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2010年9月14日火曜日

砂糖玉のように甘い“医療ジャーナリスト”たち


 朝日新聞による報道を機に、砂糖玉で病気が治ると称する擬似医療「ホメオパシー」が社会的に問題視されています。ところが、これだけ騒ぎになっているのに、ホメオパシーの問題性を世に問おうとする“医療ジャーナリスト(フリーランサー)”の姿が見えません。何やってるんでしょうか。

■ホメオパシーをヨイショしてきた人々

Sponichi Annex<「健康」総合医療入門>より
 Googleで「医療ジャーナリスト」「ホメオパシー」で検索すると、出てくるのはホメオパシーに対して擁護的な“医療ジャーナリスト”ばかりです。たとえば、日本統合医療学会会員の“医療ジャーナリスト”福原麻希氏は、『Sponichi Annex』で<「健康」総合医療入門>という連載を執筆しており、第11回第12回でホメオパシーを紹介。帯津三敬塾クリニック(東京・池袋)の板村論子院長へのインタビューを、<花粉症や片頭痛も改善する> <胃の痛み、うつも改善する>といった見出しで掲載しています。その中で、板村院長の言葉として<(ホメオパシーは)のある「有意差(意味のある差)のある効果」が証明されています>とし、レメディで病気がよくなったとする「症例」も紹介しています。

 また、長野修氏という“医療ジャーナリスト”は、『JB Press』において<自然治癒力を高める「ホメオパシー」 欧米からやって来た代替医療が日本で静かなブーム><何のためのホメオパシーか 西洋医学が見放した人を前に、それでもノーと言えるか>という記事を執筆。前者は、日本ホメオパシー医学会所属の小池弘人医師(小池統合医療クリニック院長)への取材をもとにしたものですが、後者は、記事執筆者である長野氏自身の文章でホメオパシーを持ちあげています。

JB Pressより
<そもそも伝承医療や代替医療には、いわゆる西洋医学のような明確な作用機序やエビデンスがないものが多い。けれども、だからといって、全く意味がないとは思わないのだ。>

<ホメオパシーは症状そのものをピンポイントで狙い撃ちして改善するというよりも、その人全体の気質や体質や性質に作用して、同種の原理によってアンバランスを是正し自然治癒力を高めるという考え方なので、全体的に改善されるのだ。>

 これにつなげる形で、小池医師によるホメオパシー万歳なコメントを紹介しています。そして長野氏は、最後にすごい一文で記事を締めくくっています。

<いずれにしても、ホメオパシーをどのように捉えるかは、個々の判断にお任せしたい。>

 全く批判しないまま7000文字以上のホメオパシー礼賛を垂れ流しておきながら、「個々の判断にお任せしたい」って。テレビの都市伝説芸人ですか?

 福原氏や長野氏ほどではありませんが、和田努氏という"医療ジャーナリスト”も、自身のサイト<医療ジャーナリスト和田努の「医療・健康・福祉」を考える>で、<〝混合診療〟の行方>としてホメオパシーに言及しています。

医療ジャーナリスト和田努の
「医療・健康・福祉」を考える
より
<ロンドンには王立ホメオパシー病院もあるくらいで、ホメオパシーは認知されている。
 わが国でも代替医療に大きな可能性を認めている医師も多いが、混合診療の禁止が足枷になっていることは否めない。
 医療の自由度を拡大するという意味において混合診療は真剣に考えていくべきだろう。医療費のパイを大きくする方法でもある。>


■実践者もいれば、業界人と馴れ合う者も

 一連のホメオパシー騒動の最中、産経新聞でホメオパシーの実践者として紹介された人物に、荻野哲也氏という人がいます。同氏のサイトを見ると、この人も“医療ジャーナリスト”を自称しています。

 この荻野氏、自らクラシカルホメオパシー京都という団体を主宰し、ホメオパシー講座を開催しています。彼を紙面で“医療ジャーナリスト”と呼ばなかった産経新聞は偉いと思います。

 “医療ジャーナリスト”を自称してはいないので蛇足なのですが、環境問題評論家を名乗る船瀬俊介氏という人がいます。著書『新・知ってはいけない!?』(徳間書店)がと学会の第18回(2009年)日本トンデモ本大賞を受賞したツワモノです。

