（動画あり）統一教会信者が鈴木エイト氏を提訴し会見 被告が記者席で取材

自分を提訴した原告の会見を取材する鈴木エイト氏

　ジャーナリストの鈴木エイト氏に名誉を傷つけられたとして、統一教会信者の後藤徹氏が10月４日、同氏に1100万円を請求して東京地方裁判所に提訴した。提訴後に東京の司法記者クラブで会見を開いたが、記者席には被告である鈴木氏の姿が。会見終了後は、原告ではなく被告の鈴木氏が報道陣に囲まれ、事実上の「反論会見」が行われた。

　同日、統一教会関連団体「天宙平和連合（UPF）」の日本支部「UPF-Japan」も鈴木氏を提訴した。

　鈴木エイト氏は「やや日刊カルト新聞」の主筆を務めており、同紙幹部を被告とする民事訴訟が提起されるのは11年ぶり3件目。2件の同日提訴は、同紙史上初となる。

 

■原告は統一教会から業務委託を受けた信者

　後藤氏は自身が「拉致監禁」され統一教会からの脱会を強要されたとして民事訴訟を起こし、家族やキリスト教牧師らに損害賠償を命じる判決が2015年に確定している。

　今回の新たな訴訟で後藤氏側は、鈴木氏が2013年と2015年の「やや日刊カルト新聞」の記事や2022年の「情報ライブ　ミヤネ屋」番組内で、後藤氏について「引きこもり」と表現したことなどで名誉を傷つけられたとした。関連して、統一教会現役信者が今年7月に開催したシンポジウムで、登壇者から「引きこもり発言」について問われた鈴木氏が「どうでもいい」と返したことや、今年5月に鈴木氏が旧Twitterに〈教団側が「拉致監禁！強制棄教だ！」と被害者面でアピールしているだけ〉と投稿したことも挙げている。

原告の会見で自撮りする被告

　東京の司法記者クラブで開かれた後藤氏側の会見では、現在の教団での立場を問われた後藤氏が「全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会」の活動を「家庭連合からの業務委託として請け負っている」と明かした。

　ジャニーズ会見では「指名NG記者」リストに入れられていた鈴木氏。しかしこの会見では、挙手したところ幹事社から指名された。

「業務委託ということは、報酬が支払われているということか」

　後藤氏は「そうですね」と答えた。

■同日に教団関連団体も提訴

　記者会見で、後藤氏の代理人の徳永信一弁護士は、統一教会関連団体「天宙平和連合（UPF）」の日本支部「UPF-Japan」も鈴木氏に同額を請求する訴訟を東京地裁に提起したとした。UPFは、安倍晋三元首相が2021年にイベントにビデオ出演した団体。鈴木氏はこれについて、UPF側から安倍元首相側に5000万円の報酬が支払われたとの情報がある趣旨の発言をしており、UPFーJapanこれが名誉毀損に当たるとしている。

　名誉毀損に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏は、首を傾げる。

「無報酬出演の方が、統一教会と安倍氏が不自然にずぶずぶだったことになりそう。報酬が支払われていた可能性に言及してもらえた方が、むしろ名誉は保たれるのでは？」

　いずれにせよ、統一教会からの業務委託で「拉致監禁問題」をアピールする後藤氏と、関連団体のUPFが、同日に同じ代理人（徳永信一・中山達樹両弁護士）によって2件の訴訟を鈴木氏に提起した形だ。

　被告の鈴木氏は「やや日刊カルト新聞」の主筆を務めており、同紙幹部がカルト団体や関係者から民事訴訟を起こされるのは、2012年に幸福の科学から新潮社とともに訴えられ1億円を請求された藤倉善郎総裁（新潮社とともに完全勝訴が確定）以来11年ぶり3件目。同日に2件の訴訟を起こされるのは同氏幹部として初となる。

■原告会見後にその場で被告が〝反論会見〟

原告の会見後に報道陣からの質問に答える被告

　会見が終了すると、報道陣は原告の後藤氏側ではなく被告の鈴木氏を取り囲み、原告会見と同じ司法記者クラブで、鈴木氏による事実上の「反論会見」が行われた。鈴木氏による反論会見は、安倍晋三元首相殺害直後に統一教会が初めて開催した昨年7月11日の記者会見場で行われて以来、1年ぶり2度目。

参考動画：鈴木エイト氏が統一教会の記者会見場をジャック

　会見で鈴木氏は、直近の「ミヤネ屋」での発言は「引きこもり状態と思われる」との趣旨で、「引きこもりそのものだと認定したものではない」として、飽くまでも論評の範囲内であるとした。

「私が後藤徹さんに対して言ったことではないことが、（訴状では）後藤さんへの侮辱のように認識されている。私は統一教会のアピールに興味がないとツイートしただけ。後藤さんの団体は教団の紐付きで、その団体の代表者による提訴には教団の意向もあるのではないか。我々はこういうことがあればあるほど取材意欲をかき立てられるし、萎縮することはない」（鈴木氏）

■「財産保全の法整備を」「藤倉さんはめんどくさい人」

　統一教会については、政府が10月13日にも裁判所に解散命令請求を行う見通しであることが報道されている。一方で、被害者救済との関係上、宗教法人の解散命令に先立って財産保全を行うための法律を求める声が弁護士や被害当事者、野党などから上がっている。

　鈴木氏はこの点に触れ、「今国会で財産保全の法整備をしっかりやって欲しい」と呼びかけた。

「（財産保全で）財産が被害者に行くのであれば、このくらい（後藤氏が裁判で請求している1100万円）のお金は払っても構わない」（鈴木氏）

　鈴木氏は報道陣に対して「この部分はカットして下さい」としたが、やや日刊カルト新聞TVはYouTubeでカットせずにしれっと報じた。

　後藤氏を原告とする訴訟では、鈴木氏がやや日刊カルト新聞で執筆した記事も対象とされている。しかし同紙や代表者の藤倉善郎氏は被告に含まれていない。その理由を原告側の会見で徳永弁護士は「面倒だから」と語った。

　鈴木氏は「反論会見」で、この点についてだけは原告側に全面的に同意した。「確かに藤倉さんは面倒な人」と語ると、報道陣の一部からは乾いた笑いが漏れた。「そんなことはない」と藤倉氏をフォローする記者は1人もいなかった。