沖縄知事選めぐり大江議員と幸福実現党が対立

大江康弘参議院議員
（5月14日の入党会見で）

幸福の科学を母体とする宗教政党「幸福実現党」が、11月11日に告示される沖縄県知事選に独自候補を擁立すると発表しました。ところがこれに、同党唯一の国会議員である大江康弘参議院議員（国会対策委員長）が猛反発。今年5月に入党してから半年。早くも大江議員と同党との間に亀裂が生じています。

　11月11日に告示される沖縄県知事選（投開票は28日）では、自民・公明の支援を受ける現職の仲井真弘多知事と、社民・共産などが推薦する伊波洋一・宜野湾市長が立候補を表明。新聞報によっては「一騎打ちの構図」とも報じていますが、幸福実現党も、10月5日に独自候補・金城タツロー（きんじょう・たつろー）氏の擁立を発表しています。同党は09年に仙台市長選と都議選の2つの地方選挙を経験していますが（それぞれ落選、当選ゼロ）、知事選は今回が初挑戦です。

【幸福実現党 2010年10月05日】沖縄県知事選に候補者擁立
　幸福実現党は、１０月１日（金）の役員会にて、来月行われる沖縄県知事選に金城タツロー氏を候補者として擁立することを決定し、本日、沖縄県政記者クラブにて出馬会見を行いました。金城氏擁立の主旨は、以下の通りです。

　先般の尖閣諸島領海内での中国漁船衝突事件に見られるように、沖縄は中国の直接的な軍事的脅威にさらされています。沖縄県民の生命と安全、領土を守るべく、日米同盟を早急に強化し、沖縄防衛を堅固なるものとすべき時に、仲井真、伊波両氏は普天間飛行場の「県外移設」「日米合意の見直し」を掲げており、結果として日米同盟を破綻させる間違った判断をしています。両氏いずれが知事になろうとも、沖縄の植民地化の危機を防ぐことはできません。

　両氏は県外・国外移設と言っても、移転先等の具体策を有しておらず、十数年かけて結論に至った辺野古案を白紙撤回すれば、普天間飛行場の長期固定化は避けられません。現在、普天間飛行場の周辺民家は大変危険な状態にあり、現実に即して言うならば、日米合意の通り、辺野古移設以外に道はありません。

　沖縄と日本の危急存亡の秋にあって、幸福実現党は、沖縄県本部代表代行の金城氏を沖縄県知事選候補者として擁立し、下記政策を実現して参ります。

１．沖縄の防衛強化
日米合意に基づく普天間飛行場の辺野古への迅速な移転を進め、普天間地区の危険性を早急に除去すると共に、尖閣諸島をはじめとする先島諸島、南西諸島全般への自衛隊配備の強化を政府に強力に要請し、漁民の方々が自由に漁を営み、県民の皆様が安心して暮らせる沖縄を実現して参ります。

２．沖縄の産業と雇用の創出
安定雇用を生み出すための製造業の誘致や沖縄縦断鉄道の敷設、イラクの石油埋蔵量に匹敵すると言われる尖閣諸島領域の油田開発等を進め、沖縄県の産業振興と雇用創出に取り組んで参ります。