 船瀬氏は、ホメオパシーが社会的に問題視され始めた後の今年8月、よりによって、乳児死亡にかかわった助産師を認定ホメオパスとしていた日本ホメオパシー医学協会の関連団体である「カレッジ・オブ・ホリステック・ホメオパシー」の東京校でセミナー講師を務めました。セミナー参加者のブログによると、壇上で船瀬氏は、日本ホメオパシー医学協会の由井寅子代表に向かって、「嫌われ者同士ですからね」とジョークを飛ばしたりしていたとのことです。

 船瀬氏は『買ってはいけない』の著者の一人でもあるのですが、砂糖玉(高いヤツ)は買ってもいいのでしょうか

■批判しているようでいて、実は……なんて人も

なーすの部屋より
 “医療ジャーナリスト”を名乗る那須優子氏は、自身のブログで、ホメオパシーを「カルト」「詐欺」といった言葉で罵っています。

<関連取材をしていて、びっくりしたのが、いつの間にか、日本助産師会が、カルト団体になっていたということだ。>

<そんなカルト信者が、のうのうと職能集団の中で活動の場を与えられている限り、世間から医師より低く見られ、社会的にも信用されなかったとしても当然である。>

 ところが、読み進めると、なんかちょっと違う。

<カルトに見えるホメオパシーには、日本の医療界のアンチテーゼが含まれていると思う。>

<で、少なくともホメオパシーを扱う人間は最低限、日本の国家資格を有する必要があるのではないか。国家資格もなく、他人に砂糖やらを売りつけるのは、れっきとたい詐欺であり、薬事法違反だろう。それが嫌だというのなら、海外で好き勝手やればいい。>

 なんのことはない。ホメオパシーを医師が独占すべきと主張する「日本ホメオパシー医学会」と同じ結論。なんで、砂糖玉を売るのに国家資格が必要なのか。

■ホメオパシー騒動から代替医療を守りたい感じの人

 8月19日に放送されたTBS「ニュース探求ラジオDig」の「ホメオパシー問題から代替医療を考える」では、“医療ジャーナリスト”の田辺功氏が「解説」として登場。ホメオパシーの効果が科学的に実証されていないことは認める一方で、山口市の助産師が乳児にホメオパシーの砂糖玉しか投与せず死なせたとして、乳児の母親から訴えられた件について、こう発言しました。

医療ジャーナリスト 田辺功より
「報道を見ると、ごっちゃになっていると思うんですね。(略)ホメオパシーをやる人たちは全てワクチンやビタミンK2シロップを拒否するというわけではないんですね。このケースで、全てのホメオパシーがそうであると捉えられるのはどうですかね」

 ホメオパシー自体については?とパーソナリティから尋ねられると。

「身近にそういうケースをたくさん見ていないので、何とも言い難いんですが、ただ、代替医療が全ておかしいかと言うとそうではないわけですよね。いまの医療で治せない病気というのは、たくさんあるわけですよ。それを患者の側は治りたいと。その治りたいというところに、いろんなアイデアや提言がある。それがひとつの治療法になっていく。中には思ったほどではない、よくない、というものもありますけど、中にはいまの病院で治らないものがかなり良くなったという患者さんも出てくるわけですね」

 そして、代替医療全般の意義や西洋医学や医薬品マーケット批判を展開していました。

 田辺氏はホメオパシーを擁護しているように聞こえます。しかし全体として彼が擁護しているのは、ホメオパシーよりむしろ代替医療全般です。ホメオパシーに対して慎重に言葉を選ぶ彼の発言には、ホメオパシー騒動が代替医療全般に波及するのを防ぎたいという意識を感じました。

■砂糖玉よりも甘く、水よりも薄く

 ホメオパシーを擁護する医療ジャーナリストの存在は問題ではありますが、それだけなら、医療ジャーナリストの世界全てがおかしいということにはなりません。どんな業界にもはねっ返りはいるでしょう。彼らが医療ジャーナリスト全体を象徴する存在とは思えません。

