2026年6月19日金曜日

千葉・市川市 公園でのイスラム礼拝は不許可で屋内施設は親鸞会の偽装講座に貸し出し

 千葉県市川市の施設で、宗教団体であることを隠して市民を偽装勧誘する浄土真宗親鸞会が頻繁に講座を開催していることがわかった。本紙記者が実際に参加して偽装勧誘された。今年だけでも毎月行われており、来月も25日に予定されている。

 同市では先月、市の公園を借りて長年イスラム教の礼拝を行ってきた行徳のモスクに対して、市長判断で礼拝を認めないことにしたため、騒ぎになっている。そんな中、市の施設担当者は本紙の取材に対し、親鸞会については「宗教団体であることや、宗教行為を行っていることを理由に使用を不許可にすることはない」とコメントした。


■親鸞会が市川市施設を毎月使用


市川市八幡市民交流館ニコット
 親鸞会は全国の施設で、信者らが別の団体名を用いて公共施設の部屋を借り、近隣へのチラシのポスティングなどで客を集めて教団のアニメ作品の上映会や仏教講座を開催している。アニメ解説や講座は、親鸞会の「講師」の肩書きを持つ信者が行っている。

 本紙が調べたところ、市川市では今年に入ってからの半年間だけでも、「人生サロン ぴーなっつ」なる団体の名義で「八幡市民交流館ニコット」「市川市文化会館」「全日警ホール」が使用されていた。ここで行われていたのは、「歎異抄」「生きる意味」「人生の目的」などをテーマにした講座。中には、親鸞会講師の市瀬則之氏を講師としたものもあった。SNSなどでは、他の親鸞会講師と同様に、「親鸞会」の名を出さずに「仏教講師」と名乗っている。

 このうち八幡市民交流館ニコットは、今年に入ってからだけでも1月から6月まで毎月、使用されている。6月13日に同団体主催で開催された〈生きる意味をひもとく「人生の目的」講座〉の講師も、市瀬氏だった。

■冒頭から親鸞会イベントの宣伝


 八幡市民交流館ニコットでは、ちょうどイベントが行われていたこともあって、館内入口付近のロビーも人でごった返していた。その奥の多目的室の入口に、〈生きる意味をひもとく「人生の目的」講座〉のチラシが張り出されていた。

 本紙記者は先月、葛飾区の施設で行われた親鸞会の講座に申し込んだものの、参加を拒否された。市川市では、事前申し込みなしの飛び入り参加も認められた。会場には、スタッフ2名のほか、記者以外に3人の参加者がいた。部屋の外と違って人が少なく、とても静かだ。

 講座の開始前、スタッフから主催団体の説明と講師の紹介が行われた。

「ぴーなっつ(主催団体)は、〝日々前向きに生きたい〟〝悔いのない人生を送るのに大切なことを知りたい〟という人たちが集まり、仏陀の智慧から学んでいるサークルです。お話してくださるのは市瀬則之先生です。市瀬先生は、オンライン仏教アカデミーの講師をされていて、各地を回られる傍ら、オンライン講座や個別レッスンも行われています。また、毎年、東京ビッグサイトや京都で開催されている歎異抄のビッグイベント。こちらにポスターを掲示しております、歎異抄大学の運営にも携わっていらっしゃいます」

会場で配布された親鸞会主催のオンライン講座のチラシ
 市瀬氏は親鸞会所属の講師で、スタッフの説明にある「オンライン仏教アカデミー」(OBA)は、親鸞会が運営するオンライン講座。会場の机には、参加者1人1人の眼の前に、このOBAのチラシが置かれていた。教祖・高森顕徹氏の著書を宣伝するチラシもあった。

 同じくスタッフの説明にあった「歎異抄大学」も、2022年から親鸞会が開催してきたイベントだ。今年も9月13日に東京ビッグサイトで予定されている。

 冒頭からこれだけ親鸞会関連の講座やイベントの宣伝を行っていながら、「親鸞会」のシの字も出てこない。

大学中退なので歎異抄大学に行ってみた本紙記者(2024年)
 歎異抄大学の公式サイトには主催者として「浄土真宗親鸞会」との記載はある。しかしこの講座の会場に張り出されたポスターの記載は「主催:歎異抄を大いに学ぶ実行委員会他」のみ。親鸞会主催であることは伏せられていた。

 親鸞会の講師が、所属団体を隠して講師を務め、そこで親鸞会のイベントや講座を宣伝するという、自作自演だ。

■人生の〝むなしさ〟を繰り返し強調


 講座は、90分かけて「人生のむなしさ」を説くもの。長いたとえ話が大半を占め、「仏教の教えを学ぶことで、虚しくならない本当の幸せを知ることができる」という。1,000円も払って参加したのに、具体的ななことは別のオンライン講座で学ぶように勧められ、むなしくなった。

 「仏教」「歎異抄」という単語は何度か登場したが、親鸞会が崇拝する親鸞の名や「親鸞会」という団体名には一切言及がなかった。

 参加者の1人が、書籍を宣伝するチラシにある著者の高森顕徹氏はどういう人なのかと質問した場面もあった。講師の市瀬氏は「浄土真宗の教え、人生の目的というのを、本を出したり各地で講演されている先生」などと答えただけ。親鸞会の教祖である事実には言及しなかった。

 親鸞会は1958年に設立された宗教法人(本部=富山県射水市)で、伝統仏教の浄土真宗教団とは無関係の新宗教だ。所属講師たちは「仏教講師」「浄土真宗講師」「浄土真宗」などを名乗り、一般的な伝統仏教であるかのように誤解させることも常套手段としている。

