2009年10月4日日曜日

【書評】地球防衛軍は算数ができない=『知られたくなかった2012創造説』

 『知られたくなかった2012創造説』(地球防衛軍・著、株式会社しょういん・発行)を読みました。帯には、総理大臣・鳩山由紀夫氏の「宇宙のメカニズムは科学的に解明できていないことが大半です。説としては興味深い一冊でした。」との推薦文が載っています。

 著者は、「地球防衛軍」という変わった名前の方です。どこからどこまでが名字なんでしょうか。本の内容は、創造主と会話できる「先生」から「2012年に地球が滅びる」と告げられた「オレ」が、地球を滅亡から救うために先生たちと「クリスタル・チルドレン」という子どもを捜しに行く、という話です。巻頭に、「ここに書かれていることはすべてノンフィクションだ」と書かれています。

 あまり面白くありませんでした。宇宙や人間を作った「創造主」や、宇宙の構造(神様が創った善神・悪神それぞれの世界があるとか、パラレルワールドがあるとか)についての説明は、すべて「オレ」が「先生はこう言っている」「先生はこういうのを見たんだそうだ」という説明的伝聞調で書かれているばかりなので、まったく臨場感がありません。世界中に12人いるとされる「クリスタル・チルドレン」のうち1人を見つけるところで話は終わっていますが、その一人を見つける過程も、いざ見つかったという場面の描写も、まったく盛り上がりがありません。

探しに行きました。いろいろあったけど、見つかりました。終了。

 それだけです。

 この本によると、宇宙全体の「悪」と「善」の均衡が崩れ「悪神」の勢力が強くなりつつあって、2012年に地球が滅亡するそうです。そして、クリスタル・チルドレンを探し出して地球を滅亡から救おうとする人(つまり地球防衛軍氏)を、悪神の手先が妨害します。ところが、


車を運転していたらガードレールにぶつかって車がぶっ壊れた。
 ↓
なのにガードレールには傷一つついていない。
 ↓
不思議だ。悪の勢力の妨害だったのではないか。

 みたいな話だったり、

大事な話をしているときに限って、電話や無線がかかってきて話が中断させられる
 ↓
悪の勢力の妨害なのではないか。

 だったり、

自分たちの関係者が海でウツボにかまれて指がもげそうになった。
 ↓
悪の勢力の妨害なのではないか。

 だったり。悪の勢力、いっこうに出てきません(笑)。悪の勢力との対決場面もありません。

 創造主や宇宙に関する「説」も、2012年に地球が滅びる理由も、ただ先生が「そう言っている」と書いてあるだけ。クリスタル・チルドレン探しの旅も、ちーとも盛り上がりがない。長いわりに引きつけられるポイントが皆無な一冊です。

 小説ではなく「ノンフィクション」なんだから、盛り上がりとかがなくてもしょーがないだろという考え方もできると言えばできます。しかし、だとしても、「ノンフィクション=つまらないもの」ではありません。つまらないノンフィクションを読むのは、やはり苦痛です。

 「つまんねえなあ」と思いながら読んでいたので、正直、あらさがしするほど集中して読んでいませんでした。でも、一カ所、どうしても気になった部分がありました。

 この本によると、地球はわりと最近、「フォンベルト」と呼ばれる電磁波帯に突っ込んで滅亡しかけたそうですが、突っ込む直前に「創造主」が地球ごとパラレルワールドの太陽系に移動させて救ってくれたそうです。しかし太陽系移動(笑)の影響で、現在、「今の地球の一日は二十四時間ではなく、実質はかつての十六時間分しかない」(同書より)という事態に陥っているんだそうです。


知られたくなかった2012創造説

 よく「歳を取ると、時間流れが早く感じられる」などというが、年齢のせいなんかじゃない、今は本当に時間そのものが早くなっているのだ。
 そして、そんな変化を感じる人も感じない人も同等に、みんなが自然とその新しい時間になれた体になっているのだろう。だから、実際には何の異常も起きていないのだ。
 余談だが、オレは先生からその話を聞いて、ふと「そのことと関係があるかも」と感じたことがある。
 このところ、陸上や水泳など、タイムを競うスポーツで面白いように記録が更新されているが、この時間の進み方が早くなったことと関係しているのではないか、と思ったのだ。厳密に計算したら矛盾することも多いだろうが、単純に時間間隔の問題として、二十四時間が十六時間になったのだから、これまで十秒かかったものが九秒に縮まったのも当然……というような気になったのである。

 いまの24時間がかつての16時間分にあたるのであれば、時間が流れるスピードが1.5倍速くなったということです。人間が従来と同じ事をするのに1.5倍の時間がかかるようになっているはずです。これが事実だとすれば、確かに「時間の流れが早く感じられる」ことになります。しかしタイムを競うスポーツは、記録が伸びるのではなく、逆に記録が悪くなっていなければ、つじつまが合いません。

 同じ事をするのに1.5倍の時間がかかるわけですから、100mを9秒58で走ったウサイン・ボルトの記録は14.37秒になります。太陽系移動前(笑)の中学生女子の日本記録より遅いです。

 時間の流れが1.5倍速くなったのであれば、スポーツ以外においても、すでにトンデモないことが起こっていることになります。以前は東京から大阪まで新幹線で2時間半くらいでしたが、太陽系移動後(笑)の現在は4時間近くかかっているはずです。大変です。JRは大急ぎでダイヤを組み替えなければなりません。24年連続で世界一を誇る日本人の平均寿命は約86歳でしたが、太陽系移動後(笑)は平均57.3歳に近づいていきます。官僚もサラリーマンも定年前の死者続出です。年金受給者が激減するので、年金制度は安泰です。でも懲役10年の犯罪者たちはいま、「まだ6年ちょっとの気分だから、あんまり反省してないんだけど」という状態で出所していることになります。

 何よりも、2012年の地球滅亡まで3年ありますが、3年間という時間は、太陽系移動前(笑)の世界でいえば2年です。3年以内にクリスタル・チルドレンを12人見つけなければいけない地球防衛軍さんは、2年以内で見つけるくらいの感覚で頑張らないと、地球滅亡に間に合いません。

 『知られたくなかった2012創造説』からわかったことは、算数すらできない人が地球の運命を握っているらしいということです。

1 コメント:

匿名 さんのコメント...

いるんですよね、いつの時代にも宇宙規模で自論を展開するこういう誇大妄想家が。で、自分は神に選ばれた特別な人間と思い込み特権階級意識を持ち神懸り、それに同調する周りの人間を巻き込んで教祖となり、、、カルトの誕生、で行き着く先は
霊感商法。地球防衛軍の人達はまだお金の利害関係が発生してないので今のところ問題ないですが、先祖供養すれば病気が治るとかいって高額な対価を要求するような変な方向に進んで欲しくないですね。鳩山さんの推薦文はあまり問題ないように感じます、一つの説としては面白いというニュアンスですし、まさか裏表紙にノンフィクションと書かれるなんて想定外だったのではないでしょうか、もしかすると今もご存知ないのでは?でもどういうツテで推薦文書いてもらえたのか不思議です。