幸福の科学学園問題で住民8331人が建築確認取消を請求

請求人8331人の委任状の山

12月12日、幸福の科学学園の建設に反対する滋賀県大津市・仰木の里学区の住民たちが、大津市建築審査会に対して建築確認処分の取消のための審査を請求しました。請求人は仰木の里を中心とした大津市民8331人。住民の代表団と弁護団が市役所の担当職員に人数分の委任状とともに審査請求書を手渡し、同日、記者会見を開きました。


■史上最多？　請求人は8331人

宗教法人幸福の科学の系列法人である幸福の科学学園は、2013年の開校を目指して仰木の里に土地を購入。仰木の里では住民の反対運動が起こり、学園側と住民との話し合いは事実上空転しています。しかし学園は、大津市による建築確認を済ませ11月1日から施設建設を着工しています。

これに対して住民側は、市の建築審査会に対して建築確認の取り消しを求める審査の請求を12月12日に行いました。請求人は8331人。うち仰木の里学区が5329人で、学区外の大津市民が3002人。これは通常の賛同署名等とは違い、成人のみを対象として押印付きで集められた、弁護士に対する委任状の数です。

「建築確認取消の審査請求は全国で行われており、たとえば京都で3000人規模で行われたケースもある。しかし8000人規模というのは、我々が知るかぎり過去に例がない。全国初と言って差し支えない」（飯田昭弁護士）

大津市においては、建築確認取消の審査請求自体が初めてとのことです。

■学園が手続きを急いだ理由

大津市役所に委任状と審査請求書を提出後、住民の代表団と弁護団は大津市内で記者会見を行い、改めて幸福の科学学園の問題点と学園建設をめぐる行政手続の問題点を訴えました。

「専門家に土地の地下水の水まわりなどを調査していただくにつれ、ますますこの土地が危険な土地だということが明らかになった。私たちは大津市にも県にも働きかけてきました。しかし残念ながら大津市は、この土地は開発非該当だという判定を下してしまった」（仰木の里まちづくり連合協議会・本田新慶副会長）

「（幸福の科学学園）にはこの土地を手に入れるために期限があった。それは10月31日。これまでに市から建築確認をもらい県の私学審議会の一次審査を通らないと期限が過ぎていしまうということで、住民の合意も市の開発許可もなしに計画を進めてきたことが明らかになった。これを放っておくわけにはいかないということで、建築確認を取り消す審査請求をしたということです」（同）

住民側によると、予定地は地すべりの危険性が全国的に問題視されている「谷埋め盛土」と呼ばれる造成地で、ボーリング調査のデータや排水機構の状況から、現時点ですでに危険な状態にあるといいます。そのため災害の防止、樹木の保存、事業者の資力・信用の確保など、「建築確認」よりも詳細なチェックを必要とする「開発許可」が必要だと、住民側は主張しています。

しかし大津市は学園に対して「開発行為非該当証明」を発行し、学園はこれを根拠に「建築確認」を済ませて着工に踏み切りました。

■専門家も指摘する危険

「地下水を排水していないと、わずかな振動が加われば地盤が滑って崩壊する。この土地では、斜面地から水が漏れ出して、一部ではすでに表面が滑りの兆候が出ております。専門家としては非常に危険な徴候だと思います」（測量会社・担当者）

「工事業者から（排水について）『こういう（排水）管が入っているから大丈夫ですよ』と言われたので、（造成工事をやった）URの書面を確認しましたが、そういった排水管の存在は確認できませんでした。（工事業者が）住民に虚偽の説明をしていたということです」（測量会社・担当者）

「URはいまになって排水工事を追加で行なっていた。そこで住民は、排水の工事が終わっていない未完の土地だったと考えています」（住民）

■「建築確認は違法」

記者会見には地元メディアのほか宗教関係メディアの姿も

「予定地は販売時に5区画あった。都市開発法では1000平方メートルを超える開発行為である場合には開発許可を受けなければならない。そのためには、災害の防止、樹木の保存、事業者の資力・信用の確保など、建築確認だけでタテられる場合に比べてはるかに詳細なチェックが課せられる。ところが、マンション問題などでもよくあることですが、事業者はできるだけこれらのチェックをスルーして脱法したいという欲がかなりある。そこで建築確認だけで建てようとしている。今回、学園側は5区画中3区画まではまだ何も申請しておらず、学校用地と寄宿舎用地を敢えて別々に申請して開発行為に当たらないとして、大津市から開発行為非該当証明を受けて、建築確認を済ませた」（飯田弁護士）

つまり、「幸福の科学学園」というひとまとまりの施設であるにもかかわらず、土地を分割して申請することで1000平方メートルを下回るようにし、「（土地の）区画の変更にも形質変更にも当たらない」という形式を作って脱法行為を行ったというのが、飯田弁護士の説明です。

「開発許可が必要なはずなのに受けていないことが違法である。土地の区画、形状の変更のどれかに該当する場合は開発許可が必要だが、我々は全てに該当すると考えている」（飯田弁護士）

■「地域連携とは相容れない異様な対応」

今回の審査請求は施設建設に関する手続き論をめぐるものですが、飯田弁護士はさらに、その背景として学園の性格についても問題視します。

「建築の問題と別に、教育基本法に関わる大きな問題があります。政党との一体性、教団の個人崇拝の宗教活動との一体性、ならびにこれまでの批判者への高額損害賠償請求の裁判の提起などに対して、強い懸念を示す地域住民に対して『最大最強の敵』などと誹謗中傷する。地域連携が求められる学校設置とは相容れない異様な対応がなされてきた。その中での建築確認という手続きだった」（飯田弁護士）

学園は、施設完成後に県の私学審議会での学校認可手続きを控えています。学園建設問題は、今回の審査請求にとどまらず、まだいくつもの山場が控えていそうです。