無量寿寺が抗議？ 加東市市議がブログのコメントを全削除

藤尾市議のブログに掲載されたコメント削除の報告

兵庫県加東市に総本山を置く「念佛宗三寶山無量壽寺」（以下、無量寿寺）について、地元の藤尾潔市議会議員が2008年にブログで言及。以降、コメント欄で断続的に「私は、無量寿寺によって大切な人を失いました」「私は（無量寿寺が原因で）離婚しました」「障害者が入信するには1000万の入会金」「父が、この宗教に入信していますが人が変わったよう」といった情報が投稿されてきました。ところが今年9月5日、藤尾市議は「運営のほうに削除要請があったとのことで、削除しなければブログの公開ができない状況」として、これらのコメントを全て削除してしまいました。


■ダイヤモンド社を訴えた、あの教団

無量寿寺は、兵庫県加東市に総本山を置く仏教団体。ネット上では批判も多く、被害相談を受けた宗教者などを通じて、無量寿寺に絡む金銭問題や家族問題に関する情報が漏れ出てきてはいるものの、実際の被害をメディアや裁判において証言する脱会者等がおらず、詳細が不明という団体です。2010年には、『週刊ダイヤモンド』（ダイヤモンド社）が無量寿寺について＜「地獄に落ちるぞ」無量寿寺から脱会しようとした男性信者は、寺側からそう脅されたという＞などとする記事を掲載。無量寿寺側が名誉毀損を理由に京都地裁に提訴し、今年7月にダイヤモンド社が敗訴（賠償金220万円）しましたが、現在ダイヤモンド社側が控訴しています。

この無量寿寺について、総本山がある地元・加東市の藤尾潔市議会議員が自身のブログで2008年で、無量寿寺の法要に参列したことを報告していました。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 2008年11月04日】無量寿寺の落慶法要

１１月１日には畑の三宝山無量寿寺の落慶法要があり、参列してきました。
進出の際の経緯とか、念仏宗自体の性格についていろんな思いを持たれている住民の方もいらっしゃるかと思います。私の今の考え方は、少しでも住民の皆さんの平穏な暮らしに影響が出ないようにしたい、という思いであり、そのためにも知るべきことは知っておかなければいけない、避けていてはいけない、という考えから参列をしました。
（略）

■市議に向けられた悲痛な訴え

これに対して、今年8月23日までに、藤尾市議自身による返信も含めて計29件のコメントが書き込まれていました。いくつか紹介します。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2008年11月13日】念仏宗はカルト教団です (無常楽)
念仏宗　無量寿寺　の実態　
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①社会的地位を利用し、断りがたい立場の人に狙いを絞り、お金は38万必要だが　とてもいい話が聞ける。この様に誘われることすら、得がたいことであり、行けば必ず納得してくれるだろうと、教団名、宗教であることを隠して勧誘する。
②京都へ行けば、２日間にわたり、念仏宗・無量寿寺信者としての（かなり洗脳作用を伴う）教育および儀式を強制的に受けさせられる。
このとき、念仏宗の秘儀というものも教わるが、（太陽を裸眼で見る方法、　化仏、化菩薩を見る方法等で、この秘儀を伝えられたことにより、極楽往生が決定し菩薩の仲間になったと教え込まれる。）　これは普通の生活では経験していないことを教えるだけで、同じようにすれば、誰でも見える。また、徹底した秘密　主義を誓わせ、たとえ家族のものであれ念仏宗無量寿寺で聞いたことを他人に話すと、無間地獄に落ちると脅される。
③釈尊本来の仏教というよりも　浄土系、密教系の複合したもので　開祖、久世太郎（本名　福井真尚、別称　戸倉貞和）教と呼ぶべきものである。ちなみに開祖の前歴は占い師で詐欺による訴訟を神戸地方裁判所にて起こされたこともある。
④念仏宗　無量寿寺の会員（同行という）になると、3人を済度（信者を勧誘すること）するノルマを与えられる。
（略）
⑦念仏宗　無量寿寺　信者にかかる費用（任意も含む）
護持費（会費）1口　2000円・・毎月支払い、口数は各信者の自由意志
その他、地方会費（各地区の別院、檀信徒会館、等施設維持のため）として、信者１人当たり1000円　～5000円/毎月）の支払いがあるようだ。　
回向　（先祖供養等）　一体1口　10000円　（1年に先祖１人につき６回必要）
集中回向　一体　100000円
布施　ボーナス月　7月と12月に　各10000円　
法名　100万円
仏像　一体　100万円
葬儀に届く花代　100万円
御文書　200万円
本堂の柱　寄進　1本　1000万円
他、林間学校、等への布施

