幸福実現党全員落選！ 教祖予告の“民族浄化”“日本沈没”の行方は？

教祖が「死にたくなければ幸福実現党に！」と街宣しても全員落選

12月16日に衆院総選挙の投開票が行われ、幸福の科学の政党「幸福実現党」は全員落選しました。衆院選と同時に行われた東京都知事選でも、幸福実現党のトクマ氏は落選。いつもと変わらない結果ですが、今回の選挙、幸福の科学にとっては少々特殊な事情の中で行われました。選挙期間中、教祖・大川隆法総裁が天照大神を降臨させ、今回の選挙で成果が出なければ天変地異で日本人を滅ぼして国をリセットするかのような“神示”を信者たちに発信。選挙戦終盤で大川総裁自らが街宣に繰り出し、「死にたくなかったら幸福実現党に」などと有権者や信者を“脅迫”。切羽詰まった教団や信者たちによる、公職選挙法に抵触しかねない選挙運動も目立ちました。大勢が判明した頃には、選挙結果にキレた信者がtwitterで「天変地異が来ますよ。日本の神さまが支援していた、幸福実現党を無視した罪は重い」と発言するなど、社会に対する不満と攻撃性を強めています。

■ “最大諸派”、全員落選

選挙期間中、大半のメディアから“諸派”としか表記されなかった幸福実現党。時事通信社作成の一覧表では、候補者65人（選挙区・比例区）中、幸福実現党は62人の候補者を立てた “最大諸派”でした。しかし選挙区・比例代表ですべての候補者が落選しました。ただし、09年の衆院選で落選した再誕の仏陀こと大川隆法総裁は今回は立候補しなかったため、2度目の“仏陀落選”はまぬがれました。

その大川総裁は、選挙戦終盤の12日から街宣を開始。

「死にたくなかったら、“幸福（実現党）”と書いて」

「“幸福（実現党）”と書かない人は、残念ながら、日本人としては悲しい悲しい運命が待ち受けている」

などと、有権者や信者を“脅迫”しながら、全国計8カ所で遊説しました。

■3000万人の“民族浄化”予告

実は今回の選挙、幸福の科学にとっては、日本列島がまるごと沈むか沈まないかの瀬戸際の選挙でした。

大川総裁（実物）が街宣を始める直前の12月7日、教団内では天照大神（霊）が降臨し、大川総裁（実物）の口を通じて日本滅亡に向けたメッセージを語りました。天照大神の降臨は10カ月ぶり3度目。今回は12月9日から全国の教団施設で映像で上映されています。『天照大神の御教えを伝える―全世界激震の予言―』です。本紙・藤倉主筆（実物）もこっそり拝聴してきました。

大川総裁（実物）「次の政権は安倍政権になると予想されているわけですけども、比較的神道的で神様を信じている方なので、日本神道系の神々を降ろしておいた方が政権への効き目が大きかろうということで、その辺のところは今日は考えた次第であります」

つまり、選挙向け霊言というわけです。大川総裁（実物）は、両手を交差させながら、天照大神（霊）を呼びます。

大川総裁（実物）「高天原にありませる天照大神、どうぞご降臨たまいて我らにこの国のあるべき姿をお示しくださいますよう心の底よりお願い申しあげます～」

天照大神（霊）「天照です」

降りてきたようです。

天照大神（霊）「北海道に猛吹雪が起き、大規模な停電が起きました。あれは、“電力供給についてよく考えるように」との神示を与えたのですけれども、よく分かっておらぬようであります。北陸の方でも竜巻を起こしまして、冬にも台風は来るということをお見せしたのですけども、よくはわかっておらぬようです。また、公共事業に対しても批判的な意見が相次ぐようであるからして、高速道路のトンネルの崩落事故も起きたようであるけども、なかなかわかっておらぬこともあるようです。小さな小さな象徴的な事件は起こしておるのだけれども、その意図するところは、分からないでいるようだね。ですから、民主党政権に関しましては、原子力事故が起きたからやめるとか廃止するとか、そういうことしてほしくてああいうもの（原発事故）が起きたわけではないということを知ってもらわねばならない。民主党政権だからああいうことが起こったのだということを悟ってもらわねばならなかった」

