昨年の幸運乃光事件のときも今回も、一部の新聞が、まだ行政処分や摘発の対象になっていない「高島易断団体」をビミョーに擁護するかのような報道姿勢を見せているものもあります。しかし、現在「高島易断」を名乗っている団体・個人は、全てがニセモノだという事実をお忘れなく。
【YOMIURI ONLINE 2009年11月10日】「高島易断」を名乗り詐欺容疑、男を逮捕 被害計5億6000万円か
「高島易断」を名乗り、霊の供養代名目で2人から計約270万円をだまし取ったとして、兵庫県警生活経済課と生田署などは10日、和歌山市黒田、「高野山龍仙閣」管長・西園徳盛容疑者(61)を詐欺容疑で逮捕した。容疑を否認しているという。被害は近畿地方を中心に約700人、総額約5億6800万円にのぼるという。捜査関係者によると、西園容疑者は2008年1月と今年7月、神戸市の女性(59)と堺市の女性(75)に対し、「水子の霊がついている」などとうそを言って不安をあおり、供養代として、それぞれ200万円と約70万円を詐取した疑い。
病気の相談に訪れた神戸市の女性には「高野山の行者に頼み、1000日間供養してもらう」などと持ちかけたとされる。
高島易断は、ガスや下水道などの事業を興した明治の実業家・高島嘉右衛門が創始した占いの方法。無関係なのに高島易断を名乗る流派は多く、「高野山龍仙閣」もその一つという。高額な祈願料を支払わせる「開運商法」を巡っては、数年前から被害が多発。経済産業省は08年3月、「高島易断総本部」を名乗り人生相談や運命鑑定をした宗教法人に対し、3か月間の業務停止命令を出した。
産経新聞は、ちょっとおかしな見出しでこの事件を報じています。
【産経ニュース 2009年11月10日】高島易断かたり祈祷料詐取 口座5.7億円「霊心館」代表逮捕
運勢鑑定で知られる「高島易断」を名乗って相談者から高額な祈祷(きとう)料をだまし取っていた疑いが強まったとして、兵庫県警生活経済課などは10日、詐欺容疑で和歌山市内に拠点を置く「高島易断霊心館総本部」(現高野山龍仙閣)代表の西園徳盛容疑者(61)を逮捕し、本部の家宅捜索を始めた。
西園容疑者が管理する銀行口座には平成10年以降、延べ約700人から約5億7千万円の入金が確認されており、同課などは全容解明を進める。
県警によると、西園容疑者は今年7月、次男が行方不明となっている堺市の女性(75)に「供養さえすれば、次男は10月末には帰ってくる。長男も良縁に恵まれる。そのためにはお金を出して行者2人に供養してもらう必要がある」などと偽り、代金として現金73万円を詐取した疑いが持たれている。
また昨年1月には、長男や自身の病気で悩んでいた神戸市垂水区の女性(59)に「あなたには水子の霊がついている。行者に2年間供養させないとだめだ」などと偽り、現金200万円をだまし取った疑いもあるという。
捜査関係者によると、西園容疑者は、相談者に「(霊心館に)水子供養ができる行者がいる」と説明、祈祷料を受け取っていながら、実際には行者がいない実態を把握していたことなどから、詐欺容疑での立件が可能と判断した。
◇
【高島易断】もとは明治時代に占い師の高島呑象(どんしょう)が創始した易学を指す。運勢鑑定などで知られるが、特許庁が「易学の一般名詞」としていずれの団体にも商標登録を認めていないため、全国に「高島易断」の「本部」や「本家」などを名乗った団体が数多く存在する。
見出しにある「高島易断かたり」という表現からは、まるで今回摘発された「高島易断霊心館総本部」がニセモノの「高島易断」で、それと別に何か本物の「高島易断」が存在するかのように思う人がいるのではないかと思います。この見出しひとつだけであれば、穿った見方かもしれませんが、実は昨年、「高島易断総本部(宗教法人幸運乃光)」が経済産業省から業務停止命令を受けた際にも、産経新聞は不自然な「高島易断擁護」記事を載せています。
【産経新聞 2008年04月02日】鑑定士“成績”競わす 千葉の宗教法人、組織的に詐欺か
(略)
【用語解説】宗教法人「幸運乃光」への業務停止命令
