しかし今、官僚組織と中央集権が問題になる中、各地の神社が神社本庁に反旗を翻しつつあります。あの日光東照宮や明治神宮も既に神社本庁を離脱しており、今回ご紹介する気多大社もその一つです。
【47News】最高裁、神社規則の変更認める 羽咋市の気多神社訴訟
「縁結びの神様」として知られる石川県羽咋市の気多神社(通称気多大社)の役員9人が、神社本庁から離脱するため変更した規則を認めなかった文部科学相の裁決を取り消すよう求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は20日、請求を退けた二審判決を破棄した。
この背景には神社本庁と気多大社の確執があります。実は2006年にこのような報道がありました。
【朝日新聞】気多大社 人事で混乱 宮司2人 法廷頼み要は、
気多大社には現在、宮司が2人いる。神社本庁が8月末、それまでの宮司を懲戒免職にして、新宮司を任命したが、免職された宮司側は反発。事務の引き継ぎを拒否したうえ、地位保全を求める仮処分を金沢地裁に申請。争いが法廷に持ち込まれる一方で、同じ神事を2人の宮司が別々に行う異常事態に陥っている。
- 気多大社が神社本庁を離脱しようと計画。県の認証を得る
- 神社本庁が文科省を動かして離脱を阻止。文科省様の御威光をもって県の認証を取り消し
- 気多大社、さらに反発。争いを法廷に持ち込む
- 最高裁の御威光によって、文科省の判断が「違法」認定。気多大社は神社本庁を離脱の公算
-------------------------
● なぜ、神社本庁と各地の神社は対立するのか?
しかし近年になってなぜ、神社本庁に反旗を翻す神社が増えているのでしょうか?
その背景には各地の神社の存亡の危機があります。
近年インターネット参拝などユニークなアイデアがマスコミにも取り上げられましたが、最近は参拝とまではいかずともお札をネットで買えるようになったりと、神社のITかも進みました。その他にもTVCMの普及や受験グッズの販売、鉄道会社との提携プロモーションなど、各神社が生き残りをかけ、必死の努力を続けています。
何故なら、宗教離れが進む現在において、新たな収入源の確保と多角化は各地の神社にとっての死活問題だからです。
一方で、神社本庁はこうした行為を「神の尊厳性を損なう」として快く思っていません。そもそも神社本庁にとってはホームページの作成ですら、好ましくはないのです。まぁ、神社本庁の言わんとすることも一理あるでしょう。かくいう筆者は長らくIT業界でビジネスを続けていますが、それでも「神社のIT化・ネット対応」など言葉にしてしまえば、まさにジョークのように思えてしまいます。
しかし、地方の各神社にとっては生きるための必死の努力なわけです。「言いたいことはわかるけど、現実にはそうとばかりもいっていられない」というのが、各地の神社の本音。宮司にとって神社の置かれた状況はまさに死活問題であり、神社本庁の理想論などは、氣多神社の言うところの「神社と神職を守ることができなくなった神社本庁」としか映らないのです。
実質的な国の後ろ盾の元、身分が保障されている神社本庁には危機意識というものはありません。その一方で各地の神社は信者の減少とそれに伴う寄付金の減少から財政難に陥っており、運営を続けていけない神社も出ています。旧来通り「神の尊厳性を大切にしよう」とする保守主義の神社本庁。対する、死活問題を背景にあらゆる経営を探る各地の神社。この構図は、
危機的な状況にある地方 VS 旧態依然とした中央の官僚組織
という国の政治の構図にも似ています。
そして、民意の洗礼を受ける政治の世界でさえ、この構図を変えられていないという現実から学べば、神社本庁がその態度や考え方を改めるという可能性は極めて低いことが分かるはずです。それに何しろ、神社本庁側が本庁側で「我々は正しいことをしている」と確信していて、その言い分にも確かに一理あるわけですから。
しかし今回の裁判の結果によって、他の神社にも追従の動きがおそらく現れるでしょう。そして長い年月を経て神社本庁はその権力を失い、縛りの緩い加盟団体へと変化していくように思われます。
それに、そもそも信仰がどうあるべきかという事を、実質的に国の後ろ盾を得ているような機関が決めるのも、おかしな話ですしね。
神社本庁は献金トラブル、脱会トラブルがよくありますよ
返信削除