■全国で50万個規模の一斉投入!
EM団子は、乳酸菌や酵母菌などが混じった通称「EM菌」(有用微生物群)を用いた土の団子。水質を浄化すると称して、海や河川に投入するイベントが全国で開催されています。EM推進団体のひとつである「地球環境・共生ネットワーク」の会報によれば、2013年の「海の日」に全国で行われたEM菌投入イベントで海や河川に投入された総量は、EM団子が約50万8000個(前年は約55万5000個)、EM活性液が約92万8000リットル(前年は約62万5000リットル)でした。
逗子海岸のイベントも、こうした活動の一環で、主催はNPO法人「海岸クラブ」、協力は株式会社EM生活、株式会社EM研究所、株式会社イーエムジャパンです。
午前10時から、逗子海岸海水浴場の文学記念碑「太陽の季節碑」付近に数十人が集合し、約5分間、海岸のゴミ拾い。ガラスなどを取り除いた海藻を海水浴場の砂に埋め、EM活性液をぶっかけます。スタッフによると、こうすることで
「腐ってヘドロ化することなく海藻が分解される」
といいます。砂浜に置いておけば自然に分解するのでは?と尋ねると、
「そのままにするとヘドロ化して臭いが出るが、こうすると臭くならない。このやり方で、以前はヘドロの臭いがひどかったこの付近の海岸が綺麗になった」
■3000個は10分で海の中へ
ゴミ拾いが終わると、いよいよEM団子投入。用意された団子は約3000個(主催者発表)。こぶし大の大きさの土団子ですが、表面には白い「菌糸」がびっしり。匂いを嗅いでみましたが、ふつうに土っぽい匂いで、異臭はありませんでした。
団子は前もって2週間かけて作ったといいます。イーエムジャパンの関係者によると、
「米ぬかにEM菌を入れて発酵させた“EMぼかし”というのがあります。これを(土)バケツ5杯に対して1杯入れます。それにEMセラミックスパウダーというのをコップに1杯。で、スコップでよく混ぜあわせ、EM活性液をかけます。それを団子に握ると。それに1週間、ビニールシートをかけて発酵というか熟成させといて、シートを開けると、真っ白い滝のような菌が出てくるんですね。それから1週間、乾燥させて出来上がりです」
主催者の号令で、参加者たちは一斉にEM団子を何個も手に抱え、海に入っていきます。数メートル海に入ったところで、団子を海に投入! 小さな子供から、じっちゃんばっちゃんまで、楽しそうにEM団子を投げまくります。
とにかくすごく楽しそうです。
10分ほどで3000個を全て投げ終え、主催者から「EM菌入り」のドリンクなどを手渡されると、続いて行われたサーフィン教室等へと移っていきました。
参加者に無料配布されたドリンクは、EM生活の「イーエムウォーター」(税別200円)。イベント開始前、主催者は参加者たちに、こうアナウンスしていました。
「参加者の皆さんには、EM菌が入った水(イーエムウォーター)をお配りしています。これを飲むとおならが臭くなくなる!」
■逗子市が浄水場でEM菌を生産
投入終了後、イーエムジャパンの関係者に話を聞きました。
──スタッフの方から、すぐそばの浄水場(逗子市浄水管理センター)でEM菌を作っていると聞いたんですが。
「そうです。EMの1トンタンクが5、6台置いてありまして、そこでEMを培養しています」
──自治体によっては、EM菌がむしろ水質汚染の原因になるというレポートを出していたりしますが、自治体によって評価が分かれるのはなぜ?
「(同じ神奈川県の)葉山町では昨年も(EM団子投入を)やらせてくれたんですが、今年は市民の反対があって、できませんでした」
──反対する人たちは、なぜ反対するんですか?
「従来の自然の中に違う生物群というか菌体を入れて、生態系を変えてしまうんじゃないかと、そういう心配をされている」
──逆に支援している人は、「いい影響がある」と?
「はい」
──市が支援してるってびっくりしたんですが、もう長いんですか?
「そうですねえ、もう10年近くになります」
──浄水場の中に設備があって、市が独自に作ってるんですか。
「はい。それで、実際に撒く事業を私たちが受託してやっています」
──今日の団子作ったり海藻にかけたEM菌は、逗子市産なんですか?