歎異抄大学のケモノガタリブースで遊ぶ本紙記者(2024年)
 講座終了後は約10分間、親鸞会の関連YouTubeチャンネルである「ケモノガタリ」のトークデッキを用いた参加者とスタッフの対話が行われた。記者は「好きなこと」というカードを選び、他の参加者やスタッフが自己紹介を兼ねて、そのお題に沿った話をする。ケモノガタリも歎異抄大学でブースを出しており、スタッフによると、トークデッキはそこで買ってきたものだという。

 こうして、宗教団体である事実や、親鸞会という団体名、またそれに関連しそうな事実を徹底的に隠した上で、関連するものに触れさせ、教義を教え込む講座に誘う。完全な偽装勧誘だ。

 この講座の名義上の主催団体である「人生サロンぴーなっつ」は、来月7月25日(土)にも、同じく八幡市民交流館ニコットで〈生きる意味をひもとく「人生の目的」講座〉を開催予定。講師は同じく親鸞会講師の市瀬則之氏で、参加費は1,000円。

■市は「宗教であることを理由に利用を断ることはない」


 市川市では施設ごとに使用条件などを定めた条例が異なるが、いずれも「使用者が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」「使用者が使用の目的に違反したとき」などについて、市長が使用の停止や許可の取り消しをできると定めている。

 八幡市民交流館ニコットの担当者は本紙の取材に対して、こう語る。

「宗教団体のチラシを配ったり来場者を宗教に勧誘していたりすれば注意したり使用を断る場合もありえるが、施設を使用する市民の活動を監視することはできないので、実態把握は難しい。ただし宗教団体だからという理由で使用を許可しないということはない。音量などで館内の他の利用者の迷惑などにならない限り、施設内で礼拝など宗教活動をすることを理由に使用を許可しないということもない」

 問題行為があれば対応するが「宗教団体」の利用や「宗教行為」は禁じていないというのが、施設利用における市側の判断基準だ。

■親鸞会は「宗教」でもOK、イスラム教礼拝はNG


 ならば、なぜ公園ではイスラム教の礼拝が認められなかったのか。

モスクでの礼拝終了後、公園ではケバブが振る舞われた
 今回、礼拝目的での公園使用が認められなかったのは、行徳にある「ヒラー・モスク」。この場所で約30年前の歴史があり、毎年、ラマダン(断食)明けの祭りと犠牲祭の2回、礼拝や信徒同士の歓談でモスク前の公園を使用してきた。今年は犠牲祭直前になって、市が使用申請の取り下げをモスク側に要求。モスク側が公園での礼拝を自粛することで使用が認められ、公園ではケバブやお菓子を振る舞う交流会のみが行われた。礼拝はモスク内と、隣接するモスク所有地(空き地)で行われた。

モスク内での犠牲祭の礼拝
 報道によると、市では、〈内規に基づいて公園での宗教上の演説や勧誘は認めないが、礼拝は基準に抵触しないと判断してきた〉(5月26日・毎日新聞より)とのことだ。しかし田中甲市長は犠牲祭直後の5月29日の定例記者会見で、今回の対応を自身の判断によるものだと明かし、「礼拝の姿というものを、不特定多数の方が使える公園の中で行うべきではないと判断した」「方針を変えることはない」(5月29日毎日新聞より)と語った。

 地方自治法第244条は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」と定めており、「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない」として差別を禁じている。

 6月17日に開かれた市川市議会では、市の街づくり部長が今回の対応について、礼拝であることを理由としたものではないかのような答弁を行った。また今後の方針についても、「申請ごとに内容 方法等を確認しその内容が一般の公園利用者が通常の利用に支障をきたさない場所及び方法に該当するかどうか等を確認した上で判断する」と答弁。田中市長の説明と食い違っている。

■トラブルがないのに騒ぐ人々


 市川市議会では、街づくり部長が、これまでモスクの礼拝で公園が使用されていた間にトラブルはなかったと答弁している。

加藤圭一・市川市議
 他方、市内では、市議会議員の加藤圭一氏がイスラム教徒への差別を煽るヘイトスピーチ活動を展開している。犠牲祭当日もモスク前に現れ、「宗教団体に公園を貸すべきでない」「イスラム教の礼拝は日本の生活様式に馴染まない」などと主張した。以前から「モスクによる公園使用を問題視してきた」という加藤氏は、本紙記者からの「いつ頃から?」との問いに「かれこれ今年入ってから」と答えた。

 また、日本脱カルト協会元理事(現会員)で同協会内でもイスラム差別を扇動している滝本太郎弁護士が発起人を務める「日本国憲法下でのイスラム教対応を考える会」は、市川市とモスクに対して「集団礼拝は行わないこと」を要請する文書を今年3月に送付したことを表明していた。

■市長の対応は明らかな差別


 市川市では、公園と屋内施設とで、使用条件などを定めた条例も担当部署も異なる。双方を統括する部署はないという。そこで本紙は田中市長の認識を尋ねるため、記者会見の取材を市広報広聴課に申し入れたが、「会見は記者クラブ向けのもの」との理由で拒否された。現在、会見とは個別に、市長のコメントを求めている。回答があり次第、掲載する。

葛飾区では親鸞会から入場を拒否されたものの今回はまんまと入場して偽装勧誘を体験できたフリーライターの藤倉善郎氏:

親鸞会の講座に参加した後に会場近くのインド料理店で食べたビリヤニとカレーのセット
「何らトラブルを起こしていないモスクの礼拝と異なり、親鸞会の行為は直接、条例に抵触する可能性がある。仮に今後も親鸞会が野放しにするのであれば、市長にとっては市民の安全や利益よりイスラム教を差別することのほうがだいじということになりかねないのではないか。もちろん、イスラム教も親鸞会も両方禁止では、問題の解決にはならない。本来なら、〝問題のない市民活動は自由、市民活動を装った問題のある宗教勧誘は認めない〟でなければおかしい」


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