被告人質問に挑んだ藤倉善郎氏 (法廷画家“BAN苦死慰”氏作) |
傍聴希望者は前回とほぼ同じで21名ほどが並び、著名なジャーナリストの姿もあった。教団関係者はお馴染みの4人衆。
開廷を待つ筆者(手前)の隣に並ぶ幸福の科学職員 (法廷画家“BAN苦死慰”氏作) |
◆裁判の争点を再掲
既報記事にも書いたがこの裁判の争点は以下の7点である。これらの争点を念頭に被告人質問の内容を見てほしい。
・本件の公訴提起が公訴権濫用に当たるか
・被告人の行為は侵入に該当するか
・三浦英俊氏は看守者に当たるか
・被告人に故意があったか
・被告人の行為に違法性があるか
・被告人の行為は正当業務行為に当たるか
・被告人の行為に建造物侵入罪を適用することが取材の自由を侵害し適用違憲となるか
◆主尋問で被告人ジャーナリストが語った理念、取材の正当性、幸福の科学との攻防
被告人弁護団の佐々木大介弁護士による主尋問。被告人藤倉氏が語ったジャーナリストとしての軌跡を伝えるため、かなり長くなるがその発言の要約を列記していく。
主尋問を行う佐々木弁護士(法廷画家“BAN苦死慰”氏作) |
◆ジャーナリストとしての理念から
・ジャーナリスト歴は約20年以上
・取材・執筆活動を始めたのは北海道大学在学時。金銭収奪や詐欺的な勧誘活動を行う自己啓発セミナー会社の問題に力を入れていた
・フリーランスとして日刊ゲンダイに関わっていた時にジャーナリストとしての修業を受けた
・取材時の心構えは、取材趣旨を告げ、身分を隠したり偽ったりせず所属メディアを正直に正々堂々と明かすこと
・批判的記事を書く際には、相手の反発も予想されるが、読者の利益のために取材対象者に忖度したり取材対象者からコントロールされないことを意識している
・宗教団体の記事を書くにあたっては、広報担当がいる時は広報担当者も取材対象とするが、それだけではなく個別の施設、現役信者、辞めた人も含め、現場の雰囲気が判るよう、実態を取材するために取材対象を選ぶことを重視している
・宗教団体以外に取り組んだテーマとしてはチェルノブイリ原発事故取材がある。週刊新潮にルポとグラビアが掲載された
・都内の私立大学で9年前から年に2回、非常勤講師を務めており、学生には「人に話を聞いて教えてもらうことが取材の基本だが、人が語ることが全て真実とは限らない。取材対象者の言うことが本当なのかどうか、他の人にも話を聞いたり物証を求めたりして、他の方法でも裏を取ることが重要」と伝えている
ジャーナリストとしての理念を熱く語る被告人の藤倉氏 (法廷画家“BAN苦死慰”氏作) |
・幸福の科学に関しては信者を動員して行った講談社への烈しい抗議活動のことを知っていたが、2009年に幸福実現党を結党して衆院選で多数の候補者を立てた時に取材したいと思った
・私は幸福の科学の最新の情報に最も詳しいジャーナリストの一人であり、これまで200~300本の記事を書いた。他にはジャーナリストの山田直樹氏が断続的に書いていて、宗教社会学者の塚田穂高氏も論文だけではなく一般向けの書籍や雑誌に書いている
・幸福の科学について報道できるジャーナリストが少ないのは、90年代に教団が起こしたフライデー事件でのFAX攻撃事件を知っている大手メディアやジャーナリストが萎縮してしまい、書かなくなったから。幸福の科学について書こうとする雑誌やジャーナリストに対し、教団は記事が載る前に厳しい警告を送って記事が載らないようにしたり、掲載後に強い言葉で抗議して2度と載せたくないと思わせるようにしてきた
・教団は批判的報道を出させないために、組織を挙げて過激な抗議活動や威圧的な取材妨害をする。数年前、教団に批判的なコラムを書いた大学教員に対し、許可なく大学建物に侵入し大声で騒ぎ立てた。巨大なグループ組織であり、組織力を使って批判を封じようとする過激な手法で活動することも幸福の科学を取材しなければならない理由の一つ
・幸福の科学は「地球上で最高の権限を持つ至高神」を自称する大川隆法への個人崇拝色が強い組織◆新潮記事は“虐待としか思えない”教団の2世問題を世に問うため
