公立小学校女性教諭は統一協会ダミー施設の勧誘員だった！

◆横浜のビデオセンター

　神奈川県横浜市、関内駅近くのテナントビルにある統一協会（統一教会）のビデオセンターLIFE CREATE FORUM "VOiCE"（横浜市中区不老町2-9-2DPM不老町ﾋﾞﾙ4F）。この施設は統一協会信者が自主運営する任意団体とされているが、実際には統一協会青年部信者を生産する拠点となっている。

◆小学校教諭による勧誘

　このVOiCEへ市民を誘い込む勧誘員の中に、横浜市内の公立小学校女性教諭がいたことが判った。この２０代のＴ教諭は今年２月、横浜市内に於いて「社会人サークルのアンケート」を名目に若い女性Ｙさんに声を掛けた。


　勧誘の流れも判明している。

　「意識調査アンケート」はいつの間にか「姓名判断の勉強中なので」と姓名判断に移行、そして「ちょうど転換期です」「転換期は9～10年で1回。20代の転換期が一番いい」「いい数字をお持ちですね」「転換期は自分が転換期と知ったときから3日で行動しなければならない」「自分なりの方法だとそのまま引っ張られてしまって、上の流れに乗ることができない」などと『転換期トーク』が始まった。そこへ別の男性勧誘員が偶然を装って現れる。「Ｔさん！こんなところでどうしたんですか！？」「あ、Ｓさん！今この方が転換期なんですよ。めったにいないんですよ」「同じサークルの人なんです。一緒に話を聞いていてもいいですか？」、本紙既報の『協助』のパターンだ。そして鑑定イベントの案内を示し「3500円でマンツーマンでみてもらえるんです」と誘う。更に「ここまで話すつもりはなかったんですけど、こんなものに興味はありますか？」と『自分らしさの講義、食事、鑑定』と書かれたイベントの案内チラシを出し「私もこのイベントに参加したことがあるんです。すごくよかったです」「これからちょうどイベントがあるんです」「すごく大事な時だから、先生にアドバイスをもらったほうがいい」と、ＹさんをVOiCEへ誘い込んでいく。

　この時、Ｙさんには統一教会の勧誘であることは一切告げられていなかった。

　Ｔ勧誘員は、『意識調査アンケート』の過程で「職場では自分らしさは出せていますか？」などと訊いた際、「私も1年目から担任を持って～」と市内の公立小学校教諭であることを明かし、そのことでＹさんはＴ勧誘員のことを信用したそうだ。

　その日の別れ際、Ｔ勧誘員は「口は災いの元だから、自分が転換期であることは言わないように」とＹさんに口止めをした。別れた後も手紙や電話で連絡が絶えることはなく、一週間後、VOiCEへ連れていかれたＹさんは、Ｔ勧誘員が個人的に姓名判断を習っているという先生（「忙しい方」ともったいつける）に3500円で鑑定を受け、この先生（役）からもVOiCEでの受講を決断するよう迫られた。「家に帰って考えたい」とその場での返答を避けるＹさんに対し、先生（役）は「家に帰っても一緒だから、状況は変わらないから」「10分あげるから考えましょうか」「気持ちに素直になればいい」「一歩踏み出すべきだ」「今が踏み出す時なんです。宿泊セミナーに参加するかは通ってから考えればいい」「Ｔちゃん（勧誘者）に色々聞いてみればいい」等々2時間近くも説得されたＹさんは、悪質商法で使われるこれらの台詞に不信感を抱き、やがてVOiCEの正体に気付くこととなる。
VOiCEで使われたアンケート用紙、先生役が書いていた『家系図』メモ、姓名判断鑑定証

◆勧誘員が勤務していた小学校校長は？

　３年間、市内の小学校に勤務したＴ元教諭、ここ２年間は２年生のクラスを担任していた。
家庭訪問の際に母親を勧誘したり、小学校低学年の子供に歪んたカルトの教義・思想などを教え込んでいないか心配されるところだった。今年３月、藤倉主筆と共にＴ教諭が担任を務める横浜市内の小学校を訪ねた。卒業式の前日ということもあり、校長先生も多忙だったためその日は来校の理由と取材意図だけを告げて校舎を辞した。
　その後、Ｔ教諭はこの小学校を辞職したことが判っていた。
　諸事情により期間が空いたが、今回改めて当該小学校の校長先生に電話で話を伺った。
　前回の訪問時にはＴ教諭の個人名は告げていなかったが、Ｔ教諭が統一協会の勧誘員であったことを話すと校長先生は驚きつつも毅然とした答えを返してくれた。

