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2010年3月28日日曜日

英国議会委員会がホメオパシーを完全否定「プラセボ以上の効果なし」

 本紙民間療法推進、国家予算は4年間で1,800億円?で報じた通り、民主党と厚生労働省が民間療法を国家プロジェクトとして推進しようとしています。ここで検討対象のひとつに挙がっている民間療法に「ホメオパシー」があります。このホメオパシー、今年2月22日にイギリス議会の「科学と技術委員会」が、科学的根拠がないことを理由に、「国民健康保険による財政支出をやめべき」との報告書をまとめています。報告書の中で同委員会は、自国だけではなく他のヨーロッパ諸国に向けても、同様の提言を行っています。

■砂糖水で病気が治る?

 ホメオパシーは、「類似したものは類似したものを治す」という思想に基づいて、ある症状を引き起こしている人に対して、健康な人に投与した場合に同じ症状を引き起こすとされる物質を投与することで病気を治せるとする、民間療法です。ここで用いられるレメディ(ホメオパシー薬)は、類似症状の原因物質の希釈と震盪を繰り返し砂糖に染み込ませて作ります。つまり、薄めてシェイク、薄めてシェイク、をひたすら繰り返すわけです。希釈度合いには何パターンかありますが、レメディの多くは、理論上、溶液の中にその物質の分子が1つも存在しないレベルを超えて希釈されているとされています。つまり、ただの砂糖水です。

 病気の原因物質を飲むと聞くと危険なことにも思えますが、事実上、原因物質など入っていない砂糖水を飲むだけですから、まさに「毒にも薬にもならない」シロモノです。病気を治す効果もあるはずがありません。しかしそれは、レメディがただの砂糖水であるという情報を知っているからです。患者がその事実を知らされないまま、有効な薬であるかのように説明されて飲めば、いわゆる「プラセボ効果(ニセ薬効果)」は起こりえます。

 そんなホメオパシーについての英文ニュースを和訳しました。

【New Scientist 2010年02月23日】英国議会委員会、ホメオパシーへの財政支出停止を提言

 ホメオパシーにはプラセボ以上の効果はなく、もはやイギリスの国民健康保険の適用を受けるべきではないと、イギリス議会の委員会が結論付けた。

 「科学と技術委員会」は月曜日(2月22日)、ホメオパシーに関する報告書を発表。ドイツ、フランス、オーストリアなど、ホメオパシーが一般的になっているヨーロッパ諸国の政府に対しても、等しくホメオパシーへの財政支出を警戒すべきであると提言した。同委員の委員長を務める自由民主党のフィル・ウィリス議員は、「我々はこの声名を、イギリス国内に限らないものと考えている」と語った。

 報告書の作成にあたって、政府方針に沿って(ホメオパシーの)科学的根拠を精査した同委員会は、科学者とホメオパシー従事者から証拠を集め、ホメオパシーに関する大量の報告書と科学論文を調査。こうした療法は、プラセボ以上の効果をもたらすというエビデンスは見つからなかったと結論付けた。

■プラセボ詐欺

 同報告書は、「我々は、プラセボ効果は国民健康保健制度における恒常的な手段とすべきではないと判断した」としている。同時に、ホメオパシー病院に対して国民健康保健による財政支出をすべきではなく、国民健康保健指定の医師は患者に対してホメオパシーを用いるべきではない、としている。現在、イギリスの国民健康保健では、4つのホメオパシー病院に財政支出を行っている。

 同委員会さはさらに、プラセボ効果は患者がそれを信じるからこそ効果があるのであり、「患者の欺瞞度」が要件になるとして、ゆえにそれは「情報を得た上での患者の選択という原則に反する」としている。

 同委員会は、「医薬品および医療品規制庁(MHRA)」とMHRAが行っているホメオパーシー治療の許認可についても批判。このような許認可を行っていること自体が、ホメオパシーが一般の医薬と同じ効果効能をもつかのような、間違った印象を与えているとした。

 守るべき「大切なホメオパシーの伝統」があるとして、MHRAはホメオパシーに対する許認可の実施を正当化しているが、同委員会はこれをはねつけた。「魔術には伝統があるが、だったらMHRAは魔術も支持するということか?」とウィリス議員は問いかけている。

■砂糖薬

 ホメオパシー薬は成分を極度に希釈しているので、その希釈溶液に有効成分が少しでも残っている可能性は全くないに等しい。同委員会は、このような治療薬にどれほどの効果があるのかを示す、説得力のある説明を全く見出すことができなかった。

 同報告書は、ホメオパス製品のラベル表示についても、「有効成分を全く含まない砂糖錠剤」であることを公衆に知らせないとして非難している。

 同報告書は、股関節や結腸といった体の部位、イグアナやトンボといった動物、様々な種類の日光に当てたものなどのレメディについても注意を呼びかけている。万里の長城やストーンヘンジ(環状巨石群)といった考古学的な遺跡の部品から作られたレメディにいたっては、同報告書は、「類似したものは類似したものを治す」というホメオパシー側が主張するホメオパシーの原理を使っても理解しがたいと指摘する。

