サイエントロジー教会と関連団体が圧力か？議会中継動画を削除した流山市議会（後編）

市民の人権擁護の会(CCHR)HP

本紙既報記事の後編。昨年10月に起きた千葉県流山市議会における本会議中継動画削除問題。削除要請を行ったサイエントロジー教会と市民の人権擁護の会に経緯や見解を尋ねた。併せて全国各地の地方議会で採択されている「障害者虐待防止法の法改正を求める意見書」への関与も訊いた。

◆市民の人権擁護の会TOPは"圧力"を否定

　サイエントロジー教会関連団体が関与した意見書の質疑応答場面が削除された案件を、本紙が2月3日に報じた（サイエントロジー教会と関連団体が圧力か？議会中継動画を削除した流山市議会）。この件について12月末、市民の人権擁護の会(CCHR)代表世話人である米田倫康氏が取材に応じた。

　一連の経緯をある程度把握していると話す米田氏。最初に意見書を採択した神戸市議会には”議員主導で全く関わっていない”とのことだが、以降に採択された地方議会への働きかけは概ね認めた。また、意見書を可決した自治体の数は筆者の指摘より多いという。組織的な全国での地方議会への働きかけについては“いくつかやっている”と認めたもののその全てが通っているわけではないと言及、表立っての喧伝も行っていないようだ。

「我々だけでなくいろんな人が動いているので、全部は把握しきれてない」「伝手もなく一から当たっている。地方議会が意見書を出したところで虐待防止法の改正につながるとは限らないし、その過程に過ぎない地方議会での採択を我々の手柄にするつもりもない」 

　流山市議会へは本会議での藤井俊行議員（会派・流山みらい）の質疑内容について「議会の主題主旨から外れる質問」「当会に対する誹謗中傷に近いような内容」「事実と違う」との理由をあげ、訂正の要望を伝えたという。

　会議録の削除要求に関しては「記録なら両方削除依頼をしたと思う」と認めたが、“圧力”については否定した。

「法令を無視して不当に圧力をかけることなどない。事実と違うものが流れてしまうと誤解を生む」

◆提案議員の証言との食い違いも

　会派代表者会議の内容が漏れ伝わっていた件には「聞いてみないと判らない」と回答を保留。また、地方議員へのアプローチの際にはサイエントロジーとの関係を積極的に開示していると力説した。

「説明してますよ、行った時に。こちらはサイエントロジー教会で作られたということは陳情の文というか説明の文にもちゃんと書いてあります」

　これは前編で報じた当該意見書提案者・中川弘議員（会派・自由民主党）の証言「人権擁護の会とは聞いたがサイエントロジーとは聞いていない」とは相反する。

　国会議員への働きかけも否定。意見書採択の一元管理については「どこに働きかけてどうなっているかは把握しているが、我々が把握していないところでそういう動きがあるかもしれない」と濁した。

「全部CCHRがやっているなどと言うのはおこがましい。同法改正を悲願としてずっと活動している団体もある。そのような団体や個人を差し置き、こちらがその主導権や手柄を握るつもりなど毛頭ない」

　サイエントロジー教会とは思想的な背景など“同じ枠組みの中での活動”ではないのかと尋ねたところ、米田氏は両団体の差異をこう説明した。

「目的が違う。サイエントロジー教会は宗教団体なので布教が目的になるかもしれないが、市民の人権擁護の会の目的は飽くまでも精神医療現場での人権侵害を無くすこと」

　そして各市議会で提出されている同様の内容の意見書について"ひな型"の存在も否定した。

「神戸は市議会議員たちがやっている。我々がひな形を作っているわけではない」

◆"独占"を否定　

　改めて人権擁護の会へ「具体的な要求内容」「中川議員への相談」「藤井議員への訴訟恫喝」「会派代表者会議の情報漏洩」について質問事項を送信したところ、米田氏から回答があった。

「藤井議員の質疑の2回目と3回目の部分は議題とは関係がない内容であると共に、当会や個人が特定され得る形で団体と個人に関する事実と異なり名誉を棄損する内容が含まれていたため、CCHR千葉支部長から流山市議会事務局に対し動画削除の要望をした」

　中川議員への事前相談や藤井議員への訴訟恫喝も改めて否定。会派代表者会議の決定内容を事前に知らされていたということはなく、議会事務局から「議会内での協議の結果、配信映像については本人の申し出により映像の一部を削除することになりました」との回答が来たとある。

　再度、米田氏が電話取材に応じた。

　当初、事務局から会議録の削除はできないと言われたCCHRは動画だけの削除を求めたという。中川議員への個別相談の有無についてはニュアンスを変化させた。

「少なくとも事前はないと聞いている、直接事務局とやり取りした」

　議会事務局からの回答に「本人の申し出」との記載があったことについての詳細は不明とのことだ。

「どういう委員会などが開かれてどうなったかは一切判らない。事務局に訊いてくださいとしか言えない」

　藤井議員への接触も否定。

「陳情の際に当会会員が直接藤井議員に説明しただけで、その後接触は一切ない。逆に、藤井議員からも当会に対し、団体や陳情内容に関する問い合わせや確認も一切ない。

　当該意見書の採択については再度”独占”を否定した。

「動いているのはうちだけではない。せっかく虐待防止に向けて動こうとしている人たちの思いが穢されると申し訳ない。我々は我々でやっているが、恰も改正や決議案自体がおかしいと思われてしまったり、日弁連や団体当事者がやっていること自体がおかしいとなってしまったら申し訳ない。寧ろそういう団体が先にやっていたことなのに、うちが全部背後でやってると思われたらイメージが違う」

◆サイエントロジー教会は議会への働きかけを否定

サイエントロジー東京(Tokyo)HP

　サイエントロジー教会（サイエントロジー東京）の広報担当者にも以下の質問事項を送った。

「具体的な要求・要請内容」「中川議員への相談」「藤井議員への訴訟恫喝」「会派代表者会議の情報漏洩」「意見書とサイエントロジー教会との関連」「サイエントロジー教会と市民の人権擁護の会との関係」

　年末にサイエントロジー教会から回答があった。その要旨を以下にまとめた。

・CCHR千葉支部長からの問い合わせにより確認したところ、事実に基づかない内容だったため10月12日に議会の見解を書面で尋ねた。その際、千葉県人権施策基本方針を挙げ「事実に基づかない発言によって個人や団体を傷つける場であってはならない」と指摘。中継動画や会議録の削除は求めていない

・中川議員や藤井議員とは一切面識はない。会派代表者会議の内容も把握しておらず議会事務局とやり取りしたのみ

・意見書に関しては、CCHRの各議会への働きかけについては聞いているものの口を出したり議会に働きかけをしたことはない

・CCHRは「当教会から独立した非宗教・非営利の市民団体」

◆"圧力"はあったのか

「差別」について言及された千葉県人権施策基本方針を持ち出すことで宗教団体や特定グループへの差別を匂わせ、流山市議会へ”圧力”を掛けたとも取れるサイエントロジー教会。

　サイエントロジー教会からの圧力めいた照会とサイエントロジー教会関連団体からの繰り返しの要請によって本議会動画を削除した流山市議会の判断については、様々な観点から問題となりそうだ。

　同意見書が全国の複数の地方議会において相次いで採択されている件についても、それぞれの経緯や背景を含め注視していく必要がある。

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