同法人は昭和49年設立。千葉県袖ケ浦市で「成龍寺(せいりゅうじ)」を運営する一方、「高島易断総本部」などの通称で易断、仏具、祈願契約の販売活動を展開。経産省は先月、特定商取引法違反で宗教法人に対して初めて業務停止を命令した。昨年7月の同法政令改正で、祈祷(きとう)サービスも取り締まり対象になっていた。「高島易断」は、明治時代の実業家、高島嘉右衛門(雅号・呑象(どんしょう)が創始した易学。商標登録が認められておらず、同名団体が100以上存在。「高島易断総本部神聖館」などとは無関係。
わざわざ特定の高島易断団体の名称まで記載して、業務停止命令を受けた団体とは無関係だとしています。このときは、産経だけではなく朝日と毎日もおかしな記事を載せていました。
【毎日新聞 2008年10月28日】損賠提訴:「幸運乃光」を提訴 相談会参加者、1644万円賠償求め
(略)
「高島易断」は商標登録が認められておらず同じ名前の団体が複数ある。幸運乃光は「高島易断所」や「高島易断総本部神聖館」とは無関係だ。【奥山智己】
【毎日新聞 2008年03月27日】業務停止命令:「高島易断総本部」の名称を使い、不安あおり仏具販売 宗教法人に
(略)
高島易断は、明治時代の占師だった高島呑象(どんしょう)が始めた易学で、運勢暦や開運暦が有名。「高島易断」は商標登録が認められておらず、同じ名前の団体が複数ある。幸運乃光は74年に設立され、06年度の売り上げは8億6100万円。「高島易断所」や規模が大きいとされる「高島易断総本部神聖館」とは無関係だ。【奥山智己】
【朝日新聞 2008年10月26日】「2年で死ぬ」高額商法 通称「高島易断総本部」の宗教法人、経産省が処分へ
(略)
<高島易断> 明治時代の占師・高島呑象(どんしょう)が始めた易学で、運勢暦「高島易断」が有名。特許庁が「易学の一般名詞である」として商標登録を認めていないため、同じ名前の団体が多数存在する。高島易断総本部は、別の団体から分かれて設立されたとされる。運勢暦の発行部数が多い「高島易断所」や、団体の規模が大きいとされる「高島易断総本部神聖館」などの団体とは関係がない。
業務停止命令を受けた「高島易断総本部」とそれ以外の高島易断団体とが無関係であることは事実ですが、「高島易断総本部」以外の団体には問題がないというわけでもなければ、その中に「正統」な高島易断が存在するわけでもありません。しかも「高島易断総本部神聖館」は、08年に全国霊感商法対策弁護士連絡会が開催した電話相談会「高島易断霊感商法被害110番」などで相談が寄せられている団体でした。にもかかわらず朝日・毎日・産経は、まるで「高島易断総本部」以外の団体や、特に「高島易断総本部神聖館」について、まるでまともな団体であるかのような印象を読者に植え付ける内容の報道を行っていました。
しかし実際には、現在「高島易断」を名乗っている団体・個人は、全てがニセモノです。
高島易断の創始者は、高島嘉右衛門(たかしま・かえもん、雅号は呑象=どんしょう)という明治時代の実業家。『高島易断を創った男』(持田鋼一郎、新潮新書)には、こう書かれています。
【高島易断を創った男】
嘉右衛門は「占い」は「売らない」であり、金を取って行なうものではないと口癖のように言っていた。(略)また、高島易は一代限りで自分には後継者は居ないと言っていた。
産経新聞の記事にあるように、全国に「高島易断」の「本部」や「本家」などを名乗った団体が数多く存在します。しかし嘉右衛門が後継者を作らなかった以上、全ての人物・団体は、勝手に「高島」を名乗っているにすぎません。
【高島易断を創った男】
高島嘉右衛門という人物の立てた易が百発百中、見事に的中したその故事にあやかろうとして縁戚でもなければ門流でないにもかかわらず、多くの易者は高島姓を名乗るのである。
高島嘉右衛門の家族も、易者たちが「高島」を名乗ることについて異議を唱えています。『易学研究』1956年1月号に掲載された、高島嘉右衛門の息子・長政氏の文章です。
【易学研究 1956年01月】呑象顕彰事業に寄す
尚、聊か余事の感はありましょうが、この機会に、日頃より申し見度き事一言ここに付け加えさせて頂きますならば、それは社会に流行し居る「高島易者」なる物と当家との関係に就いてで御座います。父没後、次第に社会には高島を名乗る占業者が現れ、今日では、「高島易断宗家」とか「高島本家」などと恰も当家そのものかの如き印象を世人に与える人々が居るのです。然しこれ等の人々は悉く当家と関係ありませぬ。当家縁類のものでもなく又、亡父が門下生でありし者でもありませぬ。