３．沖縄の教育の再生
極めて困難な状況にある沖縄県の教育改革に取り組み、教育の質を高め、全国有数の教育レベルに引き上げて参ります。

※赤太字は本紙

　ところが、候補者擁立を決めた「役員会」の前日、同党唯一の国会議員である大江康弘参議院議員が、自らのウェブサイト上で同等の独自候補擁立を厳しく批判しています。

【大江康弘　Official Website 2010年09月30日】沖縄知事選における我が党の果たすべき役割
（略）
もう一つは彼等(本部役員や沖縄支部役員の皆さん)の主張は「今回の沖縄知事選挙は 日米安保にとっても、また辺野古移設にとっても大切だから、それをしっかり主張する事が党としての立場」と言われる。
この理由は私も「もっともだ」と思うしよくわかる。間違っていない
しかし不幸なことに、外交・安全保障のイロハのイの字も知らない鳩山さんが衆議選挙前後に、政権欲しさに県外、国外と言い募り政権をとり、挙句は今まで永年にわたって苦労して積み上げてきたものを一瞬のうちに壊してしまい、アメリカとの信頼関係も 潰してしまった
そのような過程で、名護市長選、市議会選挙は反対派が多数を占め、全く沖縄の空気が変わってしまった
地元の保守層を中心に仲井真知事を支えて、一つ一つ積み上げてきたというこの大前提が悔しいことであるが、壊れてしまったという事実。
今までと環境が変わってしまったという現状を我々は厳しく受け止め、理解しなければならない
真面目に日本の安全保障を考え、その中で真面目に沖縄県の果してもらう責任・役割を考えた場合、良識ある人々ならば、誰でも「日米安保重視」「辺野古移設実現」は当然のことであり、間違いなくその方向で進んできたけれど、先程も言ったように全く180度空気が変わってしまった
そんな状況で最後の砦である仲井真知事を守り、絶対に相手候補(彼は日米安保反対で沖縄から全ての米軍基地の撤去を訴えている左翼系候補)に知事の椅子を渡すわけにはいかない。
ここは我党もいろいろ立場、考えがあっても良識派・常識派である現職の仲井真さんのもとに、大同団結して保守派を結集、そして、最後の望み(日米安保堅持、沖縄県に米軍基地存続)の網として、仲井真知事に勝ってもらわなくてはならない。
負けさせてはダメなのである。絶対に
この事が、今回の我党が沖縄知事選挙に対して掲げる「大切な大義」であろう。
正しい事を言い続けるために知事選挙を利用、その結果、もし不幸な結果(相手陣営が当選)を招来するようなことになれば、一体誰が責任をとるのか、役員が辞めるなどということではすまない。
正しいからといって進むことだけが「政治」ではない。
少なくとも党と名のって国民に対して責任感や使命感を訴え、その理解を求めるのであれば、ここは一歩引いて、全体の中での役割(保守がまとまって一つになる)をしっかりと認識し判断すべきである。
それでも大局が理解できず、このような大切な時期に我党が候補者を出し、多くの我党に期待をかけてくれる人達を失望させることが党としての使命、立党の意義というのであるならば、私にも覚悟がある。
もっと政治の現場をわかって欲しい。
（略）

※赤太字は本紙

入党時、党はこんなに低姿勢だったのに…
（右は当時の林雅敏幹事長＝現・総務会長）

　つまり、幸福実現党は仲井真・伊波両氏が普天間基地の「県外移転」を主張しているからどちらもダメだと言って独自候補を立て、大江議員は保守の「最後の砦である仲井真知事を守」るために独自候補の擁立を見送り仲井真氏を支援すべきだ、と主張しているわけです。

　しかも大江議員の上記の文章には、沖縄の幸福実現党員からも仲井真氏を支持し「保守合同」で行くべきとの声があるとの話も出ています。党員（おそらくは幸福の科学信者）の間でも、独自候補擁立のコンセンサスができていない、ということです。しかも大江議員は、党への批判に加えて、＜私にも覚悟がある＞という、極めて深刻な表現をしています。

　しかし大江議員がこの文章を掲載した翌日、党の役員会は大江議員欠席のまま独自候補の擁立を決定し、5日に公表してしまいました（金城氏自身は、大江議員が反対の意向を公表するより前から、立候補の意向を表明していました）。

　幸福実現党の広報担当者は、本紙の取材に対してこうコメントしています。

「現在の普天間基地の危険性を考えれば、やはり県内移設をすべきだと考えています。ほかの2人の立候補者が県外移設を主張しているため、県内移設という選択肢を有権者に示したい。（幸福の科学の）会員さんのブログでも『説明が足りない』という声があることは承知していますが、選挙を通じてご理解していただきたいと思っております」

本紙に“覚悟”を語る大江議員

　一方、大江議員は、こう語っています。

「11月11日の知事選告示日までに、党が翻意してくれることを望んでいます。HPに書いたとおり、（私が）重い覚悟をもって主張しているというのは事実です」

　かなり決意は固そうです。

　06年の沖縄県知事選では、仲井真が34万7303票を獲得して、2位の糸数慶子候補とは約3万8000票差でした。対する幸福実現党は、今年7月に行われた参院選の沖縄選挙区に、知事選の候補予定者と同じ金城氏を擁立。得票数は1万832票でした。

　過去の得票数から考えると、知事選での当選は無理かもしれません。しかし、相当な接戦になった場合、1万票が“死票”になるか仲井真氏に流れるかが戦況に影響を与える可能性も否定はできません。かといって、公明党（創価学会）も支援に回っているとされる仲井真氏を幸福実現党が支援するというのも難しそうな気はします。

　沖縄県知事選の行方はもちろん気になりますが、告示日までは、“政治”を唱える大江議員と“理想”を掲げる幸福実現党との“政界vs霊界の戦い”にも注目です。