統一協会弁護士、小学館を訴え​た裁判で「何故、負の面ばかり強調するのか！」と失笑発言

韓国の“嫁不足対策”???
心の家庭実現運動〇〇委員会のビラ

現在、東京地裁では統一協会（統一教会）が週刊ポストを発行する小学館を名誉棄損で提訴した裁判が進行中だ。

5日午後、民事第703号法廷に於いて行われた弁論で注目の証人尋問があった。

尋問中、被告側証人の大学教授に対して、自身も信者である統一協会側の代理人弁護士が、「何故、負の面ばかり強調するのか！」「地方イコール農村なのか？」などと教授に絡むような質問をして傍聴席の失笑を買う一幕もあった。


◆小学館を提訴

この裁判は、週刊ポスト2010年6月4日号の記事【韓国農民にあてがわれた統一教会・合同結婚式　日本人妻の『SEX地獄』】によって「名誉を著しく棄損された」として、同年11月、世界基督教統一神霊協会が損害賠償と謝罪広告の掲載を求め、発行元の小学館を提訴したものだ。今までに11回開かれている。

この裁判に当たり原告の統一協会側は、合同結婚式で渡韓した日本人女性信者が幸せな生活を送っているとの内容の陳述書を140通以上提出している。

◆櫻井氏への主尋問

この日の弁論では証人尋問がおこなわれた。証人は記事を書いた週刊ポストの角田洋平記者と角田記者から取材を受けた北海道大学大学院教授の櫻井義秀氏だ。

証人尋問は、宗教社会学とアジア宗教文化研究を専門とし、昨年、著“統一教会　日本宣教の戦略と韓日祝福”を宗教社会学者の中西尋子氏（関西学院大学非常勤講師）と共に記した櫻井氏から先におこなわれた。

主尋問で櫻井氏は、小学館側の代理人弁護士の質問に答える形で、統一協会が社会問題化する団体・宗教との概念に相当することや、学問の手続きである中立性・客観性から社会学的調査等により統一協会という教団の構造・活動内容を研究し、その結果として社会問題化している宗教団体として批判的にならざるを得ないと話した。
また櫻井氏は、中西氏と知り合い、共著として“統一教会”を記した経緯や週刊ポストの取材を受けた際のやりとり等についても語った。
櫻井氏は改めて合同結婚式で渡韓した日本人女性信者の状況について、郡部に多くの外国人女性が居住していることなどを確認したことなどを説明した。

◆統一協会弁護士が反対尋問でKY発言

続いて、櫻井氏に対する反対尋問が統一協会側代理人の福本修也弁護士によっておこなわれた。
自身も統一協会の信者である福本弁護士と櫻井教授とのやり取りの一部を傍聴メモから抜粋する。

（櫻井氏がヒアリングしたという現役信者10人が架空の人物ではないかと邪推）

──そういうことに答える信者が居たか疑問なのだが、どうやって現役の信者と？

「統一教会の中には統一教会に批判的な信者もいて、打診してくることもある」

──本を書くに当たっての韓国の現役信者の情報は中西さんからの伝聞のみでしょ？
──ポスト掲載のコメント「韓国に嫁いだ日本人女性信者の多くが貧しい環境の中で厳しい生活を送っている」の「多くが」とはどれくらいの割合を想定して言っているのか？

「教団の方では7000人と言っているし、郡部に居住する女性信者が多いとされることから半数かそれに相当する数ではないか」

──日本語として「多くが」とは普通、過半数を超えていると読むのではないか？

「必ずしもそうではない、1000人でも2000人でも多いことは多い」

──（韓国の人口統計データを示し）これで農村に統一協会の日本人信者が多いと判るのか？

「郡部に居住する男女の比率を見て、都市部と較べた時にどのような生活ぶりになるのであろうかと推測した。経済的に苦しい状況があるのではないかと推測した。本郷人の中にも記載があった」