・幸福の科学取材歴は11年。教団内部では2世問題を始めとする人権侵害や家庭崩壊など深刻な問題があり、そういう部分をしっかり世に伝えたい
・2世問題として判断力が身についていない信者の子どもたちは、親の強制などによって大学の認可を受けないハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)へ入り、進学や就職も放棄しているが、HSUへの“進学”が素晴らしいことだと思い込まされている
・2012年11月15日発売の週刊新潮に書いた記事『〈特別読物 文科省も県もお手上げ! 子供に嘘を刷り込むデタラメ授業! 「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉』について、翌12月に幸福の科学学園から名誉棄損訴訟を起こされた
・当該記事で示したのは3つの問題
① 幸福の学園那須校で歴史の授業で坂本龍馬の過去世は劉備玄徳などと大川隆法の霊言に基づく史実に反したでたらめな内容を教えていたという学習指導要領からの逸脱
② 幸福実現党から選挙に立候補したことのある教員が生徒たちに幸福実現党の力を伸ばして世の中を良くするんだとの趣旨の授業や幸福実現党宣言という大川隆法の著書を読ませてレポートを書かせるなど教育基本法が禁じる特定の政党を支持する政治教育が行われている
③ 寮のルールを破った生徒に対して授業に出させず寮の空き部屋に隔離し延々と大川隆法の説法DVDを観せて反省文を書かせる独房懲罰
学園の児童虐待としか思えない実態をしっかり世に問うて、学校を認可している栃木県に是正のための努力をしてもらいたいという思いで書いた
・前回の証人尋問での渡邊氏の「(新潮の記事を読んだ)幸福の科学学園の子どもたちが可哀想」との発言は全く逆。学園で子どもたちに可哀想なことしているのは幸福の科学や幸福の科学学園の方である。子どもたちがこの状況から脱することができるようにとの趣旨で記事を書いた
・2009年、広報局部長の渡邊伸幸氏からレクチャーを受け、幸福の科学学園那須校、宇都宮未来館、総本山正心館、東京正心館の各施設を案内された。自由ではなかったが写真は撮らせてもらった。「神聖なものだから」との理由で礼拝堂やご本尊は撮らないように言われたが、教義にその旨の記述はない。教団自身がご本尊や礼拝堂内で撮った写真や映像をインターネットで公開しており、信者も記念撮影をしている。職員の了解を得て参拝所やご本尊の撮影をしたことがあり、広報局の許可を得て東京正心館を撮影して記事にし、それとは別に京都の支部長から許可を得てご本尊が映る形でスピーチを撮影してYouTubeに公開した際も、抗議や削除要請はなかった。他の教団からは本尊や参拝施設を撮影しないよう言われたことはない。個別の施設や信者への取材活動は広報を通すように言われた。ここまでコントロールしてくることは他の宗教団体の取材ではなかった◆取材拒否対応へ至る経緯、際立つ教団側の批判報道封じの異様さ
・私の著書「「カルト宗教」取材したらこうだった」では、幸福の科学が全国の教団施設建設の反対運動をする住民に訴訟を仄めかし脅して批判を止めさせようとしたいくつかのケースを紹介し、大川隆法の出生地の周辺で大川の評判がよろしくないとの現地取材レポートも書いた
・2012年8月頃から幸福の科学の取材対応が悪くなっていった。取材拒否対応は週刊新潮発売の同年11月15日直後から。広報局の森部長から民事訴訟を起こすことと今後幸福の科学の施設や行事への立ち入りを禁止する旨の電話があり、以降は広報局に電話をしても不対応。2014年に幸福の科学大学開学の認可について、諮問委員会が認可を不可とした際も取材申し入れの電話の途中でガチャリと切られた
・新潮の記事への名誉棄損訴訟の請求額は1億円。2014年12月の判決で記事の内容すべての真実性と相当性が認められ、幸福の科学学園側が敗訴した。学園は控訴したが高裁でも敗訴、上告も受理せず学園側の完全敗訴が確定した
