この問題は、ドクター・中松(中松義郎)氏が今年3月にチベット仏教ゲルク派の高僧ガンデン・ティパ(ガンデン寺座主の意)から「仏教最高位の金剛大阿闍梨の位」を授かったとしているものです。しかし当のガンデン・ティパは、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所宛の書簡で、そのような事実がないことを明言しました。代表部事務所は7月30日にこの書簡の原文画像と日本語翻訳文をウェブサイト上で公開。これに対して中松氏は8月2日、自身のブログで「金剛大阿闍梨授与の経緯について」と題する反論らしきものを掲載しました。
ブログで中松氏は、代表部事務所が掲載した翻訳文について、このように評しています。
【ドクター・中松の発明BLOG 2010年08月02日】金剛大阿闍梨授与の経緯について
(略)
②ガンデンティパ102世からの手紙について
1.日本語訳が全く違い、故意にラクパ・ツォコ氏の主張(ガンデンティパ102世の手紙中にはない)を入れている。
(略)
ここに登場するラクパ・ツォコ氏とは、代表部事務所の代表です。要するに中松氏は、ラクパ・ツォコ氏がガンデン・ティパの手紙の内容を故意に歪めて翻訳していると主張しているわけです。
■翻訳文を比較してみる
では、両者の翻訳文を比較してみましょう。
【ダライ・ラマ法王日本代表部事務所 2010年07月30日】チベット仏教ゲルク派・ガンデン座主からのお知らせ
ダライ・ラマ法王日本代表部事務所 ラクパ代表へ
最近の中松氏との出来事に関して、ご連絡を頂きどうもありがとうございます。この件に関して説明させていただきます。
中松氏とは以前からの面識があるものでもなければ、特別な関係をもっているものでもありません。常時、私のところには様々な方がいらっしゃいます、彼もそのひとりにすぎません。私が彼をわざわざここまで呼んで、帽子と金剛大阿闍梨の地位を授けたものでもありません。誰もが知っているように、ガンデン座主にそのような権限もなければ、伝統的風習もありません。彼は帽子を持参し、写真を撮らせてください、と私のところにいらっしゃいました。その彼の希望にそっただけです。その後、一部の会員に渡すための賞状にサインしてくださいと頼まれ、サインをいたしました。中松氏が私およびゲルク派の名前を装い、金剛大阿闍梨の地位を授かったという情報を流すことは正しくありませんので、各関係者に正しくお知らせいただきますようお願い申し上げます。この件に関してのすべての権限は、あなた(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所代表)に委ねます。ご協力どうぞよろしくお願い申し上げます。
2010年7月10日
ガンデン座主:リソン・トゥプテン・ニマ
【ドクター・中松の発明BLOG 2010年08月02日】金剛大阿闍梨授与の経緯について
あなた(ダライ・ラマ日本代表部事務所代表ラクパ・ツォコ氏)からのお問合せ(ドクター・中松は修行しないでもらったから、金剛大阿闍梨がニセモノではないか)に対し、下記の如くお答えします。
私は現在彼と連絡していませんが、私は確かに以前、ニューデリーで彼にお会いしました。
ご存知のようにチベット僧の場合、20年仏教哲学を勉強した後で証書を与えられます。
しかし外国人の場合、非常に立派な人には与えられます。
今回の場合は、推薦者(テンジン哲学博士)から彼(ドクター・中松)が、日本で非常に立派な著名人であり、創造者として世界に貢献していると聞いて証書(金剛大阿闍梨)にサインしました。
同じ文章を翻訳したとは思えないほど、全く違う内容になっています。こうなると、どちらか一方の翻訳が完全な捏造ということになります。
■別の人に翻訳をお願いしてみました
そこで本紙では、広島県広島市にある「文殊師利大乗仏教会(デプン・ゴマン学堂日本事務局)」の野村正次郎・事務局長に、ガンデン・ティパの手紙の翻訳をお願いしました。まずは、その翻訳をご覧ください。
【野村正次郎・事務局長による翻訳 2010年08月06日】
