ページ

2011年6月20日月曜日

[カルトと政治]足立区議選に見るカルトの影(3)

前回からのつづき】2011年5月15日に投票・開票された東京都足立区区議会議員選挙で4位当選した現職の足立区議長谷川たかこ(長谷川貴子)氏。本紙では2回に渡って、長谷川区議が統一協会信者らの支援を受けてきたことを、元信者の証言ともにリポートした。長谷川区議への直接取材の後、本紙は長谷川区議に対し改めて質問状を送った。長谷川区議は再び統一協会との関係を否定し、「事実に反することは法的な手段で対応する」と言ってきたかと思うと、その直後、今度は民主党中央本部の顧問弁護士を名乗る弁護士ら9人もの連名で、「催告書」なる書面が本紙記者宛に送られてきて──。

◆霊感商法について区議は?

 今月4日、長谷川区議に対し、霊感商法などで社会的問題となっている団体の支援を受けていたことについて改めて質問状を出した。礼拝への参加や足立教会への立ち寄りなどについても訊いた。

 6日、長谷川区議から、

「この件に関しましては先日お電話で話したことが全てです」

「FAXでのご質問に関しては、そのような事実はございません」

 と関連を完全否定する回答があった。 

 翌7日朝、区議の実名を記事に記載する旨のメールを送信すると、すぐに「事実に反することは法的な手段で対応をいたします」と返信があり、記者の携帯電話に長谷川区議から電話が掛かってきた。

 長谷川区議は霊感商法などで社会問題となっている団体の支援を受けていたことに対して、「私自身もこの団体が社会的にいろいろ問題があることは認識している」と前置きした上で改めて「今後その方々がもしこちらに入ってきた場合には、知り合いの弁護士や後援会の方々に相談しながら対応していきたい」と語った。但し長谷川区議からは、4年前の区議選の選挙活動に於いて統一協会足立教会青年部ビギンと教会内ボランティア団体草の根ムーブメントのメンバーが動員され、その支援を受けていたことについて依然として具体的な検証や対処をするという意思が確認できなかった。今回の件について長谷川区議は、『風評被害』だと述べた。

 昨年、第5回マニフェスト大賞で[行政・街づくりへの『カラ―ユニバーサルデザイン』の導入]が「最優秀政策提言賞」まで受賞した長谷川区議、自身が政治家に信任された最初の選挙で何があったのか、統一協会関連団体との関係について合理的な説明が求められるのではないか。

◆信者議員生産へシフトか?

 昨年本紙で報じた足立教会の現役(?)女性教会員が立候補した松戸市議選でも、足立教会の信者が大量動員されていた。直接信者議員を擁立しようとの目論見には下地としてこの2007年の足立区議選があったと考えられる。

 統一協会系の政治組織『勝共連合』には以前から教会員を政治に送り出したいとの目論見があり、現実に教会員が地方議員になっているケースもある。

 6月7日、足立教会に2007年当時のことについて訊いたが「問い合わせいただいてもお答えすることはできません。申し訳ないがお断りします」と取材拒否だった。

 疑惑のキーパーソンである草の根ムーブメントリーダーの小林氏にも訊いた。
 記者が名乗ると「話すことはないと思う。おそらく言われることはよく判っているので」と返答があり「(用件は)何だと思いますか?」と問うと「長谷川議員の方からも電話が来ていますので」と、関係をうかがわせる発言があった。小林氏は「長谷川議員も結構迷惑していて『訴えるぞ』くらいの雰囲気になっている感じで。何か分からないけど彼女怒ってましたね」と話し、本紙がE都議会議員にもFAXを送っている件も聞いたとのことだった。そして、長谷川区議との関係や2007年の区議選のことについては「答える義務はないですよね」「分かりませんので」とノーコメントとしながらも「長谷川さんが言うとおりでいいと思います」と答えた。

 岩國氏との面識については「殆どないです」「お茶はしましたよ」と話した。
 
 本紙がE都議会議員へ出したFAX質問状には、統一教会足立教会とE議員との関係についての質問を記載しただけで長谷川区議のことには一切触れていない。E都議へのFAXを長谷川区議が知っているということは、その件でE都議から長谷川区議に連絡があったとみて差し支えないだろう。