・以降も取材対応は変わらず。どのような内容の取材も非対応で、今現在まで続いている
・2012年12月の名誉棄損訴訟提起の翌13年8月、大川隆法が藤倉善郎の守護霊を降ろしたと称する霊言本『「仏説・降魔経」現象編: 「新潮の悪魔」をパトリオットする』を出版。霊言とは誰かの霊を降ろして大川隆法やチャネラー役の教団関係者の口を通じて喋らせた内容と称するもの。坂本龍馬、ノストラダムス、日蓮、ローラ、木村拓哉、ドナルド・トランプ、安倍晋三、といった歴史上の人物、芸能人、存命中の政治家の他に明治天皇、昭和天皇、今上天皇の霊言も
・私の霊言本はチャネラー役の教団職員に私の霊を入れて喋らせ、渡邊氏、里村氏(常務理事・広報担当)、小林氏(元広報本部長でその後幸福実現党幹部に抜擢)など他の教団職員たちがバカにしたりこき下ろす内容。藤倉善郎の霊を降ろしたと称するチャネラー役の話す言葉、態度、話す内容がすべて私とは全く違っていて馬鹿馬鹿しくて呆れた。取材対象にお金をせびるブラックジャーナリストであるかのような内容が含まれており、全く事実無根で誹謗中傷だと思った
・2018年に週刊東洋経済の宗教特集で幸福の科学について書いた際、幸福の科学は「なぜこのようなライターを使うのか」との趣旨で週刊東洋経済本社前において抗議のビラ配りをした
・カルト宗教や幸福の科学について長年取材し記事を書いていて詳しいと周知されているため、多くのメディアからコメントを求められる。コメント記事が掲載されたメディアは週刊新潮、日刊ゲンダイ、月刊サイゾー、週刊SPA、アサヒ芸能、週刊実話、神奈川新聞、東京新聞、朝日新聞、テレビのワイドショーなど
・幸福の科学以外に批判的な記事を書いた取材対象団体は、統一教会、オウム真理教(ひかりの輪、アーレフ)、神世界、創価学会、ホームオブハート、ライフスペースなどがある。批判的な記事を書いた場合も団体側の多くは無視し、わざわざ抗議文を送ってくることはない。幸福の科学は抗議をしてくる他、取材に対する妨害活動を露骨にしてくる。具体的には公道で大川隆法が行う選挙街宣の取材時に、複数の職員が取り囲んでカメラを遮るだけではなくカメラや身体を押さえつけるという暴力的な取材妨害を受けた
・2017年10月の通告書には「教団所有の立ち入り禁止の参道(私有地)に立ち入り違法行為を行った」とあるが、事実ではない。港区白金にある幸福の科学施設で大川隆法の住居とされる大悟館前へ外観の写真と映像を撮るために取材に行き大悟館の周りをまわったが参道には一切立ち入っていない
・その後に何度か大悟館へ外観写真を撮りに取材に行ったが、約10人の教団職員が出てきてカメラを遮ったり、同行したメディア関係者やカメラマンに詰め寄って大声で威嚇するなど付き纏い、取材の邪魔をしてきた
・これまで数えきれないほど多くの幸福の科学の施設に行った。2012年の出入り禁止電話以降では、那須精舎、宇都宮未来館、箱根精舎、徳島の聖地・川島特別支部、四国正心館、東京正心館。広報局から取材拒否と言われても、施設に行くのを止めようとは思わなかった。広報局を通した取材だけでは宗教団体の実態は判らない、広報局とは関係なくそれぞれの施設で建物や信者の活動を見たり話をする現場取材が欠かせないため
・手配書が回っているとの趣旨は職員から聞かされたことがある
・広報局から立ち入り禁止とされていても、実際に行ってみると施設によって状況や職員の対応は違っていて、入れるケースはあった。初転法輪記念館以外に、箱根精舎、徳島の聖地・川島特別支部、聖地・四国正心館に入ることができた。素性を隠したり、職員の隙を突いて入ったことはない。他の信者と同じように開館時間中に正面から入った。箱根精舎では受付カウンターに職員がおらず、物販コーナーで書籍をいただき祭壇にお布施して本尊に一礼して出てきた。川島特別支部では、職員に名前を書くよう言われ書いて入った。礼拝室へ通され礼拝して記念写真を撮りお布施して展示物を見て帰った。四国正心館は受付カウンターに職員がいたが、名前を書くよう言われず、声かけもなくそのまま入り物販コーナーや食堂を見て書籍をいただきお布施をして祭壇に一礼して帰った。取材目的であり正当なジャーナリストとしての活動なので隠し立てをすることなく正々堂々とやりたいため、変装したり偽名を使って入ろうとしたことはない◆初転法輪記念館取材の経緯が明かされる
