動画あり・統一教会信者の初詣に完全密着 「聖地」早稲田大学内で無断集会も

　旧統一教会（世界平和統一家庭連合）の信者約150人が1月1日、教祖・文鮮明（故人）が第二次大戦中に日本留学していた際のゆかりの地をめぐる「聖所巡り」として初詣を行った。統一教会の初めての礼拝の地、地下抗日活動をしていた文鮮明が特高の拷問を受けたとされる旧戸塚警察署跡、下宿跡などをめぐりながら、早稲田大学構内へ。大隈記念講堂の敷地内で約1時間、無断で集会を開いた。初期に入信した古参信者がスピーチし、歴史修正主義的かつ差別的な発言を繰り返した。巡礼と集会には韓国人信者たちも参加していた。

 

参加者に配られた記念カード

　この巡礼は、今年で24年目。主催は統一教会の「日本歴史編纂委員会」と「早稲田・高田馬場」聖地巡礼の会。参加者に配布された資料によると、同委員会の顧問と会長、巡礼の会の顧問を含め、「中心的スタッフ」として紹介されている5人全員が統一教会信者だ。

　今回の巡礼には、外部メディアとしては初めて「やや日刊カルト新聞」が完全密着で同行取材。主催者は当初、取材を拒絶していたが、記事に「無許可で同行している旨を記事にしっかり書く」ことを条件に事実上、同行を不問とした。

　一行は高田馬場駅を出発後、先頭のガイド役の解説を聞きながら巡礼。住宅地の狭い道路をふさいだり、無関係のマンションの敷地内にたまってガイドの説明を聞くなどした。道と玄関先をふさがれた住人がちょうど帰ってきて、迷惑そうに「そこが家です」と言いながら家に入っていく場面もあった。

　早稲田大学近くには、ネトウヨの間で語られる「西早稲田陰謀論」の「聖地」もある。ネトウヨが言う「反日」活動をする人々がことごとく、西早稲田に拠点を持つキリスト教団体に関わっているとする陰謀論だ。一行がその前を通った際には、ガイド役が「杉田水脈先生（衆院議員）も指摘している」「紀藤正樹弁護士が（統一教会被害の相談者を）紹介する場所もここ」などと語っていた。

　巡礼の終着地点は、早稲田大学だ。150人の集団が無断で構内に入り、「ここが文先生が学ばれた校舎」などといったガイドの説明を聞きながら歩いた。同大学・大隈記念講堂前で1時間近く、古参信者の話を聞き歌を歌い記念撮影をする集会も無断で開催した。大隈講堂は、昨年12月に本紙・鈴木エイト主筆が著書『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』（小学館）が第23回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」を受賞し贈呈式が行われた、エイト主筆の聖地。

　大学の警備員が注意をしに来たものの、主催者が「ここの卒業生である文先生を崇敬する集会」などと説明。警備員もそれ以上は制止しなかった。

　文鮮明は、早稲田大学が1928年に開設した各種学校に留学していた。実際には早稲田大学の卒業ではない。

　集会では、日本での初期からの信者で、「早稲田・高田馬場」聖所巡礼の会顧問でもある増田勝氏（84）がスピーチした。韓国人信者も参加していた集会だが、増田氏は「従軍慰安婦の強制連行はなかった」「日本は朝鮮を植民地にしてはいない」「日本が日清戦争で大韓民国を独立させた（日清戦争は1894～95年、大韓民国成立は1948年）」などと語った。「日本に来ていながらこうしたことを学ばない韓国人は韓国に帰りなさい！」と怒鳴りつける場面もあった。

参加者に配布された冊子

　一方、無承諾のまま密着取材を続けていた本紙記者と信者たちの間には、友情が芽生えた。集会前には「血糖値が下がらないように」とお菓子をくれる信者もいた。配布資料の冊子を欲しがる記者に対して「カルト新聞をやっている間はダメ」と主催者が応え、記者が「じゃあいまやめます！」と言い放って笑いを誘った。最後は、記念撮影のシャッターを押す係を本紙記者が務め、信者たちが「仲間になっちゃった」「応援してます」と声を上げ、「初笑い」で幕を閉じた。

※1月7日、日清戦争の年が誤っていたため修正しました。

　参加者の1人は、「ゆかりの地に当時の建物などが一切残っていないので、〝ここが〟と言われてもピンと来にくい」と満足げだった。