「このジュース甘くな～れ」ハンドパワーで被害多発のアースハート、被害者による集団訴訟第１陣が結審

アースハートの創設者・野中邦子（舩井メールクラブHPより）

「ハンドパワー（マインドパワー）で病気が治る」などと病に悩む人々らを勧誘し高額なセミナー受講料を払わせた上に『覚醒』『ローラー』などの呼称で連鎖勧誘を強いるマルチ商法的手法で社会問題となっているアースハート。

現在、被害者169名が総額2億円以上の損害賠償を求め集団訴訟を起こしており、その内47人が株式会社アースハートや代表者である野中邦子(65)らを相手取って起こした第一陣訴訟が13日、福岡地方裁判所で結審し全ての弁論を終えた。

アースハートに関しては今年1月、2008年2月からの3年間に27億円の所得を隠し約8億3千万円の脱税をおこなったとして、法人税法違反容疑で創設者の野中らが福岡地検に逮捕されるなど刑事事件にもなっている。

 ◆現役医師も“信者”

 株式会社アースハートは泰道（現・宝珠宗宝珠会）の幹部だった野中が創設した会社で【NPO法人つくしの会】【宗教法人ひのもと】などの法人格とも一体化して活動をおこなっている。

全国各地で講演会やセミナーを開催し、難病に悩む人を狙って組織的・計画的にお金を収奪してきたとされるアースハート。

 その“信者”の中には現役の医師もおり、この北九州市の整形外科病院の院長が熱心にアースハートの普及・啓蒙活動に勤しみ患者や医療関係者を誘い込むなど団体の広告塔となっていることなどから、今後も新たな被害者の発生が懸念されている。


◆脱税指南に船井総研の関連企業が関与？

今年1月に逮捕された野中邦子容疑者（FNNニュースより）

アースハートの脱税事件に関しては、その上前を撥ねる形で船井総合研究所（船井総研）の子会社に10億円以上が流れたのではないかとの疑惑をNETIBNEWSが伝えている。
船井総研・子会社元社長の抱える闇（1）～（5）

船井総研については斎藤貴男著『カルト資本主義』に詳しい。

舩井メールクラブHPで野中は以下のように紹介されている。

【舩井メールクラブ　２０１３年１月１７日配信　第55号】

ハンドパワー

●執筆者名●
一般財団法人野中邦子財団　理事長
野中　邦子（のなか　くにこ）さん

※野中邦子さんが１月３１日に法人税法違反容疑等で逮捕されたという新聞報道がございました。大変遺憾なことだと思っております。船井メールクラブでは今後の捜査の行方を見守らせていただきたい所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

●プロフィール●
一般財団法人野中邦子財団　理事長
福岡県在住。自身の長年の病気との闘いをつうじ、マインドパワーによる独自の施療法を確立。現代医学では、解明できない多くの難病等を治癒に導き、全国に 膨大な数の指導者を育成。青少年の心のケアや、様々なボランティア活動を精力的にこなす。地球への惜しみない愛を持ち続け、活動する姿勢は各方面より賞賛 されています。

アースハートに関する刑事訴訟については、宗教法人を悪用した脱税事件としても注目されている。

◆被害弁護団も結成

アースハートの被害が多発していたことから、今年3月に福岡と佐賀の弁護士13人がアースハート被害対策弁護団を結成、アースハート問題の概要や各裁判の報告の他、被害相談を受け付けるHPも開設している。

◆“インチキ実技”がTV番組の特集報道で暴かれる

アースハートは新規会員を勧誘時「ジュースの味変え」「雲消し」などの“インチキ実技”をおこなっていた。

講演会の壇上で「このジュース甘くな～れ！」と声を張り上げる野中の映像がTBSのニュース番組で報じられたこともあった。云うまでもないことだが、ジュースの糖度に全く変化はなくインチキであることが実証されている。

◆法廷での『味変え』を拒否した野中容疑者

民事訴訟の法廷に於いても、野中への本人尋問で裁判官から

──何故『味変え』とか『雲消し』といった、いわゆる治療とは関係のないことをセミナーでするのですか？

と問われた野中が

「見えない力の証明に於いて、このパワーが本物である、素晴らしい奇跡を起こすということをいろいろな形で認識していただきたくて」

と答え、更に裁判官が

──セミナー終了時に、受講生にジュースの味変えを体験させたりするというのは、一番それが一般の人にも判るからなんでしょう？

と確認すると

「そうですよ、そして分かってもらってます」

と答えておきながら

──裁判の中でそういうものを分かってもらおうと思わないですか？糖度計などで

と法廷で“味変え”を実践するよう振られると

「こういう中でそれをしろと言われても、また、それをしたからといって、弁護士さんたちが『ああ、確かに変わったね』というわけがありません。それはTBSの報道の時に痛いほど判りました」

とハンドパワーによる味変えの実践を拒絶。「科学的裏付けがある」などと喧伝していたそのニセ科学ぶりが露呈する一幕もあった。

◆アースハート広報「会員さんが多い所なので」「今の段階では論評できない」

結審に際しアースハートに見解を求めた。

アースハートの広報担当者は本紙について「存じております」と前置きした上で

「まだ、民事をやっている最中でございますし、結審したからと言って判決が出てくるわけでもないし、状況を見ながら出てきたものを見て弁護士と話をして決めたいと思っています」「今すぐこうするああするということではございません」

──判決が出た時点で控訴するかなどを決めるということか？

「それを含めて、全く以ってどういう状況になるかについては想定すらできない状況でございますので」

──まだ何処も判決は出ていないから？

「はい、出ておりません。ですので現段階で判断というものは誰もできないと思います」

──全国各地で訴訟を起こされているということについては事実無根であると？

「もちろん、当然裁判をするということは、（提訴する側が）全て正しければ裁判にはなりませんけども、内容について事実に反することが多々ありますので、それについては反論もしなければならないし、正しいしことも分かっていただきたいという思いもあります」

──刑事事件については？

「これこそ何とも言い難い思いがあります」

──船井メディアとの関係を報じたNETIBNEWSの記事の内容については？

「少なくとも事実でない部分が相当ございます。個別の名称で正しい部分というのもありますけどもそうでない部分も相当多くございます」

──ではNETIBNEWSに対して法的手段を採るということは？

「まだ連載も続いているようですしどういう状況になるのかもわからないし、注視はしているけれどもだからといって今、現状すぐにどうこうするということは考えていません」

──全体としていろいろな流れを見ている段階ということか？

「そうですね、そうぜざるを得ないということですね」

──具体的に全国で被害を訴えている人が多くいること自体については？

「どこまで全国かということもあるが、会員さんが多い所なので、ということくらいです。特段この支部で特別に何かということではございませんので」

──会員が多い分、苦情を訴える人もある程度はいるだろうということか？

「そうなのかどうかということについては私の方もよく分かりません」

──判決が出た時点で何らかの対応をすると？

「裁判なので飽くまでも結果が出た上で、それに基づいて、結果を受けてどう判断するかについては、今の段階では論評できないです」


◆判決日は来年3月28日

判決言い渡し期日は来年3月28日13時10分となった。

結審を迎えたことについてアースハート被害弁護団の青木歳男弁護士は

「弁護団としては、来たる判決によってアースハートの商法の違法性を明らかにして、活動の反社会性を明確にしたいと考えている」

と語った。


◆全国規模で展開


アースハートの拠点は全国にあると見られており、名古屋地裁、静岡地裁浜松支部に於いてもアースハートや野中らに対して損害賠償訴訟が提起されている。

福岡では第2陣訴訟として原告122人も今年5月に福岡地裁に追加提訴している。
更に潜在的な被害者も数多くいると見られており、今後もアースハート被害に関する提訴は拡大していくと思われる。