・立ち入って建造物侵入罪に問われている初転法輪記念館は精舎の一つで大川隆法が初めて説法を行った歴史的な場所。幸福の科学は精舎のことを「神社仏閣と同じようにどなたでも参拝できます」とHP等に掲載しており、渡邊氏からもそのように聞いていた。2017年12月半ば、幸福の科学が全国に500近くにあった支部の1割ほどを突然閉鎖し、閉鎖された施設やこれから閉鎖されかねない施設の状況を確認したり情報を整理することを始めていた。中には重要な施設が無くなってしまうケースもあるのではと思い、見に行けるものは見に行きたいと思っていた。その中の一つ。初転法輪記念館は建物すべてを幸福の科学が所有しており、職員が常駐していることは知っていたが、何階に参拝所があり何階に事務所があるかなどの使用形態、詳しい構造や使い方は知らなかった。当日、現地に行く前から中に入ろうとは決めていなかった。他の精舎にみられるパルテノン神殿のような装飾が無く古いアパートのような外観写真を10枚ほど撮った後、1階の外階段の壁の案内板に「ようこそ初転法輪記念館へ 参拝の方は4階にお上がりください」と書かれていたのを読み、誰でも入れるようにしてあるのだと思った。四国正心館でも「どなたでもご参拝ください」と書かれた看板を見た記憶があるが、「ようこそ」という積極的な看板を見たのはこの時が初めて
・初転法輪記念館は建物の外階段を通って4階の礼拝室に行く構造。階段を登る時点でも、中に入ろうという意思はなかった。4階のドアは青く塗られた鉄扉ですりガラスが嵌まっていた。中は見えず、中からの反応もなかった。鉄扉を開けたのは、他の施設と同じように受付があったり職員がいたりするのだろうと思い、職員に入ってよいか訊いてみようと思ったから。開けてみると、受付もなく誰もいなかった。「ここは大川隆法が初めて説法をした歴史的な場所ということで、誰でも入って構わない状態にしているのだろう」と思った。ドアを開けて中の状況を見て、自分も入れる施設だと思った。ドアを開けた時に人感センサ―の音は鳴らず、ドアの内側に「祈願中、入室はご遠慮ください」と書かれたプレートが貼ってあるのに気付いたが、これは室内で祈願をしている時にドアの外側に貼って祈願中に出入りをさせないようにするもので、祈願中ではなかったので誰でも入っていいと思った。まず、一番奥まで行って写真を撮った。厳かな環境音楽のBGMが流れており、いつ誰が来ても公開している趣旨だと思った。禁止事項「許可なく取材(ブログ等へのアップ)、録音録画写真撮影することは固くお断りさせていただきます」が書かれた下駄箱の上方の貼り紙には入室時、気付かなかった。職員が来ないうちに内部の写真を撮ってしまおうとの考えはなかった。持って行ったのは狭い道路に面した建物を撮るためのワイドレンズを付けた大きな一眼レフカメラ
・防犯カメラがあることは気付かなかった。建物内部の写真を一通り撮った後は最後に軽くご本尊に一礼して帰ろうと思っていた。幸福の科学の信仰はないが取材先への礼儀として最低限軽く頭を下げる程度の挨拶はご本尊にしていくべきだと思っていた。他の施設でも同様。実際には、足音や人の気配がして振り向くと五明さん(施設職員)が入って来た。「許可のない撮影は禁止です」と言われ「判りました」と答えた。「名前と支部と連絡先を教えてください」と言われ、信者ではない一般の来場者なので「一般ですけど」と返答。「撮影はダメです」と言われ、「案内があったので誰でもいいのかな」と答えた。「いえ駄目なんです」と中で撮った写真を消すよう言われデータを消去し、確認してもらった。