朝日新聞が経営者の手腕を掲載した人気飲食店「実身美」に摂理との関連指摘、全国弁連が申し入れ

4/8朝日新聞夕刊「凄腕しごとにん」

4月8日の朝日新聞夕刊に「凄腕しごとにん　大塚三紀子さん　得意分野を見いだした社員数、300人以上」と題した記事が掲載された。自然食ブームで人気飲食店となっている玄米カフェ sangm 実身美（サンミ）の代表者について、人材発掘や配置の実績を好意的に紹介したものだ。
　ところがこの実身美について、韓国発祥の宗教団体・摂理／キリスト教福音宣教会(Christian Gospel Mission, CGM)との関連を指摘する声が挙がった。摂理の問題に取り組む全国弁連の弁護士が朝日新聞に申入れを行ったのだ。申入書には、実身美の代表者が摂理信者であることや、相当数の摂理信者が教団の指示で実身美に就職しており同店舗へ就職した非信者も摂理の正体隠し勧誘のターゲットになっていることが記されていた。さらには実身美のアルバイトから摂理の勧誘被害に遭った脱会者の存在も明らかとなった。
　筆者は、朝日新聞に申し入れを行った弁護士、摂理の脱会者、そして実身美の代表者への取材を行った。

◆朝日新聞が好意的に紹介
　当該記事が朝日新聞夕刊に掲載されたのは4月9日。人材発掘術と採用した従業員の活かし方など実身美の代表者・大塚美紀子氏の手腕を紹介するものだ。記事は朝日新聞DIGITALでも配信されていた（4月18日に削除。当該記事のWeb魚拓／リード部分のみ）。
　実身美は2006年6月、大塚氏が大阪阿倍野で開業、当時の運営会社屋号は株式会社Mijoa。健康食ブームと相俟って現在は阿倍野のほか、京橋、心斎橋、大手町、那覇と全国に5店舗を構えるほどの人気店となっている。昨年3月に会社名も店舗と同じ株式会社実身美に変更している。

朝日新聞DIGITALで配信された当該記事

 　実身美は朝日新聞の記事を公式サイトにリンクを貼って紹介している。

【実身美のサイト　NEWS　MEDIA　2019年4月8日】

実身美の代表である大塚の“働き方、考え方”について、4/8の朝日新聞「凄腕しごとにん」(夕刊)に掲載されました。ぜひご覧ください。

朝日新聞の記事を紹介する実身美のサイト

◆全国弁連弁護士が申入れ
　この実身美と大塚代表を好意的に紹介した記事について、異議を唱えたのが摂理の問題に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会（全国弁連）の東京事務局長・渡辺博弁護士（田村町総合法律事務所）だ。
 　渡辺弁護士によると、実身美には偽装勧誘や教祖の女性信者への性的暴行で問題となった宗教団体・摂理との関係が強く疑われるという。
　摂理の教祖、鄭明析は女性信者への強姦致傷・準強姦罪で有罪となり昨年2月まで韓国の刑務所に服役。摂理に関しては日本でも正体を隠した勧誘によって大学生を中心に多くの被害者が出ている。

　渡辺弁護士は今回の記事で書かれている内容が実態とは異なるとして朝日新聞社に申し入れを行った。（申し入れの要旨は全国弁連のサイトに掲載）
　同弁護士は実身美と摂理の関係をこう指摘する。
「実身美は摂理の信者が大阪阿倍野で始めたお店で、スタッフにも相当数の信者がいると思われる。朝日新聞の記事に記されたお店を始めた経緯や従業員募集の話もほとんどが嘘だと思う。この記事によって勧誘被害が増えるのではと危惧している」
　
◆実身美代表者は完全否定
　筆者は実身美に対し質問事項を送った。

【質問書 2019年4月10日】
4月9日の朝日新聞夕刊に実身美の記事が掲載された件について質問があり連絡いたしました。
お手数ですが4月12日までにご回答をお願いします。

１．実身美は宗教団体「摂理」が関連するお店・会社であるとの情報があります。実身美と摂理の関係を教えてください。

２．大塚様も同教団の信者ですか？。大塚様と摂理の関係はどのようなものでしょうか？

３．実身美は摂理信者らがに同教団の教えの素晴らしさを実証するために開設した店舗との指摘がありますが事実でしょうか？

４．当該記事には「これまでに働いた従業員は20代～30代の女性を中心に300人以上」との記述がありますが、実身美のスタッフも殆どが摂理信者でしょうか？

５．摂理では就職について教団の許諾が必要とされています。実身美に就職する摂理信者は自分の意思ではなく教団の指示で就職したのでしょうか？

翌日、回答があった。

【実身美　回答 2019年4月11日】

鈴木エイト様
はじめまして、メールを拝見いたしました。

ご質問いただいた内容に関しまして、以下の通りご回答させていただきます。
当社は、私が自己資金を投じて一から立ち上げたものであり、特定の宗教団体と関連するものでは一切ありません。
また、従業員も一般募集により採用しており、宗教団体とは一切関係ありません。
以上、よろしくお願いいたします。

◆実身美のアルバイトから勧誘被害も
　摂理との関係を完全否定する回答だ。しかし、摂理の脱会者はこう語る。
「大塚三紀子さんは実身美を始めた当時、確実に信者」
「実身美を始めた頃も信者といっしょに始め、従業員は信者ばかりでした」

