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2011年2月23日水曜日

古賀市・竹下市長「一度失敗したら社会復帰できないのか」

古賀市・市長室ブログより
 福岡県古賀市の新市長・竹下司津男氏が、カルト宗教団体“摂理”の元幹部であった経歴を議会で追及され、泣き出して答弁不能に陥ったのは、本紙既報のとおり。このとき竹下市長は「一度失敗したら社会復帰できないのか」と口走ったとされています。確かに、カルト脱会者の社会復帰は、カルト問題の中でも非常に重要な問題です。しかし、いまの竹下市長が自分でその言葉を口にするのは、何か間違っているような……。


■“社会復帰”の努力は?

 本紙が<古賀市長、“摂理”在籍の事実を認める=議会で泣き出し答弁不能に>で報じた件について、古賀市のぬま健司市議会議員が自身のサイトで報告しています。これによると竹下市長は、泣き出して答弁不能になる直前、前野早月議員から摂理に関する質問をされていた最中に「一度失敗したら社会復帰できないのか」と語っていたとされています。

 ぬま議員のサイトには、住民へのアンケート調査結果も掲載されています。438回答中、竹下市長は「辞職すべき」とする住民が48.9%にのぼっています。

 本紙では、竹下市長の経歴をいち早く報じた<新市長はカルト教団“摂理”の元幹部だった!=福岡県・古賀市>の中で、「一度失敗したら、やり直しはきかないのでしょうか?」という摂理脱会者の意見を紹介しました。この脱会者は、竹下市の経歴詐称を批判した上で、「元信者だという理由で批判するのではなく、彼の不誠実さなど実際の問題を批判すべき」というニュアンスで、この意見を語っていました。その脱会者は、改めてこう語ります。

「“一度失敗したら社会復帰できないのか?”と私が申し上げたのは、もちろん社会復帰のための努力をしている人に限られます」

 摂理問題に取り組んできた渡辺博弁護士も、こう語ります。

「“一度失敗したら社会復帰できない”はずがありません。それは当然のことです。しかし竹下さんは、摂理の指導者的立場で、正体を隠した伝道活動を指揮し、教祖の性的暴力で深く傷付いた女性に追い打ちをかけるような脅迫を行い、教祖の真似をして女性に対し猥褻行為を行い、多くの若者の人生を狂わせました。“一度失敗”というレベルの話ではありません」

 また渡辺弁護士は、こうも指摘します。

「摂理の経歴も含めて、市長としてふさわしいという人物評価を得るように、竹下さんは努力してきたのでしょうか。そこが疑問です。今でも竹下さんは、摂理の教義どおり、真理のためには嘘をつくことも許されると考えているようにさえ見える。そうでなければ、“青年会社社長”の嘘の経歴を選挙公報に記載したり、今回の報道にあたって、すぐに嘘とわかる弁解などしません。竹下さんの今回の行動を見ると、摂理から離れたとはいえ、摂理の間違いや自らの行動の誤りを、きちんと認識しているとは到底思えません」

■アメリカで牛丼屋?

 竹下市長は、2009年に約2カ月間、福岡県内で健康器具販売や白アリ駆除・リフォームなどの訪問販売を手がける男性の下で見習い兼運転手のようなことをしていました。その男性は本紙・藤倉の取材に対して、当時の竹下市長はほかにまともに仕事をしていた気配はなかったと語っています。問題とされている選挙時発表の経歴では、竹下市長は会社経営者だったはずなのに。現在、竹下市長が刑事告発されている理由は、摂理の件ではなく、会社経営者という経歴が虚偽である疑いがあるからです。

「当時、竹下氏から“手元に資金が200万円あり、アメリカで肉をタダで仕入れさせてくれる人間がいる。アメリカで牛丼屋をやりたい。アドバイスをくれないか”と言われた。もちろん私は“そんなのやめた方がいい”と言ったんです。商売を始めるのに200万円では話にならないし、肉をタダでくれるなんて怪しすぎる。200万円という資金も自分のものではなく、東京で一緒にNPOをやっている知人の父が資産家で、その人が出してくれたと言っていた。そのNPOが摂理がらみなのかどうかはわかりません。なにせ、団体名も活動内容も教えてくれなかったから。竹下氏は悪人ではないが、他人に言われたことに簡単にに左右されるタイプ、という印象だった」(男性)