その際「ご本尊以外は大丈夫です」と言われた。渡されたチラシの裏のような紙に名前と携帯電話番号を書いた。「受付で声をかけた方がよかったですか」と訊いたところ「いえ大丈夫です」との返答。書かれた藤倉善郎との名前を見ても「外観の写真は大丈夫です」とのみ発言。五明氏は最初はきつめの口調だったがすぐに柔らかな口調に。五明氏からは「藤倉さんは立ち入り禁止です」とか「すぐに出て行ってください」とも言われなかった。「パンフレットをいただけますか」と言ったら「どうぞ」と渡されたので受け取り「お邪魔しました」と言って部屋を出た
◆「略式起訴で罰金」を拒否。裁判官に語った“恐怖”とは
・この時点において建造物侵入罪で立件されるとは思っていなかった。警察から取り調べを受け、「おそらく罰金10万円になると思うが罪を認めれば略式起訴という方法がある」と言われたが、罪を認めるつもりはなかったので「しっかり裁判で審議してほしいので公判してほしい」と答えた佐々木弁護士から、主尋問の最後に裁判所に行っておきたいことを促された藤倉氏の発言。
「私は初転法輪記念館という歴史的なものとして公開されている場所に取材の目的で入りました。正当な目的であって何か疚しい目的をもって入ったものではありません。五明さんから出て行くようにとか入らないでくださいとも一切言われていません。写真は撮らないようにと言われたので、すぐ撮影は止めて既に撮っていた写真も五明さんの指示に従いすぐに消去しました。もともと幸福の科学が私を立ち入り禁止にしたのは、私が週刊新潮で書いた幸福の科学学園の記事が理由でした。この記事は裁判で内容は正しい、問題がないと認められたので、幸福の科学は私が正しい記事を書いたことに対して施設内の取材をさせないという対応をしたというものです。これがもし建造物侵入罪とされてしまうのであれば、ジャーナリストは正しい記事を書くと取材ができなくなるということになってしまいます。これは取材の自由、報道の自由がかなり制限されてしまうことになり、取材の自由、報道の自由が寄与すべき国民の知る権利に寄与できなくなってしまいます。特に幸福の科学を私が長く取材している一番の理由というのは、これだけ多くの人権侵害を含む問題や外部のトラブルを非常に多く抱えた団体であるからなのですが、だからこそ取材しなければいけないのにその取材ができなくなってしまうということは、恐怖に近いものを感じています。これが有罪とされてしまうのであれば、私だけではなく、幸福の科学取材という場面だけでなく、かなり広い範囲でジャーナリストの取材活動というものが制限されてしまうことになります。それは自由で民主的な社会では本来あってはならないことであり、その辺りを裁判所にはご理解いただきたいと思います」
休憩を挟んで検察官による反対尋問。藤倉氏の取材手法や出入り禁止通告の”主体”について尋ねる質問が中心で、被告人の行為の故意性の有無や侵入及び正当業務行為への該当性を突く内容が目立った。以下は検察官と藤倉氏のやり取りを取材メモから。
――取材の計画では(初転法輪記念館)の中に入ることは予定していなかった?
「はい」
――建物の外部から撮影するつもりだった?
「はい」
――何を撮影したのか?
「全体像、看板、ポスター」
――どう使おうと?
「エルビスプロジェクトに限らず、やや日刊カルト新聞や他の一般メディアにも」
――4階に入って写真は何枚撮った?
「30枚くらい」
――動画データのシャッター音は45回聴こえる
――外観写真は使った?
「一番多く使ったのは本件刑事裁判に関わる記事」
(弁45号証を示し)
――録音録画していた動画が提出されているが、これは小型ビデオレコーダーで撮影したものか?
「スマートフォンです」
――どこに所持していたのか?
「ジャケット下のシャツの左側の胸ポケット」
――写真撮影や録音録画が駄目だと事前に判っていたのでは?
「いえ、判りませんでした」
――では、なぜ本件建物に入るだいぶ前からスマートフォンで録音録画していたのか?