「そうです」
──今日1日だけでは、浄水場のEM菌は使い切れないですよね。
「浄水場のEM菌は、定期的にホースで海へ散布してるんです。その作業を私たちが受託しています」
■逗子市は税金150万円で2万リットルを海へ
「有用微生物群活用事業につきましては、EM菌を活用した自然環境の保全に向け、EM活性液の培養や河川等への散布を行う経費など150万円を計上しています」
と報告。また同年9月の決算特別委員会では、議員から「有用微生物群活用事業196万4,497円」と言及されています。
今年2月の定例会では、平井竜一市長が平成26年度予算に関連してEM菌に触れています。
「美しい浜再生事業は、市民との協働によりEM活性液を培養し、散布イベントの開催などを通して逗子海岸を美しい砂浜に再生する経費として200万9,000円を計上しました」(会議録より)
逗子市がEM菌に投入している税金は、例年は150万円前後、効果測定等の調査がある年は200万円前後、といった状況です。
本紙が市に確認したところ、逗子市浄水管理センターでは年間2万リットルのEM菌が培養されています。これがおおよそ、逗子市内の海等でEM活性液として散布されたり、EM団子として投入されたりしているEM菌の年間量になるとのことです。
市がEM活性液等の散布事業を委託している先はNPO法人「海岸クラブ」。「海の日」のEM団子投入イベントを主催していた団体です。
市議会では、この「海岸クラブ」について疑問を呈する声が議員から挙がったことがあります。
「渚橋下の逗子市新宿一丁目のところの市有財産の契約について、NPOの海岸クラブ、これも海水浴場の海岸協同営業組合の理事長が不正に又貸しをしていた事実を指摘しましたよね。しているんですよ、そういうことを。又貸しをしてお金を取っている、契約にないことをやっているということを指摘しました。(略)EM菌の散布の話もしましたよね。美しい浜再生事業業務委託、これもNPOの海岸クラブ。海岸協同営業組合の理事長が代表を務めているんですよ。それだって、自分たちはボランティアでやっているんだと言っておきながら、逗子市からは委託金をもらって、お金をもらって彼らはやっているわけですよ」(菊池俊一議員・2012年12月の定例会会議録より)
さらに、委託を受けている「海岸クラブ」が、散布事業を別業者に丸投げしていることを問題視する声も。
「もっときちんと調べたら、これはそのまま丸投げで、ほかの事業者に対して業務を委託してしまっているんですよ。丸投げなんですよね」(菊池俊一議員・2012年9月の決算特別委員会会議録より)
「(予算の)その96万3,480円の積算の中でEM散布というのと市民配布というのが二つ分かれているんですね。そのうちのEM散布というのを年に8回やっているんですね。64万9,000円分なんですけれども、それはどうもこの海岸クラブの方がやっているのではなくて、作業服を着て、違う業者が入っているというお話があったので、調べたら、イーエムジャパンの方がやっていらっしゃるというふうに私は伺ったんですけれども」(同議員・2012年9月の決算特別委員会会議録より)
本紙記者がEM団子投入イベントで話を聞いたイーエムジャパンの関係者も、散布について
「私たちが受託しています」
と語っていました。
しかし本紙が逗子市に確認したところ、市が委託している先は「海岸クラブ」とのことでした。
■「科学的根拠ない」「河川の汚濁源」
EM菌の効果については、科学的根拠がないという指摘がよくなされます。効果を疑問視する自治体の見解も複数出されています。
2012年に青森県が、県東青地域県民局による調査で「顕著な改善は確認されなかった」にも関わらず「学校に無償提供して利用を後押ししている」と報道され、批判を浴びました。これを報じた朝日新聞デジタル(2012年7月3日付)が、他の自治体がEM菌の効果を疑問視する報告を行った事例をまとめています。要約すると、
・岡山県環境保健センターは1997年度、EM菌は水質浄化に「良好な影響を与えない」と報告
・広島県も2003年に同様の報告
・三重県の2005年の報告では、海底の泥の浄化に「一定の効果があると推定」したが、水質に関しては効果がなかったとした
この記事では触れられていませんが、2008年には福島県生活環境部が、<EM菌(有用微生物群)などの微生物資材について「高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川や湖沼に投入すれば汚濁源となる」との見解>(2008年3月8日 福島民友ニュース)をまとめています。
福島県による測定結果 |
このうちBODは、EM研究所製造の「EM-1」が11,000mg/L、サン興産業製造の「サイオンEM-1」が11,800mg/Lでした。レポートでは、比較対象として合併浄化槽の放流水(下水を処理した後の最終的な放流水)のBOD(20mg/L)を挙げ、培養液のBODは合併浄化槽の放流水のBODの210~590倍であるとした上で、こうまとめています。