 男性は竹下市長と知り合った経緯について、「ゴルフ場でプレーをしていたときに声をかけられた」(男性)といいます。仕事もせずゴルフに興じ、他人のカネを資金にして、怪しげな商売に翻弄されかかっていた竹下市長。竹下市長は2002年に摂理を脱会したと議会で答弁していますが、男性の証言が事実だとすると、2009年の時点ですら、まともな社会生活を送っていなかったことになります。

 言うまでもなく、市長という職は市民のために市民が選ぶものであり、竹下氏個人の社会復帰の道具ではありません。常識的に考えれば、社会復帰を果たしてから立候補するのが筋でしょう。ましてや過去の「失敗」を真摯に説明することもできないまま「一度失敗したら社会復帰できないのか」と語るのは筋違いもいいところです。

■脱会者の思い

 ただし、前出の脱会者は、別の側面から脱会者の心情を説明してくれました。

「“筋が違う”という意見には賛成ですが、全ての脱会者がそう考えているわけではありません。脱会者はいま、現在の竹下氏バッシングや報道に脅えています。竹下氏はヒラ信者だったのに教祖にいきなり指名され指導者を押しつけられた人間。摂理では、指導者であっても誰にも伝道しない人もいれば、ヒラで20人伝道する人もいる。ヒラ信者であった脱会者にとって、竹下氏と自分たちとは非常に紙一重だと感じる。多くの脱会者が、過去を周囲に暴かれると偏見の目で見られることは明白。脱会者である私としては、これ以上、この件がメディアなどに取り上げられ竹下氏が追い詰められていくような前例を残すことは、脱会者や摂理にもあまりいい影響は及ぼさないと考えています」

 この“紙一重”という点は、ほかのカルト団体の脱会者にも共通します。自身が浄土真宗親鸞会の脱会者である本紙・瓜生記者は<【オピニオン】古賀市の竹下市長よ、自らの過去と向き合い、脱会者の灯火となれ!>の中で、こう書いています。

「脱会者は加害者でもあるかもしれないが被害者でもあります。誰もそこに明確な線を引くことなどできないのだから、加害者としてのみ糾弾されるべきではないし、必要以上に被害者として振舞うべきでもないのです」

■摂理を取り巻く“偏見”

 本紙<新市長はカルト教団“摂理”の元幹部だった!=福岡県・古賀市>で、別の脱会者は本紙にこう語っています。

「摂理は、2006年の騒動の時にマスコミからセックス教団と言われ、まるで性的な内容の教義によって一般信者までセックス三昧だったかのような印象で世間から扱われた。私も当時マスコミの取材を受けた際に、私自身がほかの信者とセックスをしていたかどうかということをやたらと聞かれた。でも実際は、教祖が女性信者を食い物にしていただけで、一般信者は男女交際も戒律で戒められていた」

 教祖が宗教を利用して多数の信者女性に対して性的被害をもたらしていた以上、摂理を「セックス教団」と呼ぶのは間違いではないでしょう。しかし摂理は、一般の信者たちが奔放あるいは無軌道に性行為を行うフリーセックス教団ではありません。一般信者までもが「セックス教団」のイメージで世間から見られてしまうことも、脱会者たちが自分の過去をカミングアウトしにくい要因になっているようです。

 この点は、脱会者の心情の問題ではなく、社会の側の過ちです。竹下市長については、週刊朝日が「わいせつ被害」の存在も報じているので、やはり一般の脱会者とは事情が違います。しかし、竹下氏以外の脱会者までもが不安を感じてしまうのは、社会の側に“摂理”という団体への誤解や偏見があるからでしょう。偏見に基づいた竹下市長バッシングは避けたいところです。

■“脱会者”であっても“市長”の責任に変わりなし

 しかし今回の問題は、カルト脱会者の問題である前にまず、市長という公職をめぐる問題です。脱会者には同情しますが、竹下氏が経歴を隠して市長に当選し、なおかつその後も具体的な説明を行っていない点は、批判されても仕方がありません。
 前出の渡辺弁護士は、こう語ります。

