統一教会関連婦人団体を登録の平塚市、登録の削除は「オウムであったとしても、できない」

統一教会関連団体を登録し続ける
平塚市の落合克宏市長（カナロコより）

統一教会（世界基督教統一神霊協会／統一協会）の関連団体の一つである世界女性連合（WFWP）。そのWFWP神奈川支部第二連合会湘南支部が平塚市所管のひらつか市民活動センターに市民活動団体として登録されていることが判った。

この件について統一教会の問題に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会（以下・全国弁連）は、平塚市に対し2度の申し入れをおこなってきた。しかしながら、霊感商法や違法勧誘から市民を守る立場である筈の平塚市は何の対策も採らず、依然としてこの婦人団体を登録し続けている。

本紙が平塚市の見解を問い合わせたところ、市の担当者からは驚くべき答えが返ってきた。

◆全国弁連が示したダミー団体の証拠

全国弁連は今年9月13日付けで、平塚市長とひらつか市民活動センターに対し、世界平和女性連合が登録団体となっていることについて問題点を指摘する申し入れをおこなった。申し入れ書には市の見解を問う質問が記載された。

この件を担当した全国弁連の弁護士から、申し入れの要点と平塚市側の回答について聞いた。

【弁連から平塚市及びひらつか市民活動センターへの申し入れの要点　 2012年9月13日】

・世界平和女性連合は統一教会の「かくれみの」的団体

・世界平和女性連合は、文鮮明が「女性信者の獲得」「統一教会の資金獲得」「社会的政治的影響力の拡大」のために信者に指示して組織させたもの

・世界平和女性連合の総裁は教祖の妻・韓鶴子

・世界平和女性連合の規約から、WFWPは文鮮明提唱の理念を拡大・実現するための団体であり、理念の中に霊感商法を実行せざるをえない「万物復帰」の教義が組み込まれている

・世界平和女性連合の会長は元統一教会会長

・世界平和女性連合の事務局メンバーは全て統一教会の信者で運営も信者

・世界平和女性連合の講演会や留学生支援は表向きの活動であり、実情は統一教会の別動隊として正体隠しの伝道や資金集めのターゲット獲得の窓口となっている

・現在も多数の女性が資産を奪われている

・ひらつか市民活動センターが世界平和女性連合を登録団体としていることは、市が認定・推奨するボランティア団体であるかのような体裁が生じている

・今後、平塚市において世界平和女性連合・統一教会に参加し、資産を奪われ人生を狂わされる市民の続出を憂慮

・団体登録により、市が統一教会の活動に賛同との誤解を生み、統一教会に悪用される惧れ

◆平塚市長の回答

全国弁連の申し入れに対し、平塚市側は回答期限の同月27日、平塚市長の名で回答を出した。

【弁連からの質問に対する平塚市長の回答　2012年9月27日】（要約）

1．統一教会との関連があることを認識して世界平和女性連合を登録団体として認定したのか？

　登録にあたって、統一教会との関連は把握していない

2．どの様な経緯で世界平和女性連合を登録団体として認定したのか？

　当センターをご利用いただくには、原則として、利用基準に基づいて団体登録することになっているが、当該団体については、この用件を満たしているので承認した

3．これまで世界平和女性連合とどのような関係をもってきたのか？

　ひらつか市民活動センターの登録団体であり、団体内の会議等で使用がある

4．今後、世界平和女性連合とどのような関係を持つつもりか？

　利用基準に基づき対応する。今後、利用制限に該当する行為等があれば、承認の取り消しなどの対応を検討する

 この回答に対し弁連は10月4日、再度申し入れをおこなった。

【弁連から平塚市及びひらつか市民活動センターへの再申し入れの要旨　 2012年10月4日】（抜粋）

「団体登録要件を満たしているので登録承認した」とあるが、ひらつか市民活動センターの団体登録要件1条では「公益的な活動を行うことを目的とした団体であること（ただし、宗教や政治、選挙活動を主たる目的とする団体は除く）」とある