「前回、お話を伺った時はびっくりしました。誰なのだろう、そんな人本当にいるのかなと気にしていたところでしたが、今名前を聞いてそういうことだったのかと思いました。学校での顔しか見えていないので信じきっているところがありました。日頃教職員の児童への指導、保護者や地域との関わりについては指導・観察しているところですが、その中ではそのような事実は把握できていませんでした。地域の方々や保護者からもそのような情報が上がってきていないので、どうなんだろうと思っていました。但し、それが事実だとしたら厳正に対処していきたいと考えています。被害やお困りのことがあれば警察や消費生活センターなどに、教師だからと遠慮するなく申し出ていただきたい。見えない部分もたくさんあるので、そうすればこちらもきちっと対応できると思います。子供たちや保護者に対してではないにしても教師という肩書きを使ってそういうことがあるというのは許し難いことです。『教員』というのは社会的に信頼のある職業です。『会社員です』というのと『教員です』というのとではちょっと違います、より重い社会的責任がある職業ですので」

　組織の長として、誠実さと責任感が見られる回答だった。


◆元教諭を直撃

　Ｔ元教諭に訊いた。

　統一協会の信者であるかについては意外にも「はい、そうです」とあっさり認めた。統一教会と名乗らずに声を掛けたかということには「ないです」「VOiCEということをお話しする時には話したかもしれないですが統一教会とは関係ない所ですから」と答え、統一協会については「私自身の信仰としてやっているだけで」とのことだった。
　教職については、「本当に自分がやりたかったことをできる場所ではなかったので、（教諭に）なった時からずっと悩んでいました」と退職して別の仕事をしていると話した。ボランティア活動も学生のころからずっとしているとのことで、現在はLove & Green Yokohamaという団体のボランティア活動に参加しているようだ。このLove & Green Yokohama〔ラブグリ〕は統一協会横浜教会信者の団体である。
　VOiCEに現在通っているかということには「通ってないです」、VOiCEに人を紹介することを現在も続けているのかという質問には「いえ、特にしてないです」と否定しながらも「そういう場所で学びたいという方がいれば」と付け加えた。VOiCEの職員・メンバーであるかについては「いえいえ、スタッフということはないです」と否定。
　アンケートからVOiCEを社会人サークルとして受講生に紹介していたかということについては「意識調査のアンケートはさせていただいてました」「私自身勉強していたので、もしかしたらVOiCEの話をして『私こんなところに通ってるんですけど』と話をしたかもしれませんが、別にそれを繋げるとかそういうわけではなかったと思います」と話し、自分がVOiCEの話をして通うようになった人がいるかについては、「思い当たらない」とのことだった。
　小学校教諭であると告げたかについては「教員だとは言いましたよ」と認めたが、それによって相手が信用したこと、VOiCEが統一協会に関連する施設であると知らされていなかったことについて、教師としての社会的責任を問うたが「それはあなたの意見ですか？それとも被害者の方の意見ですか？」と明確な答えは得られなかった。
　VOiCEに紹介する場合、統一協会の信徒がやっている施設で教材に統一原理等統一協会の教義に関係するものがあると前もって告げていたかという質問には「VOiCEという場所が『面白そうですね』という話になった時ですか？統一原理を元にして勉強してますということは伝えてますよ。自分は学ぶ時期だと思ったので」と答えた。
　統一教会という名前は出していないのか？と問うと「統一教会とは関係ないですからね、ホントに」と再度無関係を強調して名前を告げていないことを認めた。実際にやっているのは全員統一協会の信徒ですよね、中の職員も、と言うと「そうみたいですね」と暗に認めたが、今声を掛けている相手を統一協会の信者にしたいと思って声を掛けていたわけですよねと問うと「そうではないですね。私が意識調査をやらせていただいているのはホントにいろんな方の価値観を知りたいということで・・・」との返答だった。そこからVOiCEに繋げることはあるわけですよね？と訊くと「繋げるというのはどういうことですか？」と逆に質問された。紹介するということですよね？と言い換えると「いいものがあったら紹介したくないですか？」と一般論で返してきた。
　今も意識調査アンケートをやっているのかと訊くと「時間がある時だけですけどね」との返答だった。どこでアンケート調査をやっているかについては明確に答えてはくれなかったが、直接会って話をしたいという記者の申し出に対し「じゃ直接会いましょうよ、是非」と快く了解してくれた。
　意識調査アンケートからVOiCEに一般市民を誘導していたという形ですよねと再度確認すると「そういう風に捉えられるんですか・・・」と心外な様子だった。