「竹下さんには、摂理時代の自らの活動をきちんと検証していただき、額に汗をして働くという社会人としての経験を積んでいただき、嘘を突き通すことでは世の中を渡っていけないということを肝に銘じ、その上で、再度公職につきたいのであれば立候補していただきたいと思います」

 週刊朝日で竹下氏問題の記事を執筆したジャーナリストの時任兼作氏も、同意見。

「公職に就こうとする、また就いた以上、有権者に対して自身の経歴や信条などは偽らず説明する義務があると思います。有権者はそれをもって信任・不信任の判断材料にするわけですから。また、『摂理』の被害者・信者に対しては、少なくとも道義的な観点からして説明責任があるように思います」(時任氏)

 竹下氏が真摯な態度で事実を説明する市長として当然の責務ですが、誠実な対応で事態を収拾することは、竹下バッシングにおびえる一般の脱会者を安心させることにもつながります。現在、竹下市長が刑事告発されているのは摂理問題ではなく会社社長という経歴の詐称疑惑だけです。少なくとも“摂理問題”に関しては、竹下氏の胸ひとつで収拾が図れる余地が大きいのではないでしょうか。

 地元では現在、4月に行われる福岡県議会選挙や古賀市議会選挙を控え、竹下市長本人だけではなく、市長選挙で竹下氏を推した県議・市議の責任を問う声も出ています。

8 件のコメント:

  1. この方は、云々言う前にやるべきことが未だにわからないよう
    ですね。
    公務に立つ人間として非難されるべきです。

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  2. 確かに、竹下氏は摂理云々以前に「経歴虚偽」がありますよね。

    そして、摂理との関係についてもまだまだ説明が不十分だと思います。

    自民党が竹下氏を支援した経緯も気になるところです。

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  3. 「一度失敗したら、“その失敗を真摯に受け止め反省しないと、”社会復帰できない」という事なのでしょうね。

    自分で言い訳してるうちはまだまだです。

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  4. 気になるのは自分が危害を与えた被害者の発言(の記事)を否定していることや正業につくことなく怪しげなNPOとの付き合いや胡散臭い牛肉事業の話をしていることですね。
    周りの人間は彼の人柄を肯定的に捉えているようですが辻褄が合いません。
    しかし、彼が現役摂理信者と考えるとすべて納得できます。
    もしかすると彼は摂理の別働隊なのかも知れません。

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  5. 多くの市民は、特に面識がない候補者の中から、自己が収集できる数少ない情報を基に投票する相手を選んでいる。選挙の際に公開する情報に虚偽があったなら(まあ、あったのですが)、やはり選挙は無効とするべきであろうと捉えるところではある。

    脱会者は、経歴を偽証しないと就職もできないものなのかな?彼の場合は少し特殊な(本人に問題があった)気がしないでもないが、少し考えてしまう事件ではあります。

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  6. オホーツク海岸の論客2011年2月24日 20:46

    本人が選挙前からしっかり説明できないようでは……竹下氏を市長に推した皆様、責任重大ですね。

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  7. >脱会者は、経歴を偽証しないと就職もできないものなのかな?

    雇う人間がカルトについて理解しているかにもよるでしょうね。

    カルト問題を良く知らない人は、カルトというだけで、末端信者も幹部信者も一括りにしてしまいがちです。

    少なくとも、末端信者に関しては、加害者というよりも被害者の要素が強いという事、「騙される奴が馬鹿」なのではなく、誰もが心の隙間に付け込まれる可能性があるという事。

    そういう事をみんなが認識して、社会全体としてカルト被害者(脱会者)を支えていく姿勢が出来ないと、カルト問題は解決できないんではないかと思います。

    まあ、この人に関しては、加害者としての認識が足りないような気がしますが。

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  8. >カルト問題を良く知らない人は、カルトというだけで、末端信者も幹部信者も一括りにしてしまいがちです。

    >少なくとも、末端信者に関しては、加害者というよりも被害者の要素が強いという事、「騙される奴が馬鹿」なのではなく、誰もが心の隙間に付け込まれる可能性があるという事。

    >そういう事をみんなが認識して、社会全体としてカルト被害者(脱会者)を支えていく姿勢が出来ないと、カルト問題は解決できないんではないかと思います。


    たまにはいい事言うじゃないか。

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