2022年3月30日水曜日

【まいんど】「宗教二世」の葛藤と苦悩を伝える論文(上)=藤田庄市

 この春、A4判109枚から成る1本の論文が首都圏の大学に提出された。タイトルは「宗教二世問題と支援の展望―アンケート調査による実証的分析をとおして―」。論者はAさん。「壮絶な葛藤と苦悩の経験を告発する宗教2世が少なからず現れ始めているにも関わらず、宗教2世が抱える諸問題を解決するための制度、環境作りが追いついていない。これが筆者の問題意識である」。論文冒頭にAさんはそう記す。


本連載は「週刊仏教タイムス」に連載中の「まいんど マインド Mind」を、同紙と筆者の藤田庄市氏のご好意により再掲載させていただいているものです。記事中、一部表記を変更しています。本紙での再掲載にかんする責任はすべて本紙にあります。問合せ・意見・苦情等は、「やや日刊カルト新聞」編集部(daily.cult@gmail.com)までお寄せ下さい。
 
 ここでいう「宗教2世」とはいわゆる「カルト」信者の親や教団に幼少期から信仰を植え付けられた子弟を指す。なによりA自身が「宗教2世」である。家族環境などを考慮してAさんの属性は明らかにしないこととする。

 たしかにここ数年、宗教2世による自らの体験を描いた漫画や手記の出版が続き、またカルト問題に取り組む団体が2世問題を取り上げてきた。他方、Aさんが指摘するように、ツイッターなどのSNSでは、カルト環境に生まれ育ったゆえの2世たちの「心の叫び」が溢れていることも事実である。しかし、宗教2世問題の統計的実証的な分析はまだなかった。それを試みた20代前半のAさんの論文に、72歳の私は新鮮な驚きを感じた。なぜなら論文は、私が1995年のオウム真理教事件以来、カルト問題の取材を重ねた結果得た「経験知」が統計的に裏付けられていたからだ。統計の手法やサンプル数はかなり批判の余地があると思うが、根幹部分において宗教2世の信仰および信仰生活による葛藤と苦悩がリアルに分析されていることは間違いない。論文のごく一部とはいえ、2世の心情と実情を紹介したいと思う。

 その前に、私の記憶を伝えねばならない。2000年前後、カルト取材のなかで成人したエホバの証人2世たちと出会った。彼・彼女らは、子ども時代の体罰、学校生活における教団による禁忌に原因する友達との断絶やいじめ、進学や就職という人生の未来を遮断された体験を語った。多くは30代から40代であり、家族もいて落ち着いた生活をしている人が多かったが、言葉の端々からトラウマを感じ取ることは容易だった。なかには精神科に通うひともおり、手首のリストカットの跡が洗濯板のようだったひともいた。自分で入信した1世とは異なる複雑な環境にさらされて育ったことが感じられ、宗教2世の深刻さを痛感した。忘れられない人たちだった。2000年代半ばを過ぎると統一教会(旧称。現家庭連合)の2世問題が表面化してきた。

 わけても2世たちが脱会を決断する時、家族との関係と同時に、信仰、教義がもたらす恐怖がリアルに告げられ、「精神の自由」ということを考えざるを得なかった。私が、カルト問題の核心は、人権の根底にある「精神の自由(信教の自由)」であるという確信を得たのも、2世の体験に負っている部分がある。

 Aさんの調査方法はウェブ上のアンケ―トである。対象は「親の宗教に疑問を持ち、現在脱会に関して悩んでいるもしくはかつて脱会に関して悩んだ経験をもつ宗教2世」たち。2019年13日~24日にかけて、グーグルフォームアンケートをツィッターに投稿して回答を募集した。その結果、回答が234名(男79名、女155名)から寄せられた。調査大項目は「脱会の布石となった事柄」「脱会の阻害要因」「脱会後の家族関係や精神面・経済面での推移について」など5項目。回答の基本は複数回答であり、事象の詳細を記入できる自由記述欄を設けた。

 私が注目したのは、この自由記述欄の応答とその分析方法である。欄には事象が長文で綴られており、具体的様相がよくわかった。さらにAさんはその自由記述回答を分解して分析の単位基盤を広げ、KJ法で分析した。それにより、脱会に悩む、あるいは脱会した宗教2世の心性をビビッドにとらえることに成功したといえよう。