◆ビデオセンターの新所長は？

　VOiCEの新責任者Ｍ事務所長にも訊いた。

　VOiCEは相変わらず正体隠しの勧誘をしているのかと訊くと「そんなことないよ」と否定。Ｔ元教諭のことは「知っているよ」と認めた。Ｔ元教諭とVOiCEの関係については「個人のことなのであまりとやかく言うことじゃないよね」と前置きし、Ｔ元教諭はVOiCEの職員であるか訊くと「職員じゃない」と即答、勧誘員？と聞くと「勧誘員？正会員ではあるね」と答えた。（Ｍ事務所長曰く「会員制」というVOiCE、記者のことは「出入り禁止かな」と言いつつ「違った意味で特別会員かな」とも）
　Ｔ元教諭がアンケート調査から社会人サークルの受講生としてVOiCEを紹介していたことについて、「何を活動して何を紹介したか、その事実関係がよく分からないから」としながら、「彼女が紹介することを拒むことはないよね」と答えた。Ｍ事務所長は続けて「連れてくる場合に、統一原理を用いた任意団体であるということ、その提唱者が文鮮明氏であるということと、その人が統一教会・世界基督教統一神霊協会というものを創設した人だということが呈示されたものをきちっと見せて連れてきてくださいということは、言ってるけどね」と話し、VOiCEとして適切な指導をしていると弁明した。但しＭ事務所長は「ただ、それを本人がどのタイミングで言ってきたか、そこまではこっちも分からないから」とも話した。
　VOiCE受講生が信者になるかどうかについては「なる人もいるし、ならない人もいるよね」「信者になるのは最終的に本人の意思」と話した。「VOiCEという場所で統一教会の信者として、いわゆる入会申込書を書かせるようなことはしないよ」「VOiCE自身がやることじゃないから」「そういう目的の場所ではないからやらないよ」としながら、VOiCE受講生が統一教会の信仰を持ちたいと言った時には統一教会横浜教会へ連れていくルートがあることは認めた。
　統一協会との関係については、「VOiCEは任意団体として運営しているので、宗教活動をする場所じゃないということは分けている。教会施設じゃないので祈祷や礼拝をしていない」と答えた。給料はどこから出てるのか訊くと「何で言わなきゃいけないの」としながらも「VOiCEの活動に対して教会から（給料が）出ているということはないよ」と答えたＭ事務所長、「VOiCEはボランティアだから俺」と付け加えた。

◆勧誘員は説明責任を果たしたのか？

　Ｔ元教諭はＹさんに「自分は宗教に勧誘されていない」と言っていたそうだ。先生役信者もＹさんに「Ｔさんもここを卒業した」と話していた。周到に統一協会との関係を糊塗している形跡がみえる。

　Ｙさんは、VOiCEで鑑定を受ける直前、Ｔ勧誘員から「これから行くところについてどんなところかぜひ伝えたいことがある」と言われ、“文なんとかという人が発案した『統一原理』を元にしている”などと聞かされたという。Ｙさんは「統一原理とか文なんとかって人を全然知らなかったので、ただの学者か何かかな？」「鑑定だけなのに何故サークルの説明してるんだろう？」ぐらいにしか思わなかったそうだ。Ｔ勧誘員も「私も全然知らなかったんですけど～」と軽く語っていたとのことだ。こんなことではVOiCEを統一教会関連施設と伝えたことにはならず、説明責任やインフォームドコンセントが為されたとはとても云えないだろう。
　そもそも最初に声を掛けた段階で、勧誘目的等を対象者に告げておらず、勧誘手法自体に問題があると云える。
　組織的な信者生産ラインの一端がここに垣間見える。

　記者は一昨年11月、被害者と共にVOiCEへ乗り込んでいる。その時の顛末を記者の個人サイト【CULT&FRAUD】のブログ記事関内の新ビデオセンターであわや監禁！？（ビデオセンターVOiCE乗り込みPart.１）と涙の意味（ビデオセンターVOiCE乗り込みPart.２）に記載している。
　VOiCE前身のY.L.A（横浜ライフ・アカデミー）とニューセンチュリーYOKOHAMAにも、記者は乗り込んでいるが、なんらその実体が変わっていないことが判る。