元日本平和神軍中佐が参政党入党を発表

佐々木千夏氏のTwitterより

　かつて存在した人種差別集団「日本平和神軍」で野中広子中佐として幹部を務めた佐々木千夏氏が6月15日、参政党に入党したと自身のTwitterで発表した。佐々木氏は2019年の統一地方選でNHKから国民を守る党公認候補として杉並区議に当選し、直後に除名。今年4月の統一地方選で同区議選に無所属で立候補したが、落選していた。

日本平和神軍のウェブサイトにも登場していた佐々木千夏氏（野中広子中佐）

　佐々木氏が所属していた日本平和神軍は、2000年代初め頃まで活動していた右翼団体で、代表（総督）の中杉弘氏（本名＝黒須英治）は「らあめん花月嵐」チェーンを運営するグロービート・ジャパン社の会長。ヘイトスピーチという言葉が一般的ではなかった90年代から、黒須氏ら日本平和神軍関係者は中国人・韓国人への差別発言を繰り返していた。また軍服を着て集団で公道を行進する風変わりなパフォーマンスも含め、発言や行動の荒唐無稽さから、ニフティ・サーブのパソコン通信の時代からウォッチャーの観察対象とされていた。

　99年に会社員男性が、ウェブサイト「平和神軍観察会　逝き逝きて平和神軍」（すでに閉鎖）を開設。グロービート社との関係も含めて関連情報を掲載したところ、名誉毀損にあたるとして、同社が02年に刑事告訴、03年に民事提訴した。最終的にサイト運営社の男性側が有罪判決（罰金30万円）を受け民事でも敗訴（賠償金77万円）したが、裁判でグロービート社が日本平和神軍とは関係がないと主張していたのに対し、同社が勝訴した際に日本平和神軍がウェブサイトに勝利宣言を掲載。むしろ両者に深い関係があることが改めて露呈した。

　佐々木氏が杉並区議となった19年、本紙記者は佐々木氏に電話インタービューを行っている。佐々木氏によると、日本平和神軍はこの訴訟より前の00年頃には実質的に活動を停止し、後に自然消滅していたという。途中で黒須氏が佐々木氏から受話器を奪い、会話に割り込んできて、2人揃って「国会議員のうち250人は帰化人」「従軍慰安婦なんてなかった」「朝鮮人は嘘をつくのをやめろ」「NHKには1000人も朝鮮人がいて偏向報道している」といった趣旨の差別発言を繰り返した。

参考記事：佐々木千夏・杉並区議が「日本平和神軍」って本当？　電話で直接尋ねたら……

　黒須氏はこの時点でも、自分はグロービート社の会長であると語った。しかし息子（社長）からは「（会長であることを）言わないでくれ」と言われているという。また黒須氏は日本平和神軍に代わって宗教団体「正理会」の名誉会長を務めており、佐々木氏も同会幹部であるという。

　杉並区議となった直後、佐々木氏は区議会の本会議で「朝鮮通信使は凶悪犯罪者集団」とする趣旨の発言を行い、ヘイトスピーチだとの批判を浴びた。今年3月には、陰謀論界隈でブームとなった「コオロギ食」「昆虫食」論争にも参戦。区議会の予算員会で昆虫食反対を訴えるとブログで宣言した。その翌月の4月、区議選に無所属で立候補して、候補者69人（定数48）中67位で落選した。

カルトラーメン評論家の藤倉善郎氏：

「参政党は、在特会の関連団体である日本第一党関係者を公認したり、また別の公認候補が選挙街宣で中国人留学生についてデマを流して憎悪を煽ったりしてきた。党としても中国人留学生を敵視する姿勢を見せるなど、人種差別とは相性がいい。佐々木千夏氏にはお似合いの政党だ。らあめん花月嵐のイメージカラーも参政党と同じオレンジ基調だし。一方で参政党は、小麦食は戦後にGHQが日本に持ち込んだもので、日本人が小麦を食べると水銀中毒と同じ状態になるなどという主張もしている。ラーメンの原料は小麦粉。佐々木氏が今後らあめん花月嵐のラーメンを食べることができるのかどうかが、最大のポイントになりそうだ」