霞ヶ関・2800人“保守系デモ”と幸福の科学の関係

　5月11日、東京・霞ヶ関で「日米同盟強化」「普天間基地移設問題の即刻決着」を鳩山政権に求めるデモと国会請願が行われ、約2800人（主催者発表）が参加しました。２ちゃんねるなどでは、これが幸福の科学関連イベントとの情報もあります。その点についての情報を整理しつつ、デモの様子をリポートします。


■日の丸と星条旗がはためく親米保守イベント

　このデモは、『鳩山政権に対し「日米同盟強化と普天間基地移設問題の即刻決着を求める」デモ集会』。5月11日、あいにくの雨にもかかわらず、デモ出発前の集会場となった日比谷公園大音楽堂は傘を差した人々でほぼ満杯でした。会場で掲げられるプラカードには「売国・国防　鳩山・小沢」と鳩山政権を非難するものや「日米同盟堅持」と書かれたものがあり、「愛国」と書きこんだ日の丸旗なども振られていました。星条旗も多く、反民主党・親米保守を掲げたイベントです。

　集会で読み上げられた決議文を要約すると、主張は4点。

(1)　普天間基地移設問題の即刻解決を求める。国家間の条約は、自治体の長の意見よりも優先されるべき。日米で合意した辺野古沖への移転を早急に進め、日米同盟を堅持すべき。
(2)　鳩山由紀夫首相は、日米同盟の軍事同盟としての性格への理解が不足している。沖縄については「迷惑をかけている」という認識を改め、日本やアジア諸国を守るために貢献してくださっていることに感謝の意を示すべきである。
(3)　日米間の亀裂が深まれば、中国の台頭は避けられない。万が一、米軍が日本から撤退することになれば、尖閣諸島や沖縄本島まで中国が狙ってくる可能性は極めて高い。日本の安全保障、アジアの自由主義、民主主義の防波堤として、日米同盟の強化を強く求める。
(4)　日本がこれだけ大国となったいま、日本も集団的自衛権の行使を認めるべき。日米同盟を基軸としつつ、憲法9条を改正して防衛権の存在を明記し、独自の防衛体制を築く気概を持つべきである。

　さらに、鳩山首相に対して「アジアの自由と平和と繁栄を守り抜く政治判断を下されることを強く求め」、それができないなら「即刻の退陣を要求する」としています。決議は、『この緊急提言を起点として、日本人としての誇りと、日本国を守る決意を新たにし、「国民を守り、領土を守り、主権を守る」ための国民運動を起こしていくことをここに宣言する』との言葉で結ばれてます。

■大手メディアは全く報じず、2ch幸福の科学スレなどで少し話題に

　沖縄からも参加者がかけつけ、主催者発表で2800人が参加した大規模なデモでしたが、一般のメディアでは全く報じられていないようです。しかし２ちゃんねるの幸福の科学関連スレッドや、アンチ幸福の科学のブログ・掲示板などでは、このデモが幸福の科学関連のイベントであったことが話題になっています。

　確かに、協賛団体として幸福実現党の東京都本部と沖縄県本部が加わっており、 同党の金城竜郎・沖縄県本部代表も集会で挨拶に立っていました。会場では、様々な団体の上りに混じって幸福実現党ののぼりも掲げられていました。また、デモ隊による国会請願の際、参議院の玄関前で請願書を受け取ったのは、同日夜に「幸福実現党入り」が報じられることになる大江康弘議員でした。

■主催者側も関連性は否定せず

　デモの際、幸福実現党ののぼりを掲げていた参加者に聞くと、幸福実現党からは40人ほどが来ているとのこと。幸福実現党の広報担当者も、「市民団体によるイベントだ」としつつも、デモと幸福の科学の関連性をとくだん否定はしていませんでした。

「（協賛団体の一つである）沖縄の自由を守る会代表の徳留博臣さん（幸福実現党本部九州ブロック副代表）が企画されたデモです。徳留さんは幸福の科学の会員ですが、沖縄の自由を守る会には幸福の科学の会員ではない人もいます。徳留さんがいくつもの市民団体に呼びかけてデモを企画し、幸福実現党もその一つとして協賛に加わりました。今日は私は主催者ではなくいち参加者ですが」（幸福実現党の広報担当者）

　主催者である「日米同盟強化と普天間基地移設問題の即刻決着を求める会」の広報担当者も同様です。

「デモは市民団体によるもので、幸福実現党もそのひとつ、という位置づけ。沖縄からも100人くらいが参加しました。トータルで2800人が参加し、人数はわかりませんが幸福の科学の会員も多かったように思います。当初は3000～5000人くらいの参加を見込んでいましたが、雨だからもっと減るかと思った。思った以上の参加者がいて、デモの最中も通行人から声がかかるなど、一般の人の関心も高かったように思います」（主催者の広報担当者）

■「協賛団体」と幸福の科学

　協賛団体として名を連ねているのは、以下の団体です。

・沖縄の自由を守る会
・沖縄維新の会
・沖縄の自由と繁栄を願う女性の会
・幸福実現党東京都本部 ・沖縄県本部
・日本の自由と繁栄を願う女性の会
・子どもの未来を守る会
・日本再生ネットワーク
・理想国家日本を実現する東京大学OBの会
・『日本を守ろう!!』行動委員会
・若者の政治参加をうながすNPO『ミスマル会』
・偏向マスコミ報道から日本を守ろうネットワーク

　このうち、「沖縄の自由を守る会」は、幸福実現党所属で幸福の科学の信者でもある徳留博臣氏が代表を務めています。前述のように、メンバーには「幸福の科学の会員ではない人もいる」（幸福実現党の広報担当者）そうですが、同会サイトには「協力団体」として「沖縄維新の会」「沖縄の自由と繁栄を願う女性の会」の名もあるので、3者はもともと関わりがある団体のようです。

　そのほかの団体は素姓がよくわからないものもありますが、「理想国家日本を実現する東京大学OBの会」は世話人の一人であり会の連絡窓口を務める細川勝由氏が、幸福の科学の関係者のようです。２ちゃんねるの幸福の科学関連スレッドで名前が登場するほか、かつて幸福の科学が講談社などを提訴していた訴訟において、証人として名前が挙がっています。また「若者の政治参加をうながすNPO『ミスマル会』」の与国秀行代表も幸福実現党の所属で、最近も街宣活動をしています。

　幸福の科学と関係のない団体・個人の参加もあったのだろうと思いますが、人脈的にはかなり幸福の科学との関係も強いイベントだったようです。

■「左翼は身体障害者」

　デモそのものは、「平穏かつ元気がいい」内容でした。口汚いシュプレヒコールがあったわけでもなく、おおむね整然と、しかし非常によく声が出ていました。シュプレヒコールは「民主政権は、日米同盟を破綻させるな」「日米同盟強化で、自由と平和を守ろう」などと書かれた紙が配布されていたのですが、グループごとにマイクを持つ人たちがアドリブをきかせまくっていたので、悪く言えばバラバラ、よく言えばライブ感たっぷりでした。

　警備に当たる警官が人手不足だったのかデモ行進をしっかり誘導しなかったため、日比谷公園から出発した直後に一部のグループが道を間違えて「国家権力指定のルート」を外れて行進してしまいました。途中から警官が1人、追いついてきて、

「（日比谷公園の）向こうの門から出るんだよ！　だめだこんなん！　違法行為だよ！」

　と、キーキーわめきたてていました。なぜかデモ隊より警官がヒステリックでした。

　しかし出発前の日比谷公園での集会では、登壇者側の良識を疑う発言もありました。「鳩山首相の退陣を求める会」代表で「鳩山総理のそっくりさん」こと菊池芳勝氏が、デモ行進スタートの鬨の声を挙げた際の発言です。

「鳩を退治したからといって、まだ油断はできません。左側の羽根しか持っていない鳥がいます。社会党とか共産党とかいう左翼ってやつです。左翼です。左の羽根しか持っていない身体障害者の鳥です。私たちは鳩だけではなく、この左の羽根しか持っていない鳥も退治しなければいけません！　さあそれでは、鳩とヘンな鳥が巣くっている国会に向かってみなさんとデモ行進をしたいと思います。鳩とヘンな鳥をやっつけるために頑張っていきたいと思います！　エイエイオー！」

　これに合わせて参加者全員が「エイエイオー！」と声を挙げ、デモ行進が始まりました。

　その場の勢いだったのかもしれませんが、左翼批判で「身体障害者」を引き合いに出した上に「退治する」というのは、いくらなんでも言い過ぎです（左翼に対しても身体障害者に対しても）。しかもそれがデモ行進スタートの合図とは……。

　この集会とデモの映像は、普天間基地移設問題の即刻決着を求めるデモ集会（１／２）として公開されていますが、菊池氏の「左翼＝身体障害者」発言はカットされています（動画の9分18秒あたり）。ちなみに菊池氏と幸福の科学の関係はわかりません。