神世界詐欺事件・第3回公判、弁護人がぐだぐだ尋問

横浜地裁

　「神世界」グループの霊感商法事件で9月2日、関連会社「E2（イースクエア）」の代表である杉本明枝被告（現姓＝吉田）の第3回公判が横浜地方裁判所で開かれ、被害者への証人尋問が行われました。神世界をめぐっては現在、教祖はじめ4人の幹部に逮捕状が出て、新たに教祖の妻と幹部の2名が逮捕されています。杉本被告は今年3月にすでに逮捕されていました。


■「人として心を改めて欲しい」

　本紙既報（神世界事件：吉田明枝（杉本明枝）初公判）のとおり、杉本被告は3人の被害者に対して、「子狐が取り憑いているのが視力低下の原因」などとして計650万円、「（病気の）原因は先祖の霊」「小さい蛇の霊が取り憑いている」などとして50万円、「会社がある場所は、刑場であった」などとして490万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で立件されています。8月2日、第3回公判では、2人目の被害者が証言台に立ちました。



神世界の青山サロン

 　検察側の主尋問で被害者は、神世界の関連のヒーリングサロンで関係者から「これは会社だ。宗教ではない」と言われたと証言。被害者の持病について「サロンに通えばよくなる」などと言われたと証言しました。また検察側から「騙されたことについて（そうと気づいたとき）、どう思っていた？」と尋ねられた証人は、こう答えました。

「自分にできることはないし、泣き寝入りというか、もう関わらないでおこうと思った。（杉本被告には）人として心を改めて欲しい」

■弁護側の尋問はぐだぐだ



杉本明枝被告

 　約90分の主尋問の後、昼休みを挟んでから、弁護側から反対尋問が行われました。しかし、すでに裁判に提出されている資料に掲載されているような日付等を記憶しているかどうか尋ねるような質問や、「宗教」の定義をどう考えているのか、神世界での「御霊光（ヒーリングみたいなもの）」の力は杉本被告の力なのか神様の力なのか等々、被害に関連する事実関係を明らかにする質問とは思えないものが延々と続いただけでした。

　その中では、「検察官との打ち合わせで陳述書を見せられて初めて思い出したようなことはないのか？」「被害を申し出たきっかけは刑事に言われたからではないのか？」など、暗に、警察が「創り上げた事件」であるかのように言いたそうな質問も出ていました。しかしこの点も、警察の創作だということを立証するというほど突っ込んで質問していたわけでもなく、最後まで反対尋問の目的がハッキリしませんでした。

　また弁護人の一人は、「（神世界に関わった）きっかけは勧誘者であっても、最後に決めたのは自分の意思ではないのか」と自己責任論をアピールしたり、「何かを誰かにお願いしたら、何かしらのお礼をするのが当然じゃないんですか？」と、詐取したとされる50万円は、支払って当然のカネだったかのような発言もしていました。この質問については、証人はこう答えています。

「当然といえば当然ですが、それが10円なのか100万円なのかという違いがあると思います」

　それに、病気を治す力も知識もない人間がさも病気を治せるかのように言っていただけなのであれば、そもそも10円だって払う筋合いはないでしょう。これは、「お礼をするのが当然」であるかどうかを争っている裁判ではなく、杉本被告が詐欺罪に問われている裁判です。

　被告人は無罪を主張していますが、この日の証人尋問からは、弁護人が何を根拠にどういう理屈で無罪にもっていこうとしているのか、全く見えてきませんでした。