2022年2月3日木曜日

サイエントロジー教会と関連団体が圧力?議会中継動画を削除した流山市議会(前編)

サイエントロジー関連箇所が削除され公開
(中川議員による提案理由説明場面)
(流山市議会議会中継サイトより)

昨年10月に開かれた流山市議会(千葉県)のライブ中継映像が、ある団体のクレームにより編集された状態で同市議会HPからオンデマンド(録画)配信されていたことが判った。編集箇所はサイエントロジー教会の関連団体・市民の人権擁護の会(CCHR)が関与した発議“"障害者虐待防止法の改正を求める意見書”の提案議員への質疑応答場面。当該動画から両団体の問題点や意見書との関わりを指摘した場面がそっくり削除されているのだ。一連の経緯を追う中、両団体による流山市議会などへの圧力疑惑も浮上。さらに同様の意見書が全国の地方議会で採択されていたことも判明した。

◆同様の意見書が全国で採択 

 障害者虐待防止法が規定する「虐待発見時の市町村への通報義務の対象」に医療機関における障害者虐待/医療従事者による虐待を加える旨の法改正を求める意見書が、全国各地の地方議会において相次いで採択されている。
 当該意見書は本紙が確認できただけで昨年末までに22の地方自治体が採択。令和2年10月27日の神戸市議会を皮切りに、令和3年には茨木市(6月22日)、千葉市(6月23日)、大和市(6月25日)、鎌ヶ谷市(9月2日)、大和市・我孫子市(9月6日)、市川市(9月13日)、浦安市(9月22日)、柏市・松戸市(9月24日)、四街道市(9月28日)、横浜市・習志野市(9月29日)、守口市(9月30日)、北九州市(10月4日)、流山市(10月5日)、川崎市(10月8日)、渋谷区(10月13日)、秩父市(12月15日)、飯田市(12月17日)、うるま市(1221日)の各議会が採択し、衆参両議長・内閣総理大臣・厚生労働大臣宛てに提出された。意見書を採択した議会を見ると、千葉県内の自治体が多いことに気付く。
 この意見書とサイエントロジー教会/市民人権擁護の会の関わりが明らかとなったのが、流山市議会での同意見書発案議員への質疑応答場面。その肝心の場面が市議会のオンデマンド配信では編集が加えられ削除されているのだ。これは如何なることなのか。
 サイエントロジーは精神科医や向精神薬治療への非難など反精神医学運動の展開で知られており、当該意見書の主張内容との関連性も気になるところだ。

◆不自然に途切れる映像

 問題の動画は昨年10月5日に流山市議会本会議場で議題となった発議第20号『「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」の早期改正を求める意見書について』のオンデマンド配信。同月28日に市議会HP上で公開された議会動画を確認してみよう。
 冒頭から2時間6分30秒が経過したところで、森亮二議長が発議第20号の審議を告げる。意見書の提案者は会派【自由民主党】の中川弘議員。中川議員の提案理由説明の後に会派【流山みらい】の藤井俊行議員が「意見書の提案団体」に関する質疑を行う。中川議員は「意見書採択について、市民の人権擁護の会千葉支部支部長より要望をいただいた」と回答。
質疑応答を行う藤井議員(上)と中川議員(下)
(流山市議会議会中継サイトより)
 その後、カウンターが2:17:11となった時点で不自然に映像が途切れ、唐突に森亮二議長が質疑の終結を告げる場面へ移行する。

映像の編集箇所、不自然に切り替わる場面
(流山市議会議会中継サイトより)
 しかし、11月18日に市議会HPで公開された会議録では、この質疑と回答の後に藤井議員による再質疑と中川議員の答弁が掲載されている。そこには、提案団体(市民の人権擁護の会)の上部団体(サイエントロジー教会)に関するインターネット情報や提案団体からのコンタクトについての藤井議員の発言、中川議員が市民の人権擁護の会の上部組織の内容について確認したことなどが記載。先に公開された議会動画ではサイエントロジー教会とCCHRに関するやり取りが削除されていたと判る。
 削除箇所を会議録で読む場合と動画で観るのとではニュアンスも変わってくるのではないか。