「過去、幸福の科学は取材時のことに対して、全く事実と異なる内容で警告文や抗議を書面で送ってきたことがあったので、実際に中に入った時のやり取りや会話は自分自身の身を守るために記録しておく必要を感じていた。中の映像を撮るためではなく、会話を録音することを目的として映像用ソフトを使った」
――五明さんに注意された時もスマートフォンで録音録画していることは言わなかったですね?
「はい、言いませんでした」
――映像も削除してないですね?
「はい」
(禁止事項が書かれた貼り紙の位置及び入る時に外開きのドアの右側にドアノブがあったことを示し)
――入る時に自然と身体が左側を向かないか?
「身体は向くと思います」
――赤い文字で書かれた貼り紙がドアを入って左側を向けばすぐ目に入ってくると思うが?
「ドアを開けた時にすぐ左側を見るということは普段はせず部屋の中を見るので、中に入った時に左側の頭より上に位置にある貼り紙は視界に入らなかった」
――スマートフォンの映像には部屋に入って少し左側の映像が映っているが、左側を向いた記憶はないか?
「ドアを開けて身体が左を向けば左胸ポケットのスマートフォンのカメラの向きは左側に向くと思うが、私の顔はそちらではなく中を向いていたため、貼り紙は視界には入らなかった」
――貼り紙がスマートフォンのカメラに映っていたことは覚えているか?
「いえ」
重箱の隅をつつくような検察官の質問にも 論理的に回答する藤倉氏(法廷画家“BAN苦死慰”氏) |
――2012年11月27日、幸福の科学の広報局森部長から口頭で受けた宗教法人幸福の科学及びグループ施設と行事への出入り禁止について通告している主体はどこだと思ったか?
「厳密には判らないというのが正直なところ。幸福の科学の広報局から電話をいただいているとは思ったが、「幸福の科学グループ全てについて出入り禁止」と森さんが言っていたので、政党とか宗教法人以外の幸福の科学グループの団体というのをなぜ広報局がまとめて仕切っているのか呑み込めなかった。出入り禁止通告の範囲と主体が誰なのかが、その時点でも判りかねるのが正直なところだった」
――教団からの出入り禁止だというのは、理解していたのか?
「森さんがグループという言い方をしていたので、彼らの言い分としてはグループ全てについて入らないでほしいということを言っていたのだろうと理解はできた」
――少なくとも宗教法人の幸福の科学の広報局から電話があったから、宗教法人幸福の科学に出入り禁止だとは思ったか?
「森さんが言っている内容はそういうことだろうとは思った」
――2012年12月8日に宇都宮未来館で入場を断られた時に、自分の入場禁止が宗教法人幸福の科学内で周知されていると思わなかったか?
「未来館には伝わっているのだなと思った」
――地方においても周知が徹底されていると思わなかったか?
「そこは判らなかった」
――このことをやや日刊カルト新聞に書いた記憶は?
「はい」
――やや日刊カルト新聞の2012年12月8日の記事に「受付の女性が藤倉さんの名前を聞いてびっくりして奥にすっ飛んで行った」「藤倉の名を聞いただけでこの反応、出入り禁止の通達はキチンを地方に施設も周知徹底されているようです」と書いたのを覚えているか?
「覚えています」
――ではそう思っていたのでは?
「その時点で宇都宮未来館という地方の施設に周知徹底されているんだという感想を持ったので、読者に解説した」
やや日刊カルト新聞の当該記事を藤倉氏に示そうとした検察官に対し、弁護団長で主任弁護士の紀藤弁護士から「異議あり、証拠開示されていない」と指摘が入る。検察官が「昨日FAX送りました」と返すも、紀藤弁護士は「公判前整理手続きで証拠開示されていない。今回の宗教施設に関するものではない。意味不明。関連性がない」と畳みかけた。検察官は裁判官にも記事を示すことができず、口頭のみの質問に戻る。
紀藤弁護士の“異議”に不満げな検察官 (法廷画家“BAN苦死慰”氏) |
――2014年7月26日、那須精舎でも職員から退去を求められたこともやや日刊カルト新聞に書いた?
「はい」
――「誰でも入れる花火大会ではないんですよ。出てもらえますか?うちの敷地内なので。取材はお断りなので」と言われた記憶は?