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2008年11月13日】切なる願い (沙羅双樹)
（略）
私は、この奇異で悪質な「念仏宗　無量寿寺」によって大切な人を失いました。
三宝山の本山にも行った事があります。

信者が悪いのではありません。
信者の善良な心、純粋に幸せを求める心を利用し、マインドコントロールと脅しによって教えや儀式を奥儀とし、大金を払わせ続け、他言させず、脱する事やその機会を阻む。
また、素晴らしい教えだと思わされた純真な信者ほど、それを親から子、親戚、知人、友人へと（秘密裏に）自分が広めなければという使命感に囚われ、新たな信者獲得に奔走する。

「住民の皆さんの平穏な暮らしに影響が出ないよう」にするには、強い姿勢で立ち向かっていただきたいと思います。
個々の保身では事足りないのです。
なにせ、秘密裏に信者を増やさせるように、教団がすすめているのですから。
じわりじわりとその汚泥が広がっていく事のないよう･･･。
（略）

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2010年06月22日】入信していますが、疑いだらけです。 (ナーガルジュナ)
２年ほど前に知り合いの社長から誘われ、京都へ参りました、その後日本最大級のお寺にも一度行きました。でも空しかったです、どうしてお金をかける必要があるのか？僕はお釈迦様の説かれた仏教を知りたいだけであってそれを教えるのにどうして３８万円も支払う必要があるのか？支払った後もずっと後悔しております。
（略）

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2010年10月26日】カルト無量寿会 (ニモ)
私の家族が熱心な信者です。２ヶ月前に父がなくなり人に迷惑かけたくない為、喪主である私が香典、弔電等一切辞退する家族葬儀をおこないましたが、私の知らない所で信者が勝手に香典を徴収し全額黙って持ち帰りました。とんでもない団体です。
（略）

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2011年01月01日】お願いします (ネコ)
私も大事な人をこの宗教の為に失いました。
結婚するには配偶者も入門しなくてはならないそうです。
(その時点で宗教とは言えない)
（略）
お忙しい中とは存じますがどうぞよろしくお願い申し上げます。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2011年01月06日】ありえないカルト教団 (信者に離婚させられた者)
（略）

私は昨年１２月に離婚しました。
直接の原因は念仏宗です。元嫁の両親から誘いがあった時点で縁を切れば離婚しなくて済んだと思いますが、
色々あり信者の一員となってしまいました。
ところが毎月の請求書、何かあった時には集金にきます。
そんな宗教はカルト教団しかしていません。
自分の子供が身体障害者です。
この障害者が入信するには
世の中の為になっていないから１０００万の入会金だそうです。
仮に１０００万払ったとして、世の中の為になっていないからと言う人種差別は宗教ではあり得ません。
（略）
お願いします。
少しでも抵抗して頂きたいと思っております。
全国の被害者が助けると思っております。
自分は微力ながら手伝いしたいと思っております。
すいません、勝手な事ばかり言って。
宜しくお願い致します。

もちろん、この内容が全て事実かどうかはわかりませんが、市議に対する悲痛な訴えも見られます。

これらに対して、藤尾市議は、以下のように返信していました。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2012年08月23日】Unknown (藤尾潔（管理人）)
コメントありがとうございました。
私自身は、一連の問題について市民の平穏な生活に支障がないか、という視点で物を見ています。

加東市と無量寿寺の間では、進出に当たって協定を取り交わしており、現在の所そういったものに違反しているといった話は聞いていません。

診療所に続いて、現在大学も建設中であり、この前近くの山の山頂から見たところかなり造成も進んでいるように見えました。

宗教自体の是非について、私がコメントする立場にはないと思います。ですので、当たり前のことですが私の書き込みがないから、いろんな意味で被害が無かったとかそういうことではありません。