◆長谷川区議からの連絡

 同日夜、またもや長谷川区議からFAXとメールがあった。区議の見解として以下に転載する。
前回の選挙について、統一教会足立支部にお願いをした事実は全くありません。
また、統一教会から組織的に支援を受けているという事実もありません。

選挙は、候補者を応援したいという個人の意思と行動で、さまざまな方々が出入りをし、応援を頂くものだと思っています。

そのような中で、個人の意思と行動で応援をしたいと申し出てくださる方々に対して、その方の出身や宗教などを、私の方からお聞きすることはしていません。
善意の方と信じて、こちらも、申し出てくださる方の意向を尊重し、その方々の出来ることをお手伝いして頂いています。

前回の選挙では、知り合いの国会議員、秘書が入り、その方々が主軸として選挙を動かしていたものであり、統一協会足立教会のバックアップを受けて選挙戦を展開したという話しは、全く事実に反しています。

前回のボランティアの中に統一教会の信仰をお持ちの方がいたかについては、信仰の自由がありますしので、私が一人一人に確認することはしていません。
この件に関しては、統一教会に限らず、あらゆる宗教についても同様に問うことはしていません。
これは、その方の信仰などが私の選挙、政治活動に影響を与えるものでないと考えているためです。

もちろん、特定の宗教や思想を持つ方々のための政策提言などを行ったこともありません。
これは、私の活動をご覧いただければご理解いただけるものと思います。

統一教会が社会的にいろいろと問題がある団体であることは認識しております。
鈴木さんのご意見を踏まえ、今後の課題として、選挙の対応なども含め、弁護士・専門家のアドバイスや私を応援して下さっている支援者の方々と協議していきたいと思います。

今回の取材については、個人名やマニフェスト大賞を出すことは控えて頂きたいと思います。
事実でなく、またマニフェスト大賞とは全く関係ないことで個人名や賞の名前を出されると、私を支えてくださっている方だけでなく、多くの方に迷惑がかかることになります。
鈴木様におかれましても、メディアに携わるお一人として、その点にも十分にご配慮いただければと思います。

この件に関しましては、既に日ごろから親交のある弁護士など、専門家と話をさせていただいています。
記事を出すのならば、その内容について、弁護士・専門家などと検討し、事実に反する内容があれば、名誉棄損なども含め、法的な対応をさせていただきます。

足立区議会議員 長谷川 たかこ


 政治家がどのような団体の支援を受けているかは、有権者にとって重要な判断材料の一つである。公職にある者の責任としても、自らの支援者の中にカルト集団が組織的に入り込んでいるとなれば、普通は重大問題と考えて然るべきである。

 しかし長谷川区議は、本紙の取材を受けても事実確認や再発防止への意思表示すらせず、尚且つ実際には本紙の取材に於いて、連絡を取り合える関係にある小林氏について「どの人の事を言っているのか判らない」などと、とぼけてみせていた。それでいて、自分の名前が記事に出ると知った途端に、この問題について支援者などと「協議していきたい」と言い出し、記事にすれば「弁護士」だの「法的な対応」だのと言い出す始末である。

 これでは、有権者に「有権者の利益や政治家としての筋より自己保身の方が大事なのか」と受け止められかねないのではないか。

◆民主党中央本部顧問弁護士からの催告書

 6月10日夜、長谷川区議の代理人弁護士から催告書がFAXされてきた。
 FAXは催告人である長谷川区議の代理人弁護士9人の連名となっており、以下の内容だった。

          催告書
 謹啓 時下ますますご盛栄の段、お慶び申し上げます。 
 当職らは、今般、足立区議会議員長谷川貴子氏(以下「催告人」といいます)から、貴殿が統一教会問題担当デスクと務めておられる『やや日刊カルト新聞』からの取材対応に関する一切の件を受任いたしました。
 以下、貴殿から2011年6月4日に催告人宛てに送付されたFAX記載の質問事項に対してお答え致します。

