2020年12月18日金曜日

「取材の自由」と「建造物侵入」の兼ね合いを問う刑事裁判、公判開始に先立ち被告人と弁護団が会見

記者会見する藤倉善郎氏と弁護団(16日、司法記者クラブ)
 16日、東京・霞が関の司法記者クラブで注目の会見が行われた。登壇者は、宗教団体・幸福の科学の一般公開施設へ取材活動のために立ち入り建造物侵入で被害届を出され被告人となったジャーナリスト・藤倉善郎氏とその弁護団。2年を超える公判前整理手続きを経て、翌週から始まる公判に先立ち会見を開いたものだ。

 幸福の科学への批判的報道で知られる藤倉氏が2018年1月17日に行った東京・西日暮里の一般公開教団施設「初転法輪記念館」への立ち入り取材。これを教団サイドは建造物侵入として警視庁荒川署に被害届を提出。藤倉氏は同年3月23日に書類送検され、6月11日に東京地検が東京地裁に起訴していた。
 その後、約1年半・22回に及ぶ非公開の公判前整理手続きを経て、今月22日から公開の法廷の場で公判が行われることとなった。
 
 これまで取材者が建造物侵入に問われた案件においては、略式起訴~罰金という流れで納めるのが“慣例”となってきた。ところが今回、藤倉氏は略式起訴による罰金刑の受け入れを拒否。「公共の利益に利する取材目的全般を正当な理由とする司法の明確な判断を求めたい」として、問題ある宗教団体や政治家による「建造物侵入罪」を濫用した取材妨害が横行し「取材の自由」及び「国民の知る権利」が侵害される問題について公開法廷での審理を求めた。

藤倉氏「取材妨害が法的に成り立つ前例や取材の幅を狭めることになってしまう」

公判に至る経緯を熱く語る藤倉善郎氏

 会見の冒頭で刑事被告人の藤倉氏は、事件化していないものを含めこれまでの取材活動において「取材をめぐって立ち入りを拒まれたり抗議されたりしたケース」が7件あり、うち3件が実際に警察沙汰になったと明かした。3件中2件は幸福の科学に関するものだが、1件は筆者とともに行った菅原一秀衆院議員(前経済産業大臣)の地元事務所への取材申し入れが110番通報され建造物侵入罪で刑事告訴されものだ。
 藤倉氏は「カルト宗教に限らず政治家も、建造物侵入罪という名目で気に食わない取材に対して妨害や排阻を行うということが、この2年間の経験で非常に多く繰り返されている」と指摘し、こう懸念を示した。
「今回有罪になると、そういった形での取材妨害が法的に成り立つ前例になってしまう。メディア、すべてのジャーナリストの取材の幅を狭めることになると危惧している」

弁護団が指摘「メディアの利害に直結」

 弁護団長で主任弁護人を務める紀藤正樹弁護士(リンク総合法律事務所)は、「住居侵入とメディアの取材には昔から緊張感がある」と前置きし、刑法130条についてどこまでが住居侵入・建造物侵入になるかの線引きが重要であり、メディアの利害に直結すると指摘した。
「形式的に捉えると全部住居侵入になる。チャイム、呼び鈴が門の中にあると住居侵入になる可能性すらある」
 また、教団の意思決定を司ると見られている幸福の科学・大川隆法総裁の証人尋問申請については、公判前整理手続きの段階では却下されたものの、今後の裁判の進行状況によっては再度求めていくという。

 同じく弁護団の久保内浩嗣弁護士(田村町総合法律事務所)は本事件の検察の姿勢についてこう指摘した。
「検察は報道の自由との関連を取り合わず、単なる建造物侵入罪として処理しようとしている」

前例無きテストケース

弁護団長の紀藤正樹弁護士
 質疑応答で紀藤弁護士は、起訴自体が検察の起訴権の濫用であると指摘、改めて「入るなとも言われず、出て行けとも言われてない。平穏に入って平穏に出ている」「住居侵入罪は濫用される危険があるので線引きが重要。裁判官が密室の中で判決をすることに危惧を覚える。メディアの取材の自由が侵害されると国民の知る権利に直結する」と言及した。
 また、起訴自体が「表現の自由への相当な萎縮効果」であるとして「検察は単純な形式犯として形式的な当て嵌めを行い、裁判官も一種の官僚なので形式的な理解をしかねない」と懸念を示した。
 検察の起訴に意図があったのかを問われた紀藤弁護士は、今回の裁判は「どこまでが有罪かを問うリーディングケースである」との見解を述べた。
「取材の自由と建造物侵入に関してはどこまでが有罪か決まっていない、検察官も有罪か無罪かに関係なくどこまでが有罪かテストケースとして試しているという面はある」

公判は3か月間

 事前に教団の広報局や代理人弁護士から教団関連施設への立ち入り禁止を告げられていたとはいえ、公益法人である宗教団体の公開施設への取材目的での立ち入り自体が建造物侵入罪に該当するのか。「取材の自由」と「建造物侵入」の兼ね合いが問われることとなる今回の刑事裁判。
 公判は12月22日の冒頭手続き・起訴状朗読から始まり、年明けの1月8日から2月9日の各期日では元広報局長や初転法輪記念館職員ら教団関係者、藤倉氏、宗教社会学者の塚田穂高氏の証人尋問(本人尋問)が行われる。
 本紙では、各期日の傍聴レポートを掲載する予定だ。

~公判スケジュール~

東京地裁平成30年刑(わ)第1508号
建造物侵入事件 被告人 藤倉善郎
東京地裁715号法廷
 
第1回
2020年12月22日13:30~15:30
冒頭手続及び証拠調べ手続
 
第2回
2021年1月8日13:30~17:00
証人尋問手続(幸福の科学職員2名)
 
第3回
1月19日10:00~12:00
証人尋問手続(幸福の科学職員=元広報局長)
 
第4回
1月26日13:30~17:00
被告人質問
 
第5回
2月9日13:30~17:00
証人尋問手続(宗教社会学者)

第6回
2月17日13:00~15:30
論告・求刑
 
第7回
3月下旬
判決言い渡し(予定)

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やや日刊カルト新聞

※裁判や支援の詳細は『幸福の科学取材で刑事被告人にされた藤倉善郎氏を支える会』を参照

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