「はい」
――「あなただけはダメだ」と言われた?
「はい」
――2015年4月21日付けで藤倉さんとやや日刊カルト新聞関係者の立ち入り禁止の内容証明郵便を受け取った後、5月に箱根精舎へ行って退去を求められた?
「温泉に入りたいと言ったところ『名前を書いて』と言われ、藤倉と書いたら温泉利用を断られた」
――平成29年10月11日付けの内容証明郵便にも立ち入り禁止が改めて通告されている。各施設で入らないでと実際に言われたり内容証明郵便を受けたりした後に幸福の科学の広報局に電話して「本当に自分は立ち入り禁止や取材禁止なんですか」と確認したことはないですね?
「こちらから確認したことはないと思います」
――終わります
◆再主尋問で補足
弁護団による再主尋問での藤倉氏の補足発言
・スマートフォンの録画については、幸福の科学取材の過去の経験からして建物の外部でトラブルが発生したケースもあり、今回もその可能性があるという前提で行動し、当初からスマートフォンで録っていた
・広報局からの立ち入り禁止通告後も幸福の科学施設へ取材に行った際は、現場に行った時にどういう対応になるか様々な可能性に対応できる状態で取材に臨んだ。現役の信者や職員に私の取材に賛同して協力してくれる人も現在、複数いる。教団内で人それぞれの立場や問題意識で私への対応が違うことを経験している。各施設に行った時も、支部長が内面で私の活動を応援してくれている人だったら黙って知らないふりをして入れてくれこともあるだろうし、逆に藤倉をとんでもないと思っている支部長の可能性もある。様々な可能性があるという前提、実際に行ってみないと判らない。行ってみてダメと言われたら大人しく帰るという姿勢
・スマートフォンの録画は殆ど音声ばかりなのは、主目的は録音であり映像は必要ない。写真に関しては一眼レフカメラで堂々と撮っているので、わざわざスマートフォンで隠しながら録る必要はない
裁判官からも質問がなされた。
左陪席裁判官とのやり取り
――手配書が回っていたのは知っていたと言っていたのは、どんなのがどんな風に?
「内容は判りませんでしたが、未来館でのやり取りで手配書回っているのですか?と聞いた時に認めるような反応だった。私の霊言本の映像をいち早く観た際、大川隆法が「手配書が出回っている」的なことを言っていたので2013年8月に写真付きの手配書が出回っていると認識できた」
裁判長とのやり取り
――新潮の記事で立ち入り禁止となる前に取材の方法とか何か立ち入りを咎められたり、写真を撮ってはいけないところで撮って咎められたりしたことは?
「出張先で支部へ行くと渡邊氏から電話で『取材は広報を通して』と言われた。軽くお願いという感じ」
――今回の件の前に立ち入り禁止で警察を呼ばれたことはあったか?
「施設立ち入りではなかった」
――他では?
「大悟館の周りで写真を撮ると幸福の科学が警察を呼んだことはあった。幸福の科学学園取材で2012年に現役生徒の話を訊くため那須のショッピングモールの映画館で幸福の科学映画に動員された生徒に声をかけたら、幸福の科学側が痴漢だと警察に通報して取材をできないようにした。森広報部長から電話で『痴漢として通報したから取材は止めてください』と」
――宗教団体を取材したことがあるというが、新興宗教以外に普通の寺や神社の取材は?
「問題を起こした神社以外の伝統宗教そのものを取材したことはない。基本的にカルト宗教のような人権侵害など社会的問題が私のテーマ」
――入った場所では一礼するとの発言があったが、取材に入った時に撮影していいのかいけないのか入る時に確認しないのか?
「意識はするが、ジャーナリズムの基本的な考えとして一般に公開されているものはジャーナリストが見ても構わないだろうとの認識。『撮影禁止』とあれば一般の人もジャーナリストも皆『撮影禁止』として撮影しない。プライバシーにかかわるものは言われなくても撮影しないし撮影しても公表しない。注意書きがない場合は、信者たちに撮影の制限がなく一般公開であれば一般の人もジャーナリストも同じ制限内だと考え、他の人と同じ条件であるとはっきりしていればいちいち確認はしないが意識はしている」
――一般的に広報の人がいて普通に取材に行くのであればその指示があるとして、一人で入る時、心構えとして撮影することができるか確認した上で撮影するのか、それともとりあえず一般公開だから撮影していいものとして入るのか?