 それにしても見ず知らずの人が、12日間で234名も文章による回答に応じたということは、Aさんの熱意が通じたと同時に、宗教2世が自分たちのことを理解してもらいたいとい切実な思いの反映なのであろう。その思いは、アンケート最後の記述欄に120名が寄せたメッセージにあらわれている。Aさんはそのメッセージをすべて論文末(A4判9枚)に収録した。わずかだが紹介しよう。

 「宗教2世として、特殊な家庭環境、社会とのギャップで痛めた気持ちをこうして吐き出す場をあたえてくださったことに感謝しています。この小さな声が少しでも多くの人に届くことを願います」

 まず、これが回答者全員に共通する思いとみることができる。「ありがとう」「応援します」の言葉が多くAさんに寄せられていることでもそれがわかる。

 「宗教は人の人生と幸福を奪うことをみんなが自覚してほしい」。「私にとっては自殺を考えるような苦しみなので、2世問題は深刻」

 信仰による人生の剥奪についての自覚も共通している。そして、

 「考える自由、学ぶ自由、経験を積む自由、疑問を持つ自由、色んな種類の自由が奪われ洗脳という形に」。「信仰の自由は、出生前の赤ちゃんにも適用されるのが当たり前になってほしいです」

 メッセージに通底する自由への希求の強さも並大抵ではなかった。

 アンケートの集計結果に移ろう。基本データとなる「宗教別脱会状況」である(表参照)。教団別では、エホバの証人、統一教会、幸福の科学、創価学会の4教団が全体の87%を占めており、残りも新宗教だった。男女比では女性が多い。

 また表を見て教団の発展史が見てとれるのではないか、ということである。、エホバの証人は現在悩んでいるのは15人だが、かつて悩んだのは61人。一方、統一教会は前者が44人で、後者が25人と対照的である。また、回答者の「脱会に関して悩む年齢比較」では、
エホバの証人は31歳~40歳が53%、41歳以上が27%であるのに比べ、統一教会は26歳~30歳が45%、21歳~25歳が32%とここでも年齢の違いが顕著である。これは教団の信者獲得時期に由来する若い信者の結婚適齢期を反映しているのだろうとAさんは推察しており、私も同感である。

 次回は脱会過程について紹介する。

(『仏教タイムス』2021年7月16日付紙面より)
……………………………
ふじたしょういち 1947年東京生まれ。フォトジャーナリスト。日本写真家協会員。主な著書『オウム真理教事件』(朝日新聞社、1995)、『宗教事件の裏側 精神を呪縛される人々』(岩波書店、2008)、『宗教事件の深層 スピリチュアル・アビュースの論理』(春秋社、2017)、『修行と信仰』(岩波書店、2016)、写真集『伊勢神宮』(新潮社、2017)ほか多数。

10 コメント:

匿名 さんのコメント...

宗教が大好きな自民党と公明党が宗教2世を救うことはありません。なので宗教2世がユーチューバーになって議員になるしかないのです。

匿名 さんのコメント...

宗教収入ランキング
1 創価学会 東京都
2 幸福の科学 東京都
3 立正佼成会 東京都
4 天理教 奈良県
5 霊友会 東京都
6 神社本庁 東京都
7 高野山真言宗 和歌山県
8 日蓮宗 東京都
9 浄土宗 京都府
10 浄土真宗本願寺派 京都府

匿名 さんのコメント...

宗教被害者、医療被害者がいてもを無視してきたのは自民党、公明党、マスコミ、メディアです

警察が宗教、医療に介入できない法律を作ったのは自民党、公明党です

匿名 さんのコメント...

1割の事業主は資本主義思想がよく
9割の労働者は共産主義思想がよいです
事業主を優遇するか労働者を優遇するか

匿名 さんのコメント...