(質問1)
 まず、大前提として、催告人は、2007年の足立区議会議員選挙において、統一教会足立教会の信者から、それと知りながら選挙運動のボランティアとしてお手伝いとしてもらったという認識はございませんし、統一教会から団体としての支援を受けた事実もありません。
 但し、催告人は、先日貴殿からご連絡いただいた後、K氏に関し、自分なりにウェブなどで調べたところ、やはり、貴殿ご指摘のとおり、どうやらK氏が統一教会の信者らしいという認識を持つに至りました。
 催告人は、自らの政策に共感していただき、ボランティアで選挙をお手伝いいただける方個々人の宗教や宗派等について確認することはしておりませんでしたので、2007年の足立区議会議員選挙においてボランティアとしてお手伝いしてもらったK氏が統一教会の信者であることは全く知らず、K氏からも聞いたことはありませんでした。 
 しかしながら、統一教会が霊感商法等様々な問題を起こしている団体であるということは催告人としても認識しているところであり、結果として、統一教会の信者にボランティアといえども選挙応援をしてもらったことは、催告人としても本意ではなく、不適切なことであったと反省をしております。
 もちろん。催告人としては、統一教会の信者や統一教会とは何ら関わい合いを持つつもりもございません。
 したがいまして、今後は、K氏とは関わり合いを持たないようにしていきたいと考えております。

(質問2)
 催告人は、2007年の区議会議員当選も後も。統一教会足立教会や地下1階のビデオセンターに立ち寄ったことは一度もございません。

(質問3)
 催告人は、統一教会足立教会の礼拝に参加したり、挨拶したことはありません。

(質問4)
 催告人は、ご指摘の決起集会に動員を要請した事実はありません。


 以上のとおり、貴殿からのご質問にお答え致します。
 つきましては、催告人が統一教会と何らかの関係があると誤信させるような記事を掲載する等の言動は厳にお控え下さるよぷここに催告致します。 
 なお、本件については、当職らが一切を受任しておりますので、今後のご連絡は催告人ではなく当職らにしていただきますようお願いいたします。  
                                 敬具
(以下、催告人長谷川貴子氏と催告人代理人弁護士9人の名前が記載)

 同日夜、催告人代理人の吉峯弁護士から記者の携帯に電話があった。

 吉峯氏は民主党中央本部の顧問弁護士で、地方議員からも本部に相談があれば代理人も務めるそうだ。

 吉峯弁護士からは催告書の内容について改めて記者に対し「誤信にならないように」等の念押しがあった。但し、吉峯弁護士は、長谷川区議とは「付き合いが深いわけではない」から「別に調べてということはないけど」と話し「では長谷川区議と統一協会との関係について実際にどうであったかについては分からないのではないか」と問うと、この点については「分からないね、本人から聞いた話だけで」という答えであったと附言する。【つづく

11 件のコメント:

  1. オホーツク海岸の論客2011年6月20日 23:57

    まだ続きますか。
    このノンフィクション、結末はどうなることやら……

    最後まで読ませてもらいます。

    返信削除
  2. 説明することをせずに脅迫ですか。
    いずれにしても、この政治家と統一教会の密接な関係を強く疑わざるを得ないですよね。
    誤解というなら誤解を招かないように改善すればいいだけの話なのに。

    返信削除
  3. 統一教会が違法な活動を継続出来ているのは、この区議のような政治家が国や地方に居るからだと思います。以前、橋本龍太郎首相(当時)から「運動員が必要なら統一教会を紹介しようか」と言われた新人議員がいたと聞きました。
    謀略組織の本質的実態に迫る報道の継続にエールを送ります。

    返信削除
  4. 統一協会の政治戦術の一環を白日の下に晒したルポですね、すごいです。
    現状足立区で統一協会が動員できる人員、票はどの程度かわかりませんが、議員一人くらいなら押し込めるのでしょうか?