■「名誉毀損」を理由とした削除要請

ところがこの2週間後の9月5日、藤尾市議は自身の返信も含めて全てのコメントを削除。そしてコメント欄で以下のように説明しました。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2012年09月05日】コメント削除のお断り (藤尾潔（管理人）)
この欄に係るコメントについて、運営のほうに削除要請があったとのことで、削除しなければブログの公開ができない状況となりました。スペースをお借りしている私としては判断の余地はありません。

また、今後　　宗教的な内部の話について、どの書き込みを残す・残さない　という判断はできかねますので、すべて削除させていただきます。全体のブログ運営の観点から、ご理解賜れば幸いです。

削除要請の理由について尋ねた読者からの質問には、藤尾市議はこう答えています。

【加東市議会議員・藤尾潔の直言一本槍 コメント欄 2012年09月06日】Unknown (藤尾潔（管理人）)
このブログのスペースをお借りしているgooの事務局に対して、権利者の方から「この記事へのコメントが名誉毀損に当たる」ということで削除要請があったとのことであり、

事務局もそのおそれがあると判断されたようで、私の所へは事務局より　削除が完了するまではブログの公開を停止します　とご連絡がありました。

私としては、このスペースでブログを続けていくためには、コメントを削除する以外に判断の余地はなかったので、何卒ご理解賜れば　と思っております。

市議会議員がプロバイダに脅されて屈してしまったというわけです。

■市議自身の表現の自由にも圧力

無量寿寺についての批判的な情報・意見への削除要請の理由が「名誉毀損」とのことなので、要請の主は無量寿寺である可能性が高そうです。

名誉毀損については、内容が「真実であり」「公共の利害に関する内容であり」「公益目的でなされたもの」であれば違法ではないという基準が確立されています。一連の書き込みがこの３要件を満たすかどうかを確かめるには、相当が調査が必要なのですが、プロバイダであるgoo事務局はそこまで大々的な調査をしたとでも言うのでしょうか。また、プロバイダ責任制限法では、削除要請等に対してプロバイダが判断を下す際、その前に発信者（この場合はブログ管理者やコメント投稿者）に意見を聞くことが定められています。

プロバイダが市議に対して一方的に「削除が完了するまではブログの公開を停止します」などと通告するという対応は、法的に疑問が残ります。また、それに屈して、市民からの声を全て削除してしまう市議の対応は、公正どころかむしろ一方的に無量寿寺に利する行為でしょう。

批判的な意見や情報が一方的に抹殺されることで市民の表現の自由が阻害され、コメントを消さなければ市議がブログを継続できないという、市議の表現の自由すら阻害されている状況。藤尾市議は無量寿寺について「市民の平穏な生活に支障がないか、という視点で物を見ています」としていますが、これで本当に「市民の平穏な生活に支障がない」のでしょうか。

■浜松市議はブログエントリごと削除

静岡県浜松市の日本共産党浜松市議団長でもある北島さだむ市議のブログ（コメント欄は設置されていません）では、無量寿寺関連のエントリそのものが削除されました。

同ブログには複数の記事があったようで、たとえば2010年9月6日付けで「あの問題の無量寿寺が浜松市役所前に」というタイトルのエントリがありました。「浜松市役所前に全国でトラブルを起こしている無量寿寺の別院が建設されようとしています。」等々の内容だったようです。これも削除されています。

ただし、本紙が北島さだむ市議に取材したところ、削除は無量寿寺側からの抗議を受けてのものではないようです。

「先日（今年7月）にダイヤモンド社が無量寿寺に敗訴した件を受けて、日本共産党市議団の事務局内で“（無量寿寺については）慎重に対応を期すべき”という結論になったため、ひとまず関連の文章を削除しました。事務局に対して抗議等があったのかどうか聞いてはいませんが、最終的な判断は自主的なものです。もっとも、書き方を慎重にすべきだということであって、もう書かないという意味ではありません。重要な問題ですので、今後も機会があればブログでも書いていくつもりです」（北島市議）

抗議を受けての削除ではないようですが、ダイヤモンド社が無量寿寺に一審で敗訴（控訴中）した影響のようです。


参考：削除前の藤尾市議ブログの全コメント（Googleに保存されていたキャッシュより）