智慧が広大にして無比なる日本代表 ラクパ殿下様へ
謹んで申し上げます。先日はナカマツおよび関係者のいくつかの状況を重要な問題とご高配の上、お知らせ頂きましたことを御礼申し上げます。その件につきまして私の方から説明申し上げます。
ナカマツとは以前から面識は全くなく、現在も彼とは何らの特別な関係もありません。常時私のもとに会いにくる多くの人々と同じように、彼とも会いましたが、私の側から彼をデリーに呼び、帽子および金剛阿闍梨の地位を与えた等といったことは一切ありません。みなさまもご存知の通り、ガンデンティパにはそのようなことをすべき権限および伝統・習慣はございません。
またはじめに彼が会いに来た時点で帽子をもってきておりましたし、私と一緒に写真を撮りたいと頼まれましたので、その願い通りに写真を撮りました。それと同じように会のメンバーの何人かに渡そうとしているいくつかの免状に署名をして欲しいと言うのでその通りに署名をしました。
しかしながら、以上のこと以外にはナカマツが私ならびにゲルク派の名称を使用して、広報活動を行っているものについては事実ではありません。その旨を関係各位のすべての方に説明して頂けますように、お願い申し上げます。またそのようになさるためのすべての権限を貴殿に委ねさせていただきますので、その旨ご高配賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。
「ガンデン・ティパ」の名を戴く者、リゾン・セートゥル・トゥプテン・ニマ
2010年7月10日
(公印)(署名)
(訳者注)書状本文には「ナカモツ」とあるが、これは中松氏のことであろう。通常チベット語では人の名称を呼び捨てにて書くことはないが、「~氏」「~さん」にあたるような修飾語すら付けられていない。
言い回しなどに多少の差はあるものの(翻訳者が違うので当然ですが)、内容的には代表部事務所の翻訳と全く同じです。
「中松氏が発表している翻訳は代表部のサイトに掲載されているガンデン・ティパの手紙とはまったく別物です。翻訳としては“おはよう”と“こんばんわ”を訳し間違えるというよりもっとひどい。多くの日本人がチベット語を読めないからといってこれはだめですね。もし中松氏が言っているような内容の手紙が別にあるなら、その原文を掲載してほしいものです」(野村氏)
「訳者注」にあるように、ガンデン・ティパが中松氏の名を「ナカモツ」と間違えている点と、呼び捨てにしている点は、代表部事務所の訳と違っています。おそらく代表部事務所が翻訳の際、中松氏の名誉を不必要に傷つけないように配慮した結果でしょう。
「チベット語では非常に敬語を重視しますので、中国政府の役人の名前ですら敬称が付けられる方が多いわけです。だからガンデン・ティパが中松氏を呼び捨てにしているのは、知人とさえ言えないレベルだということがはっきりわかりますね。ご自身のサインがおかしなことに使われて、正直大変お困りのようですね」(野村氏)
実は本紙では、もう一人、別の在外日本人に翻訳を依頼しました。この方は、「全く、間違えのない正しい訳。私があえて訳し直す必要もない」とのことでした。
中松氏がブログに掲載した翻訳は、完全な捏造であることになります。中松氏は、ラクパ・ツォコ代表に対し、名誉棄損容疑での刑事告訴をほのめかすような文脈で公開質問状を送っています。しかし中松氏は、ラクパ・ツォコ代表がガンデン・ティパの手紙の内容を捏造したかのように主張し、それが全くの誤りであったわけですから、名誉棄損罪で告発されるべきはラクパ・ツォコ代表ではなく中松氏の方でしょう。
なお、中井天山氏が代表を務める国政オンブズマン委員会GOA全国青年会のブログにも、独自の翻訳が掲載されています(第1弾 検証・金剛大阿闍梨について)。中松氏のブログにある翻訳と若干、表現が異なりますが、内容はほぼ同じで、完全な捏造です。
■賞状には意味がない
今回、独自の翻訳をしてくださった野村正次郎・事務局長に、ガンデン・ティパの手紙と「金剛大阿闍梨」とは何なのかについても解説をしていただきました。