高島家一門に於きましては、曾て占業を行いし者は一名も無く、実は私など亡父の代講を勤めた事もあり、時には筮を?りし事もあるのではありますが、主たる業は父が北海道に遣せし「高島農場」の開拓とその経営にありました。従弟の二代目高島徳右衛門が好んで筮を?りましたなれども、彼は木挽町一円の地主でありましたから彼とて占業の要はなかった事で御座います。
高島の姓は私共一門のみの姓でなく、従って他の高島姓の人々が自己の姓をその占業に冠する事は聊かも不服ではありませぬし、又私と致しましても彼等の営業を妨害する意図は微塵も有しませぬなれ共、それが「高島易断」を謳って当家又は当家縁類の者であるかの如く、又、亡父門下生であるかの如く社会一般に於いて信じられ居る事は迷惑至極で御座います。本稿を擱筆するに当たりまして、特にこの点を社会に向かって明確に致し置く所以です。
また、産経新聞も含めて複数の新聞が、「高島易断」乱立の原因について、特許庁が「高島易断」の商標登録を認めないからだと説明していますが、これも間違っています。ある方が、雑誌『易学研究』平成11年9月号のコラム「占業界昔噺 1」(石川雅章、昭和32年の文章の再録)に、高島易断の問題に絡む記述があると教えてくれました。その雑誌の現物は見ていませんが、メールで送ってもらったものを掲載します。
【易学研究 1999年09月】占業界昔噺 1
いわゆる「高島易者」なるものの横行が、どれだけ易を誤解させ、世人の軽侮を購う働きをゆってのけているかを痛こくせざるを得ない。
(略)
昭和5年5月赤坂新坂町に大看板を挙げた「高島伝右衛門」事奥村某が前科三犯のしたたか者で、巧みにおどしては法外の鑑定料を巻き上げたばかりか婦人の客を片っ端から毒牙にかけていたことが一被害者の駆け込み訴えによって暴露、これが端緒となって都内の不良易業者の一斉検挙が行われ、同年7月の間に交流の上鑑札の返還を命ぜられたもの10件、科料処分12件、説諭を加えられたもの165件に達した。
(略)
今(*注 昭和32年)も同様だが、電話帳を操ってみると「高島易断総本部」がズラリ5つも6つも並んでいてどれが本当の本部なのかまずそれから占ってもらい度いと思うのも当然、当の呑象翁すら斯様の看板をあげたことはなく、高島家の当主は何も知らないのだということが一ぺんに明るみに出て、宗家に関係ない者が「高島」を名乗ることは相成らんと、時の安寧係長岩崎正行警部から厳重な戒告を喰らった(略)
昭和5年の時点ですでに、「高島」を名乗る易者が法外な鑑定料を取ったり客をレイプしていたことが発覚し、多数の易者摘発につながっています。昭和32年の時点でも、「どれが本当の本部なのかまずそれから占ってもらい度いと思う」ほど多くの「高島易断総本部」が存在していたわけです。商標法の制定は昭和34年です。「高島」の乱立の原因が商標制度とは無関係であることは明らかです。
もう一度書きます。現在「高島易断」を名乗っている団体・個人は、全てニセモノです。
12 コメント:
素晴らしい記事ですね
大変参考になりました
ありがとうございます
私の友達が高島を名乗って全国を回っていますが、詐欺まがいなんですね。
姉が通い詰めていて困っています。
日本橋の先生と言って
私も来るようにと言っていて
電話をかけてくるのが本当に
迷惑で疎遠してもらいたいです
「高島易断」とは高島嘉右衛門が書いた本の名前です。
高島嘉右衛門が行っていた占いは「周易」という中国発祥の占いで
その解説本が「高島易断」というタイトルで明治時代に出版されました。
ですから、本のタイトルである「高島易断」を「名乗る」という表現自体が、そもそもおかしいのです。
「高島易断」という団体があった訳ではありません。
まずはお姉さまに南無妙法蓮華経と唱えるよう言ってください
>2017年5月28日 15:56
法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください
法華経を無視し非課税制度廃止や補助金制度廃止と唱えてみてください
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