「注意書きなどを見て判断する」
――そういうところに入る時は注意書きがあるか確認すると?
「一番先に確認する優先事項とまでは考えていないが、どんな形であれダメということが判れば従うようにする」
裁判官と被告人のやり取りを熱く見つめる弁護団の御船剛弁護士 (法廷画家“信濃川スペシャル”氏作) |
◆次回証人尋問は日本有数の宗教社会学者、塚田穂高氏
次回公判は2月9日、幸福の科学について最も詳しい宗教社会学者・塚田穂高氏が被告人側の証人として出廷する。
◆クラファン始まる
刑事被告人にされた藤倉氏とそんな藤倉氏の弁護を行う弁護団を支援するためのクラウドファンディングが始まっている。詳細は以下。
クラウドファンディングサイト・MOTION GALLERYクラウドファンディング・プラットフォーム『ジャーナリストが一般公開施設を取材したら建造物侵入罪!? 取材・報道の自由を守るための刑事裁判』
冒頭で記したように、10万円の略式起訴を拒否し公判での審議を求めた藤倉氏には多額の弁護費用負担がかかっている。藤倉氏が法廷で発言した通り、この裁判では一部のジャーナリストだけではなく、報道にかかわる全ての人の身に降りかかる問題が扱われている。
全国民にとって他人事ではない本公判の行方に、本紙は引き続き注目していく。
~公判日程~
東京地裁平成30年刑(わ)第1508号
建造物侵入事件 被告人 藤倉善郎
東京地裁715号法廷
第1回(終了)
2020年12月22日13:30~15:30
冒頭手続及び証拠調べ手続
第2回(終了)
2021年1月8日13:30~17:00
証人尋問手続(幸福の科学職員2名)
第3回(終了)
1月19日10:00~12:00
証人尋問手続(幸福の科学職員=元広報局長)
第4回(終了)
1月26日13:30~17:00
被告人質問
第5回
2月9日13:30~17:00
証人尋問手続(宗教社会学者)
第6回
2月17日13:00~15:30
論告・求刑
第7回
3月15日
判決言い渡し(予定)
※裁判や支援の詳細は『幸福の科学取材で刑事被告人にされた藤倉善郎氏を支える会(幸藤会)HP』を参照
~取材協力~
法廷画家“BAN苦死慰”氏
法廷画家“信濃川スペシャル”氏
~関連記事~
ハーバー・ビジネス・オンライン
やや日刊カルト新聞
「洗脳するまで目的は伝えない」起業を夢みてセミナーに通った20代女性の悲惨な末路
返信削除待っていたのは毎月15万円の上納金
https://president.jp/articles/-/42752
○人物編
・街コンで同性の連絡先を大量に集めている
・路上でおいしい店やおすすめの居酒屋を聞いてくる
・「友達が集まる飲み会」といったつながりの不明瞭な集まりに誘ってくる
・「自分が源」「過去は生ゴミ」といった言葉(彼らのセミナーで教え込まれる)を使う
・「起業や経営について学んでいる人物」を紹介しようとしてくる
○店舗編
・メニューが不自然に安い(好立地で小ぎれいなのにハイボールが300円台、カクテルが400円台など。構成員を無給で働かせている場合もあり、それでなくても月15万円回収しているため。ただし普通の価格帯のこともある。)
・一般名詞や地名など、店名が妙にシンプル(団体名と同様の逆SEO目的)
・休日が貸切営業になっている(勧誘パーティーに使っているため)
・店員と常連の仲が不自然に良い
・店員も常連も皆同じ場所に住んでいる(師匠の近所への引っ越しを勧めたり、シェアハウスで集団生活をさせているため)
セミナー? それこの記事に関係ありますか?
削除それより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください
↑幸福の科学アンチヤフー管理者中国の工作員とは、やや日刊カルト新聞では信濃川デラックスのことです。
返信削除>2021年2月1日 18:46
削除幸福の科学に反対している者が🇨🇳の工作員という根拠は何ですか?
それより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください。