国の責任を問う裁判で原告の統一教会元信者が意見陳述、改めて教団の違法性が浮き彫りに

元信者の女性が霊感商法をさせられていた時期に
暗躍していた統一教会の偽鑑定士勧誘員の名刺

統一教会（統一協会／世界基督教統一神霊協会）の元信者が提起した裁判が東京地方裁判所で始まった。

統一教会に対する損賠賠償請求だけではなく、統一教会を放置し続けた国の責任を追及するという注目の裁判だ。

本紙既報記事で紹介した統一教会元信者の女性は24日、当該裁判の第1回弁論で原告として意見陳述をおこない、統一教会の組織的な違法行為やルポライターから受けた嫌がらせ、そして国の責任を追及する裁判を提起した思いについて語った。


統一教会に関して国の責任を問う訴訟は、鳥取地方裁判所米子支部でおこなわれている裁判につづき2例目となる。


24日の東京地裁題606号法廷、法廷の外に貼り出された紙の被告の欄には『被告　世界基督教統一神霊協会　外』との記載しかなく、被告となった筈の『国』は『外（ほか）』としか表示されていなかった。


法廷内、傍聴席には統一教会信者の姿は皆無で、本部職員すら来ていなかった。
被告側代理人席には国の代理人（文化庁宗務課職員）は来ていたが、統一教会の代理人弁護士は文書を事前に提出したのみで姿を見せなかった。


民事7部合議1係の堀内明裁判長は双方に今後の裁判の進め方などの確認をした後、原告の女性に意見陳述するよう促した。

【平成24わ19029号　損害賠償請求事件　第1回弁論　2012年9月24日】

原告　意見陳述　　（括弧内注釈は記者によるもの）



　私は2001年9月に渋谷駅で統一教会の正体を隠した伝道で騙されて念珠を購入してしまったことをきっかけに、その後統一教会の組織化されたシステムにより統一教会の名前も知らされないまま教育を受け、統一教会に入会させられました。やがて信者との集団共同生活を強いられ、如何なる時もアベルという上司に絶対服従するように訓練され、会社を辞めさせられた後、しんぜん会（SHIN-ZEN）というボランティア団体を名乗り、マイクロバスに寝泊まりしながら日本各地で訪問販売をさせられ、その後4年間は「先祖の因縁や祟りがある」と言って天運風水館（FUSUIKAN／Feng Shui House／フウスイカン）という店舗に配属され霊感商法をさせられました。

　2009年に、南東京教区の店舗である新世（シンセイ）に公安警察が家宅捜索に入った時は、統一教会本部からの指示で私のいた天運風水館を始めとする世田谷教会の過去の店舗の大量の顧客の資料を薬品で溶かすために紙類とプラスチック類に分類するという作業を真夜中から明け方までさせられたり、すぐに処分できないものはホームの台所の裏の土の中に穴を掘り、その中に埋めさせられたり、その他いくつもの証拠隠滅のための作業をさせられました。店舗が税務監査を受ける時も、その資料の偽造の作業をさせられました。

　日頃からいつも「天法をこの世の法に勝る」と教えられ「如何なる内容であれアベルの指示で行うことは神の指示であり正しいものである」と無条件に受け止めて行うように教育され、少しでも疑問や葛藤が起これば「それはサタンの思いであるから断ち切らなくてはいけない」と厳しく注意され、更には自分がアベルの指示に従わなければ、自分だけでなく家族や先祖や子孫や世界までが大変なことになってしまうと執拗に教育されました。その恐怖から嫌でも何でも全く関係なく、常識では考えられない活動や厳しい労働を言われるままにさせられました。

　2009年には、見ず知らずの韓国人の男性と合同結婚式を受けさせられました。統一教会の教義上、それは必ず受けなければいけないもので、私は非常に葛藤しましたが「葛藤するほど蕩減が早い」などと言われ、葛藤するからこそむしろ受けなければいけないと強烈に追い詰められ受けさせられました。

　献金にしても強要しているのに「嫌々ではいけない」「嫌々やればそれはサタンに捧げたことになる」「感謝して喜んで捧げなければ天が取ることができない」と教えられ、また「葛藤しても葛藤が大きければ大きい程、天に大きな宝を積むことになる」と教えられ、どんなに嫌でも「感謝して喜んで捧げました」と言って献金をしなければいけませんでした。

　2010年末、統一教会の教えが全くのデタラメであり、統一教会が違法行為を繰り返し続けてきている恐ろしい犯罪集団だということが解り、自らもマインドコントロールされていたという事実に気が付いて、信じるなどもってのほかだと確信したため脱会を決意しました。

　しかし、本部教会に脱会届を提出した後も、インターネットの教会や教会関連のホームページ上で、私の個人情報や、私が「拉致監禁された」とか「偽装脱会をしている」などと虚偽の内容を掲載され、削除要請してもなかなか消さず、最近また再び掲載したりするなどの酷いプライバシー侵害を受け、大変な精神的苦痛を受けています。

　米本というジャーナリストに至っては、統一教会から何を頼まれているのか判りませんが、会ったことも話したこともないのに自らのブログで私の個人情報を勝手に載せた上、キチンとした取材もせずに、私が「依存症になっておりそのコマとなって裁判を起こさせられているのでこれは見物である」などといって興味本位で煽り立てられ、それのみならず極めて不正確且つ独断と偏見による悪意に満ちたコメントを延々と書き連ねられるという酷い嫌がらせを受けています。

　統一教会による霊感商法の被害は全く酷いものですが、それも氷山の一角であるに過ぎないばかりか、それ以上に統一教会はもっと恐ろしい酷いことをしています。

　約9年間という長い期間に渡って、統一教会によって多くの精神的苦痛・肉体的苦痛を伴う金銭被害・労働被害を受けたので、その損害賠償請求のため提訴いたしました。

　20代から30代に掛けてという人生に於いてとても貴重な時期を、突然奪われ踏みにじられました。もうこの時を取り戻すことができないと思うと、信じられない程の耐え難い苦しみを感じます。

　また私が騙されて統一教会に入会させられて受けてきた多くの被害のその過程と内容は何十年も全く同じです。国は何故こんな団体をこんなに放っておいたのか。こうしている今もまた同じ被害を受け続けている人が数多くおり、何もしなければこのまま同じことを続けていきます。
　そう思うと、こんな団体をいつまでこのままにしておくのか、その責任を追及すべく国に対しても提訴いたしました。

　人の弱み悩み不安につけ込んで、更には人の善意まで食い物にし、単なる組織の金儲けのために人を擦り切れる程に酷使し、財産を奪い、本人の自由な意思を奪い、感情から人格から人生から家族にまで恐ろしい傷を付け、被害者を加害者にさせながら、嘘に嘘を吐きまくり、そのようにしながら「それがあなたの幸せだ」と言い放ち、反発する者には「私たちは関係ない」と言って切り捨て白（シラ）を切り通す、その卑劣さ悪質さは全く恐ろしく酷いと思っています。

 原告の元信者の女性は、時折、言葉に詰まりながらも気丈に意見陳述を終えた。

記者はこの元信者の女性が街頭で偽装勧誘をおこなっていた当時、何度も勧誘阻止をしたことがあっただけに、先日東京地裁で女性と再会した際には感慨深いものがあった。

次回期日は11月26日午前10時から東京地裁606法廷で開かれる。