「そもそも金剛阿闍梨というのは密教の儀式を行う際のその儀式の主催者もしくは師として弟子を導くもののことを呼び名で、社会における地位や称号といったものではありません。密教の入門儀式である“灌頂(かんじょう)”の儀式の時には、将来修行を積んでその儀式の主催者になることができる資格が与えられるだけであって、それになれるということは別のことです。ちょうど教員免状があっても、採用試験に合格しなければ教員になれるかどうかはわからないのと同じです。灌頂を受けて金剛阿闍梨の資格を授かっても、修行をしなければ金剛阿闍梨になれるわけではありません」(野村氏)
また、中井氏らはガンデン・ティパやカルマパから賞状をもらったとしていますが、実はチベット仏教には、賞状を発行することによって金剛阿闍梨を授けるという習慣もないそうです。
「今回の件をチベット人僧侶に話したら“仏教で灌頂を授かれるかどうかは心の問題。灌頂に参加したから授かれるわけではない。特に密教ではどんな教えを授かったかも秘密にしなければならない”と言っていました。つまり自分は金剛阿闍梨になったと他人に言いふらすこと自体、密教の教えに反していますし、だからこそ普通チベットではそれを書面に残したりはしないんです」(野村氏)
つまり金剛阿闍梨を授かる上では、賞状をもらうことよりも灌頂を受けることがまず必須なわけです。しかし中井天山氏は藤倉のインタビューの際、正式な儀式は受けていないことを認めていました。中松氏や苫米地英人氏も含め、中井氏とともにインドに行った人々が名乗る「~大阿闍梨」は、全てがニセモノだということになります。
■称号詐称どころか、存在しない称号の自称
本紙では以前、「金剛大阿闍梨は(中松氏が主張しているような)チベット仏教の最高位ではない」とするチベット研究者のコメントを紹介しました。しかしこれは「金剛“大”阿闍梨」ではなく「金剛阿闍梨」に関する説明だったようです。上記の野村氏の解説も、「金剛阿闍梨」に関するものです。野村氏によると、実はチベット仏教においては「金剛阿闍梨」はあるものの「金剛“大”阿闍梨」は存在しないとのことです。
「日本人も含めて金剛阿闍梨はたくさんいますが、金剛“大”阿闍梨は、チベット仏教には存在しません。(苫米地氏が名乗っている)傳法大阿闍梨も、(中井氏が名乗っている)傳法金剛大阿闍梨も、チベット語にはそんな言葉自体がありませんし、これらの日本語をチベット語に翻訳すること自体が不可能と言えます」(野村氏)
ということは、中松氏、苫米地氏、中井氏が名乗っている称号は全て、詐称ですらない架空の称号ということ?
「そういうことですね」(野村氏)
まとめると、ドクター・中松氏、苫米地英人氏、中井天山氏、その他国際宗教連盟メンバーたちは、チベット仏教の習慣に従わない手続きで、架空の称号を記した賞状にガンデン・ティパやカルマパにサインさせ、それを日本での宣伝に利用しているということになります。
「チベット人は、国も失って国外に追われてしまった難民です。難民をこんな形で利用して恥ずかしくないのか、と言いたい」(野村氏)
同感です。
【オマケ】阿含宗の桐山靖雄管長もチベット仏教の「金剛大阿闍梨」らしいんですが、チベット仏教に「金剛“大”阿闍梨」が存在しないということは、桐山氏も……?
15 コメント:
阿含宗といえばこんなものが・・・・
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1733/aum/agon-1.html
もう少しまともそうな情報はこちら
http://nanbadenwa.sarashi.com/agon.htm
わくたま
性別: 男性
星座: 獅子座
業種: インターネット
職業: 産業カウンセラー
場所: 横浜市 : 神奈川県 : 日本
自己紹介
スーパーロボットをこよなく愛するシステムエンジニア。産業カウンセラーでもある。 いつの日か合体・変形するサーバーをビジネスに投入しようと企んでいる。資材はもちろんアキバのジャンクだ! アキバのジャンクだ!
