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2010年8月22日日曜日

「健康にいいパワースポット」という疑似科学

 読売新聞の記事の紹介が続きますが、今度は「パワースポット人気」に関する話です。読売新聞に限らず、最近、メディアがよく取り上げる「パワースポット」ブーム。まあ主要なものは神社めぐり的な他愛もない話ですが、その中に「健康」にかかわる疑似科学的なものが紛れ込んでいます。


【YOMIURI ONLINE 2010年08月20日】パワースポット人気、神社へ山へ若者“巡礼”

力と気と良縁欲しい

 全国各地に散在する「パワースポット」と呼ばれる神社や山岳など自然の景勝地が、大勢の若者を引きつけている。「力をいただく」「気があふれている」「良縁に恵まれた」などが人気の理由で、従来の信仰や観光とは少々、違う。これまであまり訪れることがなかった若い年代の人たちの来訪に受け入れ側からは戸惑いの声も聞かれる。
(藤岡博之、岸下紅子)

(略)

 パワースポット人気は、スピリチュアル(霊的)ブームの延長とされる。霊能者や芸能人が訪れる神社や自然がテレビや雑誌で紹介され、昨年秋頃から一気に火がついた。

 必ずしも参拝が目的ではない。東京の明治神宮では、戦国武将・加藤清正ゆかりの井戸「清正井(きよまさのいど)」を携帯電話の待ち受け画面にすると幸運が訪れるとして、大勢の人が集まる。今年の正月には、5時間待ちの行列ができた。神社は現在、1時間ごとに区切った整理券を配り、対応している。

(略)

 何が人々をパワースポットに引きつけるのか。

 鎌田東二・京都大こころの未来研究センター教授(宗教哲学)は「政治、経済、社会、家族、いずれもが衰退する不安な世の中で、パワーという物量的、即物的な響きが魅力なのだろう」とみる。また、小松和彦・国際日本文化研究センター教授(民俗学)は「歴史の地には正の面と、怨念(おんねん)の受け皿となった負の面がある。単純にありがたがるばかりでは、逆効果にもなりかねない。両面を理解して出かけた方がいい」と語った。

 パワースポット 風水学、気功学、スピリチュアリズムなどの立場から、特別な力が得られるとみなされている場所。宗教的な場が精神面に好影響を及ぼしたり、豊かな自然が健康をもたらしたりするなどの効果があるとされるが、必ずしも科学的根拠はない。

 この記事では、以下の9カ所を「人気のパワースポット」として表組みで紹介しています。

1. 恐山(青森)
2. 明治神宮(東京)
3. 富士山(静岡、山梨)
4. 分杭峠(長野)
5. 伊勢神宮(三重)
6. 鞍馬山(京都)
7. 大神神社(奈良)
8. 須佐神社(島根)
9. 高千穂(宮崎)

 この中で、ダントツで電波っぽいのが、長野の「分杭峠」です。

■分杭峠は、「巨大なピップエレキバン」だって

 これ見てください。



 「ゼロ磁場」は巨大なピップエレキバンなんだそうです。ピップエレキバンで、糖尿病やぜんそくが治ったり車椅子の人が立ちあがったりするんでしょうか。本紙藤倉のバカも治りますか。

 ひとつ付け加えておくなら、ピップエレキバンに代表される磁気治療器そのものが、疑似科学ではないのかとの批判的議論のあるものだったりします。

 「ゼロ磁場」と言うと、もうひとつ、こんなパワースポットもあります。神奈川県厚木市の七沢温泉 七沢荘です。サイトを見てもらえば充分すぎるほどご理解いただけると思いますが、疑似科学ビジネスのフィクサー、船井幸雄氏に心酔するご主人が経営する電波温泉です。お食事は<テレビで話題の究極のパワーグルメ「波動豆腐御膳」>がお勧めみたいです。

 11.ゼロ磁場温泉の効用と気源石の秘密(「船井一雄のビックリ現象最前線」より一部抜粋)を読むと、上記の分杭峠とよく似た話になっています。ただ、両者が決定的に違うのは、七沢荘の場合、効能をうたって温泉宿を経営しグッズを販売して商売をしているという点です。

 レジャーに科学的思考を求める必要もないので、神社めぐりや「ゼロ地場」訪問だけならお好きにどうぞ、と思います。しかし、こうしたブームに疑似科学や健康法的な論理が混じり込んでいることは、ゆゆしき事態だと思います。

