2010年10月26日火曜日

足立区のオウム規制条例で退去命令も可能に

 東京・足立区で、宗教団体「アレフ」(旧・オウム真理教)が施設を建設している問題に関連し、同区議会が10月22日に反社会的団体の規制に関する条例」案を全会一致で可決。即日施行されました。団体規制法に基づく観察処分を受けた団体が規制対象となるため、アレフだけではなく「ひかりの輪(上祐派)」も対象となります。


■団体規制法より厳しい?

 足立区反社会的団体の規制に関する条例条例は、団体規制法に基づく観察処分を受けた団体について、以下のようなことを可能にする内容です。

(1)区内での活動や居住者などを定期的に報告させること
(2)周辺住民との協議のあっせんに応じる義務を負わせ、応じるよう命令できること
(3)周辺住民への脅威や不安があったときは区が必要な調査を行うこと
(4)脅威、不安の除去を勧告し、従わないときは命令できることなどです。

 つまり、住民にとっての脅威・不安が取り除かれていないと区が判断すれば、退去を命じることも可能ということです。足立区によると、退去命令も含めて団体を規制する条例が自治体で設けられるのは、全国初とのことです。

 現在、アレフとひかりの輪を観察処分としている団体規制法(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律)では、殺人や傷害等、ある程度具体的な犯罪行為や組織活動の活発化の兆候がある場合について、団体による土地や建物の使用を禁じることも含めた処分を行うことができると定めています。

 一方で足立区の条例は、具体的な犯罪の兆候ではなく「区民の安全及び周辺住民の日常生活の平穏に対して脅威又は不安を与える事態を生じさせているとき」について、対象団体に対して脅威・不安を除去を求めたり、従わない時は退去を命じることができるとする内容です。

 条文の内容は、団体規制法より厳しいように見えます。

■団体存続の是非が問われている

 本紙<オウム退去後もオウムと闘う町、千葉県松戸市>で報じたように、オウム真理教については、2000年ごろから全国で信者の転入届を自治体が不受理にする動きが広まり、オウム側が訴訟を連発。行政側の敗訴が続きました。これによってオウム側は「訴えれば勝てる」とばかりに訴訟を起こしては賠償金をせしめるという行為に出ます。アレフ元代表の野田成人氏によれば、その大半はサリン事件被害者への賠償にあてたそうですが。

 かつての転入届不受理問題では結局、一部を除いて行政側が断念し、「じゃあ、オウムの転入を不安に感じる住民はどうしたらいいのか」という問題は宙に浮いたまま、今日まで時間が流れてきました。言ってみれば、「オウム信者の人権」のみが通ったかのようにも見えてしまう形です。

 足立区の新条例は、転入届問題のときの「オウム信者の人権」をめぐる議論を再燃させそうです。しかし今回のケースは住民票問題と違って、個別の信者の転入届けではなく「団体」の施設の存在に対する規制です。オウム残党の団体活動の是非が直接的に問われています。

 今年は地下鉄サリン事件から15周年ということで、多くのメディアがオウム真理教の事件を振り返る報道を行いました。しかしこの15年、「オウム問題」は、法廷の中で進行したものはあるものの、法廷の外の社会では、実は何一つ解決していません。特に後継団体の存続の是非を考える時、脱会後の就職が困難であることなど、社会の側に脱会者を受け入れる体制がないという問題にも目を向ける必要があります(団体が継続している主な理由ではありませんが)。

 足立区の条例を批判する人もいるかもしれませんし、アレフやひかりの輪が異を唱えたり何か対抗措置をとったりするかもしれません。しかしただ単に「信者の人権」との兼ね合いのみを議論するのではなく、「オウム問題」の現状や課題を見据えた議論を期待したいところです。

2 コメント:

オホーツク海岸の論客 さんのコメント...

確かに、オウム真理教はあまりにも強烈な事件を起こした。

でも、対立しているままでは何にもならない。本当に「教団の中の人」と「教団の外の人」が対話を重ねていかないと日本国がだめになってしまう。

匿名 さんのコメント...

>脱会後の就職が困難であることなど、社会の側に脱会者を受け入れる体制がないという問題

元信者をいつまでも「現役に違いない」と叩き続けるネットも反省すべきかも。