 世界平和女性連合の規約三条から、文鮮明の提唱する理念を拡大し、実現するための宗教活動を真の目的としていることは明白

現時点において、ひらつか市民活動センターの団体登録要件を充たしていない、登録承認を取り消すべき

世界平和女性連合の規約を見ると 「宗教団体」としての活動が根底にあることが読み取れる。

【世界平和女性連合規約】（抜粋）

第3条（目的）

本会は、（中略）人類が一大家族として結ばれる世界平和を実現することを目的とする。これらの目的を達成するために、既存の価値観や主義思想の限界を目の当たりにし、本会は文鮮明師の提唱された神主義、頭翼思想を基本理念として運動を展開する。

 ◆カルトの言い分を鵜呑みにするリテラシーのなさを露呈

全国弁連の再申し入れに対し、平塚市からは以下の内容の回答が返ってきたという。

【平塚市長の回答　平成24年10月23日】

平成24年10月5日にいただきました御要望について次のとおり回答します

　　　　　　　　　　　　　　
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記

世界平和女性連合については毎年更新していただいている団体情報の活動内容からは、ひらつか市民活動センターの利用制限に抵触するような活動は認められません。また、当該団体の方と面談を行い、国際交流や老人施設訪問などの活動に取り組んでいることを伺っております。

「登録承認を取り消すべき」 との全国弁連の申し入れを、単なる「御要望」とした上、日本国民に多大な被害を齎（もたら）し続けているカルト団体の関連組織である世界平和女性連合に「団体情報の活動内容」を「毎年更新していただいている」とある。

そればかりか、世界平和女性連合のメンバーとの面談に於いて、相手の言ったことをそのまま鵜呑みにしていると受け取れる記述もある。

市民の安全を守る立場である筈の平塚市がカルト団体の偽装組織のメンバーに関単に言い包められているようでは、市民の財産や平穏な生活は担保されない。

◆平塚市の担当者への電話取材で明らかとなった市の姿勢

回答についての事務担当である平塚市協働推進課市民協働担当に平塚市の姿勢について問い質した。


──平塚市の回答は今後のカルト被害の予防という観点から見ても不十分ではないか？統一教会が起こしてきた霊感商法などの社会的問題について、市がどのような認識を持っているのか疑問だ

「うちは飽くまでも施設利用にあたって市民活動をおこなうために使っていただくということで登録していただいている。登録に問題なければ登録していただいて会議室などを貸し出しているだけなので、そちらが言われる霊感商法の対策をするだとかなんとかをする場所ではないです」

──ひらつか市民活動センターの団体登録要件1条では「公益的な活動を行うことを目的とした団体であること、ただし、宗教や政治、選挙活動を主たる目的とする団体は除く」とある。世界平和女性連合の規約を見ると統一教会の活動との関連が明白である。このことから宗教活動であるとの認識は取れなかったのか？

「宗教活動がダメということではなく、もちろん宗教活動をこの施設でやることはダメだが、団体が宗教活動をやってはいけないということではなくて、市民活動でも宗教の理念に根ざした中で活動されている団体はいっぱいありますから。その団体が宗教活動をやってはいけませんよという話ではなくて、市民活動は宗教活動や政治活動とは違いますよと。その中で市民活動を主にやっていただくと。『この施設の中で布教だとかをやってもらっては困ります』ということは団体には言ってありますので、他の団体を含めて『ここはそういう施設ではありません、飽くまでもそういう団体が公益的な活動をやっていただくために使っていただくためのものです』ということで。そして活動の仕方が間違った活動をしていなければうちの方は許可して活動していただいている。その団体が宗教をやっている・やっていないということではない」

──世界平和女性連合は表向きは公益的な市民活動をおこなっていると標榜しているが、実際は信者獲得や霊感商法に繋げる活動を裏でやっているとの指摘がある。当初の登録申請時は世界平和女性連合神奈川支部第二連合会湘南支部と統一教会との関連は把握していなかったとのことだが、全国弁連の申し入れ以降はそちらも把握していた筈

「そちらの情報で知ったが、その情報が正規な正しい情報なのかどうかというのは、何も担保がないので」

──規約や代表者を見れば正しい情報かどうかという以前に関係性は明白だと思うが？

「関係があったとしても、そういう宗教に根ざした中で、活動自体が市民活動であれば特に問題はない」

──現状、一般社会常識的にかなり問題がある団体であるということは、市民の安全を守る立場である行政としては当然把握しておかなくてはいけない情報だと思うが？統一教会がどの様な手口を使って霊感商法や違法勧誘をおこなっているかということの中には世界平和女性連合の存在もある。ちょっとでも調べれば判ることであるし、全国弁連も申し入れをしている。そういう団体が登録されている以上、市が団体にお墨付きを与えているような形にもなる。