■不明な支出

 議員たちは、ホメオパシー療法に対して国民健康保健からどのくらい支出しているのかについて信頼できる記録はなさそうだとしている。マイク・オブライエン国民健康保険担当大臣は委員会に対して、国民健康保健ではホメオパシー薬について年間15万ポンドを支出しているとしており、英国に本部を置くホメオパシー協会は国民健康保険が年間400万ポンドを支出していると語っている。これはホメオパシー病院の運営費は含まれておらず、王立ロンドン・ホメオパシー病院の改装では2002年から2005年にかけて2000万ポンドが支出されている。

 長年のホメオパシー評論家でデボン州ペニンシュラ・メディカル・スクール(エクセター大学ペニンシュラ校医学部)のエドザード・エルンストは、ホメオパシー広く実践されているにもかかわらず批判的な精査を本格的に行っていないイギリス以外の各国は、この報告書に注目すべきだと語る。「(ホメオパシーに)科学的根拠はないし、それは国際的にも変わらない。なぜなら、科学的根拠は国による違いがないからだ」。

 皮肉なことに、英国皇太子はイギリスにおけるホメオパシー療法の熱烈な支持者である。エルンストは言う。「我々は科学的根拠と科学によって支配されているのか、それともチャールズ皇太子に支配されているのか」。

 ホメオパシーを含む補完医療を支援する「皇太子統合医療財団」は、ホメオパシーについて「科学的には疑わしい」と認めているにもかかわらず、ホメオパシーのレメディ使用を擁護している。

 同報告書の中で、同財団は今回の議会の報告書に応えて、「科学的医療、エビデンスに基づく医薬で効果的な治療ができない長期闘病患者にとっては、どのように効果が出るのかは問題ではない」と主張する。「患者にとって重要なのは、病気がよくなるかどうかであり、痛みや症状が緩和されるかどうかである」。

 同財団のマイケル・ディクソン医療担当理事は、こう付け加える。「科学は保健医療にとって不可欠なツールだが、思いやりと優しさ、そして尊厳をもって患者を扱うことも、同じく不可欠なツールだ。その点を委員会が考慮しているのかどうか疑問だ」。

■詐欺に国家予算を割く必要はない

 ホメオパシーの基本的な思想は「類似したものは類似したものを治す」というものです。万里の長城やストーンヘンジ(環状巨石群)と類似した病気って、いったい何なんでしょうか。英国の議員の委員会から全否定されたホメオパス(ホメオパシーによる治療を行う人)たちが、ヤケクソになって「頭の固い政治家にはモアイを使ったレメディでも飲ませてやれ!」とか言い出すのであれば、まだわかりますが。

 記事には「プラセボ詐欺」という言葉が出てきます。「皇太子統合医療財団」の理事が「どのように効果が出るのかは問題ではない」と発言しているのは、仮にただのプラセボであっても効果があるならよし、という考え方なのでしょう。

 しかしプラセボ効果は、患者を騙すからこそ生まれる効果です。医療関係者が患者を騙すようでは、インフォームド・コンセントもへったくれもありません。ただの詐欺です。国家が医療における詐欺行為を奨励し、そこに財政支出を行うなどということが、あっていいはずがありません。

 日本の厚生労働省のみなさん、民主党のみなさん、そして鳩山由紀夫首相。この報告書をしっかり読んでみてください。

6 件のコメント:

  1. レメディの作り方に関してですが、通常、砂糖玉にたらすのは最後のプロセスです。まず、原物質を水に溶かし、それを何でも希釈・振盪して、最後に砂糖玉に垂らします。

    溶媒としてアルコールを使う場合や、砂糖玉の代わりに乳糖を使う場合(あるいはその混合物)、そもそも液体に溶かさずに砂糖の粉末と混合する方法などいろいろな製造法・使用法があるらしく、必ずしもその方法が間違いとは言い切れないのですが。

    それから、レメディの元になる原物質は必ずしも原因物質とは限りません。病気と"似た"症状を起こす(とされる)物質が原物質とされます。原因物質を用いる場合は、アイソパシーという用語が使われることが多いようです。

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    1. >2010年3月29日 14:14
      お詳しいですね。
      法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください

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  2. ご指摘ありがとうございます。修正しておきました。
    砂糖の分子すら1つも含まれないレメディを「砂糖水」と呼んでしまっていました。

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  3. 通りすがり2010年7月28日 16:06

    英国議会委員会も詐欺団体のようなものなんですよ。

    製薬利権を守るために、
    安価で安全な治療法はことごとく潰している訳です。

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    1. 南無妙法蓮華経と唱えてください

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  4. 詐欺師はホメオパシー信者のことでしょうw

    プラセボ効果程度をきちんと認識していればカルト扱いされませんでしょうにw

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