静かに低い声で天照大神（霊）は、最近の天災や事故が、さも自分が起こしたものであるかのように語りました。後半にさしかかると、天照大神（霊）はコーフン状態になっていきます。ときおり声を荒げたり、また低い声で迫力を出したり、非常に怖い話し方になって行きました。それに応じて、話の内容も、こんな恐ろしいものに。

天照大神（霊）「この地球なんか、どうにでもなるんです！　地震も津波もなんでも起こせるんです。簡単なんです！　要は、その真意を読み取って自分たちの悔い改めに使いなさいと言っているだけですよ」

教団幹部（実物）「信仰に基づく思いの力に、どれだけ力があるか。たとえば天変地異を防ぐのも全て、反省からくる思いの力で……」

天照大神（霊）「あなたの思いの力って聞くと不愉快なんです！　国民の思いの力が、バイキンのかたまりの思いの力に見えるんですよ。この不浄な国民だったら、私は3000万人くらい、この地上から消したいくらいです！　原点に帰りなさい。神なくして人間などありえないということがわからないなら、わかるところまでお見せしますから」

3000万人もの“民族浄化”予告です。

天照大神（霊）「私は最後はね、この日本列島くらい、どうにでもできるんだ！　だからもう、この国の国民が気に入らなかったら、日本列島ぜんぶ沈めます。沈めてもう１回浮かび上がらせて、新しい国民をゼロから作ります。そのくらいのことができるのが神なんです！　だから言うことを聞きなさいと言っているんですよ」

日本沈没です。小松左京さんの霊言はまだでしょうか。

■命をかけないからダメなんだ

天照大神（霊）に質問をしていた女性幹部は涙声で語りながら、最後は完全に泣き出してしまいました。そして天照大神（霊）は、幸福の科学を非難し始めます。

天照大神（霊）「あなた方の伝道が本物じゃないからです。信仰が本物じゃないからです。口だけいくらエル・カンターレ信仰だとか世界伝道だとか言ったって、本当は信じちゃいないんです。選挙やったって、本気でやっちゃいないんです。そんな団体ですよ」

天照大神（霊）「人１人でいいんです。（命をかける）１人出てくるだけで大きく変えることができる。その１人が出てこない。総裁の仕事を無駄に死なしていってる。その１人が20何年かかって出てこない。残念です。信仰心がないんでしょ。偉くなればなるほど信仰心がなくなるんですよ、この教団は。この程度の仕事で満足して満腹になるんです。それがダメなんです。たった1人が出てこないために、この計画が終わりかかっている」

前述の3000万人もの“民族浄化”予告に、「命をかけないからダメなんだ」という叱咤。内容もテンションも、非常に危険に思えます。

かつてオウム真理教は、教祖を含めた「真理党」候補者が衆院選で全員落選した後に武装化路線を突き進み、最終的には無差別テロを起こすに至りました。

■「99%は終わっています」

「最初に言いましたけど、私は、日本列島が全部沈んだって全然構わないという立場ですから、我が意に添わないのであれば、そうなっても別に構いません。日本人が一人もいなくなっても結構です。だから、生き残りたいかどうかは、あなたがたで決めなさい。もう99%は終わっていますので、あとは1%です。あとはあなた方で決めなさい」

もう知らないから滅びちゃえば？とおっしゃっています。

教団幹部（実物）「我々一人ひとりに責任があると」

天照大神（霊）「もちろん、（幸福の科学の）聞かなかった多くの国民にも責任がありますよ。責任は取らせます。マスコミにも責任は取らせます」

信者だけを責めているのではありません。天照大神（霊）は、日本国民全員に敵意を見せてます。

■散々煽って全員落選

教団では、この霊言映像の収録後、天照大神（霊）の言葉の一番怖い部分を抜粋したPR映像を作り、信者たちに霊元映像の拝聴を呼びかけました。PR映像では、天照大神（霊）の「日本列島ぜんぶ沈めます！」という恐怖予言の部分の後に、けたたましい警戒音とともに赤いテロップで、こう表示されます。

