幸福の科学出版の北京事務所を中国当局が摘発

2012年1月末、中国・北京市にある幸福の科学出版の事務所が中国政府当局の立入調査を受け、閉鎖・解散に追い込まれました。当時、事務所にいた幸福の科学出版のスタッフは取り調べの際、「あなたがたは宗教団体なのか、出版社なのか」と問い詰められ、「次に来るときは一切の言い訳は聞かない」と言われたとのこと。これまで中国で19冊の書籍を発行してきた幸福の科学ですが、中国からの撤退あるいは“地下活動化”を余儀なくされる可能性が高く、現地の信者たちの身の安全が不安視されています。


■宗教・政治の両面で中国批判

幸福の科学出版はこれまで、教祖・大川隆法総裁の著作を中心に19冊を中国語に翻訳し、現地で発刊してきました。教団関係者によると、いずれも中国共産党による検閲を経て現地出版社を通じて発刊するなど、自由と人権のない中国の“正規の手続き”を踏んだものだったといいます。

しかし幸福の科学は日本での宗教活動において、大川総裁が胡錦濤・国家主席、習近平・国家副主席、温家宝首相、毛沢東といった中国の要人や指導者の霊を呼び出して、中国が悪意に満ちた日本侵略を狙っているかのようなことを喋らせてきました。

政治政治活動においても、幸福実現党の集会に、中国で民主化運動に関わり日本に帰化した評論家で拓殖大学客員教授の石平（せき・へい）氏を招いたり、日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ会長を招いて中国で弾圧されているウィグル人の問題を取り上げるなどしてきました。

さらに「幸福の科学出版」は、今年6月公開に向けて映画『ファイナル・ジャッジメント』を製作中。これは、登場する国名こそ変えていますが、よりによって中国による日本侵略をテーマとした内容です。

宗教と政治の両面で中国をいじっているわけですから、中国にとっては最も目障りなパターンでしょう。むしろ、幸福の科学出版がいままで中国で活動ができていたのが不思議なくらいです。

■事務所閉鎖を受け孫文（霊）降臨

中国語書籍を紹介する幸福の科学のパンフレット

北京の事務所が中国当局の立入調査を受けた直後の2月8日、大川総裁は孫文の霊を降臨させました。幸福の科学の全国の施設に上映された『「孫文の霊言」習近平の覇権主義が始まった』では、大川総裁の口を通じて語る孫文（霊）の言葉のほか、榊原俊尚・エルカンターレ信仰伝道局長の講話も収録されています。

「この日本を取り巻く世界情勢におきましても、今、共産中国が着実にその勢力を伸ばし、覇権を世界中に広げ“中華大帝国”を広げようとしております。もしこの共産中国が日本を占領し、日本を傘下に入れる事になれば、もはやわたくし達に自由はなくなります。信仰を持つ事も許されないような、そのような鎖に繋がれた奴隷となって参ります。（略）その中国に対する警鐘を鳴らす最大の機会が『ファイナル・ジャッジメント』でございます。この映画を通して数多くの方に本当に今何が起きてるのかを腑に落として頂きたい」（榊原俊尚・伝道局長）

「しかしこの映画の上映を前にしまして、まさに『ファイナル・ジャッジメント』のテーマである中国の脅威を象徴する事件がついに先日、起こりました。先日、中国にも信仰の火を広げたい、中国の人たちを幸福にしたいという想いで幸福の科学出版が事務所を出して、この教えを広げようとしておりますが、その幸福の科学出版の事務所に中国政府の当局の検査官が立ち入り、厳しい取り調べを行ないました。ちょうど日本人の現地の職員は出張中で不在にしておりましたために、現地の中国人のスタッフが対応しておりましたが、非常に厳しい取り調べ、査察を受け、この事務所は現在閉鎖・解散を余儀なくされることになっています」（榊原俊尚・伝道局長）

立入調査で「非常に厳しい取り調べ」が行われ、「閉鎖・解散を余儀なくされ」るとは、もはや事実上の“摘発”です。

孫文（霊）降臨を前にして大川総裁も、このように語りました。

「いま北京政府も幸福の科学を怖がっている。法輪功についで幸福の科学がいよいよ攻めてくる狙いがあるといって怖がっている。事務所も身の危険を感じて当会へ撤収しているところでございますけれども、向こうは幸福の科学が革命運動でもやろうとしていると思っているようですね。宗教家が革命に火をつけるということもあるので、怖がっている。中国でもだいぶ知られてきているので、孫文から指導されるとたまらんという感じはあるのかなと思います」（大川総裁）