──群部というのは全て農村なんですか？あなた韓国に行ったことがありますか？郡部を見て回っりましたか？

「郡部が全て農村ということではないが、伝統的な村落社会が残っており主要産業がないとも認識している」

──郡部には主要な産業がない、農業しかないと？

「農業以外にも町工場などはあるが、韓国に於いては地方から都市部に移住者が多く、そういったところに進学先、就職先を求めるということが一般論として言える」

──題名もそうだが、地方イコール農村、そこに嫁いだら農民に、という図式で書かれている。おかしいでしょ

「代表例として書いたのではないか」

──地方イコール農村にすり替えている、郡部に農村は多いかもしれないが、郡部に統一教会信者が多いと思われる、だから農村に住んでいて貧しく且つ厳しい生活の中で過ごしているということになるのか？

「それだけの根拠で推測しているのではなく、本郷人の中に月2万円から3万円の生活費で困窮している状況があったとの記事を基に、大変な生活を送っている人がいるのではと」


──確かににそういう生活を送られている方が居ること自体を否定はしないが、この記事では『その多くが』、表紙には『数千人が農民に嫁いだ』とある。これは事実と違うでしょ？


小学館の代理人弁護士から、記事の見方や見解について証人に尋ねるなど感想を求めるのはおかしいとの指摘が入る。
記者もやり取りを聞いていて、福本弁護士は質問をするというより証人に議論をふっかけている様に感じた。
福本弁護士は「記事の見方ではない、真実性の立証です」と抗弁した。


──『その多くが』『数千人が農民に嫁いだ』これはどういう根拠で言っているんですか？

「人口調査に於いて、地方在住者がおられた。中西さんが郡部で調査をされたということに基づいている」

──都市部に嫁いだ統一教会の信者の実態を調査したことがありますか？

「はい」

──何人？

「先程10人前後と言ったがそのうち半数くらいは」

──その人たちはどうでしたか？貧しく厳しい生活をしてましたか？

「そういう方もいたし、そうでない方もいた」

──そうでない方もいるわけでしょ？じゃあ何故、そういう風に生活に支障云々と、負の面ばかりを強調するのか？

「負の面が問題だということで強調しているのではありません。社会生活を送っている中で、例えば95％の人が平穏な生活を送れる、しかし、5％の人が何らかの苦闘を抱えているのであればその5％に着目して調査をおこなう、これは社会問題研究の通常のやり方であり、別にそれだけを強調しているということではありません、一般のやり方です」


──あなたのコメント「韓国の農村部は長らく深刻な嫁不足に悩み、その対策として送り込まれたのが合同結婚式に参加した～」この根拠は「信仰のない韓国の男性が結婚したいがために合同結婚式に参加している、だからそうなんだ」と先程仰った。参加している男性がどういう目的でどういう条件で参加しているかについて事実かどうかを云々するつもりはないが、それを教団が嫁不足対策として送り込んでいるとは言えないのではないか？参加者がどういう思いでやっているかということと、教団が嫁不足対策として社会政策的な観点から祝福をやっているということにはならないでしょ？主語の逆転があると思いませんか？

「事象を結果的に見て韓国に於いて嫁不足を解消する一助になっている、これは対策の一部になっている面があると思うし、韓国に於いて統一教会に入信する一部の理由として、ポスター等を見てここに加入すれば合同結婚式に参加できて海外の女性と結婚できる、それが日本人女性であるわけですが、そういう形で入信する人が多いということは事実です」

──私が訊いているのは、ここには主語が書いていないが明らかに教団が社会政策として送り込んでいるとしか読めないでしょ？違いませんか？じゃあ誰が送り込んでいるんですか？