　さらには実身美のアルバイトをしていて摂理に伝道されたという脱会者が複数名存在していることも明らかとなった。そこで再度大塚氏に質問を送った。

【質問書 2019年4月13日】

玄米カフェ sangmi実身美 大塚三紀子様

ご回答いただきありがとうございます。

＞当社は、私が自己資金を投じて一から立ち上げたものであり、特定の宗教団体と関連するものでは一切ありません。
＞また、従業員も一般募集により採用しており、宗教団体とは一切関係ありません。

とのご回答をいただきましたが、回答には大塚さん御自身の摂理教団との御関係についての記述が無く、また当方の取材により摂理教団の脱会者から

「大塚三紀子さんは確実に信者でした」「実身美を始めた頃も信者といっしょに始め、従業員は信者ばかりでした」

との証言を得ています。また実身美のアルバイトをしていて摂理教団に伝道されたという脱会者の存在も把握しています。
これらのことから、以下の質問に改めてご回答をお願いいたします。

１．大塚三紀子さんが実身美を始めた当時は大塚さんご自身が摂理教団の信者であったが、その後に脱会して現在は同教団とは関係がないということでしょうか。それとも実身美を始めた当初から現在に至るまで摂理教団の信者だったという事実は一切ないということでしょうか。

２．大塚さんと 実身美 について「実身美を信者といっしょに始め、従業員は信者ばかりでした」という摂理教団脱会者の証言についての見解をお聞かせください。

３．実身美のアルバイトをしていて摂理教団に伝道された人がいることについての見解をお聞かせください。

４． 一般募集により採用されたアルバイトを含む従業員が摂理教団に伝道されたことはあったでしょうか。

５．現在、実身美の従業員に摂理教団の信者メンバーがいるとの情報を得ていますが、これは事実でしょうか。

お手数ですが4月16日までにご回答をお願いいたします。

翌日、以下の回答があった。 

【実身美回答　2019年4月14日】
鈴木エイト 様

私個人のこと、従業員個人のことについて、また、業務外のことについての質問には、今後一切、回答は控えさせていただきます。
よろしくお願いいたします。

大塚

　大塚氏や従業員の「個人」の信仰の問題ではなく、本案件はサンミを通じて問題ある教団へ誘い込まれたという実際の被害が存在する社会的な問題である。業務として雇った従業員が勧誘被害などに遭っていることからも「業務外」の事案ではない。

◆登記簿記載の取締役も信者？
　また株式会社実身美の他の取締役として同社の商業登記に記載されている川内美津子氏、森島奈津子氏、竹内浩二氏についても全員が摂理メンバーだとの情報もある。
　そこで再度、大塚代表に質問を送った。 

【質問書　2019年4月16日】

株式会社実身美代表取締役大塚三紀子様

ご回答ありがとうございます。

＞私個人のこと、従業員個人のことについて、また、業務外のことについての質問には、今後一切、回答は控えさせていただきます。

とありますが、本案件は大塚氏や従業員の「個人」の信仰の問題ではなく、実見美のアルバイトへの就労から問題ある教団へ誘い込まれたという実際の被害がある社会的な問題であり、業務として雇った従業員が勧誘被害などに遭っていることからしても「業務外」の事案ではありません。

改めて御社の業務について質問させていただきます。

株式会社実身美の他の取締役として調理師として大塚さんと一緒に阿倍野で実身美を開業された川内美津子氏をはじめ森島奈津子氏、竹内浩二氏が貴社の商業登記に記載されています。この3名の方も摂理メンバーだとの情報があります。御社取締役が摂理関係者で占められているということになると、大塚さんからのご回答にある「当社は、私が自己資金を投じて一から立ち上げたものであり、特定の宗教団体と関連するものでは一切ありません」とは矛盾します。これは事実でしょうか。

また、摂理と無関係ということであるのならば、アルバイトとして採用した従業員が摂理に勧誘されるという被害に遭ったとの情報について株式会社実身美として調査するというのが通常の流れだと思います。そのような社内調査を行うご予定はあるでしょうか。

お手数ですが、4月17日までにご回答をお願いいたします。

◆実身美からの回答は得られずも、申し入れに対する朝日新聞の回答が明らかに
　回答期限の17日までに、実身美の大塚代表からの回答は得られなかった。

　同日、朝日新聞社からの回答を得た渡辺弁護士は以下のコメントを発表した。
「朝日新聞は、本年4月8日の夕刊に、摂理信者が経営し、東京、大阪に多数の店舗を展開する『サンミ』を紹介する記事を掲載しました。サンミを経営する会社の取締役4名は全員摂理信者であり、多くの従業員も摂理信であると思われます。これまで、摂理による被害者救済に関わってきた私どものもとには、サンミにアルバイトとして採用されてその後正体を隠されたまま摂理に勧誘された複数の方から相談を受けてきました。今回の朝日新聞夕刊の記事を使って、このような正体を隠した勧誘がなされることが予想されます。私は、4月10日、朝日新聞と執筆した記者宛に、申入書を送付しました。その要旨を公開します。これに対し朝日新聞は、ご指摘を承りました。弊社として適切に対処しますと回答しました。今後も、サンミは、摂理によって正体を隠した勧誘に使われていくと思います。今後、被害者が出ないよう、サンミに関する問題点の指摘を続けていきたいと思います」

◆「そうじゃない子もいるので気を付けて」
　筆者の知人が数年前、ある実身美の店舗を利用した際、さりげなく店員に「（摂理）メンバー？」と訊いたところ「はい。でもそうじゃない子もいるので気を付けてください」と言われたという。

　複数のメディアで好意的に取り上げられ、様々な分野へ進出している実身美。同社の大塚代表にはさらなる説明責任が求められる。