◆議会事務局が取材対応

 議会事務局へ取材するため12月中旬、流山市役所を訪ねた。折しもその日は、流山市議会第4回定例会最終日とあって全市議会議員が登庁しており、本会議前に関係議員へ直接取材することができた。
 
 事務局窓口で取材意図を告げたところ、事務局次長と議事係主事が対応。「内容については詳しくは申し上げられない」と前置きした上で、動画削除までの経緯について説明があった。
「本会議場での議員の発言に対して市民人権擁護の会とサイエントロジー東京というところから映像について削除していただきたいというご要望が議会に届いた。映像を削除するのか、発言の部分、会議録をどうするか会議が行われ、会議録は議会での発言なので会議規則に削除することはできないが、映像については本市で独自に取り組んでいるもので正式な記録としておらず公共の皆様から目に付くところであるので削除することに決まったという経緯」
“会議”については「事務方の会議ではなく議員の会議」による意思決定であり「調整機関として議長が招集して各会派の代表者会議で協議をした結果」だという。

 事務局の説明からすると、団体側は会議録の削除も求めたようだ。しかしながら会議録は公文書であり、地方自治法第123条により削除はできない。そこで公式記録ではない議会中継動画の削除のみ市議会が応じたことになる。
 また、団体側は議会事務局から議会へと2段階の要求を行ったという。
「当初は事務局が電話対応したが対応しかねるとなり、相手方が独自に考えて議会に対して要望を出した」
 両団体からの具体的な要求内容については明言を避けた。
「そこは削除してほしいということで会議で削除になったので改めて第三者の方にお話しするのは逆に趣旨に反する」

◆隠ぺい工作はあったのか?

 本紙の調査によると団体側は当初、市民の人権擁護の会千葉支部長に関する発言内容、つまり同会の当該意見書への関与自体を糊塗しようとした形跡がある。
 会議録を改めて確認したところ、中川議員による「提案理由の説明」では「市民の人権擁護の会」の名は一切出てこない。藤井議員の質疑を受けた中川議員の答弁によって提案団体が「市民の人権擁護の会」であり、意見書提出自体が同会千葉支部長による要望だったと明らかになったものだ。
 動画から削除された場面で藤井議員は「背後団体」として団体名には言及していないものの、サイエントロジー教会やCCHRの問題点や近隣市議会での動きを指摘。中川議員から「上部団体」として同教会について「その団体の行為、米国における行為等については、確認はしております」との発言を引き出している。

◆意見書提出議員に直接取材

 意見書を提出した中川議員に一連の経緯を尋ねた。

 市民の人権擁護の会「千葉支局長の女性」から意見書提出の働きかけがあり「会って話を聞いた」と明かした中川議員。サイエントロジー教会関連で指摘される社会問題については「お尋ねしてない。人権擁護の会とは聞いたがサイエントロジーとは聞いていない」と返答、意見書の中身を判断したものであり「それ以上は賛同するもしないもない」とした。
 中川議員によると、10月5日の本会議後に団体側から会議録と動画について”何とかしてくれないか”との打診があり、地方自治法上会議録の削除は困難だが中継動画については削除の可能性を伝えたそうだ。
「同時期に事務局へ問い合わせがあり、事務局からも説明して納得してもらったと聞いている。地方自治体法で扱いが曖昧だったのは録画データ」
 動画の削除を決めた会派代表者会議には当事者として出席を求められた中川議員、そこでは藤井議員の本会議での発言が2つの名誉棄損に該当する可能性が取り上げられたという。
この日も登壇し発言した中川議員だったが…
(12/5流山市議会本会議場)
「この時問題となったのは、他市の市議会議員の名誉にかかわる部分と団体に関する発言」「身内の市議会議員を貶める、議員としてあってはならない発言があった」「ネット上での誹謗中傷を自分の意見に近い形で引用した。団体への評価の言い方に気をつけないと。サイエントロジーに関わらずあそこまで喋るなら自分の意見として喋るべき。指摘してはいけないということではないが、引用という言葉を使っていたが声のトーンからすると自分の意見として喋っている」
 会派代表者会議での決定内容が回答前に団体側へ伝わっていた件への関与は否定した。
「それはない。私は何も伝えていない」
 サイエントロジーの関連団体が基になった意見書を提出したこと自体の問題点や背後関係については、意見書提出の要望は“きっかけ”に過ぎず自分の判断で意見書を作ったと力説。但し、意見書案文は可決した他の自治体を参考にしたという。
「私としてはどこからの話があったということではなく、今の精神病院を始めとした病院における障害者虐待の問題が深刻なんだなとNHKの番組で改めて確認したので出した。飽くまでも意見書案文として出しているので、背景にどういうことがあるのか背景にあった人たちに私たちが賛同しているかというと決してそんなことはない」
 同団体からのコンタクトは初めてであり選挙などでも支援は受けていないという中川議員。団体側に利用された可能性については「それはその後、もし利用されたということが判るのであればそれなりの対応を取ればいいと思っている」と答えた。
 提案団体に対する事前の下調べに関してはこう濁した。
「一応調べはするが、多くの人が目にするのがウィキペディア辺り。信憑性がどこまであるか」と濁した。
長時間の取材に疲れたの本会議中にウトウトする中川議員
(12/5流山市議会本会議場)
 本会議で指摘された団体側の問題性については一線を引いた。
「人権擁護の会がある意味好ましくない団体活動を取られているということであれば、それが判った段階で飽くまでも『意見書を発議したことと団体とは関係ありませんよね』ということは私としては取らさせてもらう」

◆動画削除に応じた議員が明かした疑念

 藤井議員にも話を聞いた。質疑を行った経緯をこう振り返る。
「当初、中川議員から意見書とともに市民の人権擁護の会という紹介文書があり、聞いたことがない団体名だったのでネットで検索したところサイエントロジー教会と繋がっていると出てきた。ちょっとおかしいねこれということで、会派の中で協議をして本人(中川議員)は知っているのかということで質疑をしようということになった」
 
 事前に接触してきた団体側は国会議員についても言及したという。
「話の中で国会議員の名前が何人か出ていた」

※注:これは立憲民主党の川田龍平参院議員と櫻井周衆院議員のことだと思われる。川田議員は2017年12月に第195回国会で、櫻井議員は2021年6月に第204回国会においてそれぞれ当該案件に関する質問を行っている。
・川田議員「精神科病院における障害者虐待について、任意の処遇改善請求、任意の通報ではなく、精神科病院を障害者虐待防止法の通報義務の対象にすることで、多くの情報が集まるようになり、虐待による死亡と疑われる事案の真相の解明に寄与できると考えるがどうか」
・櫻井議員「医療機関従事者による障害者虐待についても同様に通報義務を課すことを提案」

 藤井議員は本会議後に団体側が名誉棄損による法的措置をちらつかせてきたと明かす。
「訴訟も辞さないというようなことを(団体側が)言ってきていた」「いろんな人からのアドバイスで選挙を受ける公人だからゴタゴタしても仕方ないんじゃないということで動画の削除に応じたが、議事録は残るので。議事録を見て訴えられても大丈夫だろうと認識は持っていた」。
 但し当事者としての本音はやはり動画を削除されたくはなかったようだ。
「しょうがないですね」
本会議場では隣に座る中川議員(左)と藤井議員(右)
(12/5流山市議会本会議場)

