須校については、ジャーナリストの藤倉善郎氏を学園が訴えた裁判で同学園の教頭が、藤倉氏が週刊新潮で学園の実態を記事にした翌年の高校受験者数が前年の57%減ったと証言した。

「2011年度は200人を切るくらいで、それが記事が出た後（2012年度）におよそ半減しました。2013年度は回復傾向にありますが元の数字にまでは戻ってはいません」（証人尋問で明かされた幸福の科学学園の実態）

今回明らかになったデータによれば、那須校高校は2015年度以降、1学年は毎年定員の100人をほぼ満たす数で推移。2013年度開校の関西校も、高校は2018年度まで毎年ほぼ定員通りで、「藤倉ショック」の影響はすでにない。

本格的に定員割れしたのは、那須校高校が2018年度から。同中学は2019年度から。関西校高校は2019年度からで、同中学は開校以来、毎年1学年の生徒数が減少し2017年から本格的に定員割れした。

こうしたことから、本紙調査チーム・藤倉善郎主任は「現在の定員割れは2012年の藤倉ショックとは別の要因」と見る。

県発表の受験者数について見ると、関西校高校（定員100）の入試出願者は2018年度114人、2019年度84人、2020年度が79人。3年間で約30%まで落ち込んでいる。

「幸福の科学で悪魔呼ばわりされている藤倉氏は、2013年の那須校高校の受験者数を57%も叩き落とした。関西校高校の現状のダメージは、それには及ばないがかなり深刻。今度はいったいどんな悪魔から攻撃を受けているというのか」（藤倉主任）

■偏差値60台後半なのに中退者多数

学園では、学年が進むにつれて生徒数が減っている。留年、中退、他校への転出と思われる。個別の学年でみると、生徒数が減った分、1つ下の学年の生徒数が増えた形跡はなく、むしろ下の学年でも減っている。減った分は主に留年者ではなく、転出も含めた中退者と思われる。

多いケースでは、関西校高校（定員100）の2016年入学世代で1学年102人が3学年に上がる間に11人減少。那須高中学（定員60）でも同年、1学年64人が3学年までの間に6人減った。いずれも生徒数のほぼ1割にあたる。

「地球神エル・カンターレである大川隆法総裁がお作りになった、いわば“主がお作りになった学校”が幸福の科学学園。その学園の定員割れや中退者の多さは、信者が神を信じず、神もまた自分を信じる信者すら救わないケースがあるということ。完全に歯車が狂っている」（藤倉主任）

1学年の時点では定員を満たしている世代でも、中退者が多いため3学年時には定員を若干下回るケースが多い。定員割れ世代も、卒業時点ではさらに人数が減る可能性がある。

■幸福の科学大学は大丈夫か

認可されれば大学になる現「HSU」の校舎

定員割れが本格化した高校の2018年度入学世代は、幸福の科学大学が予定通り2021年に開設された場合の大学1期生にあたる。中学については、定員割れが本格化した2017年度入学世代が大学3期生だ。

「2019年度入試では、関西校中学では定員70人のところ74人が合格した。ところがその春の1年生は56人。18人もどこかへ消えてしまった。入試時点では定員を満たすだけの信者の子供がいたのに入学辞退者が多いということは、信仰を持っているのに学園入学を望まない “信者の学園離れ”。大学が認可されても学生を確保できない可能性が高い」

幸福の科学は2014年に大学が不認可となった際、大学用に建設した千葉県長生村の施設を「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」（HSU）として2015年にスタートさせた。無認可であるため入学しても学歴にならないが、当時、学園那須校高校の卒業生約8割が進学や就職を放棄してHSUに入った。

幸福の科学大学が開設された場合、2つの学園（定員計200）の卒業生の8割が進学すると仮定すると、大学1期生にあたる高校2018年度入学世代が那須校・関西校合計で149人。大学2期生にあたる同2019年度入学世代が122人となる。大学の定員は300人で、各年の学園卒業生だけでは定員の半数も満たすことができない。

「すでにHSUに通っている学生が大学に入り直すことになる可能性が高い。その場合、初年度だけで少なくとも190万円という学費・寮費を払って1年以上HSUに通ったのに、また大学1年生からやり直すことになり金銭負担が大きくなる。HSU生による入学し直し組が一通り入学した後は、それ以外の一般信者を大学に入学させなければ定員を補充できない」（藤倉主任）

学園に通わなかった若い2世や社会人信者などに対して、幸福の科学大学を推奨する圧力が強まることが懸念される

幸福の科学大学についてはこれまでも、教育内容や理念に関してオカルト教育や2世信者への悪影響などが指摘されてきた。今回判明した学園の定員割れは、これらとは別に、大学が認可された場合に継続的に運営できるのかという新たな問題点を浮き彫りにした。

「しかし現在の文科大臣は、大学の前回申請時に認可させる方向で教団側に助言するなどする立ち回りをしていた萩生田光一文科相。どれだけ問題があっても、認可されてしまう可能性があり予断を許さない」（藤倉主任）

幸福の科学大学の申請は、順調に行けば諮問機関である大学設置・学校法人審議会が今夏にも認可の可否を答申する。

参考記事：ハーバー・ビジネス・オンライン　「幸福の科学大学」は開学しても定員を維持できない？　系列中高が軒並み定員割れに突入中