 医療ジャーナリスト全体に関わる問題と思えるのは、そのことよりむしろ、ホメオパシーの問題点を積極的にリポートする医療ジャーナリストが「いない」という点です。

 なぜそうなのか、想像するしかありません。たぶん田辺氏のように、批判が代替医療全般に及ぶことを警戒している(藤倉の印象に過ぎませんが)人もいるのでしょう。以前、知人の医療ジャーナリストと会話した際には、医療を騙る非科学的なものには興味がない、という医療ジャーナリストもけっこういそうな印象も受けました。論文を読んだり、厚労省やら製薬会社やらを回って発表モノを早くゲットするだけで精いっぱいの人もいるのかもしれません。ほかにも、“医療ジャーナリスト”の業界特有の事情が何かあるかもしれません。

週刊誌で「医学ジャーナリスト」と
間違えられた、本紙・藤倉主筆
 人それぞれ事情はあると思うので、個々の“医療ジャーナリスト”を批判するつもりはありません(ホメオパシーを称賛する人は別)。しかし個別の理由はどうあれ、“医療ジャーナリスト”を名乗る人々が全体として、ホメオパシーに関する情報や議論を発信できていないことは確かです。社会問題を前にして何も発信できないものを、“ジャーナリズム”だの“ジャーナリスト”だのと呼べるのでしょうか。

 これで“ジャーナリスト”を名乗れるなら、ずいぶん甘い業界だと思います。まるでホメオパシーの砂糖玉です。この業界には、“ジャーナリズム”の分子が一つも残っていないのでしょうか。いや、物質は残っていなくても記憶くらいはあるはずです。

 早く出てきてください。医療ジャーナリスト。

8 件のコメント:

  1. ホメオパスの現実。もう思いこみだけで突っ走ってる感じです。コメントでボコボコにされてますが。

    http://ameblo.jp/homoe/entry-10646349964.html

    結局当事者たちも、医療ジャーナリストと呼ばれる人たちも、自分が何を信頼しているか、何にのっとって行動すべきなのかが見えていないのでしょう。医療を行うもの、世の中に事実を伝えるもの。彼らには、自身の感情や願望に左右されない客観的な目線を持つことが必要です。それができない人の末路が、だいたいこういうことなのでしょうか。

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  2. > http://ameblo.jp/homoe/entry-10646349964.html

     いやあ、興味深いやりとりですねえ。ホメオパシー信者が「自分の体験」を語り、

    > これが実体験です。
    > ね?宗教ではないでしょう?

     だと。個人体験のみを根拠にした主張って、宗教の神秘体験を客観的事実だと主張するのと同じじゃねえかと思うんですが、これに対して別の人が、こんな皮肉。

    > いえいえ、それは私が世界中の病気の方へ
    > 念を送り続けており、その効果があなたに
    > 出たから直ったのです。
    > これが実体験です。
    > ね?宗教ではないでしょう?

    > 「治る」と病気で苦しんでいる人へ本気で言うのであれば、それなりの論理的な検証を
    > お願いします。ホメオパシーが効果をもたらした事を証明すれば良いですのですから。
    > その証明をせずに、私の念による病気治癒を否定しないでくださいね。というか一緒に
    > 念を送りましょう。念を送るには砂糖玉に私の気を送り込んだものを毎日服用してもら
    > う必要があります。一粒200円ですよーw

     傑作だなあ(笑)。

     思うんですが、ホメオパシーにとっての最大の不幸は、科学的根拠がないことでも効果がないことででもなく、パロディにしやすいという点かもしれない。たとえばコレ。何度見ても笑える。

    http://transact.seesaa.net/article/156496587.html

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  3. 医療に限りませんけど、いわゆるジャーナリストは特定の個人、団体、学会、企業、業界にまとわりつくのが仕事ですから、疑似科学のような周辺事項は、どうしても死角になってしまうのじゃないですか? 新聞でいえば文化欄じゃなく社会面で扱われるような「事件」だったり怪しい組織でしょうし。

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  4. 初めまして。いつも貴重な記事をありがとうございます。
    私は医療機関で勤務しておりますが、そもそも「医療ジャーナリスト」なる存在が、今あるのかということを考えております。先日私の職場に某新聞社の医療関係担当記者が取材に来ましたが、現実の医療界や、情勢の理解力に疑問を抱いたものですから。その方、少なくとも5年ほど前から担当になったと聞いているのですが。

    産科の強い病院なので、ホメオパシーには注視しています。幸い職員にはホメオパスはいないようですけれど(当たり前?)。

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  5. 匿名さん(2010年9月14日22:20)

    > 新聞でいえば文化欄じゃなく社会面で扱われるような
    > 「事件」だったり怪しい組織でしょうし。

     新聞の場合はページによって担当記者の所属部署が違うという一定の分業制がありますが、フリージャーナリストはそういう足かせはありません。またホメオパシーのことを詳しく知らなくても、“医療”を取材していてホメオパシーを聞いたこともないということはないでしょう。もともと医療業界に詳しく医療の知識があるジャーナリストなら、社会問題になった後でちょっと調べるだけで、ぼくなんかよりはるかに充実した記事を書けるはずです。

     ホメオパシーは医療でも科学でもないので、医療ジャーナリストの視界の中心にはなかったとしても当然なんですが、それは、いまなお医療ジャーナリストが沈黙していることの言い訳にはならないんじゃないかなと思います。事実、ホメオパシー同様「周辺事項」である代替医療を取材している医療ジャーナリストは何人もいるわけだし。

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  6. Mosel さん

     こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます。

     ホメオパシー報道にからんで感じる“医療ジャーナリズム”の危機(絶望?)は、新聞より、フリージャーナリストたちの問題の方が大きい気がします。

    > 先日私の職場に某新聞社の医療関係担当記者が取材に来ましたが、
    > 現実の医療界や、情勢の理解力に疑問を抱いたものですから。そ
    > の方、少なくとも5年ほど前から担当になったと聞いているので
    > すが。

     医療系の新聞なのか一般紙なのかによっても違うかもしれませんが、一般紙だともしかしたら、もともと専門でない記者がそういう部署や担当になることもあるのかもしれませんね。また、新聞や雑誌の社員記者は何に関しても、毎回、予備知識のない取材テーマに挑まなければならないという宿命もあります。自分の興味ではなく会社や上司の命令で取材に行ったりするわけだから。

     でも、ふだん大手メディアがあまり取り上げないテーマでも、フリージャーナリストは地道に追っているというケースはけっこうあります。何かの拍子に大手メディアで騒がれるようになると、そいうフリージャーナリストが大手メディアに出てきて詳しく解説したり、それまで蓄積してきた知識や情報や感覚をぼくらに伝えてくれたりします。海外の話題、紛争地のニュースなどがいい例ですね。

     新聞というのは、マイナーなテーマについてはもともと「基本的にダメ」です(それはしょうがない面もある)。でもフリーのジャーナリストがちゃんと取材しているジャンルなら、充分ではないかもしれないけどジャーナリズム自体が存在しないというほどにはならない。フリージャーナリストは最後の砦みたいなものなんです。

     ホメオパシーについては、こうしたフリージャーナリストがいまだに登場してこない。その点が、新聞ではなく“医療ジャーナリズム”そのものが致命的にダメなのではないかと思えてしまう部分ですね。

     今回は、朝日新聞が頑張っているから、やはり全体としてはジャーナリズムは機能しています。でも、専門知識に基づいて批判的な発言をする医療ジャーナリストがいないので、雑誌では批判的報道がそんなに盛り上がってないですよね。「ホメオパシーにハマってる芸能人」的な記事が中心で、それ以上のものがやりにくそう。

     しっかり情報を発信できる医療ジャーナリストがいれば、朝日新聞を追う形で、ほかの雑誌などでもこの問題への注意喚起を活発に行っていけるはずなんですが、それがない。だから朝日新聞が報道していても、医療ジャーナリストの不在はかなり大きなマイナス影響を持って入りと思います。

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  7. 一番上のブログ。
    リウマチに効く治療、といって明らかな架空企業のサイトを紹介しています。完璧に迷走してますね。

    ↓会社概要の住所参照。
    http://kenko777.net/so/randhing.php
    ↓住所参照, 株式会社K&Gと同一。
    http://www.brainsconnection.com/profile.html
    ↓同ビル1階物件情報。このビルは1フロアに1部屋のみ
    ⇒見事ブラック企業
    http://www.office-navi.jp/office/02009750/1/

    これってホメオパシーどうこうのはなしでおさまらないのでは??

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  8. ブログひどいですね。
    何回か間をおいてみましたが、ブラック指摘のコメントが削除されてました。

    無知、無恥というとてつもない悪が潜んでいます。

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