続報ありがとうございます。
称号自体がありえないとのこと。
持参した賞状にサインさせたということは、文書偽造にあたるのでは・・
苫米地氏は、多くの著作の購入者にどのように説明するのでしょうか。
http://www.tomabechi.jp/archives/50934621.html
http://www.tomabechi.jp/archives/51002053.html
誠意ある対応を期待したいです。
http://d.hatena.ne.jp/ragaraja/20100328/1269760302
仏教と仏教美術の日々
なんだか色々怪しい人たちのようです。
だはははははははは
これぞ仏の御心じゃああああああああ
8/2ドクターブログにおいて、正当な訳はこうだということでドクター側解釈による手紙の訳が載っている。つまり、少なくともドクター側の説明に沿っても、手紙自体は存在していることになる。ドクター側は、先方に対してガンデン座主からの手紙を提示するよう要求している。であれば、まずはドクター側からガンデン座主からの手紙を提示すべきでしょう。原文が鮮明な状態で、その手紙はこれであり、訳はこれであり、訳者はこの人であると。
ここまで来ると、ただただ呆れるばかりです。
ドクター中松、中井氏の言動を拝見すると、とても仏教に信仰をお持ちの方達とは思えません。
記事を読み、8/1号のビデオを見て、情けなくなりました。
結局ドクター中松はチベット仏教の人たちをだまし、それをネタに日本の有権者たちもだましていたという事ですね。
気になりましたのでドクター中松の発明を調べてみました。
Wikiからこちら(http://lyrica.net/minami/naka/naka2001s.htm)に行き着きましたが、
思いつきを申請しまくっているだけで、とても発明と呼べるものはありませんでした。
フロッピーディスクの発明者という話も、かなり誇張しているみたいです。
選挙戦で「ミサイル・Uターン」技術を発明したとか言っていましたが、おそらく無茶苦茶でしょう。
どうやら商標登録しまくって食べている怪しい人のようですね。
「金剛大阿闍梨」のチベット名称に答えられない中井代表、中松寺本堂にあるマージャン卓…。
言い分をじっくり聞くより、映像で見た方が真贋が一発ですね。藤倉さんの突撃取材は圧巻でした。
中松氏の関係者の方達のブログを拝見すると、色々な「阿闍梨」の名前をつけられていました。
呆れます。
中井天山は怪しい人物だとは思っていました。
この男、ドクター中松を利用しているのではないかとかなり前から確信していました。
この中井はドクター中松が幸福実現党の特別代表として招かれてから、幸福実現党に対してネット上での嫌がらせを繰り返しています。
まるで幸福実現党とSAGEとの間に信頼関係があるかのように装っているのですよ。
今回の件に関しては、ドクター中松には故意はなかったのだろうと思います。
むしろ「やられたな」という感じがしなくもありません。
それと、SAGEがドクター中松に与えた役職も怪しいです。
何せ、あのマイケル・ジャクソンすら取り込んでしまったそうですからね。天山曰く。
信用できませんよ。
もっとも、カルト新聞の取材も半分程度の信憑性しかないとは思っていますが、中井がインチキなのは事実なので、こういうこともありえるのではないかとは思います。
<何せ、あのマイケル・ジャクソンすら取り込んでしまったそうですからね。天山曰く。>
ここまでおっしゃっている方なのですか?著名人なら誰でも利用しようと思っておられると思われても仕方がないですね。
SAGE GROUPのHPの「チベット寺院建設準備」では、リチャード・ギアとアンジェリーナ・ジョリーの寄贈によって建立された寺院の写真が何故か掲載されていますし…
「ヨット太平洋横断プロジェクト」なるものも掲載されていますが、関係者のリンクブログを拝見しますと今年の5月に出航されると記載されていますが、出航の模様等が全く掲載されていません。
ここまでくると、SAGE GROUPというのは資金集めのために嘘で塗り固められた団体と見られても仕方がないかもしれません。
ドクターは、手紙訳は自分たちが正当であると再度主張してますな。高名な匿名な哲学なお坊さんが訳したと。
どうやら同一の手紙の訳解釈のようですし、真っ向対決の姿勢ですな。
YouTubeにはSAGE関係のチャンネルが30個、40個とありますが、幸福実現党関係のチャンネルにペタペタペタペタとリンクを張ってくるわ、嫌がらせの動画はアップするわで、迷惑この上ないです。
しかもこの中井は、民主党が衆院選で勝った翌日には、小沢一郎の顔写真を使ったチャンネルまで作るという節操の無さ。
余談ですが、桜チャンネルの水島社長の顔写真を使ったチャンネルから幸福の科学の教祖の顔写真を使ったチャンネルまであります。
もちろん無断ですよね?
実はドクター中松のチャンネルも、本物と、SAGEが作った偽者のチャンネルが存在しています。
これが偽者のチャンネル。
http://www.youtube.com/user/HERONAKAMATS
これはおまけ。ボスの中井です。
http://www.youtube.com/user/SAGENOBUNAGA
ん?この顔どっかで見たことあるぞ?
平沼さんですね。
http://www.youtube.com/user/SageJapanHero2
こんな感じですから、ドクター中松はダシに使われた可能性が高いですね。
精神的公害訴訟
http://www.justice-irh.jp/other/weekly_gendai/index.html
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