幸福の科学学園に毎時4マイクロシーベルト超の放射能汚染

　幸福の科学学園那須校の敷地内に、最大で毎時4マイクロシーベルトを超える放射能汚染があることがわかりました。これは7月下旬に本紙が行った調査で明らかになったもので、本紙ではより詳細な調査を幸福の科学に申し出ましたが、やんわり断られました。現時点では、幸福の科学学園は敷地内の汚染状況の調査や除染作業を行う予定はないとのことです。


■放射線除去祈願もしてたのに

　幸福の科学では、福島第一原子力発電所の事故直後の3月16日から、全国の教団施設で「放射能被害除去祈願」を開始。5月には幸福実現党が東京・渋谷で「原発はクリーンエネルギーだ」と叫ぶ2000人規模のデモを行うなど、放射能が怖いんだか怖くないんだかよくわからない行動をとってきました。

那須町自体、放射線量が高くなっている

　ところが栃木県が5月18日に行った調査で、幸福の科学学園那須校の敷地内で毎時0.97マイクロシーベルト（地上1メートルの数値）が計測されました。しかしその後、県が継続調査を行ったのは毎時1マイクロシーベルトを超えた教育機関だけで、わずか0.03マイクロシーベルトの差で、幸福の科学学園は県の追跡調査リストから外されてしまいました。

　しかし那須校にも放射性物質が降り注ぎ蓄積していることは、県の調査によって決定的になりました。

■最大で毎時4マイクロシーベルト超

　そこで本紙は7月下旬、主筆自ら幸福の科学学園那須校に赴き、自前の簡易測定器で測定してみました。アポなしなので学校の敷地にずかずか入っていくわけにもいかず、正門の辺りを軽く舐める感じで。計測は、測定する位置に測定器を1分間かざし、その後、3分間計測して、最大値・最小値・平均値を記録するという方法を取りました。以下の数値は、平均値です。

　結果、正門付近の地上1メートルでの線量は毎時0.51マイクロシーベルト前後でした。県の数値より低いですが、測定している場所が違う可能性があるので、県の調査以降に数値が下がったと言えるのかどうかは不明です。正門の周辺の地表面（地上0メートル）を測定してみると、門柱脇の道路の路肩で毎時1.05マイクロシーベルトでした。また門を入ってすぐの排水溝の蓋の上に積もった枯れ草では、毎時4.20マイクロシーベルトを計測しました。草が積もっていない蓋の上では、毎時1.30マイクロシーベルトでした。

■ただちに健康に影響ないかもしれないが……

　福島第一原子力発電所の事故後、文部科学省は、毎時3.8マイクロシーベルトを超える場所では児童生徒の屋外活動を制限するのが適当としました。毎時3.8マイクロシーベルトという数値は、1日16時間屋内(木造)で、8時間屋外ですごすことを想定した場合に、年間の被曝量が20ミリシーベルトになる、というものです。

　幸福の科学学園の毎時4.20マイクロシーベルトという数値は、この基準を上回ります。しかし校庭の平均的な空間線量ではなく局所的な地面の数値であるため、屋外活動を控えるべきと言える根拠にはなりません。この数値が計測された正門付近は、通常生徒たちはバスで通過してしまうことが多く、生徒が長時間過ごすような場所ではありません。ですから、今回の計測値をもって、「危険だ」と言えるわけではありません。

　しかし、敷地内にいわゆる「ホットスポット」があることは間違いありません。子どもたちが長時間過ごす場所に危険がないかどうか、敷地内をチェックした方がいいのではないかと思います。地上1メートルでたった1カ所測定するだけの県の調査なんかでは、まったく安心材料になりません。

■那須校での測定を申し出てみた

学園と同敷地内にある総本山も線量がやや高め

　そこで幸福の科学グループ広報局に、那須校で汚染状況のチェックや除染作業を行う予定があるのかどうか尋ねると同時に、なんなら本紙で測定してあげましょうか？と申し出てみました。しかし学園では汚染状況のチェックや除染作業を行う予定は現時点ではないとのことで、測定の申し出もやんわり遠慮されてしまいました。

「学園生徒のことを考えたお申し出に心より感謝いたします。以前より放射能線量につき測定して頂くのみならず、今回も、行政の発表するデータや、放射能に関する様々な有識者の意見を参考にしながら、対応をしています。学園の生徒や保護者、近隣にお住まいの信者の皆様にも、放射能に関して特に問題のないことを説明しています。　※岡山大学大学院(放射線健康科学)の山岡聖典教授が言うように、年間100ミリシーベルト以下では、大人も子供も健康への悪影響はないと述べており、私たちもそのように考えています」（幸福の科学グループ広報局の担当者）

■国の基準より緩い

　幸福の科学では、放射線の影響を受け易いとされる子どもを大人と同等に扱った上で「年間100ミリシーベルト」を基準に捉えているようです。

　文部科学省は、子どもの被曝限度量を年間20ミリシーベルトと定めました。また内閣府の食品安全委員会は、健康に影響が出る放射線量の目安を「生涯の累積線量100ミリシーベルト以上」とする案をまとめています。これは内部被曝と外部被曝を合わせた数値です。福島第一原発の事故が起こる以前は、原発の作業員ですら、労働安全衛生法で「5年間で100ミリシーベルト、かつ1年間で50ミリシーベルトを超えてはならない」とされていました。各基準を比べてみましょう。

文部科学省：年間20ミリシーベルト（子ども）
食品安全委員会：生涯100ミリシーベルト（年齢問わず）
労働安全衛生法：5年間100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト（成人）
幸福の科学：年間100ミリシーベルト（年齢問わず）


　幸福の科学が言う「年間100ミリシーベルト」という基準は、何かと「ゆるい」との批判を浴びている国の基準よりも、はるかにゆるい設定で、しかも従来の原発作業員の基準よりもゆるいものです。確かに、どのくらいの放射線を浴びると健康に影響が出るのか、厳密な境界線は専門家の間でも確定されていません。しかしさすがに、子どもと大人を一緒くたにして「年間100ミリシーベルト」とするのは、「ゆるい」上に大雑把すぎるのではないでしょうか。学園の子どもたちが心配です。