統一教会が週刊ポスト発行の小学館を訴えた裁判で東京地裁は「SEX地獄」の見出しにのみ損害賠償を認める

本紙2012年9月8日既報記事【統一協会弁護士、小学館を訴え​た裁判で「何故、負の面ばかり強調するのか！」と失笑発言】の続報。

週刊ポスト2010年6月4日号の記事で名誉を棄損されたとして統一教会（統一協会／世界基督教統一神霊協会）が発行元の小学館に対し、1.100万円の損害賠償（1.000万円の損害賠償と100万円の弁護士費用）と謝罪広告の掲載を求め訴えていた裁判について、20日東京地方裁判所で判決言い渡しがあった。

東京地裁民事第28部の大竹昭彦裁判長は、統一教会側の主張のうち、見出しの一部について「度を越えた性的表現」「違法性及び被告の故意又は過失がある」とし、損害賠償の額として請求額の5％にあたる55万円（損害賠償金50万円＋弁護士費用5万円）とその利息分のみを認めた。その他謝罪広告の掲載請求については棄却し、訴訟費用についても20分の19を原告負担とした。

統一教会側の主張の殆どが退けられた恰好だが、統一教会は判決を針小棒大に解釈、公式HP　に於いて『「週刊ポスト」名誉棄損訴訟で統一教会が勝訴』と喧伝している。





◆見出しの『SEX地獄』はさすがに表現がきつ過ぎた？

統一教会が問題視している週刊ポストの当該記事は、【『〈衝撃リポート〉北海道大学教授らの徹底調査で判明した戦慄の真実】【韓国農民にあてがわれた統一教会・合同結婚式 日本人妻の『SEX地獄』】と題されたもので、7000人とも云われる渡韓した統一教会日本人妻の置かれている状況について詳細に記述している。

東京地裁の大竹昭彦裁判長は、以下のとおり判決を言い渡した。

【東京地裁　判決言い渡し 2013年2月20日】
　　　　　　　　　

「主文１　被告は原告に対し、55万円及びこれに対する平成22年5月24日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」

「主文２　原告のその余の請求をいずれも棄却する」

「主文３　訴訟費用はこれを20分し、その19を原告の負担とし、その余を被告の負担とする」

「主文４　この判決は第1項に限り、仮に執行することができる」

裁判長は、統一教会側が求めていた損害賠償（及び弁護士費用）については請求額の5％にあたる55万円のみを認め、その他の主張を斥けた。そして、原告が要求していた謝罪広告の掲載についても「理由がない」として棄却した。　

　　

◆『春川事件』で顕らかになった渡韓女性信者の現実

昨年8月に韓国・春川で起きた統一教会日本人妻による韓国人夫殺害事件は、統一教会が行なってきた祝福・合同結婚式が“無職・低収入など条件の悪い韓国人男性に日本人女性信者を奴隷の様にあてがってきた人権問題であるということを浮き彫りにした。

統一教会は依然として『春川事件』について公式な見解はおろかホームページ等でも一切触れていない。教団が事件を黙殺し続ける背景には、本件民事訴訟への影響を惧れているのではとの見方もある。

韓国国内の統一教会日本人妻の置かれている状況について、元信者などから問題を告発する動きも出てきている。

その他にも、春川の夫殺害日本人妻を支援しようとの動きも信者の間で起こりつつあるが、事態を公にされたくない教団側から圧力が掛かったとの報告もある。

◆統一教会は判決を針小棒大に独自解釈し一方的に『勝訴』宣言

今回の判決に関しては、週刊ポストの当該記事のどの箇所が損害賠償として認められたのかが焦点となる。

統一教会は同日、公式HPに於いて広報局のコメントを掲載した。

【統一教会公式ホームページ 「週刊ポスト」名誉毀損訴訟で統一教会が勝訴　2013年2月20日】
　　　　　　　

 「週刊ポスト」名誉毀損訴訟で統一教会が勝訴

統一教会広報局のコメント

　

当法人に対する名誉棄損が認められたことは評価するが、謝罪広告掲載の請求が棄却されたことは遺憾である。判決文を精査した上で、今後の対応を検討したい。

◆「SEX地獄」以外は統一教会の主張を斥ける

果たして実際に統一教会広報局が喧伝するような判決内容だったのか？
確認するため、本紙司法担当記者が霞ヶ関の東京地裁に赴き、判決文を閲覧した。

判決文を精査すると、東京地裁は、見出しの一部である『SEX地獄』の箇所についてのみ「度を越えた性的表現であるというほかはない」としている。そして『韓国農民にあてがわれた～』との見出しについて「被告の主張するところを全て考慮したとしても、違法性及び被告の故意又は過失があるというべき」とし、不法行為の構成を認めた。
但し、それ以外の見出し・リード・本文の記述内容に関しては「不法行為は成立しない」「本件記事は、全体として、公共の利害に関する事実に係り、その掲載行為は専ら公益を図る目的に出た場合に当たると認められる」などどし、概ね原告の主張を斥けるものであった。


◆地裁判決の問題点

今回の地裁判決は、見出しの一部以外については「公共の利害に関する事実にかかわる」「公益を計る目的」「被告が真実であると信ずるにつき相当の理由がある」などと様々な観点から名誉棄損には該当しないとしながらも、その一方で、記事で適示された事実が真実であるか（真実性）については地方及び農村部在住の女性信者数割合や結婚ビラやチラシ配布、農村部男性への結婚勧誘の有無についても統一教会側の主張をそのまま追認するかのような記述もある。そればかりか、記事の内容についての真実性の判断に於いても認識不足を露呈しており、東京地裁の判断には疑問が残るところだ。

尚、判決文には本訴訟の争点の一つである『社会的評価の低下』について、何箇所も「原告の社会的評価を低下させるものと認められる」との記述が見られた。
統一教会の社会的評価は既に低下しきっていて、これ以上今更低下するべくもないのだが。


◆新たな“犠牲者候補”が渡韓

判決文の内容の詳細を知らされず統一教会の公式HPしか読まない一般信者は、統一教会が全面勝訴したと“勘違い”してしまいかねない。

今月17日には新たな合同結婚式・祝福式が行われた。
情報統制の中、春川で渡韓日本人妻による殺人事件が起きたことすら知らされないまま、また新たな犠牲者候補が韓国へ嫁いでいく。