消費者金融全社から借入れさせ献金、元信者が明した統一教会の悪辣な手口

『I（アイ）路程』の“I”は印鑑のことだった

5月29日、東京地裁に於いて、統一教会に24年間在籍していた元信者が総額約3000万円の損害賠償を求めて教団を訴えた裁判の尋問があった。
元信者の証言から、統一教会アベルの“指導”で消費者金融全社から借入れた全額を献金させられていたことなど、悪質且つ組織的な財産収奪の手口が明らかとなった。

証人として出廷した3人の現役信者は「献金は原告本人の意思で行なったもの」と口裏を合わせ、原告側弁護人の尋問にも悉く「知りません」「分かりません」と答えた。
しかしながら3人の足並みが乱れ、前の証人が否定したことを後の証人が認めてしまうなど、教団側の“ボロ”が露呈する場面も見られた。

更にこれら現役信者証人は、統一原理が統一教会の教えかどうかも分からず、教団の機関紙についても“知りません”“読んだことはありません”などと、反対尋問で訊かれることは全て否定するというお粗末さだった。


最初に行なわれた原告本人への主尋問で、原告の元信者の女性Sさんは原告側弁護人の中森麻由子弁護士の質問に丁寧に答えながら、母親教室を口実に正体を隠して勧誘されたことや、アベルと呼ばれる上位信者にしつこく献金を強要されたり、教団関連会社の商品を多数購入させられた経緯を時系列に沿って詳しく述べた。

その根底には、統一教会とは知らされないまま受けさせられた最初の講義で地獄の恐怖を植え付けられたことが強迫観念となっていたことも明かされた。

献金強要に関しては、「〇〇献金路程」などとの名目で次から次へ献金を納めるよう指示が出され、アベルの指導で『武富士』『レイク』『オリックス』『アコム』『プロミス』『オリコ』『OMC』『ジャックス』『ライフ』などの消費者金融全てから借金しその全額を献金させられるという悪辣な実態が語られた。その額は500万円以上になるという。

統一教会霊感商法グッズのひとつ
“念珠”

物品購入については『I路程』→印鑑、『M相談会』→マナ・高麗人参、『CB展』→クリスチャン・ベルナール（宝石貴金属販売）、『JD展』→着物、など教団内の隠語の存在や“トーク係”“タワー長”などの役割分担があることや商品を教団ぐるみで購入させる手口についてその内幕も明かされた。


反対尋問は、自身も信者で教団顧問の宮入陽子弁護士。

宮入弁護士は頻りに、原告が自主的に自ら喜んで献金や物品を購入したとの言質を取ろうとしていたが、Sさんはそれらを悉く否定した。
宮入弁護士は、自らが弁護し敗訴した統一教会信者によるストーカー事件（宇佐美事件）などの教団関連の裁判に関しSさんが誰の指示で傍聴しているのか？などと、執拗に“拉致監禁キャンペーン”に繋げようとしていたが、的外れな質問に終始し空振りに終わった印象だ。


続いてS さんと現役時代にかかわりのあった3人の現役女性信者が証人として出廷した。

それぞれの本人尋問では被告側弁護人の今井三義弁護士の質問に答える形で、

“献金は自分のできる範囲で喜んでするもので教団やアベルからの指示はない”
“商品は気に入ったから買ったのだろう”
“責任感が強く他人の言うことを聞いて献金するような人ではない”

などと飽くまでSさんの自主的な行為だったとの主張を繰り返した。


反対尋問では、この3人の現役信者を紀藤正樹弁護士と梅津竜太弁護士が鋭く追及した。

『主明かし（主証し）』についての質問では『主明かしという言葉があるということは、ある段階までは文鮮明をメシアであると明かさないということであり、統一教会の勧誘は最初から正体を明かしていない』ということが指摘された。

「主明かしをいつするのか？」「誰が決めるのか？」と訊いても、証人の現役信者は一様に沈黙。

　『I路程』『M相談会』『CB展』『JD展』について訊かれると、「分かりません」「知りません」「聞いたことありません」「見当もつかない」と完全否定。

『サタン側に分立する』の意味を訊かれても「意味が分かりません」と惚ける始末だ。

月初めに地区教会で行なわれていた“出発式”について「出発結団式」「4億双伝道勝利」の言葉を「知りません！」と惚ける証人がいたかと思えば「言葉は知ってます」と答えてしまう証人もいた。


証人の発言については特に、2番目と3番目の証人の発言の食い違いが特徴的だった。

傍聴メモから一部抜粋する。


2番目の証人BBは、

　
──160Kという献金摂理について

　「聞いたことありません」

──東京教区というのは統一教会の教区ではないのですか？

　「信徒会の組織です」

──統一教会の中に東東京教区というのはありますか？　

「信徒会の中に東東京教区はあります」


とありもしない信徒会が存在しているかのように答え


──統一教会の中に東東京教区はいうのはありますか？

　「ありません！」


と教区についても否定した。



3番目の証人YGは、

──開運講演会には？

　「参加したことないです」

──（統一教会機関誌）ファミリーについて

「読んだことない」

──何処から出版されているか？

「知らない」

──統一教会が出している雑誌であることも？

「知らない」

──原理講論に書いてある内容こそが統一教会の教えている内容ではないのですか？

「言ってる意味が分かりません」

──原理講論の中に書いてある内容というのが統一教会で教えている内容ではないのですか？

「統一教会というのは・・・・・・」

──違うのか？その通りなのか？

「違います！」

──違うんですか？

「分かりません」

──江戸川教会長が東東京教区教区長？

「分かりません」

──教区があることはご存知ですか？

「はい」

──教会が集まって教区になるのでは？

「そうだと思います」

──東東京教区教区の中に江戸川教会があるんでしょ？

「そうだと思いますけど」

──出発式という言葉も知らない？

「言葉は知ってます。一ヶ月の初めに・・・・・」「教会の礼拝で・・・」

──伝道何人とか経済幾らとかやってますよね？

「・・・・・・・」　


先に尋問を終えたBBは傍聴席に座り、その後のYGの尋問を聴いていたが、自分の証言と矛盾する答えをしてしまうYGの発言に苛立ちを隠せない顔をしていた。
その様子を観察していた記者の顔を「キッ!」と睨み付けたほどだ。

このBBは退廷時にも記者を睨み付けるなど、終始不遜な態度だった。

この日の尋問で、被告側証人の信用性は無に介したと云える。

教団側が提訴した訴訟には多くの末端信者を動員させれている統一教会。一般の統一教会末端信者が、この手の裁判を傍聴すれば自分たちの所属する教団が如何に嘘吐きの団体であるかがよく解る筈だ。

統一教会の財産収奪の手口としては他にも、信者が資産家の老婦人に取り入って養子縁組をし遺産相続という形で財産を収奪するというケースも報告されている。

統一教会による悪辣な手練手管の数々、カルト教団による組織的な財産収奪は今も日本国内で横行している。