「お墨付きを与えているわけではない。飽くまでもセンターを利用するための登録団体というだけで、市がその団体の何かを保証しているとかそういうものでは全くありません」

──しかし、平塚市のホームページにその旨の記載はなく、市のホームページを辿るとこの団体が出てくる。これを入口にして霊感商法なり違法勧誘から信者になってしまったなどの被害が出た場合、市として責任が取れるのか？

「市はそういう意味での存在ではないですね。ご利用団体を明らかにしているだけです」

──統一教会自体の問題性は認識しているということか？

「まあ、いろんな新聞報道などでそういう部分もあるのかなと思っていますが」

──そのことと、今回世界平和女性連合の団体承認を取り消すこととは違うということか？

「例えば登録している団体の方たちが何か犯罪にかかわり裁かれるということになれば、検討することになると思うが、そういう惧れがあるというだけでは何も・・・」

──この団体がどういう団体なのかを市民が調べた時に、市のＨＰから辿れるとなれば『この団体は市の承認を受けているんだ』と思ってしまう。

「そういう誤解のないようなホームページの載せ方とか、うちの方でも検討する必要があるかもしれませんが、飽くまでもそういう位置づけではないということです」

──カルト団体は様々な手段で自治体のお墨付きを得ようと画策しており、今回の平塚市の対応はその点でも心配がある

「ただ、うちの方は全ての団体の活動を調べて、裏で宗教と繋がっていてそちらの宗教の方がそういう付帯的なものを犯しているのかどうかとかそういうところまでを調査したりする場所でもないので」

──管轄ではなく、権限もないと？今回、全国弁連から申し入れがあったが・・・・

「そういう機関から、例えば正規な警察であるとか裁判所の方から『この団体はこういう事案を起こして今係争中である』とか『こういう結果が出ました』とか『この団体はこういう所で活動をさせないでほしい』というものがあればですね、それに則った形でおこなうが、それがなければ・・・」

──飽くまで公的な警察・裁判所ならということか？

「そうですね」

──例えば、オウム真理教（現アレフ）の関連団体が正体を隠してボランティア団体登録しようとしたらさすがにそれは認めないと？

「ただ、それが法的にきちんと認められた中で活動されるのであれば認めざるを得ないですよね。オウムであったとしても、それが、だって今はそれできちっと活動されている・・・きちっとというのはどうかとしても、うちの方で規制する法律が何もなければ、逆にできないですね。うちは市民活動推進条例という条例を作って『市民活動はこういうものです』と。その中でセンターの利用についても　則って利用してもらっている。それに反することがあれば別ですが」

──具体的に市民から被害相談なりがあった場合は、検討もあるということか？

「うちのセンターを使ってそういう活動をしてしたということがあれば、そういう団体に申し入れをして、事実確認はさせていただきますけれども」

──市民センターでの活動と関係ないところで、世界女性連合神奈川支部第二連合会湘南支部に勧誘されて被害に遭ったという情報が上がってきた場合に、市民に被害を与える団体ということで登録を削除するということは？

「いきなり削除はできないですね。一方の話だけを聞いて、うちは裁判所ではないので、どっちが正しいかということの判断はできないですし」

──団体にヒアリングをしてということか？

「そうですね、ヒアリングをして、どっちが正しいかという判断が中々できない中で、そういう被害があっちでもこっちでも出てくれば、何らかの対応はあるということでしょうけれども。この団体に限らず、団体の活動している中でトラブルというものはいろんな形であるので、仲違いしたとかね、それを逆恨みしてある団体をどうどとかこうだとか中傷する人もいますから。それを一方的に聞いていれば、それだけで一方の話を聞いただけで削除するということはできないですから、どういう事情でそうなったか訊きますね」

──回答書の記載から、今回全国弁連の指摘を受けて、世界女性連合神奈川支部第二連合会湘南支部に面談をしたということか？

「そちらがどのような形で情報を得られたか判らないが、弁護士協会（全国弁連）とのやり取りがどう内容だったかということについては守秘義務があるので私の方からはお話しすることはできない。飽くまでも登録している団体について公開されている情報に基づいてお答えしているだけです」

──平塚市から全国弁連への回答に「当該団体の方と面談を行い、国際交流や老人施設訪問などの活動に取り組んでいることを伺っております」とある。これでは不十分ではないか？

「先程も言いましたが、そういう批判なりクレームが来た時に、うちは当該団体に確認する必要があるので『こういう話が来てますが実際どうなんですか？』と確認はしますが、両者を比べてどっちが正しい悪いという判断は裁判所じゃないので、できませんよね？」

──そこまで判断する立場ではないということか？

「そういうことですね。ただ、実際やられている活動でうちの登録の規約に反する行為がありませんか？という確認はしますので」

──今回の平塚市の対応は、団体にヒアリングをして「うちはちゃんとした活動をしていますよ」と言われたら「そうですか」と、ただ鵜呑みにしているようにしか外形的には見えない。弁連からも一連の経緯を聞いたが、全く市として「市民をカルト被害から守ろう」「カルト被害を防ごう」との意思が見えてこない

「あったからといって全て調査を掛けて動くという機関ではないので」「うちの施設の中でそういう活動がされているのかいないのか、団体のヒアリングもしますし、日頃の活動なんかを訊きながら、その団体が実際どうなのかを確認はしていきます。ただ、細かいところまでを調査したりとかという権限は何もないので」

──団体が「表向きはこういう活動をしていますが、裏では資金獲得のために霊感商法やったり騙して勧誘しているんですよ」なんて言うわけがない。しかし、もしそう言ったとしたら『そういう団体はお断り』と言えると？

「まあ、もちろんそうですね」

──ということは、そういう団体が入り込んでいたとしても、市としては排除するだけの権限も調査自体もないと？

「そういう被害の声が上がってくれば、また話は別になるでしょうし」

──「こういう団体を認証していることで被害が懸念される」というのが全国弁連の申し入れの主旨だと思うが、実際に被害報告が上がってこない限り、対処の仕様がないということになる

「それは警察も何もそうですよね。『あいつが怪しいから捕まえる』なんてことはできないですから。例えば、もちろんストーカー規制法やＤＶの法律の中で危険が予測される人をある程度排除するだとか近付かせないとかいうことはできるのは、それはそういう法律があるからで。これについてはそういうものが何もないので」

──飽くまで法律の中の判断で動くのは当然だと思うが、市民の安全を守る立場の行政としては物足りないというか、それで市民の安全が守れるのか疑問がある

「でも予測の中でそういうことをやることは、逆に人権侵害にもなりますよね。何もしていないのにただ単に余所からの情報で『怪しい』ということで、その人の活動を制限するようなことをしてしまえば、それはそれで行政としても・・・・」

──人権侵害との兼ね合いもあると？。今回全国弁連から霊感商法の過去の実例や世界平和女性連合関係の資料も添付書類されたということだが、それをご覧になった上でということか？

「だから、うちはそういうのを良いとか悪いとか総合的に判断したりする機関ではないので。飽くまでもうちの提供している範囲の中で利用をお断りするのか利用続けてもらうのかということですから」

──そこまでの判断しかできないということか？

「はい」


平塚市とのやり取りから、そもそもの問題性を認識しているとは思えず「権限がない」などと何の対策も取れないようでは、全国弁連が抱く平塚市民のカルト被害の懸念は一層現実味を帯びてくる。

今回平塚市としては、統一教会関連団体の団体登録を取り消すことはしないということだ。

◆他の自治体でも統一教会系団体の登録が

他の自治体でも、全く教団との関係が判らない名称で登録している統一教会系団体が多く存在している。

信者が市議会議員を務めていた千葉県流山市で活動する【ママカフェお母さん塾】もそのひとつだ。
世界平和女性連合千葉支部第四連合会のメンバーで構成されたママカフェお母さん塾は、流山市民活動センターに登録されており、代表者は平成23年2月に市民活動センターが協力し流山市教育委員会教育長（当時）なども登壇したシンポジウムにパネリストとして参加するなどしている。子育て中の母親などへの勧誘被害が懸念される。

尚、横浜市市民活動支援センターに団体登録されていた統一教会横浜教会の青年信者のボランティア団体【Love&Green Yokohama】は今年9月の本紙での報道後、登録を削除されている。


本紙では今後も、地方自治体に入り込むカルトの偽装団体について、その実態を報じ、自治体の責任を追及していく。