【創価学会員】

久本雅美(ひさもと・まさみ)芸能界で活躍する創価学会員。芸術・芸能を生業としているメンバーで構成される「芸術工作部」

柴田理恵(しばた・りえ)テレビや映画・舞台など。1987年に久本雅美の勧めにより入会

山本リンダ(やまもと・りんだ)「こまっちゃうナ」や「どうにもとまらない」など。

岸本加世子(きしもと・かよこ)日本アカデミー賞の「主演女優賞」や「助演女優賞」に度々輝いたことがある岸本加世子。

石原さとみ(いしはら・さとみ)芸能界で活躍する創価学会員として、彼女も熱心な活動家。

上戸彩(うえと・あや)大手芸能事務所「オスカープロモーション」の看板女優であり。

井上真央(いのうえ・まお)。彼女は、幼少の頃から「生粋の学会っ子」

和希沙也(かずき・さや)女優やグラビアアイドルとして人気を博していた和希沙也。

滝沢秀明(たきざわ・ひであき)今ではジャニーズ事務所の「副社長」を務めるタッキーこと滝沢秀明。

氷川きよし(ひかわ・きよし)演歌歌手として、アイドル並みの人気を誇る演歌界のプリンス・氷川きよし。

松山ケンイチ(まつやま・けんいち)モデルの「小雪」を妻に持つ俳優の松山ケンイチ。

遠藤憲一(えんどう・けんいち)テレビや映画・ドラマ。彼は親が創価学会員であることから、自身も幼少期に入会。

段田安則(だんだ・やすのり)シリアスもコミカルも巧みにこなす名脇役の段田安則。

木根尚登(きね・なおと)ミュージシャンで「TM NETWORK(ティーエム・ネットワーク)」のメンバーでもある木根尚登。

高橋ジョージ(たかはし・じょーじ)音楽バンド「THE 虎舞竜」のボーカル。

彦麻呂(ひこまろ)グルメリポーターとして、テレビや雑誌で活躍する彦麻呂。

塙宣之(はなわ・のぶゆき)お笑いコンビ「ナイツ」。彼は佐賀県出身です。

土屋伸之(つちや・のぶゆき)お笑いコンビ「ナイツ」。彼も両親が創価学会員であることから「創価中学校」を受験。しかし試験には落ちてしまい、高校より「創価教育」を受ける。

