2010年8月26日木曜日

ホメオパシー、今日もまた袋叩き=日本助産師会・日本薬剤師会も否定声明

 8月26日、日本助産師会がホメオパシーを明確に否定する声明を、日本薬剤師会が事実上否定する声明を発表しました。疑似医療のホメオパシーについては、24日に日本学術会議が「科学的な根拠がなく、荒唐無稽」とし、医療現場から排除すべきとの会長談話を発表。翌25日には日本医師会と日本医学会が共同で、日本学術会議の会長談話を支持ずる声明を発表しています。

 日本助産師会が発表した声明は以下の通りです。「会員に対し、助産業務としてホメオパシーを使用しないよう徹底」するとして、ホメオパシーを明確に否定しています。

【日本助産師会 2010年08月26日】「ホメオパシー」に係る学術会議会長談話について
報道関係者各位  平成 22 年 8月 26 日
社団法人日本助産師会 会長 加藤 尚美
「ホメオパシー 」への対応について

 今般、日本学術会議金澤一郎会長は8月24日付けで「ホメオパシー」の治療効果は科学的に明確に否定されており医療従事者が治療に使用することは厳に慎むべき行為という談話を発表されました。日本助産師会はその内容に全面的に賛成します。
 日本助産師会は、山口県で乳児がビタミンK欠乏性出血症により死亡した事例を受け、ホメオパシーのレメディはK2シロップに代わりうるものではないと警告し、全会員に対して、科学的な根拠に基づいた医療を実践するよう、8月10日に勧告を出しておりますが、一昨日出されました日本学術会議の談話を重く受けとめ、会員に対し、助産業務としてホメオパシーを使用しないよう徹底いたします。
 助産師は女性に寄り添い、女性の思いを受容し、援助することが使命ですが、医療現場にあり、命を預かるものとしての責務もございます。私たち助産師の言葉や行動は、女性にとって大きな影響力を持っているということも自覚しております。科学的に否定されているものを助産師が使えば、本来受けるべき通常の医療から遠ざけてしまいかねません。しかるべきタイミングで医療を受けられるようにすることは、助産師の重要な役割です。
 日本助産師会としては、現段階で治療効果が明確に否定されているホメオパシーを、医療に代わる方法として助産師が助産業務として使用したり、すすめたりすることのないよう、支部を通して会員に通知するとともに、機関誌及びホームページに掲載することで、周知徹底いたします。出産をサポートし、母子の健康を守ることができるよう、会をあげて、真摯にこの問題に取り組んでまいりたいと存じます。
 また、現在、分娩を取り扱う開業助産師について、ホメオパシーの使用に関する実態調査をしており、集計がまとまり次第公表いたします。
 なお、妊娠、出産、子育て期にある女性やそのご家族におかれましても、助産師が助産業務においてホメオパシーを使用しないことをご理解いただきと存じます。助産師は、皆様にとって不利益のないよう、正確な情報の提供に努めてまいります。
 日本薬剤師会が発表した声明は、以下の通りです。日本薬剤師会の言葉として「ホメオパシー」と名指しすることを避けた腰砕けの一般論的声明です。しかし内容的には、事実上、ホメオパシーを「科学的にエビデンスが明確に証明されていない、あるいはあいまいな医療類似行為」とし、「医療に携わる者として、安易にこうした行為を行うことは厳に慎むべき」と戒めています。

【日本薬剤師会 2010年08月26日】「ホメオパシー」に係る学術会議会長談話について
「ホメオパシー」に係る学術会議会長談話について
平成22年8月26日
(社)日本薬剤師会
会長 児玉孝

 平成22年8月24日、日本学術会議の金澤会長は、別添のような「ホメオパシー」に関する談話を発表されました。

 当会では、標記の件について、以下のように考えます。

 科学的にエビデンスが明確に証明されていない、あるいはあいまいな医療類似行為を医療従事者が行うことは、当該患者の適切な医療を受ける機会を損ない、病状の悪化を招来し、時として死に至らしめる可能性も否定できません。医療に携わる者として、安易にこうした行為を行うことは厳に慎むべきと考えます。また、医薬品を扱う専門職の薬剤師の立場からすれば、効能・効果が科学的に確認されていない「医薬品類似物」が医療現場で使用されることは、医薬品の適正使用の観点から、ひいては国民患者の安全な医薬品使用を確保する観点から、ひいては国民患者の安全な医薬品使用を確保する観点から、入手手段の如何にかかわらず極めて重大な問題であると認識しています。
 本紙では、日本学術会議会長談話の翌25日、日本医師会・日本医学会の共同声明があった時点で、ホメオパシーが「フルボッコ」だと書きました。しかしホメオパシーは今日もさらにフルボッコ。まだレフェリーストップはかかりません。明日は誰からフルボッコにされるのでしょうか。

■長妻厚労相だけが能天気な談話

 asahi.com(8月25日)によると、長妻昭厚生労働相は、「本人の意思に反して、病院に行かないようなことがあれば問題」「効果があるのか、ホメオパシー以外の(民間)療法もあるので研究したい」などと語ったとされています。

 本紙<民間療法推進、国家予算は4年間で1,800億円?>で報じた通り、厚労省では今年2月、鳩山由紀夫首相(当時)の肝入りで「統合医療プロジェクトチーム」を発足させ、ホメオパシーも含めた代替医療・疑似医療などをひっくるめて保険適用や資格制度化を検討し始めていました。

 厚労省がホメオパシーの問題性について調査するというのであれば歓迎したいところです。しかし、ことホメオパシーに関しては、この期に及んで「効果があるのか研究したい」などと口走る長妻大臣の考えは、能天気すぎると言わざるを得ません。

 ホメオパシーについては、英国議会委員会のレポート等々、科学的根拠を否定する議論が複数あります。それ以前に、そもそもホメオパシーのレメディは「ただの水」(日本学術会議会長)と砂糖玉にすぎません。本来であれば、これに効果があるかどうかを研究すること自体が無意味です。

 ホメオパシー信者に対して「それでも正当性を主張するなら、お前らが自腹で研究して、これらの研究を覆す根拠を持ってこい。そうでなければ認めない」というのが、厚労省としてあるべき姿ではないでしょうか。研究すればエビデンスを確立できる見通しがあるなら別ですが、「ただの水」と砂糖玉の研究に、国民の血税を使うべきではないと思います。

6 コメント:

我楽者 さんのコメント...

初めまして。我楽者と申します。
いつぞや「日本ペンネット立ち上げ」の際には、一次会のみ参加しておりました。

> ホメオパシー信者に対して「それでも正当性を主張するなら、お前らが自腹で研究して、これらの研究を覆す根拠を持ってこい。そうでなければ認めない」というのが、厚労省としてあるべき姿ではないでしょうか。研究すればエビデンスを確立できる見通しがあるなら別ですが、「ただの水」と砂糖玉の研究に、国民の血税を使うべきではないと思います。

仰るとおりであり、代替療法の団体がその効果の科学的証明に必要な費用を負担するべきでしょう。

ところで薬剤師会の文言ですが、
>科学的にエビデンスが明確に証明されていない、あるいはあいまいな医療類似行為を医療従事者が行うことは、(略)

と、あえてホメオパシーに触れていないことで拡大解釈すればホメオパシー以外のカルト系「自称医療行為」を行う医師、病院に関わること自体も戒める事になりそうに思いますが、それほど甘いものでは無いのでしょうか?

かって統一教会が病院経営に関わったり(今もでしょうか?)、院長独自の理論で分娩と新生児の育児を行なう(傍目にはカルトに見える)産科病院、或いは患者に「マクロビオティック食の薦め」を行なっている病院等もある「らしい」です。
その辺りは藤倉様の方がお詳しいでしょうが。

それは兎も角、私も明日の社説を楽しみにしております。
読むのは夜になると思いますが・・・。

藤倉善郎 さんのコメント...

 我楽者さん、その節はありがとうございました。ペンネットの件、すいません。忙しくてもろもろ遅れていますが、きちんとやっていきますので、よろしくお願いします。

> >科学的にエビデンスが明確に証明されていない、あるいはあいまいな医療類似行為を医療従事者が行うことは、(略)
> ↑
> と、あえてホメオパシーに触れていないことで拡大解釈すればホメオパシー以外のカルト系「自称医療行為」を行う医師、病院に関> わること自体も戒める事になりそうに思いますが、それほど甘いものでは無いのでしょうか?

 そうだったらいいなあとは思いますが、日本学術会議の会長談話について「当会では、標記の件について、以下のように考えます。」した上での声明なので、やっぱりホメオパシーのことを書いているってことになるかなあと。

> かって統一教会が病院経営に関わったり(今もでしょうか?)、院長独自の理論で
> 分娩と新生児の育児を行なう(傍目にはカルトに見える)産科病院、或いは患者に
> 「マクロビオティック食の薦め」を行なっている病院等もある「らしい」です。

 医療方面はもともと詳しくないんですが(統一協会系病院はいまもあります)、twitterでいただいた情報だと、患者に「神様に祈れ」と推奨している皮膚科の医師もいるんですよね。あと、歯医者も結構変なのがいると聞きます。幸福の科学信者っぽい感じの心療内科クリニックでホメオパシーやってるという例もありました。

 今回の騒動、「ホメオパシー騒動」だけで終わっちゃいかんのですよね。

> 明日の社説を楽しみにしております。

 ありがとうございます。珍しく(笑)、茶化しも皮肉もなしの100%マジメ記事です。

 今回のホメオパシー問題から、ほかの疑似科学的な治療法や宗教的な(もののうち有害な)治療法も含めて、「疑似医療」という言葉と概念で問題を捉えていきましょうよ、という提言です。

藤倉善郎 さんのコメント...

 長妻談話の問題点について、一点、大事なツッコミを忘れていました。

> 「本人の意思に反して、病院に行かないようなことがあれば問題」

 違うよ長妻さん。ホメオパシーみたいなものを信じ切っちゃった人は、「本人の意思で(あるかのような気分で)、病院に行かない」という選択をしてしまうような発想、心理状態にさせられてしまうんだよ。だから、表面的には「本人の意思で病院に行かない」かのように見えちゃう事態が起こるんだよ。朝日新聞の記事をちゃんと読め。子どもを病院に行かせないというパターンだけじゃないんだよ。

わくたま さんのコメント...

問題の性質からすると、厚労省というよりは、消費者庁が管轄でもいいのではないかという気がしますが、消費者庁は何をやってるんでしょうかね。こんにゃくゼリーの研究?

藤倉善郎 さんのコメント...

> 消費者庁は何をやってるんでしょうかね。こんにゃくゼリーの研究?

 消費者庁では、「こんにゃくゼリーの分子が1つも入っていないくらいまで希釈・振蘯して、砂糖玉に染み込ませたものをこんにゃくゼリーとして売れば、喉に詰まらない」という研究を秘密裏に行っているとの噂もあります。うそですが。

匿名 さんのコメント...

>消費者庁では、「こんにゃくゼリーの分子が1つも入っていないくらいまで希釈・振蘯して、砂糖玉に染み込ませたものをこんにゃくゼリーとして売れば、喉に詰まらない」という研究を秘密裏に行っているとの噂もあります。

ホメオパシーの理論によれば希釈するほど効果が現れるのだから、「1分子も含まれていない砂糖玉でものどに詰まる」とするべきです(笑)。