■“疑似医療”の罪

次世紀ファーム研究所・真光元神社の堀洋八郎代表
 パワースポットとはちょっと違いますが、疑似科学や宗教的な健康法をめぐっては、いま朝日新聞が一生懸命問題視しているホメオパシーの問題や、子どもを死なせてしまった教団職員が有罪判決(執行猶予)を受けた新健康協会、もう少しさかのぼると、糖尿病の少女を死亡させてしまった次世紀ファーム研究所(真光元神社)など、深刻な問題が立て続けに起こっています。

 それでも、こうしたものがよく宣伝に用いる手法は、わりと人々の心をつかみやすいようです。その手法のひとつは、「さも科学的に効能が実証されているかのように誤信させる説明を行う」点。上記のもので言えばホメオパシー。「ゼロ磁場」云々もそうでしょう。

 もうひとつは「それで病気が治ったとする体験談」。チラシやウェブサイトで、さまざまな体験者の成功例をアピールする。これは、疑似科学的なものであれ、完全に宗教的なものであれ、宣伝の際には必ずと言っていいほどよく見られる手法です。もちろん、こうした宣伝がきっかけでコンタクトをとってきた人に対して、個別にあるいは集団で、さらに強固な信念を植えつける団体(次世紀ファーム研究所など)もあります。

 ですから、パワースポットブームも、場合によっては「その場所に行くだけならいいじゃん」では済みません。「パワースポット」の疑似科学的な説明への抵抗感が薄れれば、関連する怪しげな疑似健康産業や疑似医療に対する人々の抵抗感や批判意識まで低下しかねません。

7 件のコメント:

  1. 確かにパワースポットブームは、オカルトや神仏よりも気軽に
    信仰に誘い込むトークネタづくりに適していますね。

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  2. そう言えば、小田嶋隆氏が日経BP社サイトの連載で「パワースポットめぐりでパワーを奪われていないだろうか?」ってのをものしていたんですよね。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100506/214261/

    3ヶ月も前に「パワースポットが、日本の霊能関係諸事業にもパワーを供給している」って指摘しているんですよね。霊感商法界隈のネタにもなっていたり、横文字になった途端に何か批判し難くなる風潮にも釘を刺すなど、小田嶋氏の真骨頂発揮ですな。

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  3. パワースポットといえば、アレフから分裂したオウム真理教上祐派(自称:ひかりの輪)がパワースポット巡りを活動の中心の一つにしていますね。
    パワースポットはオウム復活の客寄せに使われているようです。
    オウム真理教上祐派のパワースポット商法には要注意、パワースポットブームもオウムにつながる危険な思想といえるのではないでしょうか。

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  4. 別に今のオウム上祐派は危険ではないでしょう。
    パワースポットもどんどんやれば良いのでは。

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  5. ちょっとだけ気功師2010年8月23日 22:44

    YOMIURI ON LINEの「パワースポット:風水学、気功学、スピリチュアリズムなどの立場から、特別な力が得られるとみなされている場所」の定義は、いかがなものかと思います。
    風水とスピリチュアリズムについての考え方は、分かりませんが、気功は人は自然・宇宙の一部であるという考えから自然の気の流れを読み取って陰陽のバランスを保つ事を目的としています。ですので、気功においてパワースポットという場所は気場が良い場所という意味で、気が清浄な場所という意味に近いと思います。その場所に行っただけで、超能力のような特別な力が得られるとは、まともに気功を練習している方なら思わないと思います。
    そんな事を言う気功師は、まがい物の気功師です。

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  6. ちょっとだけ気功師さん

     ご説明ありがとうございます。さすがに、「パワースポット」で超能力を得られるなんていうのが一般的な気功師の主張とは考えていないんですが、逆に、一般的な気功の考え方では、「パワースポット(気が清浄な場所)」にはどのような効能があるとされているのでしょうか。

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  7. ちょっとだけ気功師2010年8月24日 17:17

    一般的な気功の考え方では、気場が良い場所で気功の練習を行なった方が、陰陽のバランスを少しだけ取りやすいという程度の事です。
    例えば、川のせせらぎや小鳥のさえずりが聞こえる場所にいるとリラックスした気分になりませんか?
    空気が澄んだ場所に行けば、何となくすがすがしい気分になりませんか?
    敢えて、効能をあげるとしたらこんな感じでしょうか。

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