「送り込んでいるのは統一教会ですよ」

──でしょ？では送り込んでいるという根拠は？そういう政策の下にやっているという根拠は何処に？

「それは何故、統一教会が日本人女性と信仰歴の余りない韓国人男性とのカップリングを非常に多くしているのかとの背景には、その様な要素があるのではないか」

──それはあなたの推測にすぎない、根拠は何ですかと訊いている。そういう公式発表がありましたか？

「それを公式発表するほど、統一教会はものを考えていない団体ではないと思います」

──「蕩減と贖罪」について角田記者に説明したか

「包括的説明の中で話したと思う」


ここで福本弁護士は、2010年5月11日の赤旗新聞に書かれていた「贖罪と蕩減」を含む箇所が角田記者が書いたデータ原稿と全く同じだと主張した。



──「性の統制」について、宗教として結婚まで純潔を絶対視することは褒められこそすれ批判されることではないと思うが？

「そこの部分が性の統制ではなく、信者同士が結婚後どのような形で性生活に入るのか、そういうところまで事細かく決めているような教団は極めて少ない。その意味で三日行事の作法なるものは性の統制ではないか」

──三日行事は宗教儀式としてやっていることはご存知ですか？宗教儀式として三日儀式をしていること、これが性の統制だと？

「そういうことですね」

──じゃあそれは宗教儀式としては認められないと？人権を侵害していると？

「宗教儀式として認められるか認められないかということではなくて、配偶者選択の点に於いて統一教会が選択する配偶者を拒絶する自由がないということが強制として第一にある。そして三日行事に於いて体位を含めて詳細に決まっており失敗したらやり直さなければいけないとか、そんな教団は他にない。トータルなところで性の統制をおこなっている教団であると結論を出している」

──拒絶する自由がないと言うが拒絶している例はいくらでもある。

「例があることは知っているが、信仰によってメシアが選んでくれた相手を拒絶することができるかというとなかなか心理的なプレッシャーがあって難しいのではないか」

──マッチングを拒否してももう1回受けれますから

「聴き取りから、自由裁量の余地が極めて少ないと考える」

──記事の見出しについて一切言及していないが、角田記者に「タイトルについては統一教会側が突っ込んでくるでしょう」と言ったそうだが、この記事の中で“SEX地獄”に該当する箇所があるか、指摘できますか？

「～地獄というのは修辞的な言い方であり、例えば受験地獄であるとかサラ金地獄であるとか実際それが地獄であるかは別にしてそのような言い方をすることはある」

──そんなことは訊いていない、この本の中にあるかどうか訊いている

「トータルとして韓国に渡った経緯の中でいろんな苦しい生活をしている人の中に性の統制、そのような中身もあると総合的に考えてタイトルを付けたのではないか」

──適切なタイトルだと思うか？

「週刊誌に於いてはといろいんななタイトルの付け方がある、一般論を言っても仕方ない」

──元信者だから教会に対して恨み辛みを持っている人もいると思うが、あなたが調査した中に韓国へお嫁に行って韓国農民と結婚して貧困の中で苦しみSEX地獄に遭った人はいますか？そんな人は見当たらないということですね。

「中西さんが調査し見聞きした中にそのようなことを想像する事例もあるのではないか？総合的に勘案してということで、具体的にこの人この人ということではありません」

◆週刊ポスト記者に「パクってきたね？」

続いておこなわれた週刊ポストの角田記者に対する主尋問では、小学館の代理人弁護士から取材や記事掲載の経緯について事実関係の確認がおこなわれた。

反対尋問で原告側代理人の福本弁護士は、「あなたの作文でしょ？これ」「記事書くのに当たってどっかからパクってきたね？記事をパクってきたでしょ？盗作でしょ？」「最初から取材原稿の段階でその時点から「SEX地獄」に話を持っていく意図が出てるんじゃないの！？」などと発言、角田記者に絡んでいるとしか思えない内容の尋問に終始した。

次回期日は11月7日午前10時、地裁415法廷で最終準備書面を提出し結審することとなった。


韓国では、合同結婚式で渡韓した日本人女性信者によると思われる夫殺人事件が起こっており、この裁判への影響も予想されている。