「本霊言収録の2時間後
東北・関東で
震度5弱 M7.5の地震が発生」

津波警報を伝えるNHKニュースの映像をパクって使い、「可能な限り高いところへ逃げてください！」というアナウンサーの声も入っていました。

これは、12月7日午後5時18分ごろに三陸沖で発生したマグニチュード7.3の地震を指しているようです。実際に津波も発生しました。

幸福の科学や大川総裁の教えを信じている信者たちにとっては、非常に恐ろしい映像です。

こうして大川総裁や教団が信者たちの恐怖心を煽った後に何が起こったかというと、たとえば本紙が【都知事選】トクマ街宣はまるで宗教勧誘、取材妨害も！で報じた、幸福実現党の選挙運動員による恐怖街宣。天照大神の霊言が全国の教団施設で上映され始めた翌日の12月10日から、運動員たちが有権者に対して、「天照さまが怒っている」「北海道の停電もトンネル事故も神の怒り」などと言いながらチラシを配り始めたのです。

ついで、12月12日には大川隆法総裁が突如、街宣をスタート。「死にたくなかったら、幸福実現党に」「幸福実現党と書かない人は、残念ながら、日本人としては悲しい運命が待ち受けている」などと有権者を“脅迫”し始めました。13日の大宮駅前での街宣では、取材に来た本紙・藤倉を教団関係者が最大5～6人で取り囲んで押さえこむなど、暴力的な取材妨害も行われました。

街宣映像はネット上で生中継され、終了後も録画映像がYouTubeにアップされました。機関誌『ザ・リバティ』はウェブサイト上で大川総裁の街宣や過去の政見放送映像などを紹介し、幸福実現党の政策をアピール。信者と思しき人々はtwitterなどで幸福実現党への投票を呼びかけていました。

12月14日から投票日の16日にかけて、都内の複数の教団施設で「幸福実現革命　幸福の科学」と書かれた赤いアドバルーンが揚がり、都内と埼玉県内を同じデザインの飛行船「幸福実現革命号」が飛びました。

日本ではネット上での選挙運動はまだ解禁されていませんし、アドバルーンは公職選挙法で明確に禁じられています。

しかし、大川総裁や教団が信者を煽ってなりふり構わない選挙運動を展開したにもかかわらず、幸福実現党の候補者は今回も全員落選。大川総裁による街宣も空振りでした。

■キレるのは天照か大川総裁か

選挙の体勢が判明した12日深夜、ある信者はtwitter上でこうつぶやきました。

「幸福実現党を2回の衆議院選挙で無視した、マスコミ、新聞、テレビは、自分達の無明を徹底的に反省し、やり直さないと、天変地異が来ますよ。日本の神さまが支援していた、幸福実現党を無視した罪は重い」

当選者を出せないことを社会の側のせいにして“天罰”を予告する。しかし、“天罰”が起こらなかったら、どうするつもりでしょう。かつて、化学兵器サリンを製造して散布することで、社会への厄災を自作自演したオウム真理教という教団もありました。

選挙後、幸福の科学の機関誌『ザ・リバティ』はウェブサイト上で、〈【衆院選・総括】安倍自民圧勝で改めて分かった、幸福実現党の主張の正しさ〉という記事を掲載しました。自民党は幸福実現党の政策をパクっているのだから、自民党大勝という結果は、幸福実現党の政策が正しいことの証明である、という主張です。

【ザ・リバティweb 2012年12月16日】〈【衆院選・総括】安倍自民圧勝で改めて分かった、幸福実現党の主張の正しさ
（略）
幸福実現党は、いつもながらその大胆な主張が票につながらなかったが、マスコミの露骨な「諸派」扱いによって国民に知らされなかったことが大きいだろう。そのため、幸福実現党の主張や政策をパクッた自民党や維新に票が流れたという図式だ。
（略）

こうした強引な解釈には、いままでと変わらない愛嬌があります。しかし、前述のように“民族浄化”や“日本沈没”をネタに信者たちの恐怖を煽って行われた選挙で完敗した以上、日本に何かしらの厄災が起こらなければ、大川総裁による“神示”が誤りであったことになってしまいます。

果たして、“民族浄化”や“日本沈没”は起こるのでしょうか。選挙の結果にキレて日本社会に害をなすのは、天照大神なのか、それとも大川総裁や幸福の科学なのか。あるいは、教団に煽られて危機感を募らせた信者が個人的によからぬ行動に走る可能性も捨て切れません。

今後の教団の動向は、強い警戒感をもって注視する必要がありそうです。