    返信削除
  5. ストーカー(異性間)を禁じる法律はあるが,付きまといを禁止する法律がありません。かつて,イラクへ自衛隊を派遣するかどうか議論されていたとき,民主党関係者が自衛隊と思しき人に付きまとわれたそうです。カルト集団は国際勝共連合,創価学会,かつてのオームなど,社会に相当浸透しております。社会不安を招くばかりか,こうした勢力を公安警察が利用しているとも聞きます。公安の仕事の洗い直し,カルト法の制定(憲法を参考にしながら,他者への嫌がらせ,脅迫等の禁止)などを是非お願いします。

    返信削除
  6. 違法行為をも「正しいこと」と思い込まされて活動するのがカルトです。現行法規で対処すべきです。軽犯罪法には「つきまとい」罪(第1条第28号)があり、自治体にも迷惑防止条例などがあります。違法行為がなくなった団体の存在は、許されるべきです。カルト規制法などで国民の自由をさらに制限する必要はありません。

    返信削除
  7. 長谷川議員の主張が真実であるならば、統一協会についてちゃんと調べたほうがいいですね。

    そして、この組織がいかなる組織であるかをわきまえたら、長谷川議員は保身よりも捨て身で統一協会を断ち切って、それが真実であるための行動にでるのがいいです。

    法的に抑え込もうとしたりするのではなく、一体どれほどの事がこの組織の手によってなされてきたかを知り、自分がその組織と関わってしまったものとして、むしろ被害者たちの声を聞いてあげるのがいいでしょう。

    足立区で行われている統一協会の活動内容も情報収集してみたりするのも、議員の役目だと思いますが。
    とにかく、こうなった以上は「関係ない」では済みません。
    多くの被害者たちの思いが背景にあるこの『カルト新聞』を力で抑えつけてはだめです。
    生身の長谷川議員の人間性と人格性が問われているのですから。

    すでに長谷川議員が統一協会の深く深く関わり過ぎているのであれば、力で抑えつけるしか方法はないでしょうけど。

    返信削除
  8. 宗教団体のことはさ、
    どうせ集票組織としての認識しか
    ないでしょ?政治家は。

    世間知らずのあほらしい記事だねw

    この件で統一教会や区議を
    責めても意味はないんじゃないか?

    統一を責めるなら韓国まで行って
    文鮮明どもを責めてこいよ。

    日本の信者はある意味で統一の
    被害者だと思うけどね。

    文鮮明などという俗物に帰依する
    なんて気の毒でならないよ。

    返信削除
  9. >統一を責めるなら韓国まで行って
    >文鮮明どもを責めてこいよ。
    >日本の信者はある意味で統一の
    >被害者だと思うけどね。

    信者が被害者で可哀想と思えば、統一教会信者達が被害者であるという自覚を持てるようにしてあげたほうが良いと思います。
    韓国に行ってメシヤに文句を言わなくても崇める者がいなくなれば良いのでは無いでしょうか。

     被害者と気付けない信者さん達の為にも、加害者となっているのに自覚できない方の為にも、よろしくお願いいたします。

    まだ記事を読んでいないのにコメントだけっして申し訳ありません。

    返信削除
  10. 最近。「しあわせな家庭をつくる会」からチラシを貰いました。「家系のおはなし」の講演会が自治会館で行われるようです。
    この団体は統一教会の団体なのでしょうか?
    勧誘の人に聞いてもお答えいただけませんでした。

    返信削除
  11. >『訴えるぞ』

    記事に書いてある事(長谷川区議が統一教会に賛同している旨)は、統一教会が教団信者に吹聴していた事であり、この記事はそれを伝えているにすぎません。名誉棄損で訴えるのであれば、当然、「統一教会を」というのが筋ですよね。

    正体を隠して権力に擦り寄り、その権威を利用して構成員を勧誘するのは、統一教会に限らずあらゆるカルト団体が使う手ですが、その中でも統一教会はその近寄り方のステルス性、テクニックたるや日本一ではないかと思います。歴史と伝統があります。

    自民党あたりは与党時代散々狙われてきたので最近では警戒しているようですが、民主党や地方議員などはまだまだ脇が甘いのではないでしょうか。

    そういった意味では、今の段階で長谷川議員を責めるのも酷なような気もします。ある意味被害者なのかもしれませんし。

    問題は統一教会であると気づいた後ですね。統一教会は長谷川議員のネームバリューを利用して信者を勧誘しています。「現役の区議会議員も賛同しているのだから」などと言われ勧誘された信者さんが、言葉巧みに違法行為や犯罪行為を行う組織の構成員にさせられてしまう可能性があるという事です。
    そういった危険性に晒されている信者さんに対して、長谷川議員がどの様なメッセージを発信できるのか。
    記事の続きに期待したいと思います。

    返信削除