なんだか、中国へのイヤガラセとして孫文（霊）を呼ぶのだと言っているようにも聞こえますが、大丈夫でしょうか。




■霊が地下活動をアドバイス

その後、大川総裁の口を通じて話す孫文（霊）に教団職員がこんな質問をしました。

「査察に入った管理官からかなりのことを言われている。“心臓の中に爆弾を抱えているようだ”“大川隆法総裁が北京レベルを超えて中国政府の問題になりつつある”ということも言われております。このままいくと法輪功のような宗教弾圧を加えられる。今後、幸福の科学がどのような思想戦を中国で展開していけばいいのか」

管理官からは「あなたがたは宗教団体なのか、出版社なのか」と言われたともしています。

一方の孫文（霊）は、こんなアドバイスをしています。

「映画は中国では上映できない。海賊版を本体で出して海賊版のふりをして売る方法があるわな」（孫文の霊）

孫文（霊）さん、いい案ですが、口に出して言っちゃった時点で、もうアウトじゃないでしょうか。かえって、中国で活動する幸福の科学の信者の身を危険にさらしています。

■当局「次来るときは一切の言い訳は聞かない」

幸福の科学グループ広報局は本紙の取材に対して、「今回の件について回答を差し控えさせて頂きます」とコメントしました。その後、教団関係者に取材していくと、立入調査の状況がもう少し詳しくわかってきました。

まず、北京の幸福の科学出版に立入調査に入った当局の正式な機関名は不明。

「人民解放軍や共産党ではなく、行政管理官と聞いています。調査の正式な名目なども不明です」（教団関係者）

ああいう国のやることですから、名目はどうとでもなるのでしょう。

「実は今年1月に、中国の出版物を管轄する行政機関が、幸福の科学出版が取引をしていた各出版社にヒアリング調査に入りました。その後、1月末に幸福の科学出版に立入調査が入り、パソコンの中身をチェックされ、書籍を押収されて、宗教活動を行なっていないかチェックされたようです。取り調べを受けたスタッフは、管理官から“中国では仏教、キリスト教、イスラム教しか認めていない、その他のいかなる宗教も取締の対象である”と言われ、さらに“次に来るときは一切の言い訳は聞きません”と言われたと聞いています。事務所を閉鎖・解散せよとの行政から公式に命じられたわけではないようですが、事実上、閉鎖・解散を指示されたようなもの」（教団関係者）

もっとも、中国では仏教もキリスト教もイスラム教も、当局による弾圧と監視の下にありますから、この3宗教ですら事実上「認められている」とは言えない状況にあります。チベットやウイグル、法輪功への弾圧を見ればわかるように、中国における宗教活動は命さえ奪われかねない危険を伴います。

■大川総裁は上機嫌？

今後の中国での活動について、教団関係者はこう語ります。

「今後も中国で出版活動ができるかどうかについては、“要ウォッチ”だと思っています。中国では、現地の出版社を通さないと出版活動ができない。今回、現地の取引先の出版社も調査を受けているので、各出版社が幸福の科学出版の関発行について当局から統制を受けるようであれば、書籍は出せなくなる。今年１月、習近平国家副主席が大学での思想統制を強化する方針を発表しているので、大学で書籍関連セミナーを開催することも難しくなるかもしれない」（教団関係者）

とんだ災難と思いきや、「孫文の霊言」の映像を見た現役信者からは、こんな感想も。

「大川総裁は、最初から最後まで上機嫌だった。“北京政府は私を怖がっている”と勝手に脳内変換しているのではないでしょうか」

大川総裁だけではありません。榊原伝道局長も孫文霊言に際しての講話の中で、今回の“摘発”を誇らしげ。

「この幸福の科学の存在が、あるいはこの経典は数多くの方に読まれているということが明らかになっております」

そういうことを誇ってる場合ではないのではないでしょうか。孫文（霊）のアドバイスを真に受けて地下活動などに走らなければいいのですが。