「摂理被害者救済基金」にやや日刊カルト新聞社賞

やや日刊カルト新聞社は12月1日、2012年度の「やや日刊カルト新聞社賞」を「摂理被害者救済基金」に授与することを発表しました。同賞は毎年1回、カルト問題に取り組む人物・団体の社会的貢献を称えるもので、今年が3回目となります。受賞者には本紙の広告収入から10万円を贈らせていただきます。


■摂理問題と「大学のカルト問題」を訴える

2012年度「やや日刊カルト新聞社賞」を受賞した「摂理被害者救済基金」は、強姦罪で韓国の刑務所に服役中の鄭明析（チョン・ミョンソク）を教祖とするキリスト教系カルト集団「摂理」（旧名・MS＝モーニング・スター）の被害者救済活動に取り組む脱会者、研究者、弁護士らの活動資金を管理する基金。

日本における摂理問題は、日本の女子大生も鄭による性的虐待の被害にあっていることを2006年に朝日新聞が報道したことを皮切りに、テレビや週刊誌などでも報じられました。当時すでに、女性信者への性的暴行の容疑で国際指名手配されていた鄭は、2007年に中国・北京で身柄を拘束され、韓国に送還されました。

韓国ではかねてより脱会者などが摂理への批判活動を展開していましたが、日本では06年に社会問題化して以降、脱会者や被害者の相談を受けていた恵泉女学園大学の川島堅二教授（当時。現在は学長）や渡辺博弁護士らがメディアでも積極的に摂理問題を世に訴えてきました。教祖が逮捕された後も、摂理はスポーツサークルなどのダミーサークルを用いて大学生などを偽装勧誘するという活動をいまだに続けていることから、脱会者たちは「大学におけるカルト問題」への対策にも寄与してきました。

今年7月には、韓国で摂理問題に取り組む牧師や脱会者を招いて「全国霊感商法対策弁護士連絡会」と「日本脱カルト協会」が「摂理問題を考える日本集会」を開催。ここでは日本側からも、脱会者のほか川島学長、渡辺弁護士、愛澤豊重・日本基督教団松沢教会牧師、高山正治・倉敷めぐみ教会牧師が出席し、改めて摂理の問題を訴えました。

■“セックス教団”扱い

摂理は、鄭による信者への性的虐待があまりに大規模かつ常軌を逸した内容であったため、“セックス教団”として有名になりました。そのため、社会問題化した06年以降、摂理を脱会しその問題を世に訴える活動をしてきた脱会者たちは、メディアからの好奇の目に晒されます。摂理のカルトとしての問題よりも、教団内での「セックス事情」に質問が集中して不愉快な思いをする場面もあったばかりか、名前や顔は出ないとは言え、メディアで「セックス教団」出身者として扱われる場面も多々ありました。

摂理では、統一教会同様に「合同結婚式」が行われ、それ以外の男女交際はむしろ抑圧されていました。にもかかわらず、メディアの取材の際に「あなたもセックスをしたのか」と質問された信者もいます。

摂理を「セックス教団」と呼ぶことは間違いではありません。教祖が宗教上の立場や論理を利用して信者たちに性的な虐待を繰り広げ、それを組織的に支えてきた宗教団体だからです。しかし、信者同士が性的な行為を行う宗教という意味での「セックス教団」ではありませんし、教祖による性行為は性的虐待ですから、本来はかなり慎重に取り扱うべき問題です。メディアが扱い方を間違えばセカンド・レイプになりかねません。

その点において、メディアや世間からの目は、決して脱会者たちのとって優しいものばかりではなく、脱会者を支援し被害救済に取り組む人々が意図した問題提起とは違った注目を浴びた側面もありました。

それでも、脱会者をはじめとする人々は摂理問題についての情報発信や問題提起を続けてきました。

■いまなお活動する摂理

摂理は現在も、大学などで偽装勧誘活動を続けています。近年では、ダミーサークルでの勧誘だけではなく、大学の外で個人的に学生の声をかけたり、東日本大震災のボランティア活動に関連するイベントなどに個人的に出入りして、正体を隠して学生を勧誘するということも行っています。またその勧誘の手は大学生だけではなく高校生にも広がっています。

教祖が服役中であるため、教祖による性的被害が新たに生まれる危険はありません。しかし、教祖の犯罪を「冤罪」「迫害」などと信者に説いているとも言われ、偽装勧誘問題ともあわせて、その反社会性がいまだに指摘されています。

「摂理被害者救済基金」は、今年7月の「摂理問題を考える日本集会」の開催準備の段階で設立されました。それまで、摂理問題についての集会や記者会見など、被害者救済活動の費用は脱会者や支援者たちが自腹でまかなってきました。基金が設立されたことで、摂理問題に取り組む人々の金銭的負担を軽くし継続的な活動をしやすくなったと言えます。

本紙としては、これまで摂理問題に取り組んできた脱会者、弁護士、研究者、牧師の活動に敬意を表するとともに、今後の活動を応援するため、「やや日刊カルト新聞社賞」を授与することを決めました。

同基金へは、一般からの寄付も可能です。

摂理被害者救済基金
みずほ銀行　新橋支店
普通預金　　２６９２８８９

■お詫び

例年、「やや日刊カルト新聞社賞」は10月1日の創刊記念日に発表することとしていますが、今年は本紙・藤倉主筆が多忙のため、受賞者選考が遅れてしまいました。関係者各位に深くお詫びいたします。

やや日刊カルト新聞社賞について