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■「買い物やめろ!」と旅に出る
同作品は、2007年にアメリカで制作されたドキュメンタリー。日本では未公開ですが、本紙でも以前紹介した「松嶋×町山 未公開映画祭」で、1月25日までネット配信されています。
主人公(?)は、セントマークス教会のリバレンド・ビリー牧師。作品の冒頭には、同教会の聖楽隊が登場。軽快なダンスと共に、
「いますぐナイキを棚に戻して」
「買い物をやめて」
「スタバの前で立ち止まって」
「ウォルマートに入らないで」
「ハレルヤ!」
と、パワフルなヴォーカルが歌いあげます。
そしてヴォーカリストの紹介を受けて、白スーツのゴキゲンな金髪白人野郎が登場。ビリー牧師です。熱狂する観客じゃなかった信者たちに迎えられてビリー牧師、
「神よ、我らに祝福を! 力をお与えください。買い物をやめる力を! アーメン!」
冒頭から意味がわかりせん。説教というか、アジテーションが始まります。
「ご存じだろうか。あと28日でクリスマスが来る。街には光輝く看板にあふれ、スーパーモデルが見降ろしてる。勝負下着を身にまとって、広告に目をやるとジンジャーブレッド味の奇妙な飲み物。モールでは人々がレジに殺到。目的はわかっている。買い物をする彼らを哀れに思うと同時に、クリスマスに激しい憤りを感じる。この購買中毒の国を説教して歩こう。憶えていてくれ。ウォルマートに拒否されようが、刑務所に入ろうが構わない。デパートの警備員につかまってもいい。各地を回ろう。バスで走り続けよう。消費文化を食い止めよう」
ってなわけで、このイカ
■ドキュメンタリーっていうかプロパガンダ
ドキュメンタリー映画と聞くと、つい、批判精神あふれた報道映画を思い浮かべてしまうのですが、この作品は違います。
伝道の旅に密着した映像の随所に、さまざまな人物へのインタビューが挿入されています。クリスマスプレゼントに思いをはせる人々への街頭インタビューでは、愚かな消費者どもが「グッチのドッグタグが欲しい」「プラダの靴が欲しい」「高価な物なら何でもいい」「クリスマスは自己破産の価値あり」「子どものためなら自己破産してもいい」と、わけわからないことを口走ります。大量消費社会がいかに狂っているかを語る識者のインタビューもあります。
こうした映像に組み合わせて、ショッピングモールに(おそらく無断で)入りこんで説教をするビリー牧師の映像。ディズニー・ショップに乱入して「ミッキーマウスは反キリストだ!」と叫んだり、つまみ出されたりします。
とても正気の沙汰とは思えないのですが、こうした行為を批判したり嘲笑ったいりするニュアンスの映像はありません。監督がどういった意図で撮影したのか知りませんが、映像を見た印象としては、完全に「買い物やめろ教会」のプロパガンダ映画なのです。だから余計に笑えます。
ちなみに「買い物やめろ教会」というネーミングは、メディアなどが彼らを揶揄して名付けたものではないようです。作品の中でも教会関係者自らが伝道相手に対して「Church of Stop Shopping」と自己紹介していたりします。自他ともに認める「買い物やめろ教会」なのです。
■主張の内容だけなら、わりとまともだけど……
牧師の主張などから、彼らが買い物をやめろと言ったりクリスマス・プレゼントという行為を批判したりする理由をまとめると、だいたいこんな感じみたいです。
・プレゼントが目的になってしまって、キリストの誕生を祝う気持ちを忘れている。
・アメリカの大量消費社会は病んでいる。
・巨大資本のスーパーやショッピングモールのせいで、地元の個人経営商店がヤバイ。
・中国製の商品があふれていて、アメリカ国民が作ったものが売れない。
買い物を全てやめろというのではなく、地元の商店で国産品を必要最小限だけ買いなさい、という主張です。
こうやってまとめると、わりとまともに思えます。日本でも、キリスト云々を別にすれば似たような発想を持つ人は少なくないでしょう。本紙・藤倉自身も、賛同できる主張です。
■空中浮揚に失敗
ところが、これがセントマークス教会やビリー牧師による宗教行為になると、とたんに意味不明に思えてくるから不思議です。説法の時、信者たちにクレジットカードを掲げさせ、ビリー牧師が悪魔祓いをします。路上のでかいウォルマート看板の前で、やっぱり悪魔払いの儀式をします。
「この国の憤りをさらけ出せ。アメリカ国民の魂だ。我らの贈り物を受け取れ」
20~30人の白装束の信者たちがはやし立て、ビリー牧師はわめきながら、ウォルマートの看板の前の茂みに倒れ込みます。
その日の夜、ベッドの上でビリー牧師は妻に向かって、愚痴っていました。
「みじめだった。空中浮揚するはずだった。ウォルマートの上を飛び奇跡を起こす。(でも)結果は藪にダイブ(しただけ)」
本気なのか……
■牧師逮捕!
ほかにも、伝道の旅の途中、一般家庭を訪問して玄関先で聖楽隊が歌ったりします。クリスマスプレゼントを欲しがる子供を揶揄する歌を歌われ、唖然とする家の人たち。もちろん、ショッピングモールにも無断で入り込んでの説法も繰り返します。一般客と同じ服装で店に入ってから服を脱ぐと、ビリー牧師は白スーツ、聖楽隊は全身赤い服に大変身。モール内で突然アジり出し、警備員につまみ出されます。
ネタばれになるので詳しくは書きませんが、最後は我々日本人もよく知っているあの場所で、クリスマスにアジテーションをします。旅伝道の最終目的地。“約束の地”でのクライマックスは、抱腹絶倒モノです。
「ストップ・ショッピング!」
「メリー・クリスマス!」
そしてビリー牧師、堂々の逮捕! ブタ箱行きの受難です。まあ当然の結果ですが。
みなさんぜひ、クリスマスに交換したプレゼントを開けながら、この映画を恋人とでも家族とでも見てみてください。気まずい空気になること請け合いです。大したプレゼントを買えなかった人は、言い訳に使えるかもしれません。
いやあ、アメリカのキリスト教って、本当に面白いですね。それでは、サヨナラサヨナラ。
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◇ ◇ ◇
『イエスのショッピング ~買い物やめろ教会の伝道~』
2007 / アメリカ / 91min
【監督】 Rob VanAlkemade(ロブ・ヴァン・アルケメイド)
【製作スタッフ】
Morgan Spurlock(モーガン・スパーロック)
Felix Werner(フェリックス・ヴァーナー)
松嶋×町山 未公開映画祭
2010年11月17日~2011年1月25日
1作品500円/視聴時間・72時間
「まとめて5作品コース」2,000円/視聴時間・2週間
「39作品フリーパス」10,000円/視聴時間・配信終了まで
3 コメント:
ある意味では、マイケル・ムーア作品よりおもしろいかもしれません。アーミッシュでも、上記でもコンビニでお取り寄せできるDVDになってくれると私は本当に嬉しいです。
この牧師の言葉や行動をおもしろおかしく書いているけど、クリスマスに何でものを買うの?プレゼントするの?
過剰にものを買う必要はないんじゃない?
プレゼントの本当の意味とか、
クリスマスの本当の意味とか
物事の本質を捕らえる事は必要じゃないの?
こういう滑稽な中に
物事の本質があるように思えるけどね。
>2010年12月26日 1:39
せっかく世のなかが買い物を楽しむ時期なのだから一緒に買えばいいじゃないですか
世界が広がりませんよ
それより法華経を信じ南無妙法蓮華経と唱えてください
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