課税論と癒着疑惑に揺れる幸福の科学のどでかい空き地＝千葉県長生村

水色が31ヘクタールの土地。下部の黒い四角は、敷地内で唯一の「宗教施設」（GoogleMapより本紙作成）

幸福の科学と村長の癒着疑惑が指摘され村議会で特別調査委員会（通称＝百条委員会）が設置されている千葉県長生村（関連記事）。もともと村議会では、教団が2008年に購入した約31ヘクタールの土地に対して年間約2500万円の固定資産税を課すべきとの議論が行われてきました。教団との癒着を疑われている石井俊雄村長は、長生村に幸福の科学が進出してきた当時からの村長で、問題の土地への課税の決断を拒んできた立場にあります。そもそもこの土地、どんな土地なのでしょう。現地に行ってみました。


■突如転売された31ヘクタール＝57億円

問題となっている土地は、長生村一松地区にある「幸福の科学千葉正心館」（2005年7月完成、敷地面積約1.8ヘクタール）の南側に隣接する土地です。隣接といっても、こちらの方が面積は果てしなく広く、約31ヘクタール（正確には31万2773平方メートル）。むしろ千葉正心館がこの広大な土地の端にくっついている形です。

地元で入手した資料によると、この一帯は、1957年（昭和32年）に干拓事業がスタートしたものの、塩害がひどく農地として役に立ちませんでした。そのため1986年（昭和61年）に農地から宅地に転用され、1989年（平成元年）4月にリゾート重点整備地区の指定を受けましたが、開発は一向に進まず、一部がサッカーなどのグラウンドとして利用されていました。

ところが2007年にこの土地を取得しリゾート開発を行うとしていた株式会社プロパストが、翌2008年、地元にも知らさせないままいきなり土地を宗教法人幸福の科学に約57億円で転売。プロパストが土地を取得して登記を行ってから、たった1ヶ月でのスピード転売でした。幸福の科学への転売金額は、地元関係者によると「同社が土地を購入したときの価格より20億円も上乗せされた額だった」といいます。

幸福の科学は、2013年にこの土地に大学を開校するとしていました。しかしこの計画は2016年開校へと延期され、取得した土地はこれまで3年以上、ただの空き地になっています。

■ただの空き地なのに宗教用地？

民間企業所有の時代には空き地であっても固定資産税約2500万円が長生村に入っていましたが、幸福の科学の所有になってからは宗教法人の土地だということで非課税扱いになりました。

奥に見えるのは千葉正心館

しかし宗教法人の土地を非課税にする条件として平成4年・名古屋地裁判決が「①宗教法人がもっぱらその本来の用に供する土地であること、②本殿等の存する一角の土地のように宗教法人の宗教目的のために必要な土地であること、③当該宗教法人に固有の土地であることの３要件が必要である」としています。

これに対して長生村の31ヘクタールの土地は、宗教施設である千葉正心館とは別途取得された土地で区画も別。教団側は村に対して「瞑想修行のために使用している」と主張していますが、雑草が茂る造成地で、もともと大学用地との目的で取得された土地です。

こうしたことから、村議会では、この土地を宗教用地とはみなさず課税するよう議員が要求してきましたが、石井村長がこれを拒んできました。

そのさなか、石井村長が栃木県那須町にある幸福の科学学園を視察した際、幸福の科学側から交通費や昼食代の提供を受けたとの疑いが浮上し、現在、特別調査委員会（百条委員会）が設置されて、村長が追求を受けている、というわけです。

■人気のない広大な空き地に「読経処」が

百条委員会が問題としているのは公職選挙法違反に当たる寄附行為があったのではないかとの疑いについてです。しかし、それが議会で重視されている大きな要因に、この課税問題があることは間違いありません。なにせ、課税の手続きを拒んできた村長が、幸福の科学側から「寄附」を受けていたとされているからです。そこで、問題の31ヘクタールの土地を見に行きました。

とにかく31ヘクタールです。地球最高神エル・カンターレこと大川隆法総裁がかつて大規模な講演会などを行なっていた東京ドーム6.6個分。とにかくでかい。でかすぎて、北端に経って遠くを眺めても、どの辺が南端なのか、さっぱりわかりません。

教団がこの土地を取得した頃には、日曜日に2～10名程度の信者が屋外で瞑想か何かをしている姿が地元住民によって確認されています。しかし平日にはほとんどそういったことは行われていないようで、本紙・藤倉が行った月曜日は千葉正心館も休館で、屋外には信者の姿はゼロでした。

そして驚いたことに、この広大な土地の「ほぼすべて」が空き地。砂利道のようなものが多少作られてはいたものの、雑草を刈っただけの何もない地面。空き地のフェンスには、「教行（未来展望コース）」というタイトルの地図が貼られており、広大な空き地を散歩しなさいとでも言うかのように歩行ルートが描かれていました。また、雑草を刈っただけの更地に「読経処」の看板がぽつんと立っていたりもします。そのほかには、空き地のあちこちに大川隆法総裁の言葉や今年公開予定の映画のポスターなどが貼られた教団の掲示板のようなものが設置されていました。

要するに、宗教的な場所であることをアピールしているのは、看板だけです。

こんな空き地で瞑想ができるものなのか、本紙・藤倉は雑草を刈った後の地面に寝転がってみました。ぽかぽか陽気で気持よかったです。

■宗教施設はちっこい支部が１つだけ

敷地内にある唯一の施設は、グラウンドとして使われていた頃のクラブハウスを流用したと思われる「幸福の科学九十九里支部」。これは「大学予定地管理事務所」も兼ねています。そして政教一致が信条である幸福の科学なので、幸福実現党の候補者のポスターも施設内に貼られています。

エル・カンターレ像も安置されていたので宗教施設といえば宗教施設なのでしょうが、この小さなクラブハウス一つで、31ヘクタールの広大な土地を「宗教用地」と呼ぶのは無理がありそうです。

本記事冒頭の地図をご覧下さい。水色で塗りつぶした部分が31ヘクタールの土地です。その南（図では下）の方に、小さな黒い四角があります。それが、この「九十九里支部」です。宗教施設はこれだけ。

ちなみにこの一帯、津波が来ると水没します。