はなわ ナイツ・塙宣之の兄であり、現在ではアーティストとしても活動。両親が創価学会員であることから、彼もまたその一員。

ねづっち「なぞかけ」を得意とし、「整いました!」。彼が創価学会に入ったのは大学4年生

中川礼二(なかがわ・れいじ)「M-1グランプリ」の初代チャンピオンであり。

中川剛(なかがわ・つよし)大人気漫才コンビ「中川家」のボケを担当し、相方「礼二」の実の兄である中川剛。

久保田かずのぶ(くぼた・かずのぶ)2017年に開催された「M-1グランプリ」で王者。

村田秀亮(むらた・ひであき)2017年に開催された「M-1グランプリ」で王者に輝いたとろサーモンの村田秀亮。

やついいちろう お笑いコンビ「エレキコミック」のボケを担当するやついいちろう。

今立進(いまだち・すすむ)お笑いコンビ「エレキコミック」のツッコミを担当する今立進。

モンキッキー(もんきっきー)「おさる」という芸名で名をあげ、現在は書道家としても活躍するタレントのモンキッキー。

岸学(きし・まなぶ)お笑いコンビ「どきどきキャンプ」のボケを担当。彼は創価大学の「落語研究会」出身者

寺門ジモン(てらかど・じもん)大人気お笑いトリオ「ダチョウ俱楽部」の一員で、現在はグルメ工作としても活躍する寺門ジモン。

加藤茶(かとう・ちゃ)ザ・ドリフターズのメンバーで、「加トちゃん」彼は、創価学会の芸術部に所属する熱心な学会員でもあり。

仲本工事(なかもと・こうじ)ザ・ドリフターズのメンバーとして彼は、妻と娘の影響で創価学会に入信。

猫ひろし(ねこ・ひろし)ワハハ本舗に所属するお笑いタレント・猫ひろし。

研ナオコ(けん・なおこ)歌手・タレント・女優として幅広く活動する研ナオコ。

山田花子(やまだ・はなこ)お笑いタレントとして活動する山田花子。彼女は、久本雅美の誘いにより創価学会に入信。

柳原可奈子(やなぎはら・かなこ)カリスマショップ店員、現在はフジテレビの社員と結婚した柳原可奈子。

雪村いづみ(ゆきむら・いづみ)歌手・女優として昭和時代を牽引してきた雪村いづみ。

朝比奈マリア(あさひな・まりあ)15歳で芸能界デビューを果たしたタレント・モデルの朝比奈マリア。

クリスタル・ケイ(くりすたる・けい)日本だけでなく、海外でも活躍する女性シンガー・クリスタルケイ。

パパイヤ鈴木(ぱぱいや・すずき)タレント・ダンサー・振付師として活躍するパパイヤ鈴木。

田中美奈子(たなか・みなこ)サンミュージックプロダクション。

島田歌穂(しまだ・かほ)宝塚歌劇団の卒業。

相田翔子(あいだ・しょうこ)アイドルデュオ「Wink」の一員

松井絵里奈(まつい・えりな)タレント・グラビアアイドル

本名陽子(ほんな・ようこ)ジブリ映画「耳をすませば」で主人公

鮫島幸恵(さめじま・ゆきえ)吉本新喜劇。彼女は創価学会の教育機関「関西創価学園」出身者

Micro(マイクロ)レゲエグループ「Def Tech(デフテック)」

オーランドブルーム(おーらんど・ぶるーむ)「ロードオブザリング」や「パイレーツオブカリビアン」など。

ティナターナー(てぃな・たーなー)アーティスト・ダンサー・女優。

ロベルト・バッジョ(ロベルト・バッジョ)元サッカーイタリア代表です。

中村俊輔(なかむら・しゅんすけ)元サッカー日本代表で、伝説的な名選手である中村俊輔。

岩隈久志(いわくま・ひさし)元プロ野球選手で、メジャーリーガーとしても活躍した岩隈久志。

田中正義(たなか・せいぎ)「ジャスティス」という愛称で親しまれているプロ野球選手の田中正義。

池田隆英(いけだ・たかひで)「東北楽天ゴールデンイーグルス」で活躍するプロ野球選手の池田隆英。

小川泰弘(おがわ・やすひろ)「ライアン小川」という愛称で親しまれているプロ野球選手の小川泰弘。

野間口貴彦(のまぐち・たかひこ)読売ジャイアンツで投手として活躍していた元プロ野球選手の野間口高彦。

栗山英樹(くりやま・ひでき)北海道日本ハムファイターズの元監督です。

星野康二(ほしの・こうじ)「ウォルト・ディズニー・ジャパン」の初代社長で、現在は「スタジオジブリ」の会長。

中野信子(なかの・のぶこ)東京大学出身で、現在は「脳科学者」として活躍する中野信子。

松本秋子(まつもと・あきこ)お笑い界のトップに君臨するダウンタウンの松本人志も。

匿名 さんのコメント...

真言宗醍醐派の総本山醍醐寺(京都市伏見区)で、89歳で死去した第103世座主の仲田順和(じゅんな)師の本葬儀がしめやかに執り行われ、僧侶や生前に付き合いのあった信者約1000人が別れを惜しんだ。
仲田順和師は自民党に献金してきたが、信者から集めた遺産は数十億円とされ不動産と贈答品は課税されないという。
式場となった豪華な金堂には、仲田師の柔和な表情の遺影が掲げられた。後任の座主に就任した壁瀬宥雅(かべせ・ゆうが)師が喪主を、泉涌寺(せんにゅうじ)(東山区)の上村貞郎長老が導師をそれぞれ務めた。
真言宗醍醐派は信者数/世帯数も少ないため、結果として宗教2世問題の総数も少なくなる。

匿名 さんのコメント...

信教の自由のことですか?
それなら憲法で保障されてるから自民公明は関係ないのでは?

匿名 さんのコメント...

法華経と釈尊、日蓮聖人を信じ南無妙法蓮華経と唱えましょう

匿名 さんのコメント...

仲田氏が献金していたというソースは?

ソースを出さないで故人にとやかく言うより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えなさい

匿名 さんのコメント...

「宗教2世の葛藤」と関係あります?

宗教に付いての記事でそういったことをするなら法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください