大津市建築審査会に住民ら非難轟々＝幸福の科学学園問題

滋賀県大津市で建設中の幸福の科学学園関西校について、大津市建築審査会が1日、建築確認取消を求めた住民らの請求を棄却。これを受けて同日、住民側が記者会見を開き、建築審査会の裁決書の詳細を報告するとともに、裁決内容について、建築審査会が独自の判断を避け行政機関等の主張に追随しただけで判断の理由すら示していないと非難しました。

建築審査会の裁決で請求人該当性が認められた住民は、8331人の請求人のうち319人のみ。それ以外について建築審査会は、学園の敷地が崩落した際に被害を受けるかどうかについて「疑問がある」として、請求の利益がないと断定。請求人適格を認めませんでした。適格が認められた319人についても、建築審査会は請求を棄却しました。

住民側の主張は、地盤の危険性を指摘するとともに、予定地の工事は建築確認ではなく市の建築許可が必要なケースに該当するとして、市が「開発非該当」と判断したことに異議を唱えるものでした。しかし裁決書では、大津市や大津市開発審査会の判断を引用して、「当審査会としても、これらの判断等は妥当なものであり、本件建築計画について開発許可は要しないと解する」として違法性はないと結論づけました。

地盤の安全性にについても、裁決書は独自の判断を避け、建築確認手続きを担当した滋賀県建築住宅センターなどが「工学的判断の上で確かめていることから」この建築計画が建築基準法に「抵触することはない」と結論。学園に土地を販売したUR都市機構や大津市への聞き取り結果を根拠に、「この敷地ががけ崩れ等による被害のおそれがある敷地であるとは言いがたい」としました。

もともと住民側の主張は、大津市やUR都市機構、建築住宅センターの判断に異を唱えるものです。それに対して建築審査会の裁決拠は、大津市やUR都市機構、建築住宅センターの判断の引用だけで、建築審査会独自の判断が示されていないばかりか、住民側が提出した地盤の危険性を示すデータや専門家の見解を否定する検討結果は示されていません。裁判に例えるなら、裁判官が「検察が有罪だといっているから有罪にしました」と言ってしまうのと同じです。記者会見では、代理人弁護士らがこの点を厳しく非難しました。

「こちらは極めて詳細なデータを専門家を交えて検討して申請したのですが、審査会は独立機関としての立場を放棄して、何ら独自に判断することなく、大津市の判断に追随する裁決を出しました。判断権者としての責任を放棄していると言わざるをえない」（畑地雅之弁護士）

弁護団長の飯田昭弁護士は、別件で出張のため会見を欠席。文章でコメントを発表しました。

「争点である開発該当性について、建築審査会は大津市の開発部局と開発審査会が開発非該当と判断したということを理由に挙げ、いきなり建築審査会としての判断を述べるだけで、全く理由が述べられておりません。裁判で言うなら明らかに理由不備の判決です。理由を示さず開発非該当を理由にすることは、建築審査会の職責を放棄したものと言わざるを得ません。他方、建築審査会も付言で、大津市の行政としても重大な事態である、何らかの対策を取るべきであると指摘しているとおり、大津市長の責任で、行政訴訟に発展する前に地盤の危険性を精査し抜本的解決がなされるべきである」（要約）

また玉村匡弁護士は、独自の判断を避けるような内容の結論を出すために建築審査会が半年も時間をかけたことに対して、怒りをあらわにしました。

「行政訴訟の前にまず審査請求をしなさいという制度になっている。これは、審査会の方が専門的な判断ができるから、ということになっている。ところが、（今回は）理由がない裁決だった。“大津市に聞いたところ問題ないというので、こうしました”。中身はそれだけ。これでは、審査会が存在する正当性がない。逆に有害である。こんなことなら、我々は早くから行政訴訟がしたい。裁判であれば、理由がない判決は書けない。しかし今回の裁決には、理由がない。形だけのものであり、こんなものになぜ6カ月もかけたのか。時間の無駄であると言わざるをえない。自分たちの意に沿わないものであったとしても、きちっと理由が述べられていれば検討の価値もある。しかし、こんな裁決を書くのに半年もかけるのは、市民を愚弄している。審査会制度そのものを抜本的に考え直す時期なのではないか。このような判断能力がないものを、あえて訴訟の前に要するという制度にも問題を感じる」

つづいて、仰木の里まちづくり連合協議会の谷村功会長。

「今回の裁決については大変不満を持っています。今後については弁護団と相談して決めたい。審査請求は去年の12月に出して、半年かかった。そもそも建築確認が降りたことで工事が始まっています。住民は工事と隣り合わせでずっと生活をしてきました。本当はもっといろんなことに対応したかった。しかし裁決を待っているがために、大きなことは何もできない状況でやってきました。それが6カ月もかけて蓋を開けたら、私たちが詳細なデータをだし他にもかかわらず、それを見たのか見てないのかもわからにような、根拠もない答えを出してきた。この6ヶ月間という時間を返してもらいたい」

「（裁決書は）ほとんどのところに“開発審査会は～と述べている”“開発権者は～と言っている”と書いている。我々の言い分は載せてない。申請者の言っていることは何も載せないで、行政関側が述べてる述べてる述べてると続いている。私は先日（5月16日）の市長面談にも出ました。そのとき大津市都市計画部長が、我々の質問に対して答えていたんですが、その内容そのままの裁決なんです。審査会の裁決が出る前に都市計画部長が述べたことが、そのまま裁決になっている。本当に審査会は審査したのか。都市計画部長の考えがそのまま裁決になったのではないか」（同・本田新慶副会長）

現在、すでに工事が進行している中、住民からは工事そのものについての不満も聞かれました。

「学園ではなく清水建設に工事への苦情で足を運んでいる。ところが施主である幸福の科学学園が住民の要望について拒否してくる。清水の窓口は理解を示しているが、彼らが持ち帰って検討すると、ほぼすべて“幸福の科学学園が拒否すると言っている”という内容の返答が返ってくる」（住民）

現在、学園側は依然として地元で住民との「対話会」を開催しています。

「ですが、その趣旨は宗教について語るというもの。我々は宗教の部分も問題にしているが、その前に地盤の安全性や建設工事の問題について説明や改善を求めているんです。それを乗り越えた後なら、こちらも宗教の部分についても言いたいことがあるが、乗り越えるべき話を乗り越えないまま次のステップの話はできない」（住民）

学園と周辺住民との溝は、深まる一方のようです。

「学園ができてしまったら、学園の子供を差別するなとか、彼らの都合で“地域連携”を求めてくるのではないか。しかし相互理解がないまま強要される地域連携を、果たして地域連携と呼べるのだろうか」

理解なき連携要求は、単なる支配です。このまま開校を強行すれば、その後も住民との対立が継続しかねません。

「学校が開校されたらそれで終わり、ではない。ここで建設されたら、子どもたちへの影響、我々の生活がどう変わるか、いろいろな問題がある。建てられたから、負けたから終わり、ではない。それも含めたまちづくり全般を考えた運動になっていくと思います。（幸福の科学の学校法人だけではなく）宗教法人も、この地区に進出してきている。開校したとしても、その後、もっと重大な問題が起こるのではないか」（住民）