<水中の有機物が分解されることで水質が浄化されれば、それに伴い、微生物の死骸などで構成される汚泥やガスが発生する>
<河川や湖沼などの水質を汚さないようにするためには、人為的な汚濁である有機物や、窒素・りんなどの栄養塩類をできるだけ流入させないことです>
<微生物資材による培養液に含まれる高濃度の有機物は、河川などにとって汚濁源になってしまうと考える方が素直な考え方です>
<例えば、生ゴミの堆肥化や、洗剤の代わりに用いるトイレや風呂の洗浄、家畜のふん尿の堆肥製造施設などでは適量であれば使用しても水質保全の面からは、問題はないと考えられます。(略)河川や湖沼に投入することは、水質汚濁につながるおそれが高いので、慎むべきです>
■逗子市でも河川での散布は“効果なし”で中止
では、年間150~200万円の血税をEM菌に投入してきた逗子市は、どのように効果を確認したのでしょうか。市がEM菌を導入した当初の2004年9月の市議会・定例会で、当時の長島一由市長は、こう語っています。
「今回、EM菌の投入ということで、報道もされました。私自身も過去に報道ディレクターをしていたときに、EMの特集をつくったことがありました。報道する以上、科学研究所にそのEMの分解率とかも測定をさせたりもして、 100%科学的に検証するというのはなかなか報道するの難しいんですけれども、そういった中でも一定の数値ということでは、分解率等もかなり効果があるということは、私の取材の中でも確認がされました。そういった中で、今回EM菌を使ったことは非常に私も期待をしておりましたし、また、これが今回やったばかりなので、急にやはり改善される部分もあろうかと思いますけれども、やはり徐々にその効果が出てくるんだろうと思います」(会議録より)
長島市長は就任前、フジテレビに所属し「ニュースJapan」のディレクターを務めていました。その時に制作したEM菌に関する番組で検証した結果について、長島市長は「効果があった」のだと主張しています。
同じ定例会で、議員からEM菌の効果を尋ねられた市民部長は、こう回答しています。
「それから、EM菌の効果でございますけれども、実はEM菌で処理をしない海の家というのを1軒設けて比較をいたしました。その結果はまだ、もうしばらくかかるというふうに聞いておりますけれども、ただ、大腸菌等には使った海の家と使っていない海の家の比較で、使っていない海の家に比べて大体5%程度の大腸菌で済んだと。つまり95%は減少しているというふうなことを伺っています。さらににおいですが、これは人間の鼻でチェックしているわけですけれども、非常に少なかったということも聞いてございます」(会議録より)
市側は水質浄化に効果があったと言っているのですが、その3年後、2007年3月の予算特別委員会では、こんなやりとりが行われています(以下、会議録より)。
環境管理課長「本年度はEM活性液の河川の散布、それからEMだんごを散布するのを休止いたします。市民配布と、それから海岸散布用のEM活性液を作るということでございます」
森委員「その河川のサンプルとEMだんごをやめた理由は、特に何かあってやめたのか伺います」
環境管理課長「水質の測定を実施してきておりますが、数値的には顕著な変化は見られないということから、様子を見ることとしまして、平成19年度は河川、それから大池の散布を取りやめるということでございます」
海の家では効果があったと言っていたのに、河川や池では、大きな水質変化が認められなかったとして中止になっています。
■導入10年、いまだ効果は“測定中”
そして2009年度、市は約86万円の予算を計上して、海藻にEM活性液をかけて砂浜に埋める効果測定を行いました。2010年2月の予算特別委員会で、結果を尋ねられた市民協働部次長・経済観光課長の答弁です。
「7回に分けて定点観測をしたんですけれども、途中、定点観測地点に別の海草を埋められてしまった事故と、台風で砂が持って行かれた関係で、一月ほど定点観測が後ろにずれました。今月中には報告書ができ上がってくる予定です」(会議録より)
「途中のデータを見た感じですと、EM菌を散布して埋めた海草とEM菌をまかずに埋めた海草の比較で、最初は酸素の必要量とかBOD、CODとかの数値はEM菌をまいたほうが高くなります。つまり、環境的には悪い状況になります。ただ、それはEM菌が活発化して分解を始めたということで、それによって一時数値は悪くなりますけれども、その後、逆にEM菌をまいたほうが酸素必要量BOD、COD等の値も低くなって、水質的にはいい状態が続くというような状況です」(会議録より)
これは飽くまでも、砂に埋めた海藻についての測定であり、海にEM活性液やEM団子を投入することによる水質変化を確認するものとは言えません。ともあれ、海藻の分解については、市側はEM菌に効果があったかのような答弁をしています。
しかし、測定から3年たっても、議会では懐疑的な声が挙がっています。2012年9月、決算特別委員会で前出の菊池議員が、効果を示す根拠を市がいまだに確認していないことを批判しています。
「これは随意契約で、今私がお話ししたNPO海岸クラブが業務委託を行い、事業説明では逗子海岸の黒色化防止及び悪臭対策を図るとなっていますが、私が審査をした中では、その成果というものが確認できませんでした」(会議録より)
「このEM菌に関しては、予算審査の中でも他の同僚委員が本当に成果はあるのかという議論をずっとしているんですよ。私は、多分これは成果があるんだろうなと、効果があるんだろうなと思っている側だったんですけれども、いざ決算で聞いてみたら、それの裏付けとなる資料を出しなさいと行政が言っているのに、相手も出してない。それも確認もしてないというのは、これは問題があると思います」(会議録より)
結局、5年前の効果測定は、有効性を示す決定打にはならなかったようです。今年2月の定例会でも、菊池議員とは別の議員から、EM菌散布の効果検証をどうするのか、との質問が出ています。これに対する、平井市長の答弁です。
「かつて、EM菌を散布することによる効果の測定といったことはした実績がありますけれども、改めて平成26年度にこの調査を行って、その後の効果の評価を行う予定でございます。その結果を踏まえまして、今後この事業を継続するかどうかについての検討をしたいというふうに思っております」(会議録より)
本紙が市側に確認したところ、いままさに測定中であり、終了予定は10月。それ以降に報告書が出される予定とのことです。どのような結果が出るのか、また、それを受けて逗子市のEM菌推進政策は変化するのか、注目されます。
しかしそれ以前に、そもそも逗子市が、効果を確認しないまま10年間にわたって税金をつぎ込み、EM菌の推進や宣伝活動に加担してきたこと自体が問題のような気もしますが。
効果はありまぁす!
返信削除効果はありませぇん!
返信削除こちらの瀬戸内海沿岸ではEM団子を海へ投入して漁業に目立った効果を生んでいます。貝類や魚類や海藻が沢山とれるようになったそうで漁業組合は喜んでいます。海水質がよくなりきれいになったそうです。逗子市における委託先やカネのやり取りや管理体制の問題はこちらからは判りませんのでコメントできません。単純に効果だけの比較であれば瀬戸内海を取材されればよろしいかと思います。私は傍観者であり、当事者ではありませんので明細を語る資格はありません。
返信削除海水質の改善は本当にEM菌によるものですか? 赤潮のプランクトンの増減など海水質の変化には様々な要因が絡んでると思いますが
削除上のzenboさんはEM菌信者?
返信削除漁獲量が上がっているという話が事実かどうかわからんけど、もし事実だとして、効果(EM菌との因果関係)はどうやって調べたの?
海水質がよくなるというのはどういう状態?
魚介類は微生物の少ない綺麗な水には住みにくいよね。
EM菌をまだ信じている自治体があったとは
返信削除驚きました。
EM菌はかつて学校現場でも流行して、いろいろな試行錯誤が繰り返されましたが
「EM菌の土の中ではミミズがいなくなる」
「言われている酔おうな栽培の効果があるどころか土の状態を見て栽培を止めた」
等学校現場での実践はなくなったようです。
一時的に、流行してもある時期からきえてしまうものは、害がないどころか危険なものが多いと思いますよ。
簡単にいえば、「EM菌の生み出す効果とその理論及び推進者の解説」が根本的におかしいから、即刻やめてねと云う話なんですよね。
返信削除カルトトップの比嘉氏によると「私はEMの本質的な効果は、関英雄先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています」と。この時点で関英雄先生は今日にでもノーベル賞を5つ位受け取らなくてはならない程の重大な発見をしているんですよね。
また、放射能が消えると云う、相対性理論E=mc^2を超越したEM菌達の活躍も確認されている様なので、zenboさんは早く比嘉氏に「ノーベル賞もらえるよ!」とお伝え頂ければ。
残念ながらからかいや嫌がらせのような感情論には対応できません。私はEM信者ではありません。その効果のいくつかには見聞した結果を信じてはいますが、比嘉さんの説明には納得してはいません。例えば効くまで使えなんてバカみたいです。ましてノーベル賞の話などバカバカしいです。匿名だからと言ってバカネトウヨみたいなことは言いなさんな。効果ありという人の言葉を知りたいのであれば自分で訪問調査しなさい。できないのならば黙っていなさい。世の中にはバカな議論があふれていて、そんなものに参加するきはありません。
返信削除あらら、ご自身で「科学」でなく「信仰」だって言っちゃったもんだよ。こんなのに150万円か。。。逗子市はアホだな。
返信削除個人への中傷や「バカ」「アホ」などと使っている人、恥を知りなさい
返信削除私はEM金を一切信じていないが、コメント欄の現状は目に余るものがある
それ、藤倉氏や鈴木氏の前で言えるか?
法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えなさい