 中川議員と団体との関係性については疑念があるという。
「両団体からの文書がリアルタイムに来ているので誰かが情報を流しているようだ。事務局に最初(クレームが)来ていて、議会の方には伝文が出ないような話が協議の中で出たが、そうしたら今度は議長宛てにも来たりとか。内容を知らなければそんなリアルタイムに状況が明確な文書が来ないのではないか」
 だとすると会派代表会議での協議内容を団体側へリアルタイムに伝えていたのは、中川議員だと推測されるところだ。藤井議員は明言を避けたものの、同会議の内容を外部へ漏らすことの問題点を指摘した。
「まあ誰は言えないけど。通常は秘密会だから漏らしちゃいけないと思うんですよね」
 流山市は本会議だけでなく委員会も公開しているが、会派代表者会議については非公開としている。具体的な確証はないにしても明らかに両団体側へ当該会議の内容が漏れていることに疑念を持ったという。
「それくらいですね、今回の件で僕がおかしいと思ったのは」

◆情報漏洩はあったのか

 議会事務局へ情報漏洩について確認した。会派代表者会議の内容がリアルタイムで団体側に伝わっていたことを訊くと「ああ」と思い当たる様子。代表者会議の内容を出席者が外部へ話すことを市として許容しているのだろうか。
「基本的には秘密裡に行われている会議ですので、事務局から『外部には話さないでくださいね』とは言っていないが、そういう前提で行われているもの」「当然、事務局に対して議員から『情報を外に出していいですか?』と訊かれれば、当然それは秘密会議なので情報は外に出さないでくださいという話はできます」

 正式な記録ではないとされている議会中継動画だが、サイエントロジー教会とその関連団体からの削除要請によって本議会動画を削除した流山市議会の判断は妥当だったのか。また当該同意見書が全国の地方議会で採択されている件と両団体との関りも気になるところだ。

 団体側はどのような"理由"を盾に流山市議会へ動画削除を求めたのか。後編ではサイエントロジー教会と市民の人権擁護の会へ行った取材を基に記す。

~本紙関連記事~










8 コメント:

匿名 さんのコメント...

これこれ、こう記事を待ってました。脱カルト協会の話などうんざりだ。勝手に当事者同士でやってくれって感じ。
ところでサイエントロジーなんか未だ勢力を維持しているんだね。一時期は郵便受けにオックスフォード心理テスト(?)なんてのが入っていて、教会にいくと洗脳された目つきの信者たちがうようよいたっけ。トム・クルーズも未だに信者なのかな。
とにかくやや日刊カルト新聞には、カルト問題をどしどし報道して欲しい。

匿名 さんのコメント...

文春にもサイエントロジーの関係者が身分を隠して(市民の人権擁護の会世話役として)教義に沿った投稿をしています。また精神科医関連の事件があるとたびたび登場させています。ここも掘り下げていただきたいです。
https://bunshun.jp/list/author/5f1422407765612d5c000000

https://bunshun.jp/articles/-/39101

匿名 さんのコメント...

こちらでは市民の人権擁護の会の世話役である旨隠していますね。
伊沢氏は問題ある精神科医ですが、それをカルト宗教の関係者に解説させるのは…

https://bunshun.jp/articles/-/55773
https://bunshun.jp/articles/-/55773?page=3

匿名 さんのコメント...

とにかく宗教で儲かるのは、聖書、結婚式、神棚、お守り、仏壇、墓、戒名、くちよせ、霊言です。これを考えた昔の役者は素晴らしい。私達は、信者を信仰し続けます。

匿名 さんのコメント...

日蓮さんみたいに純粋に国を守ろうとして教えを広めた方もいますよ

匿名 さんのコメント...

サイエントロジーと関係ありませんが法華経を唱えてください

匿名 さんのコメント...

結婚式って何か演技の要素ありますか?
それより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください

匿名 さんのコメント...

>2022年2月3日 7:50
…はあ
郵便受けにサイエントロジーの心理テストが入っていた…
あくまで私の憶測なので断定はしませんが、サイエントロジー関係者の方ですか?
法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください